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「うたかたの恋人(前編)」(2007/10/25 (木) 23:54:33) の最新版変更点
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**うたかたの恋人(前編) ◆tu4bghlMI
「……ミズホ、大丈夫?」
「平気です、アセリアさん。それよりも――」
「……ああ。先回りしてケイイチの手助けをする。それが……一番」
ミズホは小さく一度、こくりと頷いた。
彼女、ミズホは……凄いと思う。
相当スピードを出しているにも関わらず、しっかりと私に付いて来るし疲れた表情もまるで見せない。
同じ女、しかも彼女はスピリットでもない筈なのに一体どうしてなのだろう。
私は不思議だった。
「ここが……病院?」
「そのようですね、建物自体は二つあるようですけど……」
私達はそんな事を話しながら、周囲に気を配った。
タケシは確実に私達より早くこの病院という建物にやって来ている筈。
二人が初めて会った場所――その表現では厳密な位置は断定出来ない。
病院の屋上かもしれないし、そこの広場かもしれない。具体的にタケシが何処にいるかは分からないのだ。
「とりあえず、院内……と考えるのが妥当でしょうか――あれ?」
「ミズホ、どうした……? む」
傍目から見てもグチャグチャになっている病院、とりあえず私達は大きい方の建物に入ってる見る事にした。
だが、先を歩くミズホの足が止まった。
横顔を一瞥すると、その視線は入り口の辺り、丁度水平方向に注がれている。
「『隣の研究棟まで来て下さい。話があります。 一ノ瀬ことみ』?
一ノ瀬ことみ……」
大きなガラスの扉に貼られた張り紙を読み上げるミズホ。
その後ドアを開けようと入り口に近付くも、どうやら鍵が掛かっているらしかった。
イチノセ……コトミ?
…………とりあえず聞き覚えは無い。
おそらく出会っていない参加者のうちの一人。名前を聞いた時に湧き出る感想はプラスもマイナスも全くなしのゼロ。
それは多分、ミズホも同じなのだろう。考え込むような表情がその事実を証明している。
――迷っている。
それに関して言葉を交わした訳ではないけれど、見るだけで分かる。どこか、そういう雰囲気だ。
研究棟に向かう事、タケシやケイイチを探す事。二つに一つ。
「……行こう」
「アセリア、さん?」
「ミズホも……知らない名前。……なら、会って見ないと……分からない。それに……ここは、危険」
多分、私が何も言わなくてもミズホは同じ結論を出したと思う。
だけど自分の名前と居場所を晒して、何か話したいと言う人間を放っておく事なんて出来ない。
このメッセージが誰に当てたものなのかは分からない。
ただ研究棟に人が、しかも戦いに乗っていない人間がいるのならば会わない訳には行かない。
これからこの病院では二つの力がぶつかり合う。
最悪、この文章を見たクラナリタケシが彼女を殺しに向かっている可能性もある。
「――そうですね、行きましょう。アセリアさん」
「……ん。行こう」
■
「誰も……いない?」
「……ミズホ、気をつけて」
足を踏み入れた研究棟は嘘のようにひっそりとした空気を放っていた。
ヒンヤリとした独特の雰囲気、微かに鼻腔を刺激する薬の匂い。
無音だ。全く人の気配は――いや一つだけ、何か動く物体の存在を感じる。
ケイイチから預かったバットを持った私が先、そのすぐ後ろに銃を持ったミズホ。
私達は周囲に気を張り巡らせながら、前進する。
おそらくイチノセコトミがいると思われるのは……一階のあの部屋だ。
「アセリアさん」
それは多分、「私が先に」という意味を込めた言葉だと思う。
ミズホが寄せた視線はそう言っているように感じた。私も小さく頷く。
