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それぞれの失敗?◆56WIlY28/s


「……俺としたことが…………」
 新市街の外れ、廃アパート群が建ち並ぶ道を歩きながら杉並はそう口にした。
 あれから、自身が追っていた少女を引き続き捜索したが、自身の持つ探知機は何の反応も示すこともなかった。
 杉並らしくもない僅かな油断から生じてしまった完全なるミスであった。
(考えろ。考えるのだ俺。俺があの女を見失ったのは今から数十分ほど前だ。
 ならば、俺が見失った後に女が選んだ移動先として考えられる可能性は少なくとも二つ…………
 ひとつは市街を出て森に向かったという可能性。もうひとつは、急きょルートを変えて市街の別の場所へ移動したという可能性だ。
 さて……俺はどちらの可能性に賭ける…………?)


 ■


 あの後、二見瑛理子と鳴海孝之の二人は博物館の中に身を潜めることにした。
 先ほどの惨劇が生じた場所から距離はそう離れてはいないが、大きく、そして広いこの建物は身を隠すならばそう悪くはない場所であったからだ。
 それに、ここを選んだ理由はもうひとつあった。少なくとも瑛理子には……

「な、なあ! 今すぐさっきの所に引き返そう! そう遠く離れた距離じゃないし、双樹ちゃんを助けに行けるはずだろ!?」
「…………ッ!」
 背後からうるさく声をかけてくる少年に瑛理子は軽く鋭い眼を向けた。
 そう。もうひとつの理由とは、鳴海孝之――この男と一刻も早く別行動を取りたいということであった。
 あの時――あの場から引っ張り出してきた時の孝之は自身の呼びかけにも答えず、ただブツブツと何かを呟くばかり。
 ――それなのに、この博物館についたら急に一変して瑛理子に意見を言い続けているのである。それも一方的に。
 その内容も今瑛理子に言ったこととほぼ同じ――先ほどの場所に引き返そうだの、双樹を助けに行こうだのというものばかりだった。
「そんなに行きたければ貴方だけで行けばいいでしょう!」
 さっきと同じ――この博物館に来てから言うのはすでに何度目になったか分らない言葉で言い返す瑛理子。
 だが、それに対する孝之の返答もまた先ほどと同じで――
「で、でもさ……あそこにはまださっきの殺し合いに乗ってしまった女の子たちがいるかもしれないんだよ!? 俺一人で行くなんて無理だよ……!!」
 ――これである。
 すでに孝之に対する瑛理子の感情は苛立ちを通り越して呆れてしまっていた。
 まあ、大の男――それも銃を持って装備も今のところ何の問題もない男が、自分が言いたい事ばかり言っておきながら実際はとんでもない弱腰なのだから当然といえば当然である。
(なんて情けない…………)
 その言葉は孝之に対するものなのか、それともそんな男と未だに共にいる自分に対してのものなのかは瑛理子自身にも分からなかった。

(……銃……?)
 だがその時、瑛理子はふとあることを思いつき、すぐさま孝之の方に振り返る。
「ねえ!」
「な、なんだよ!?」
 突然真剣な振り返ってきた瑛理子に孝之は思わずビクリとしてしまう。
「あなたの持っているその銃って本物?」
「え? ……これ?」
 そう言いながらベルトに差していたトカレフを手に取る孝之。
「それ以外のどこに銃があるっていうのよ?」
「そ、そういえばまだ調べてなかったな……。これもともと双樹ちゃんから貸してもらったものだし……」
「――ちょっと貸してみて。調べてみる」
「えっ? わかるの?」
「分かるわけ無いでしょ。見ての通り、私だって普通の女子高生なんだから。――ただ、マガジンの中に入っている弾が実弾かどうかを調べるだけよ」
「あ……そ、そうか……」
 納得したのか、孝之は次の瞬間にはトカレフを瑛理子に渡していた。


 ――それが失敗であった。
 いや、瑛理子のことを勝手に仲間だと決め付けてしまっていたことが孝之にとって最大の失敗だったのかもしれない。


「……これは……実弾?」
 トカレフからマガジンを抜き取り、その中に入っていた弾を一発取り出すと瑛理子は呟いた。
 さすがの瑛理子も実弾というものを見るのは初めてであった。もちろん本物の銃もだが。
「……となると、一応この銃は本物ってことね」
「じゃ、じゃあ、充分武器として使えるってワケだね!?」
 どこか嬉しそうに孝之は瑛理子に尋ねる。
「ええ……。そういうことになるわね…………」
 瑛理子は右から左に受け流すようにその問いにさらりと答えると、弾をマガジンに戻し、マガジンを銃に入れた。
 そして…………


