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連鎖する誤解~chain misunderstanding~ ◆3Dh54So5os


「放送室ッ……放送室は何処だ!?」
体育館からトップスピードで校舎に駆け込んだ双葉恋太郎はその場で立ち止まると左右に延びる廊下に目をやった。
『1年1組』『1年2組』『男子トイレ』などのプレートは見えたが、放送室のそれは何処にも見当たらない。
一刻も早く放送室に辿り着かなくてはいけない。
今こうしている間にも不戦を呼び掛けた少女が何者かの手により殺されてしまうかも知れないのだ。
恋太郎の中で焦燥感がみるみるうちに肥大化していき、冷静な判断力を侵食していく……
と、そこへ短い付き合いながらも聞き慣れたものとなった声が外から聞こえてきた。

「恋太郎さん、そこは西棟なの。放送室は中庭を挟んだ東棟の一階なの」

一ノ瀬ことみだ。恋太郎が全力で突っ走ってしまったため、四葉と共に置いてきぼりを食らったことみだが、冷静さでは彼女の方が上手だったようだ。
口振りからすると校内の地図か何かをあらかじめ確認していたのかもしれない。
「東棟……?アレかっ!?」
中庭に面した窓ガラス越しに同じような白い巨棟の姿が見える。ことみの言う東棟とはおそらくアレだろう。
「渡り廊下は1年4組の合い向いなの」
恋太郎の思考を読んでいたのか、ことみの言葉は今まさに恋太郎が欲しかった情報そのものだった。
1年4組、と言う事はこの1年生の教室の並びにあるはずだ。
そちらに目をやった恋太郎の視界が『1年4組』のプレートを視認するまで時間はかからなかった。だが……
「ダメだ……」
見た瞬間、恋太郎は渡り廊下経由で行くことを却下した。
距離が意外とあったのと、防火扉が閉まっているのが見えたからだ。
こういう場所の防火扉には小型の戸がついているのが大半であるが、タイムロスが生じるのは避けられない。
一刻も早く現場に向わなくてはならない今、そのロスを恋太郎は惜しんだのだ。

「となると……こうするしかねーよな!」
恋太郎は中庭に面した窓の一つを開け放つと、自身の胸の辺りまである壁をよじ登った。
直後にことみたちが昇降口まで駆けこんでくる。が、それより早く、恋太郎は中庭へのダイブを敢行していた。
「恋太郎さん!」
「先生ぇ!!」
ことみと四葉の慌てたような声が聞こえたが、恋太郎は無視して中庭を駆ける。
東棟に飛び込む上で邪魔な窓ガラスを割っておこうと、S&W M60を取り出す。
そのままS&W M60を構えようとした、その時だった。全く聞き覚えのない少女のが中庭に響き渡ったのは……

「そこの人! 止まって! 止まらないと撃つよ!」
「!?」

定番といえば定番の台詞だが、たいていの人間がそうであるように恋太郎も反射的に動きを止めた。
今のは誰の声だ?
ことみや四葉? ――二人はまだ西棟の中だし、今の声は明らかに彼女達のものとは違う。
放送をしていた少女? ――スピーカーの電子音声を通すと若干声が変わるが、それにしても違いすぎる。
ならば少女を襲った犯人? ――可能性としては高いが、蹴りがついたのなら普通は逃げる筈。いや、もしかしたらよっぽどの強武装で自信があるのかもしれない。