コン、コン。
思った通り、ミズホは私の一歩前に出ると問題の部屋の扉を軽くノックした。
中から感じる、人間の動く気配が大きくなる。
私は突然の奇襲に備え武器を構えた。背筋に緊張が走る。
「はい。待ってたの、ハク――……ッ!?」
「一ノ瀬……ことみさん、ですか?」
部屋の中から小さな人影が顔を出す。
現れた人間を確認した瞬間、私の中を張り巡っていた緊張の糸が解けた。
出て来たのは名前で判断した通り、女だった。
薄黄色の制服を赤い血液で染め、若干青みの掛かった髪を頭部で二つに纏めた少女。
「あなた……達は?」
彼女、イチノセコトミは気弱そうな眼をした仔犬のような佇まいを浮かべる。
"仔犬"なんて言い得て妙だと、我ながら思った。
不安と疑惑に濡れた眼。あらゆる人間から疑われ、何もかもを失い、雨に打たれて震える捨て犬。
そんなイメージと彼女は見事なまでにリンクして見えた。
こういう時、どんな風に声を掛ければいいんだろう。私には分からなかった。
彼女は酷く脅えていた。全く予想外の人間が現れて戸惑っている。
いますぐ逃げ出してしまいたい、そんな表情をしている。
その時、ミズホがもう一歩、前へ出た。その距離は一メートルにも満たない。
コトミはビクっと肩を震わせる。形容し難い感情をその顔面に刻む。足はガクガクと震え始める。
ミズホは更に距離を詰め、そして――
「え……」
「心配しなくても大丈夫です。私達はことみさんを――襲ったりしませんから」
コトミを優しく、そして強く抱き締めた。
やっぱり、ミズホは凄い。私は改めて思った。
周りの世界から脅え、全てを疑い、心に大きな傷を負った少女。
同じ事をミズホも彼女から感じ取っていたのだろう。
でも信号をキャッチして、それからが大事だ。何もしないで見ているのは誰にだって出来る。
だけど、そこから本当に相手の事を考えて行動出来る人間なんてほとんど存在しないと思う。だってそれは凄く勇気が要る事だから。
でも、息をするみたいに自然とミズホはコトミを抱き締めた。
コトミも最初何か妙な事に気付き、驚いたような表情を浮かべたがすぐにミズホの胸に顔を埋めた。
言葉じゃなくて、態度で示した。こればかりは思っていも中々出来る行動じゃない。
「あ、あ、あ、あ……」
ミズホは無言のまま、更にギュッとコトミを抱き締める力を強める。
コトミの口から漏れるのは意味を成さない母音の集合体。
だけど震える喉が紡ぎ出すその叫びは小さくて、弱々しくて、でも――打ち震えんばかりの悦びに満ちていた。
「ああああああああああああっ!!」
コトミの瞳から涙がぽろぽろと零れた。声は更に大きくなり、小さな喘ぎは泣き声に変わる。
コトミもミズホの胸に強く顔を押し付ける。
チカゲから貰った胸部に大きなリボンの付いたミズホの制服が涙と鼻水と涎でグチャグチャになった。
それでもミズホは柔らかな顔付きのまま、目の前で泣きじゃくる少女の頭をぽんぽんと軽く叩く。
その光景は子供をあやす母親が行う仕草に似ていた。
時はコマ送りになり、流れ去る時間は矢のように世界を横切る。
超一流の画家であれば、この一コマを見るやいなや、すぐさま絵筆を取るだろう事を確信出来る。
そんな、光景だった。
そんな、幸せな光景だった。
■
「これは……!!」
「瑞穂さん!!【ここから先は筆談でお願いするの】」
「あ、ご、ごめんなさい、大きな声を出してしまって。【分かりました】」
泣き止んだコトミに室内へ通された際、その中は物凄いことになっていた。
窓は完全に締め切られ、黒いカーテンが降ろされている。そして室内の机や本棚と言った備品は片付けられ、それらにもシーツが被されていたのだ。
そして最も私達を驚かせたのは――部屋の中央の机に置かれたバラバラになった首輪の存在だった。
【ことみさん、これって……】