「だから……あなたにはもう用はないわ」
 その銃口を孝之へと向けた。
「!? な、なに言ってるんだ!? それに、何の真似だよ!?
 さっきあんたは俺を助けてくれたじゃないか!? あんたは殺し合いに乗っていないんじゃないのか!?」
 慌てて瑛理子に対してそう言いう孝之の表情には間違いなく『恐怖』というものが浮かび上がっていた。
「――確かに、私は今のところ殺し合いには乗ってはいないわ。――だけど、他人を助けるというのは別よ。
 さっきあなたを助けたのはちょっとした気まぐれに過ぎない。それなのに仲間だなんて思われるのは御免だわ……」
「…………っ!」
 銃口をずいっと孝之の方へと押し付ける瑛理子。その先には孝之の眉間があった。
 銃が本物であった以上、この距離から撃てば孝之の顔に風穴が開くのは明白であろう。
「それに、仮に私が仲間を探していたとしても、あなたみたいな人は絶対に仲間にしないし、すぐに切り捨てるわ。
 あなたみたいな人が一人でもいると、あなた自身ではなく周りの人たちに被害が出る。
 思い返してみなさいよ、さっきあの女の子に襲われていたとき、あなたは何をしていたかをね……!」
 そう言うと瑛理子はさらに銃口を孝之に近づける。
 ――ついに、銃口が孝之の眉間とぴったりと密着した。
「ひっ……!? ひいぃぃぃ……!」
「だから…………さっさと残りの自分の荷物を持ってさっさとどこかに消えなさい!!」


 ――ズガンという一発の銃声が博物館に響き渡った。


「うわああああああああああああああああああああっ!!」
 その音が響き渡るのと同時に、孝之は近くに置いてあったデイパックのひとつを慌てて拾い上げ、博物館から大急ぎで去っていった。
 ――いや、こういう場合『逃げ出した』と言ったほうが正しいだろう。

「…………はあ……」
 孝之が去ったのを確認すると、瑛理子はその場にゆっくりと腰を下ろした。
(疲れたわね……いろいろと…………)
 そう思いながら博物館の天井へと目を向ける瑛理子。天井には一発の銃弾で生まれた穴が開いていた。
 瑛理子が銃の引き金を引く瞬間、とっさに銃口の先を孝之の眉間から天井に変えたため出来たものだ。
「さて、とりあえず銃も手に入ったからそう簡単にはやられることもなくなったでしょうけど、油断は出来ないわね……
 気を取り直してこれから先の行動を考え…………っ!?」
 そう言いながら近くに置いてあった自分のであろうデイパックを手に取り、それを開いた瑛理子だったが、次の瞬間、その顔に『驚愕』という表情が浮かんだ。
 なぜなら、デイパックの中にはノートパソコンではなく、ブロッコリーとカリフラワー、そして空の鍋におたまだったからだ。
「……あの馬鹿、人のデイパック間違えて持っていったわね…………」
 いくら慌てていたとはいえ、自分のデイパックくらい覚えていてほしいものだと思いながら、瑛理子は一度はあ、とため息をついた。
 ――いや、孝之を慌てさせたのは自分自身であるのだからそう文句も言えたものではないことぐらい自分でも分かっていたのだが…………


「…………」
 それから終始無言であった瑛理子だったが、ふとあることに気がつき口を開いた。
「あ……。そういえば、あいつに私の名前言うの忘れた………………ま、いっか」


 ■


「……日が出てきたようだな」
 右手には鉄パイプ、左手には探知機を持って市外の一角を杉並は歩いていた。
 彼は考えた末、森林地帯には行かず市外に残るという選択を選んだ。
 市外なら参加者も多く集まる可能性がある以上、殺し合いに乗ったネリネがそれを狙って市外に残っているという可能性の方が高いと判断したからだ。
「……それに、いつまでもあの女ばかりを追うわけにもいかんしな」
 そう自分に言い聞かせていると、突然探知機にふたつの反応が現れた。
「!? 他の参加者、あの女か!?」
 すぐさま探知機に目を向ける杉並であったが、反応はその場からピクリとも動いている様子はなかった。
(? どういうことだ?)
 不思議に思う杉並だったが、次の瞬間、探知機に新たな反応があったため、思考は中断させられる。
「もうひとつ反応!? しかも今度の奴は……」
 探知機に映し出されたもうひとつの反応はなかなかのスピードでこちらに向かって接近してきているようだった。
 まずいと思った杉並はすぐに近くの民家の塀をよじ登り身を隠した。殺し合いに乗っている者であった場合、今の自分にはろくな武器がないからだ。