嫌な汗が流れるのを感じつつ、声のした方を見ると……誰もいなかった。
そこには学校の周囲を囲う緑のフェンスがあるだけだ。

「……?」
「どこを見てるのかな? 下だよ! し、た!」

再びさっきと同じ声がする。
言われたとおり視線を落としてみた恋太郎は、次の瞬間、固まった。
そこだけフェンスが破けて穴が開いていて、その穴から上半身だけ出した状態で、サブマシンガンを構えた少女が、こちらを睨み付けていた。
なんと言ったら良いのだろうか? 単純に見たままを例えるなら……
「匍匐前進の訓練?」
「ちっがぁぁぁぁぁう!!!」
思わずつぶやいた言葉にすかさず熱烈な突っ込みを入れた少女は、もそもそと匍匐前進で穴から這い出すと、再びマシンガンを構えた。
この間、マシンガンの銃口は恋太郎を捉えていなかった為、逃げることも、反撃も十分出来たはずなのだ。
しかし、このあまりにも急すぎる展開についてこれなかった彼は、再び銃口を向けられてからそのことに気がつくという大失態を演じていた。
「その銃、ボクの足元目掛けて投げ捨てて、少しでもヘンなことしたら撃つからね」
「くっ……」
舌打ちしつつ、恋太郎は言われたとおりS&W M60を投げ捨てた。
下手に突っぱねて撃ち殺されては元も子もない。

(落ち着け、まだ大丈夫だ。銃を奪われても相手は見たところ普通の女の子、上手く隙をついて奪い返せば……)

などと言う恋太郎の読みは間もなく、盛大に外れることになった。
足元に転がってきたS&W M60をマシンガンの銃口を恋太郎から外さない様にしつつ拾い上げた少女は、次の瞬間、何を思ったのか……
「ん~、えいっ☆!」

S&W M60を放り投げた。 東棟の校舎目掛けて……

ガッシャーン! という耳障りな音とともにガラス一枚を巻き添えにして東棟の中へと姿を消すS&W M60。
少女の一挙一動から、銃の行く末までばっちり見ていた恋太郎は背筋が凍るのをはっきりと感じた。

「残念でした。『隙を突いて奪還~』とか考えてたんだろうけど、ボクの武器はこれで十分だからね。奪い返されるぐらいなら手出しできないようにしちゃったほうが得策だし」
そう言いながらあっかんべぇをしてみせる少女。
可愛い見た目に似合わずなかなかどうして侮れない相手のようだ。
「さて、物騒なものもなくなったところで、いくつか質問に答えてもらうよ」
「……」
お茶らけた雰囲気から一転、親の仇でも問い詰めるような少女の口調に恋太郎は一応両手を上に挙げた。
状況は大体つかめている。この少女は放送をしていた少女でも、少女を襲撃した犯人でもない。犯人なら、外から入ってくるわけがない。
放送を聞きつけて駆けつけてきた他の参加者だ。問答無用で撃たなかったあたり、ゲームに乗っている可能性は低そうだ。
となると、彼女がこのような行動に出た理由は容易に察しがつくわけで……

「さっき、この学校から女の子の声で放送があったと思うんだけど……」

少女の切り出し方から恋太郎は自分の考えが間違っていなかったことを確信した。
つまり、この少女は疑っているのである。放送の女の子を襲った犯人が恋太郎なのではないか? と……
少女が一人襲われた現場で銃を持った男が、よりにもよって窓から出てきたのだ。疑われても仕方がない。
仕方がないが、これはかなり痛い。あらぬ疑いをかけられたこともそうだが、切り出し方から察するにこれはどうも長期戦になりそうだ。
急がなくてはいけないこの局面でこの展開は何かとまずい。
どうしたものかと表情には出さずに恋太郎が思案し始めたところに質問が飛んできた。
「その女の子襲ったの、お兄さん?」

ずこっ!!

