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宣戦布告 ◆3Dh54So5os


「はぁっ、はあっ、はぁっ……」
逃走劇の第二幕が上がって早15分。
トータル30分を超える激走に流石の稟もばてかけていた。
息なんかとっくの昔に上がっている。足だってさっきから悲鳴を上げっぱなしだ。
正直、これ以上走ったら足がどうにかなってしまいそうな気さえする。
が、それでも稟が走るのをやめないのは、ここで止まることが即ち“死”を意味するからだ。
背後から鬼人の如く猛追してくる少女に捕まったが最期、その手に握られたマシンガンで全身に風穴を開けられるのは確実だろう。
馴染みも縁もない、絶海の孤島で、それも自分よりも幼く見える少女にむざむざ殺されるわけにはいかない。
(とは言っても……な……)
逃げ続けながら稟はちらと隣を走るきぬを見る。
きぬも同じように疲れ果てているようで、息は荒く、脚も何度かもつれさせている。ペースだってどうにか稟に追いすがろうと無理をしているように見える。
(流石にこれ以上走らせるのは無理だよな……)
じゃあどうすれば良い?

立ち止まって反撃を試みる?   手持ちの品が拡声器とギャルゲーじゃどう見てもマシンガンには対抗できない。よって却下。
立ち止まって説得を試みる?   ここまで執拗に、それも魔法を使ってまでして追いかけてきているのだ。多分やるだけ無駄だろう。やっぱり却下。
諦めて少女に撃ち殺される?   言うまでも無く絶対に却下だ。

(くそっ! 俺に出来ることは何もないのか!? あんな小さな子一人相手に…………ん? 一人?)
その時、稟の中で何かが閃いた。
追って来る相手はあの少女一人。で、逃げているこっちは稟ときぬの二人。
と、言うことは……

「……」
正直、かなり分の悪い賭けではある。が、他に手は無く、現状維持ではジリ貧確定、となればやるしかない。
「賭けてみるか……おい! 蟹沢!」
「はぁ、はぁ、……な、なに? なんか用?」
きぬは話しかけるなと言わんばかりに稟の方を一切見ることなく答える。
息が完全に上がってしまい、話すのも億劫なのだろう。
「このままじゃ逃げてても埒が明かない。捕まって二人とも殺されるのが関の山だ」
「なに? オマエもうバテたの? 貧弱だなぁー。ボクはまだ少し走れるぞー。……ほんのちょっとだけど……」
相変わらず口だけは減らないようだ。今ちょっと弱音が出ていた気がするが、まあ気にするまい。
「でだ。俺が合図したら蟹沢、お前は道の左側の茂みに突っ込め、俺は右側の茂みに入る」
「!?」
流石に驚いたのか、きぬは稟の方を見る。が、稟は構わずに続ける。
「相手は一人なんだ、ばらばらに逃げる二兎を同時には追えやしない。どっちかに食いついてくるかもしれないが、茂みや木を上手く使えば撒ける可能性が高い」
茂みの丈はどちらかといえば高い部類に入る。海岸付近ゆえ防砂林なのか木もあちこちに生えていて身を隠すにはもってこいだ。
とは言え、それは逃げるときの障害物も増えるということなのだが、今は敢えて考えないことにする。
「上手く撒けたらこの先の街……そうだな、病院で待ってる。日の出までに来なかったら置いてくからな」
「ちょっ、勝手に決めるなよ!」
「じゃあ他に何か良い案でもあるのか?」
「ぐっ……」
その言葉にきぬは黙り込んだ。全滅という最悪の事態だけは避けなければならないことはきぬ自身重々承知していたからだ。
「それともう一つ……、分岐したら絶対に振り返るなよ。どっちに食いつかれても恨みっこナシだからな」
「そっちこそ恨むなよ! 食いつかれて悲鳴上げても絶対助けになんか行かないからな!」
稟は後方に一瞬目をやり、追っ手との距離を確認する。目測でだいたい150メートル。
再び逃げ始めたときはもうちょっと距離があった気がするから、追いつかれつつあるのは間違いない。決行は早めの方がよさそうだ。
「ああ、それでいいよ。……それじゃあ、いくぜ!」