【順を追って説明するの。その、信じてもらえないかもしれないけど、だけど信じて欲しいの】
【……はい】
瑞穂が頷く。私は半ば確信していた。
おそらくその話の中に何一つ、嘘偽りが無いだろうという事を。
そもそも首輪を分析するだけの能力を有し、その結果を惜しげもなく私達に開示している時点で彼女が怪しい人物であるという疑惑は吹き飛んでしまった訳だが。
それから先、コトミが始めたのはとても悲惨な話だった。
親しくなった人間はほとんど死んでしまった。
よく分からない誤解で他の参加者に命を狙われ、ボロボロになりながらここまで逃げて来たらしい。
自嘲気味に自らを"疫病神"と呼んだ時のコトミの表情はまるで何もかもに絶望した廃人のような印象さえ受けた。
会話の最後の辺りで"ハクオロ"と"マモル"の名前が出た。
そして――コトミが分解した首輪の持ち主がマモルであるという事実も一緒に伝えられた。
下手人は青い髪と制服の女。多分それは水瀬名雪、という人物だ。確かケイイチ達がその名前を出していた気がする。
サトウヨシミ、サクヤなどと言った人間と戦った際に、敵側に回った人間。だけど明確に戦いに乗っているとは断定出来ないグレーな人物。
【でもことみさん……首輪を分解なんかして、その大丈夫なんですか?】
【えと多分、大丈夫なの。盗聴はもちろん外部からの盗撮も警戒して、室内には準備を整えたの。
首輪の反応が消えている事もここのレントゲン装置でしっかりと調べたの】
【それじゃあ私達の首輪も……?】
コトミはミズホのその文字を見た後、悲しそうに左右に首を小さく振った。
それは否定。ミズホも「そうですか」と残念そうに呟く。
首輪、か。この銀色の輪っかは一体どういう構造になっているのだろう。
微妙に力が抑えられている感じがするのも、コレの力なのだろうか。
【対策無しじゃ生きている人間の首輪を外すのは流石に無理。作業もし難いし、確実に察知されるの】
【なるほど……】
ちなみにコトミと筆談をしているのはミズホ一人。私は隣で見ているだけ。
私が何もしなくてもおそらく、ミズホが意見は代弁してくれる筈。
それに加わっても話の腰を折るだけの気がする。
ああ、あのボタンを押して遊んでいるというのは――いや、ダメだ。そんな事をしていてはミズホに怒られてしまう。
【でもいくつか分かった事があるの。例えば首輪の構造】
コトミはバラバラになった首輪をこちらに見せながら、その中身を詳しく解説する。
数十分間、二人の会話が続いた。私は椅子に座り、足をブラブラさせながらぼんやりしていた。
いや、せざるを得なかった。
……よく分からない。
目の前に紙には細かい文字で色々書かれている。
・首輪は主に六つのメインパーツ、【外殻】【生存確認装置】【盗聴器】【信管】【爆薬】【発信機】で構成される。
・生存確認装置は熱、脈拍、その他各種人体信号を処理し、これによって正式な"死"を判断する。
・外殻は一人で外す事はほぼ不可能だが、"何故か"溶接されていたりする訳ではなく、技術を持った者ならば首輪機能を維持したまま取り外しが可能。だが盗聴器の存在ゆえ、確実にバレて首輪を爆破される。
……ふう。
他にも色々あるけど……頭が痛くなりそうだったので、私は考えるのをやめた。
うん、ミズホに任せよう。
【でも首輪を解体なんてして大丈夫だったんですか?】
【ううん、それがね……衛ちゃんの首輪は初めから壊れていたの】
【というと?】
ぼんやりと二人の筆談を眺める。
ミズホの字は凄く綺麗だ。カチカチッと整っているというよりも、どことなく女性的な丸みを帯びた文字。
だけどその傾向が極端な訳ではなく、絶妙なバランスが保たれている。
【水瀬名雪が執拗に衝撃を加えたせいか、外殻が一部分壊れかけていたの。信管自体はほとんど無事だったのは幸い。
これが壊されていたら多分、彼女の指ごとドカン! だったの。