例えるなら、トリック解説抜きで「犯人はお前だ!」といきなり展開をすっ飛ばされたような感じというべきだろうか?
回りくどく外堀から埋めてくると思っていた恋太郎は余りにもストレートな質問に思わず脱力した。
この反応は少女の想定内だったのか、大して悪びれる様子もなく言う。
「あっ、ごめんね~。でももし犯人じゃなかったら問い詰める分の時間が無駄じゃない? ここはズバッと言ったほうが良いかと思って」
「な、なるほど、確かに一理あるな……」
恋太郎としてもあらぬ誤解など一刻も早く解きたい。話がさくさく進むのは好都合なのだ。
完全に向こうのペースに乗せられているような気がしないでもないが……。
「あ~、一応言っておくと俺じゃないぞ。探偵生命に誓ってやってない」
「へ~、お兄さん探偵なんだ……」
「ああ、俺の名前は双葉恋太郎、ニコタマで私立探偵をやってる」
「ボクは時雨亜沙。国立バーベナ学園の三年生、こうみえても料理部部長!」
私立探偵に張り合ったつもりなのだろうか? マシンガンを構えた少女――時雨亜沙は自己紹介の最後にそう付け加えた。
「ん~、それにしても探偵か~、それなら信用できるかなぁ……」
そうつぶやきながら唸り始める亜沙。四葉たちのときといい探偵という職業のネームバリューも捨てたもんじゃないらしい。
が、相手がそれなりだと早々簡単にはことは進まないらしく……
「ちなみに何かそれを証明出来るもの、ある?」
「そんな都合のいいものはない。日本の探偵は私立だから免状なんかないし、こればっかりは自己申告頼りだ」
「そこ、そこなんだよねぇ、一番痛いのは……。状況が状況だからボクも 「はい、そうですか~」 とは言えないんだよねぇ……なんたって命かかってるし」
それはこっちも一緒だがな……と恋太郎は声にこそ出さずに毒づく。
むしろ銃を突き付けられてるこっちの方が命がかかっていると言っても良い。
言い換えればこれも一つの勝負だ。
無実を証明し、亜沙の信用を得られれば勝ち、出来なければ負け。負けたときのチップは己の命……。
なんとも歩の悪い、そしてなんとも実のない勝負である。しかし、何もしなければ待ってるのは死だ。ここはなんとしても亜沙からの信頼を得なければならない。
冤罪で極刑を言い渡された人の気持ちが何となくだがわかった気がする。

(さて、どうしたもんかな……)
事態は完全にこう着状態になりつつある。良くない傾向だ。
それは亜沙も感じているらしく、気まずそうにこちらを見ている。
暫くそのままの状態が続き、気まずさが頂点に達しようかというまさにその時だった。恋太郎の聞きなれた声がドップラー効果全開で迫ってきたのは……
「ちょっと待つのデスぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーー!!!」
「ん?」
「げっ!?」
その声に、あっけにとられた表情で亜沙はそちらに目をやり、方や恋太郎は嫌な予感をひしひしと感じながらそちらを見た。
「先生を撃ち殺そうなんてこの四葉が許さないのデスよーーーーーーーーー!!」
案の定、こちらに猛突進を駆けてきているのは自称探偵志望少女の四葉だった。
おそらくは同行していたことみから奪ったのだろう。その手には大きな鉈がしっかりと握られている。
砂埃が起こるのではないかと思わんばかりの勢いで恋太郎と亜沙の間に割り込んだ四葉は鉈を構えながら怒気に満ちた声で言った。
「先生になんてことしてるんデスか! 事と次第によっては容赦しないのデス!!」
「なにをって……それはボクの台詞だったんだけど……」
度肝を抜かれるとはまさにこういうことを言うのだろう。
持っている得物では威力でも射程でも明らかにマシンガンを所持している亜沙の方が有利なのに、四葉の覇気にすっかり気圧されていた。
「四葉、その物騒なものをまず置け、っていうかそれことみのだろ?」
「で、でも、この人先生にマシンガンを向け……マシンガン!?」
カランカラン……

どうやら四葉は今の状況が良く把握できていなかったらしい。
亜沙の得物がマシンガンであるのを見るや四葉の手から鉈が滑り落ちた。さっきまでの覇気がすっかり消えうせ、その場にへたり込むと身体をカチカチと振るわせ始める。
「せ、せんせぇ~……」
「あ~、安心しろ、得物こそ物騒だがこの子は大丈夫だ」
「え、えっと、この子、お兄さんの連れ子?」
涙目になりつつある四葉をなだめながら恋太郎は頷くことで肯定を示す。
「え~と、今更だけど、ボクの勘違いでした~ってことで許してくれる? こんな子連れてる子が人を襲うなんて、フツーにありえないだろうし……」
ばつの悪そうな顔でそう申し出る亜沙に恋太郎は再び頷きつつ、亜沙が話の分かる相手で良かったと安堵した。