「いち……」
少女に聞かれないよう、少し小さめの声でカウントを開始する。狙い目は道の脇の茂みが一旦途切れる部分。
スピードを殺さず、かつ分岐によるかく乱効果を狙う為に、茂みには斜めに突っ込む事にする。

「にの……」
変針の為に体重移動をしつつ、ちらときぬを見るとばっちりと目が合った。
視線が何かを訴えかけているように見えたが、それがなんなのか確認する暇もなくその瞬間は訪れた。

「さんっ! そらっ、逃げろっ!!」

合図と同時にきぬは視線を外すと弾かれた様に茂みに駆け込んだ。その様を横目で見ながら稟もまた茂みに突っ込む。
茂みの途切れ目を狙ったとは言え、稟の逃げた道の右側はすぐそこが防砂林になっていた。
膝から太股まである草を掻き分けながら進む羽目になり一気に走りづらくなったが、二手に分かれた効果はすぐに現れた。
今まで一度たりとも追跡の手を緩めなかった少女が戸惑うようにその場に立ち止まり、稟ときぬの逃げた方をきょろきょろと見回し始めたのだ。
「よしっ! いいぞっ!」
読み通りの展開に稟は小さくガッツポーズをとる。あとは障害物を使って上手く撒くだけ、だったのだが……

「逃がさないんだからぁぁっっ!!!」
ぱららららららっ……!!
「!?」

目の前にあった木の枝がへし折られて吹っ飛び、続けて背後から軽い音が聞こえてきた。
見れば少女は左右の茂み目掛け所構わずマシンガンを乱射しているではないか。
その様子を視認するのと同時に、道向こうの茂みから悲鳴に近いきぬの罵声が聞こえてくる。

「ボクが殺されたら一生憑いて廻るからな! 七代先まで祟ってやるから覚えとけよーーっ!」
「滅茶苦茶うらんでるじゃねーか!」
思わず叫び返してしまったが、言わん事も分からなくはない。
確かに相手を戸惑わせることには成功したようだが、危険度は追いかけっこの時より何十倍にも跳ね上がっている。
好ましくない状態なのは確かだ。
「ちっ、しょうがないな……」
本当はやりたくなかったのだが、こうなっては仕方ない。
稟は今までずっと握り締めていたモノの電源を入れると、それを使うべくそのモノを口元に押し当てた。

  ◇  ◆  ◇

逃げていた二人が、二手に分かれた時、さくらは一瞬戸惑った。
大分くたびれてきていたのか、二人との距離が徐々につまりつつあった矢先にこれである。
純一を殺させない為、ゲームに乗った者は誰一人として生かしてはいけない。
だが、こっちの手駒は自分一人だけ。二手に分かれられてしまった今、どっちを追いかけても「二人を殺す」という目的は達成できなくなってしまう。
「逃がさないんだからぁぁっっ!!!」
さくらは小脇に抱えていたミニウージーを構えると両脇の茂み目掛けて扇状に乱射する。
反動で暴れまわるミニウージーを無理矢理脇で押さえ込み、逃げる二人を狙う。
同じ轍は二度は踏むまいというさくらの意気込みが伝わったのか、弾道は中々いい線をいっている。
細かい弾道修正をすれば仕留められるとさくらが確信したそのときだった。

かちっ、かちっ……
「!!?」

乾いた音が響くと同時に、ミニウージーの咆哮がぴたりと止まる。何が起こったのかは明白だ。
「弾切れ!? こんなときにっ!!」
ディパックから予備のマガジンを取り出し、空になったマガジンと交換する。
さくらとしては出来る限り素早く行ったつもりだったが、再び構えたときには二人の姿はさっきよりも小さくなっていた。
この距離ではさっきのような正確な射撃は期待できない。
命中を望むなら相手に接近しなければならないが、追いかけられるのはどちらか一人に限られてしまう。