あと首輪に使われているのは完全な衝撃式の爆弾じゃなくて、遠隔起爆専用の近接信管に似たものだと思うの。
これは乱暴に扱っても滅多な事では爆破しない優れもの。ケース自体も相当頑丈に作られているし。
おそらく首輪の形状からしてC4爆弾が使われていると思っていたんだけど……妙に造りが荒かったり、適当だったり。作った人間の顔が見てみたい微妙な構造だったの
多分鷹野の『衝撃を与えれば爆破する』という言葉も、あちらからの操作があっての話だと思う。
今回はゲームに乗っている彼女の奇行だけに多分、鷹野達も止める事が出来なかったような気がするの】
コトミの字は凄く小さい。それに何かナナメだ。
まるで何か立派な文章にサインする時の文字みたい。
そういう事をするのはもっと歳を取った男のイメージがあるのだけど。
【衛さんの首輪はどの程度無事だったんですか?】
【とりあえず発信機と盗聴器は完全に壊れてて……それに造りが荒いと言うか……。
ああ、そうだコレを見て欲しいの】
【首輪に……番号?】
コトミが差し出したマモルの首輪、丁度喉仏に当たる部分だろうか。
そこに金属の文字で消えないように"35"とナンバリングされていた。
【他の首輪も見てみないと分からないけど……この三十五番というのは名簿の順番と一致するの】
【あの支給された名簿ですね】
番号か。ん……番号。そういえば……どこかで……。
……ああ。そうだ、あの時だ。
隣に座っているミズホの肩をトントンと叩く。そしてその指先に握られたペンを指差した。
ミズホは数秒の逡巡の後、口元に微笑を浮かべながらそれを私に手渡した。
私は少し緊張しながら紙に文字を書く。
【その、私は……"なんばーいれぶん"らしい】
【……どういう事なの?】
コトミが不思議そうな顔をしてコチラを眺める。ミズホもだ。
こう注目を浴びると若干照れてしまうが、仕方ない。
思い出した事について、二人にまだ話していない事があったのだ。
【海の家に……なんか変な人形がいた。そいつが私を"なんばーいれぶん"と呼んだんだ】
【アセリアさんは……確かに名簿では十一番目なの。
やっぱり私達の管理は名簿の順番どおりの番号で行われていると考えるのが妥当。でも……トロッコ?】
【海の家のトロッコ通路の事ですね】
【……詳しくお願いするの】
何処かから書くものを探して来たミズホがフォローしてくれる。
そして私の後を引き継いで海の家の通路について代わりに説明してくれた。
【それは……海の家の中に地下へと繋がる隠し通路があるって事?】
【多分、そうでしょう。管理しているロボットと言うのも気になりますが……】
【ん、違う】
二人が同時に「え?」という顔付きでこちらを見た。そう二人とも、ミズホも含めてだ。
言ってなかったっけ……。
……えーと、あれ。もしかして……言い忘れてた?
私はポリポリと頬を掻いた。少しだけ冷や汗が額を伝う。
どうしよう……また、怒られるかもしれない。
でも黙っている訳にはいかない。とりあえず伝えておかなければ。
【その、強い者に会いたいと言ったら……目の前がピカッと光ってトロッコ道に飛ばされた】
【アセリアさん、あなた――】
【出る時も……地上に向かう道はいくつか枝分かれはしていたが、光が漏れていたのは私が飛ばされた道だけだった】
【つまり……ただのトロッコ通路ではないという事……?】
コトミが私の話を聞くや否や眉を顰めた。
ミズホは何か言いたい事がありそうな目でこちらを見ている。
状況が状況だけに声を出して怒れないのがもどかしい、という感じだろうか。
【そういえばことみさん、もう一つ分かった事と言うのは?】
【ああ、まずこのi-podを――】
そして――その瞬間だった。
隣の部屋から凄まじい轟音、つまりガラスの叩き割れる音が響いたのは。
■
私はスッと立ち上がる。