「恋太郎さん、終わったの?」
「ああ、どうにかな……って、ことみ!?」
胸をなでおろしつつ何気なく振り返った恋太郎はいつの間にか脇に立っていたことみを見つけ思わず声を上ずらせた。
「ごめんなさい、恋太郎さん……、四葉ちゃん止めきれなかったの……」
すまなさそうな顔でそう言うことみ。
四葉が乱入してきた時の様子から察するに、相当荒れたのだろう。恋太郎は何も言わず、ことみの頭に手を置く。
と、そこへ、四葉の問い詰めるような声が割り込んだ。
「今まで何してたのデスか!? 先生がピンチだったのに! いざとなったら先生をお守りするんじゃなかったのデスか!?」
「闇雲に突っ込むより様子を見てからのほうが良いと思ったの……」
「様子を見ている間に先生が殺されちゃったら意味ないのデス!! あの状況でどーしてそんな悠長なことが言えたのデスか!?」
腰を抜かしていなかったのなら掴み掛かっていたのではないだろうか? そう思えるほどの罵声だった。
その剣幕にことみは思わずひるみつつ、亜沙の持っているマシンガンを指差し……一言漏らした。


「……あの人のマシンガン安全装置(セーフティー)外れてないの……」


「「「あっ……」」」

それはある意味致命的で、ある意味決定的で、それでも遅すぎた冷静な指摘だった。

【E-4 学校の中庭/1日目 黎明】


【双葉恋太郎@フタコイ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、昆虫図鑑、.357マグナム弾(40発)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0・マジかよ……orz
1・放送室へ向かう
2・沙羅と双樹、四葉の姉妹達、ことみの知り合いを探し出してみんなで悪の秘密結社(主催)を倒す
【備考】
※校舎の屋上から周辺の地形を把握済み
※時雨亜沙は危険ではないと判断しました。


【四葉@Sister Princess】
【装備:鉈@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式、参加者の術、魔法一覧、虫眼鏡】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0・あっ、本当デスね……。
1・恋太郎たちと放送室へ向かう
2・恋太郎の手伝いをする
3・姉妹達を探す
4・みんなで悪の秘密結社(主催)を倒す
【備考】
※『参加者の術、魔法一覧』の内容は読んでいません
※時雨亜沙は危険ではなさそうと判断しつつあります。


【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:なし】
【所持品:レインボーパン@CLANNAD、謎ジャム@Kanon】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0・大事にらならくて良かった……。
1・恋太郎たちと放送室へ向かう
2・恋太郎たちと行動を共にする
3・朋也たちが心配
4・鉈、返して欲しいの……。


【時雨亜沙@SHUFFLE!】
【装備:イングラムM10(9ミリパラベラム弾32/32)】
【所持品:支給品一式、イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×8、他ランダムアイテム不明】
【状態:健康、ちょいと自己嫌悪】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0・うっわー、ボクなにやってるんだろ……///orz///
1・放送を流していた少女を助けに行く
2・稟、ネリネ、楓と合流
3・同志を集めてタカノたちを倒す
【備考】
※恋太郎たちは危険ではないと判断しました。


   ◆   ◆   ◆



「おい、君! しっかりしろ! 大丈夫か!? 君ッ!? …………ダメだ。完全に気絶しているな……」
揺すってみたが、うんともすんとも言わないのを確認したハクオロは呆れとも、安堵ともとれる盛大な溜息をついた。
「随分とひどい有様になってしまったな……」
今しがたまで恐慌状態に陥っていた少女、神尾観鈴が手当たり次第に取説やら台本やらを放り投げた為、放送室は見るも無残な醜態を晒していた。
乱雑に散らかった放送室を見渡したハクオロは散乱した冊子の山の中に、少女を気絶させた原因となったものを見付け、拾いあげた。
月光を受けて銀に光るソレを手に取りながらハクオロは思わず苦笑を漏らす。
「これが窓を破ってこの子の頭を直撃してなかったら、今頃はまだ梃子摺っていたかもしれないな……」
正直観鈴の荒れっぷりに相当手を焼いていたハクオロからしてみれば少々手荒とは言え大助かりだった。
あのまま喚き騒がれてはゲームに乗った者をおびき寄せる格好の目印に成りかねない。
誤解は観鈴が気が付いて、落ち着いたところで解けば良い。そうハクオロは考えていた。
まあ実際にはこの部屋がきちんと防音処置を施した放送室であった為、さっきまでの狂乱もほとんど外には漏れていなかったのだが、そんな事など知る由もない。