 杉並が身を隠してしばらくすると、彼の視界には一人の少年の姿が映った。



「はっ……はあっ……!」
 ――鳴海孝之は走っていた。いや、『逃げていた』といっても間違いはないかもしれない。
 彼は今、大急ぎである場所へと向かっていた。
 先ほどの惨劇が起きた現場――双樹とレナが音夢に殺害されたあの場所へと――――
 悲しいことに、彼は未だに白鐘双樹は生きていると思っていたのだった。彼女の最期をその目に焼き付けておきながら…………

「…………どうやら、どこかへと向かおうとしているようだな。
 となると……殺し合いに乗っているという可能性は低い…………後を付けてみるか……」
 孝之が通り過ぎていった後、塀をよじ登りながら杉並はそう判断した。
 探知機が示すところによると、あの少年の走っていった方角は未だに何の反応も示さないふたつの反応がある方向と同じであったからだ。


 ――杉並は知らない。そのふたつの反応とは朝倉音夢に殺害され、既に骸と化した少女たちのものであるなど…………
 そして孝之は知らない。自分の後を追跡する一人の少年がいるということを…………


【B-3南東 新市街 1日目 早朝】

【鳴海孝之@君が望む永遠】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式 ノートパソコン(六時間/六時間) ハリセン】
【状態:混乱】
【思考・行動】
1)双樹は本当に死んでしまった!? いや、そんな訳あるはずない……
2)瑛理子(名前は知らない)は仲間じゃなかったのか!? いや、そんなはずは……
3)死にたくない

【杉並@D.C.P.S.】
【装備:鉄パイプ、首輪探知レーダー】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:主な目的は情報収集
1)他者と行動を共にするつもりは現状無い。だが朝倉に遭遇したらその時は共に行動する。
2)孝之(名前は知らない)を追跡し、情報を集める。
3)探知機に示されているふたつの反応が気になる。
4)各種施設を回りつつ、他者を見張る。
5)何がなんでも生き残り、あらゆる不思議を解明したい。
6)ネリネ(名前は知らない)のことは一時保留。
【備考】
  • レーダーは半径500mまでの作動している首輪を探知可能。爆破された首輪は探知不可。
  • 古手梨花を要注意人物・ネリネを危険人物と判断(共に容姿のみの情報。名前は知らない)。


 ■


「……日が出てきたみたいね」
 博物館の外に出た瑛理子は、デイパックから地図を取り出して開いた。
「――役所の方に戻るのも何だし、別の場所に行くこうかしら。まずは東のほうから……」
 そう言って瑛理子は地図をしまうと、代わりにコンパスを取り出して歩き出した。
 もちろん、万一に備えて銃はいつでも取り出せるようにスカートの腰部に差し込んでおくことも忘れずに…………

【C-3 博物館 1日目 早朝】

【二見瑛理子@キミキス】
【装備:トカレフTT33 8/8+1】
【所持品:支給品一式 ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭 空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗らず、首輪解除とタカノの情報を集める。
1)とりあえず東に向かう。
2)仮に仲間を作り、行動を共にする場合、しっかりした状況判断が出来る者、冷静な行動が出来る者などと行動したい。
3)(2の追記)ただし、鳴海孝之のように錯乱している者や、足手まといになりそうな者とは出来れば行動したくない。
4)鳴海孝之には出来れば二度と出会いたくない。


061:下半身に罪はない!~トイレを求めて全力疾走~ 投下順に読む 063:オンリーワン
061:下半身に罪はない!~トイレを求めて全力疾走~ 時系列順に読む 063:オンリーワン
034:パートナー 鳴海孝之 082:Crazy innocence
048:『其処』に似たこの場所で― Exist ― 杉並 082:Crazy innocence
034:パートナー 二見瑛理子 073:陽のあたる場所(前編)




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