近い。そしてガラリと変わった周囲の空気。つまりコレは――
「ミズホ」
「……ええ。ことみさん、急いでここから離れる準備をして下さい」
「わ、分かったの」
コトミはその大きな瞳を更に丸くして驚愕の表情を浮かべた。
だがすぐに我に返ると、"ぱそこん"という機械の箱に繋いであった白い板のようなものを自分のデイパックにケーブルごと放り込む。
次に分解した首輪、机の上に置いてあったクマのぬいぐるみと次々道具を回収して行く。
私もケイイチのバットを握り締め、力を込める。
隣の部屋から突然聞こえた音……どう考えても襲撃者と考えるのが妥当。
ここにはハクオロがやって来ると聞いていたが、それより先に襲撃者に居場所を嗅ぎ付けられてしまったらしい。
「ミズホ……私が敵を引き付ける。コトミを連れて逃げて」
「……一人で、大丈夫なんですか?」
「ん、平気。無理はしない」
私の言葉にミズホは数秒考えた後大きく一度、首を縦に振った。
そして「集合場所は海の家で」とコトミにも聞こえる声で口にする。
私達は頷いた。
役目は……切り込み隊長。ドアの前、バットを正眼に構え思索する。
誰よりも早く、そして確実に襲撃者を発見し二人が逃亡するための時間を稼ぐ。
窓が割れたという事は考えられる可能性は二つ。
つまり投擲か打撃。
何かを投げ込んでこちらをおびき出す、もしくは牽制するパターンとガラス窓を叩き割って直接乗り込んでくるかの二択だ。
だが、一番考えなければならないのは相手が"銃"を持っているか否か。この一点である。
あの武器は厄介だ。射線軸は直線で、変化は無い。発射時に凄まじい爆音を発する為、自らの居場所を特定される。
そんな弱点を容易く補うほどの破壊力と、そして使い手を選ばない、という利点を持つ。
何故敵の初撃が『明らかに外れた』のだろうか。それは敵は私達の居場所を確実に知っていた訳では無いという事。
そして――
「ん……変な匂いがする」
「……もしかして毒ガス?」
「微量ながら眼に独特の刺激……? 塩化フェナシル……クロロベンジリデンマロノ……ッ!! ダメなの、眼を塞いで!!」
コトミの小さな叫び。
敵に位置を知らせないため、最小のボリュームでありながらそれは最大の勧告であった。
訳の分からないまま私とミズホは眼を瞑る。
一面の黒、コトミの言葉が聞こえる。
「多分、CNガス・CSガスに該当する催涙剤……だと思うの。
皮膚吸収に加え眼に入ったら最後、痛みで一時的に失明する可能性もあるの」
「それでは……」
「うん、ドアの先は多分ガスで溢れてるの。この部屋の中もすぐに……!! 出口が……」
「……いや、出口は他にもある」
確信めいた一言。発言者はもちろん、私。
コトミが何を言っているのかは分からないが、ドアの外に気持ち悪い空気が溢れているのは感じる。
とりあえず――相手が乗り込んで来る訳ではないのは分かった。
ならば……こちらから出向くまで。
「ミズホ、頼みがある」
□
私、ハクオロが背後から凄まじい音、要するにガラスの割れる音を聞いたのは衛の死体を埋葬するために体の良い土を探している最中だった。
その方向は院内とは全くの逆――つまり研究棟の方向。
タイミングからして確実に奏者は大空寺あゆだろう。つまり彼女の"復讐"がついに始まったという事になる。
地面を撫でる手が止まる。そして思案。
このままで、いいのだろうか。
あゆが心に秘めた筆舌し難い憎悪、その感情の受け水となった少女、一ノ瀬ことみ。
本当に彼女が衛を殺したのか。
弱者の振りをして、多数の人間を殺し回っている。
彼女が涙を流し、震え、必死で言葉を紡ぎ出した仕草。それら何もかもが演技だというのだろうか。
……分からない。
私達、そして仲間達がここ病院には多数やってくるであろう事は衛から聞いていた筈だ。
それなのに病院の中で衛を殺害し、死体を隠蔽もせず、なおかつ施設の中に留まるとは考え難い。