「くっ……」
しかし、二人とも逃がす事だけは絶対に避けなければならない。
一人を逃してしまうのは不本意だが、ここは標的を片方に絞って一人だけでも確実に仕留めた方が良い。
「なら狙うのは……あっちの子だね」
さくらが標的として選んだのは、左の茂みに駆け込んだ小柄な少女、きぬだった。
脅威としては右の茂みに逃げた少年の方が高いが、さくらとあの少年では身体能力に大きな開きがある。
マシンガンがあるから負ける気はないが、逃げに徹されてしまうと逃してしまう可能性のほうが高い。
一方の少女は茂みに入った所為もあるのだろうが大分ペースが落ちている。捕捉は少年に比べてずっと容易だ。
あんな少女を狙うことに若干の引け目を感じたが、やらねばならない。
「悪いけど、ボクも形振り構ってられないんだ。容赦はしな……」
そう言いながらきぬの逃げた左の茂みに一歩踏み出した、その時だった。聞き捨てならぬ言葉が右の茂みから聞こえてきたのは……

『おーい、どうしたそこの性悪ちびっ子極悪魔女! 怖気づいたか~?』
「!!!?」
刹那、さくらの頭にかっと血が上った。

『性悪』と『極悪』今は人殺しすら厭わないと決意した身だ。甘んじて受け入れよう。
『ちびっ子』、これも聞き捨てなら無いが、こればっかりはどうにも出来ない。それに年下に見られることもいつものことだ。
だけど、それよりもっと聞き捨てならない一言、それは……

       『魔女』

その言葉は桜の魔法の所為で周囲の子から虐められ、避けられていた幼少の頃の記憶を否応無く思い出させた。
いつもさくらなら軽く受け流せたのだろう。さくらは見た目こそこんなだが、中身はずっと大人である。
だが、中々相手を捕捉出来ない事に苛立ちを感じつつあった今のさくらでは、冷静な判断力を保つことは無理だった。

「……魔女って、……魔女って言うなぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

叫びながらさくらは右の茂みに突撃する。狙いは純一の敵であり、暴言を吐いた拡声器を持ちの少年。
さっきのさくらが亡霊なら、今の完全に頭に血が上ったさくらのそれはまさしく般若だった。

  ◇  ◆  ◇

『おーい、どうしたそこの性悪ちびっ子極悪魔女! 怖気づいたか~?』

音量がかなり高めの設定だったのか、声はやけに大きく響き渡った。
使った張本人である稟でさえ、驚いたぐらいだ。
少女にも当然この声は聞こえたらしく、こちらを物凄い形相で睨みつけたかと思うと、猛然とこちらに向かってきた。
怒っている所為か、怖さとスピードが若干増したような気がするが、それも想定の範囲内だ。
怖くないといえば嘘になるが、分離行動を考えた時点で囮になるつもりでいた。
相手は小柄な少女とは言え魔法が使える上、マシンガン装備ときたものだ。よほどの運でもなければ、結果はおそらく……