「それにしてもこれは一体なんなんだ?」
そう呟きながら、ハクオロは拾い上げたソレに目を落とす。
質感や光沢から金属で出来ているのはわかるが、それにしてはやけに軽い。
大きさは掌より少し大きいぐらいで、握り手を思しき柄の部分と、穴の開いた回転する円柱状の物体、そこから一本だけ伸びる細い筒の部分から構成されていた。
何に使うのかは分からなかったが、物は試しとハクオロは柄の部分を持つようにそれを持ち替えて……、次の瞬間、急に妙な感覚に襲われた。
(ん?)
柄の部分を握るつもりでいたのだが、気がついたら人差し指だけが、円柱状の物体の下から出ている突起物に引っ掛けるような位置にまで伸びていた。
しかもその持ち方が妙にしっくりとくるように感じたのだ。まるで、この持ち方が正しい持ち方であると体が言っているかの様に……

(この感覚は一体……、そういえばこの形、この持ち方、どこかで見たような気が……)
いったいそれはいつだったのか? 遠い昔のような気もするし、つい数時間前に見たような気もする。
「ん? つい……数時間前? …………そうか、あの時か……」
記憶をたどって行くうちに思い当たったのは、つい先程までいたのホールでの出来事。
確かあの時、タカノが少年を殺したときにその手にこれと似たようなものを持っていた気がする。遠目ではあったが、持ち方もこんな感じだったはずだ。
さっきの妙な感覚もあの時タカノのものを見ていたからだからだろう。ハクオロは最終的にそう結論付けた。
「あの時の前後の流れから察するに、これは武器の一種なのだろう。それも一撃で人を殺せる程の威力を持った……」
ここが殺し合いの会場、という事を考慮すればそんなものがあちこちにあってもおかしくない。

「そうなると次は、なんでこんな物が飛んできたのか? という事なのだが……」
そう呟きながら、名も知らぬ武器が飛んできた方向を見やったハクオロは割れた窓越し、つまり中庭に二つの人影があるのを認め、とっさに壁の影に隠れた。

「……」
しばし間を空けてから再び外の様子を見る。
中庭の人影はさっきと変わらず対峙したままでこちらに気づいた様子はない。
見つからなかったことにホッとしつつ、ハクオロは二人の様子を観察する。
一人は20代くらいの茶髪の青年で、もう一人は翠色の短い髪が特徴的な少女だ。
なんともきな臭い、一触即発の雰囲気だが、どちらかというと青年の方が気圧されているように見える。
よく見ると青年は丸腰で、対する少女は脇に何かを抱えているのかさっきから構えを崩していない。
少女が構えているのは武器なのだろう、だからこそ青年の方が気圧されているのだ。
(遅かったか……)
二人の様子から、ハクオロは最悪の事態が起こってしまったと悟った。
おそらく外で対峙している二人は観鈴の放送を聞いてやってきた他の参加者だ。
それは別に構わない。第一ハクオロ自身、放送を聞きつけてここにやってきた口だ。他人のことを言えた義理はない。
だが、それがゲームに乗った人間となると話は別だ。
そういう人間がここに来る理由はただ一つ、放送により居場所の割れた観鈴の殺害。

(どうする?)
二人から視線をはずし、ハクオロは考える。
外の雰囲気は今にも火蓋を切りかねない程張り詰めている。
場合によっては今ここで殺し合いが始まるかもしれない。それを黙って見過ごしていいのだろうか?
いや、そもそも外にいる二人のうち、ゲームに乗っているのはどっちなのだろうか?