いや、そこまでしても我々を殺害出来ると言う自信の表れかもしれない。
駄目だ、一度じっくりと話し合って見た方がいい。
あゆとことみの言っている内容はまるで正反対。そしてどちらも嘘を付いているようには見えなかった。
一度二人を同じ席に、同じ話し合いの席に立たせなければ。
それが年長者としての務め、人の上に立つ人間が尽力しなければならない命題のように思えた。
……衛、少しだけ待っていてくれ。
私は変わり果てた衛の死体を本棟の正面入り口近くの木陰に隠し、研究棟へと足を向けた。
■
噴水のある広場を抜け、少しだけ走ると背の低い、どちらかと言えば平べったい印象を受ける建物が見えてきた。
正面の入り口は閉まったまま、どこかから煙が出ているという雰囲気も無い。
何とか間に合ったのだろうか、私はどこか安堵の色を含む溜息を漏らした。
更に研究棟へと近付くと近くの茂みに体勢を低くした金色の影が見えた。
おそらくあゆだろう。良かった、まだ二人は接触していなかったのか。
「あゆ――」
「アセリアさん、行って!!」
私の声を遮るようにして、再度ガラスの割れる音、それに加えて強烈な銃撃音が木霊した。
同時に女の声が聞こえたような気もしたが、一体何を喋っていたのかは分からない。
だが唯一つ分かる事は……
棟のガラスを室内から何者かが銃で撃ち抜き、そこから青色の影が飛び出して来た事だ。
青い影は天高く飛翔。高い、そして――非常識だ。
ただ上に飛び上がっただけではない。研究棟のコンクリートの壁をその影は"蹴って登っている"のだから。
一メートル、二メートル、三メートル、四メートル……そして到達した。
――辺り一面が空から見渡せる高度まで。
「ちッ!!」
そして室内からは周りの茂みに向けて、所構わず放たれる弾丸の雨。
縦と横、完全に息の合ったコンビネーションだ。
茂みの中のあゆも空を舞う物体に対して対空射撃を試みるが――影は手に持った銀色の獲物で、その銃撃を全て弾き返した。
だが問題はそんな事では無い。
掃射に耐え切れず、また空に向けて射撃を行った事であゆの居場所が空襲者に知られてしまった事――
「づぅッ!!!」
そして影はあゆを一刀両断――では無い、どうも持っていた武器が鈍器だったらしい。
"必殺"の信念の元、真っ直ぐ振り下ろされたその打撃をあゆは左腕を犠牲にする事で何とか回避した。
だが全力で振り下ろした鈍器の破壊力は格別だ。
あゆは衝撃に耐え切れず、右手に持った銃を取り落とし、地面に膝を付く。
待て――影?
そういえば私は少し前にも似たような経験をした覚えがある。
そうだ。数時間前、私は壁を蹴って非常識な攻撃を行う戦士に、"青い戦士"に出会っていたのではなかったか。
「アセリアッ!!!!」
「ん?」
私は大声で思いついた名前を叫んだ。
しかし、その瞬間"知り合い"を発見したのは私だけではなかった。
「ハクオロさん!?」
ガラスが全て撃ち抜かれた窓枠から地面へと降り立つ一人の女性。
アセリアと同時に行動していた宮小路瑞穂の姿がそこにはあった。
だが、その背後に隠れるように小さな少女が立っている事に"私達"は気付いた。
「やっと、やっと……会えた……」
三名の叫び声が空間に響き渡る。
そして一拍遅れて紡がれる脅えた、声。
宮小路瑞穂の背中から顔を出し、こちらを見る一人の少女。
「一ノ瀬ことみッ!!!!」
「大空寺……あゆ」
■
地面に膝を付き、ことみを睨み付けるあゆ。
その隣、あゆが不自然な行動を取ればいつでもその命を奪いに行ける位置にアセリア。
二人から若干南、離れた場所にことみの前に立つ宮小路瑞穂。その背後に一ノ瀬ことみ。
そして正反対の方向、アセリア達の北側に私、ハクオロ。
「くくく……あはははははっ!! またかい、一ノ瀬ことみ。また新しいお仲間を見つけたって訳。