と、その時、一連の流れを見て稟の意図を察したのか、再びきぬの罵声が聞こえてきた。
「馬鹿やろー! ヘタレのくせにカッコつけてんなよー!」
聞こえてくるが、こっちに来るという気配はない。
「いいぞ蟹沢、そのまま何が何でも逃げ切……」
「約束破るなよ! お前と違って置いて行ったりしないから絶対に来いよ! 来なかったら稟のこと『約束も守れない大馬鹿ヘタレ野郎だ』って言いふらすからなーっ!!」
「!!」
呟きかけた稟は次の瞬間聞こえてきたきぬの言葉にはっとなった。
状況が状況だった所為かどうもネガティブになりすぎていたらしい。
「大馬鹿へタレ野郎……か、そうだよな。この程度の約束が守れないようじゃ、皆に笑われるよな……」
手持ちの武器じゃ歯が立たない相手。走って逃げるには最悪の路面状態。体力だっていつまで持つか分からない。状況はこれ以上なく最悪だ。
それでも稟は諦めてはいけない。決して屈してはいけないのだ。
いつまでも待つと言ってくれたきぬとの約束を守る為にも、楓やネリネたちと合流する為にも、死んでしまったシアやキキョウの分も生きる為にも……
多くの想いをその背に背負いつつ、稟はそれを再び手に取る。

次に放つのは罵声でも囃し声でもない。それはきぬや少女への、いや、この狂気に満ちたゲームへの稟からの宣言。それはまさしく……

『俺は、俺や蟹沢のように大切な人を失って泣く奴をこれ以上出したくない。だから俺は何があろうが絶対に死なないし、誰も殺さない!』

『生きて生きて生き抜いて、このふざけたゲームをぶっ潰す!! 止められるなら止めて見やがれっ!!!』

宣戦布告だった。



【G-7 道路脇の林(海岸より) /1日目 黎明】

【芳乃さくら@D.C.P.S.】
【装備:ミニウージー(残り25/25) 私服(土で汚れています)】
【所持品:支給品一式 ミニウージーの予備マガジン×1】
【状態:左足首捻挫、右足首の骨に罅、右足打撲、疲労大、強い執念(飛行の魔法の根源)】
【思考・行動】
基本方針:環の予知した未来(純一死亡)の阻止。
0:えっ?今の言葉、一体どういう……
1:少年(稟)を逃がさない。殺す。
(2:純一を探す。)
(3:純一を殺害しうる相手は容赦なく殺す。)

【備考】
※芳乃さくらは枯れないの桜(ゲーム管理者の一人)の力を借りて魔法を行使できます。魔法には以下の制限がついています。

芳乃さくらの強い想いによってのみ魔法は発動します。
強い想いが薄れると魔法の効果は消滅します。
基本的に万能な桜の魔法ですが、制限により効果は影響・範囲ともに大幅に小さくなっています。

目の前を逃亡中の少年と少女(稟ときぬ)をゲームに乗った人間だと認識している為、稟の言葉に戸惑いを覚え始めています。

【土見稟@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:なし】
【所持品:拡声器】
【状態:疲労(大)】
【思考・行動】
基本方針:参加者全員でゲームから脱出、人を傷つける気はない。
1:蟹沢きぬを守る為、拡声器を使ってさくらを引き付ける。
2:芳乃さくらから逃げる。
3:さくらを撒いてから病院にいってきぬと合流する。
4:ネリネ、楓、亜沙の捜索。
5:もう誰も悲しませない。

※シアルートEnd後からやってきました。

【備考】
稟の“宣戦布告”は辺り一体に響き渡りました。


【G-7 道路脇の林(内陸側) /1日目 黎明】

【蟹沢きぬ@つよきす】
【装備:なし】
【所持品:フカヒレのギャルゲー@つよきす】
【状態:疲労】
【思考・行動】
1:芳乃さくらから逃げる。
2:稟のことが心配。
3:さくらから逃げ切り次第、病院で稟を待つ
4:鷹野に対抗できる武器を探す。
5:レオの事が心配。

【備考】
フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。


041:彼女の決断、彼の選択 投下順に読む 043:戦い、それが自由
041:彼女の決断、彼の選択 時系列順に読む 044:偽りの贖罪
031:魔女 芳乃さくら 059:二度と触れ得ぬキョウキノサクラ
031:魔女 土見稟 059:二度と触れ得ぬキョウキノサクラ
031:魔女 蟹沢きぬ 059:二度と触れ得ぬキョウキノサクラ






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