気になるのは武器を所持し、場の決定権を握りつつある翠髪の少女だ。
今の状況をざっと見ただけだと少女が青年を殺す目的で武器を構えている……と見るのが妥当だ。
だが、逆にゲームに乗っているのは青年の方で、少女は牽制のために武器を手にとっているだけ、という可能性も否定できない。
あるいは両方ともゲームに乗った人間で、獲物を巡って争っている……ということもあるかも知れない。

結局のところ分かったのは、今手元にある情報だけではあの二人に関して明確な判断は下せない。 ということと……
考えるのを一旦止め、ハクオロは自身の足元で気絶している観鈴を見る。
……ゲームが始まってから会った相手で唯一ゲームに乗っていないことが明らかなのは彼女だけ、ということだけだった。

「この子は、絶対に守ってやらなくてはならないな……」
自らの居場所を晒す真似をしてまで不戦を呼びかけた心優しい少女を殺させるわけには行かない。
それならばとるべき道は唯一つ、
「ここは一先ず引こう。 あの二人のことは気になるが、この子を危険に晒すわけにはいかないからな……」
そう呟くとハクオロは手に持ったままだった名も知らぬ武器をディバッグに仕舞い、刀を腰に差した。
それから気絶した観鈴の膝裏と背中に腕をあてると、そのまま抱き上げた。
本当は背負った方が何かと都合がいいのだが、観鈴が完全に伸びてしまっている以上、仕方がない。
所謂 “お姫様抱っこ” の状態で観鈴を抱き上げたハクオロは早々に放送室を後にした。

「この状態で襲撃を受けたらひとたまりもないな……」
苦笑しつつ、ハクオロは脱出ルートを頭の中で練る。校門へ抜けようと思ったら西棟の方に行かなくてはならない。
だが、西棟に行くには例の二人がいる中庭を突っ切る必要がある。あそこをこんな状態で突っ切るのは無謀以外の何者でもないだろう。
と、そのとき、屋上に行く前に校内を見回ったときのある光景がハクオロの脳裏に浮かんだ。
「ん? そういえば2階に渡り廊下があったな。よし、そこを通るとするか……」
そう呟くとハクオロは観鈴を抱いたまま階段に向かって歩き始めた。


だから、彼は見ていなかった。
中庭で繰り広げられていた誤解と言う名の滑稽な劇場の顛末を……

だから、彼は知らなかった。
中庭という舞台に上がっていた者に誰一人として、彼の恐れたような殺戮者などいなかったと言うことを……

そして、彼は気づいていなかった。
今、この校内にいる人間で傍から見て一番不審そうに見える行動をとっているのが自分自身であるということに……


【E-4 学校(東棟の階段)/1日目 黎明】


【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備:オボロの刀(×2)@うたわれるもの】
【所持品:支給品一式(他ランダムアイテム不明)、S&W M60 チーフスペシャル(.357マグナム弾5/5)】
【状態:健康、観鈴をお姫様抱っこしている】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1・気絶した少女を守りつつ、学校から一旦離れる。
2・エルルゥ、アルルゥをなんとしてでも見つけ出して保護する
3・仲間や同志と合流しタカノたちを倒す
【備考】
※校舎の屋上から周辺の地形を把握済み
※中庭にいた青年(双葉恋太郎)と翠髪の少女(時雨亜沙)が観鈴を狙ってやってきたマーダーかもしれないと思っています。


【神尾観鈴@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、おはぎ@ひぐらしのなく頃に(残り3つ)、他ランダムアイテム不明】
【状態:健康、気絶中(ハクオロにお姫様抱っこされている)】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0・気絶中
1・往人さん助けて……
2・往人と合流したい
【備考】
※校舎内の施設を把握済み


055:猟人は鬼と獅子 投下順に読む 057:涙は朝焼けに染まって
054:珍道中の始まり 時系列順に読む 060:眠り姫目覚める時――/――皇の策略
026:おはぎと仮面と校内放送と私 双葉恋太郎 066:そこには、もう誰もいない
026:おはぎと仮面と校内放送と私 四葉 066:そこには、もう誰もいない
026:おはぎと仮面と校内放送と私 一ノ瀬ことみ 066:そこには、もう誰もいない
026:おはぎと仮面と校内放送と私 時雨亜沙 066:そこには、もう誰もいない
026:おはぎと仮面と校内放送と私 ハクオロ 060:眠り姫目覚める時――/――皇の策略
026:おはぎと仮面と校内放送と私 神尾観鈴 060:眠り姫目覚める時――/――皇の策略






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