このゴミ虫が……そうやって他人に寄生してさぞかし楽しいだろうねぇ?」
「あなたは……何を言っているの……。まるで……意味が分からないの」
あゆはケラケラと笑った。それはまるで金色の髪を振り翳す――鬼のようだった。
青眼を狂気で染め、ことみを睨み付けるあゆの姿は私を殺す事が出来なかった無力な女のそれでは無い。
これっぽちの迷いも存在しない純粋な殺意の塊。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い、ただ徒然と重なる憎悪の連鎖。
「私にもあなたに聞きたいことがあるの!! 亜沙さんは……亜沙さんは一体……」
「――その口で時雨の名前を呼ぶな」
闇夜に瞬く猫の瞳、まるで獲物を狙う狩人のような眼光がことみを射抜いた。
その一言には一切の笑いや嘲りのニュアンスを含まない、清々しいまでに澄み切った怒りが込められていた。
敵意は刃となり、言葉を鼓膜を通過し脳を揺らす。
「時雨を殺した薄汚い売女が何を抜け抜けと……あの時佐藤じゃなくてアンタを先に狙っておくべきだったかぁ」
「ば、売女って……!!」
「ああ、売女じゃ上品過ぎたって事。罵られて濡れるタイプかい、アンタ?」
「あゆッ!!」
舌戦となると露骨なまであゆに軍配が上がる。
彼女の口が悪いのは理解していたが、私に対してはほとんど侮蔑の言葉を使いはしなかった。だがコレは……。
無害な人間、甘い人間、それが彼女の殺人のボーダーを決めるラインなのかもしれない。
あゆを見て私はそう感じていた。
彼女は積極的に殺し合いに乗るつもりは無いと言った。
そう"佐藤良美"と"一ノ瀬ことみ"を除いた人間に関しては。
本来のあゆは初対面の、そして無抵抗の私を殺すのさえ躊躇う――優しい人間なのだと思う。
そんな彼女にここまで血走った眼を、心の無い言葉を吐かせる一ノ瀬ことみ。
詳しい事情を聞いた訳では無いが、私の中ではやはりあゆの言葉が正しいのではないか、という思いが強くなって来ていた。
「……ミズホ」
「駄目です、アセリアさん……まだ」
アセリアが怒りに満ちた眼で瑞穂を一瞥するが、彼女は小さく首を振って否定する。
おそらく彼女の世界に『売女』のような、あゆが使った罵倒語は存在しない筈。
だがソレでも、彼女が使った言葉が醜悪な意味を持った単語であると理解しているように見える。
それは多分「あゆを攻撃して良いか?」という了解を得ようとしたのだと思う。
彼女は怒っていた。明らかに一ノ瀬ことみを侮辱された事によって、あゆに対して負の感情を抱いている。
瑞穂に関してもおそらく同じ。
両手を左右に広げ、ことみを庇うように立ちはだかる彼女の表情を見れば、アセリアと同等、いやそれ以上の憤りを感じている事は用意に推測出来た。
つまり――瑞穂とアセリアは一ノ瀬ことみを完全に信じているらしい、と分かる。
数時間前、一方的に怒鳴りつけられ喧嘩別れをした私達(主に悠人とアセリアが、ではあるが)だ。
二人がどういう経緯でここまでやって来たのかは分からないが、こちらに対しても良いイメージは持っていないだろう。
心拍のスピードが一段階ギアを上げたような気がした。状況は、芳しくない。
「ハクオロ」
「……何だ、アセリア」
「ダイクウジアユは……コトミに妙な疑いを掛けた相手だと聞いた」
私に向けられたアセリアの瞳は……疑惑で濡れていた。
そしてその台詞に反応し、あゆが不適な笑みを浮かべる。
「へぇ……やっぱりやる事はしっかりやってる訳か」
「違うッ!! 私はそんなつもりじゃ――」
「じゃあどういうつもりだったのさ、一ノ瀬ッ!!」
木々がざわめく。一ノ瀬ことみに向けられた腹から搾り出された全身全霊の叫び。
側に立つバットを構えたアセリアが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
地に膝を付く者と、大地に立つ者。両者の立場は明確だ。
どう考えてもあゆの状況は劣悪と言わざるを得ない。これだけ吼えれば――いつ殺されても可笑しくないのだから。
しかし、あゆの眼は死んではいなかった。爛々と燃える、黒い太陽のような歪な輝きを見せる。
「ハクオロさん、説明して下さい。あなたと……その、大空寺さんの関係を。このままじゃ……埒が明かないでしょう」
ここで瑞穂がこちらに向けて話を振って来た。
タイミングとしては最高だろう。
考えてみればそもそも私の目的はあゆとことみを同じ話し合いの席に付ける事だ。
そして困った事にあゆが殺され、私も攻撃の矛先を向けられるという破滅のシナリオに片足を突っ込んでいる状態だ。
怒りで頬を染めているものの、瑞穂は十分に話の通じる相手の筈。まだ、何とかなる。
「……ああ、そうだな。だが先に一つだけ聞かせてくれ。お前達は――」
気になる事がある。
それは最悪の可能性であり、最低の結末を招きかねない要素を多大に秘めている。
"一ノ瀬ことみではなく、大空寺あゆを信じる"のならば、この予想は多大な危険を私達にもたらす事になる。
そう、アセリアや瑞穂に対しても、だ。
故に私はこの台詞を言わずにはいられなかった。
結果として彼女達が怒りにその拳を振るわせる未来が訪れようと、二人の安全を望むのならば絶対に無視して通る事が出来ない問題がある。
頭から他人を信用してしまうのは危険、つまり――
「一ノ瀬ことみを疑っていないのか?」
□
ハクオロさんの台詞は私の脳天を一直線に貫き、落雷となって脊髄へと到達した。
そして神経を伝い、筋肉に電気信号が流れる。
鳴動。紡ぎ出された筋運動は両手両足に不自然なまでの震えを引き起こした。
元々、私とアセリアさんの心の中に、ハクオロさんを疑う気持ちはほとんど無かったと言ってもいい。
国崎往人、二見瑛理子との出会い。
そして戦いの末に分かち合った心は決して偽りなどでは無かったと確信出来るから。
そんな二人が心から信頼する男、ハクオロ。
いかに外見が怪しいとはいえ、彼がゲームに乗った人間だとは思っていない。
だから目の前に彼が現れた時、最初はホッとしたのだ。
『ああ、きっとこれで上手くこの場が収まる筈』と。
だけど……違ったのはハクオロさんが"大空寺あゆ"と行動を共にしていた、という事。
それはことみさんの説明に出て来た彼女に妙な疑いを掛けて攻撃しようとして来た人物の名前。
加えて私達に対して、明確な殺意を持って攻撃に及んだ人物でもあった。
まずことみさんを疑っているかと聞かれれば答えはノーだ。
私はこの島に来てから何十人もの見知らぬ人と出会い、戦い、言葉を交わして来た。
でも彼女ほど自らの背中に何一つの希望を持たず、悲しい横顔をした人間とは出会った事は無かった。
何度も殺し合いに乗った人間に襲われ、信頼出来る知り合いも誰一人生きていない。
ボロボロになりながら、それでも安息の時が来るのを待たずには居られない弱い、でもとても強い女の子。
だから――私は思った。彼女は何が何でも自分が守ってやらなければならない、と。
それがエルダー・シスター宮小路瑞穂として務め。
そしてそれは……多分、アセリアさんも同じ事を感じてくれたんだと思う。
故にことみさんに対して心の無い言葉を、口にするのも憚られるような単語を当たり前のように使う大空寺あゆに……私達は強い怒りの感情を覚えた。
そして逆にこうも考える事が出来た。
つまり『ハクオロさんは大空寺あゆの口車に乗せられている』のでは無いだろうか、と。
彼女が罵詈雑言以外の分野でもおそらく巧みな話術を誇っている事は容易に推測出来る。
ハクオロさんは優しい人柄だと、国崎さん達も言っていた。
故にあっさりと彼女の言葉を真に受けてしまっているのではないか。
完全に口から出任せだけで、ことみさんを悪人に仕立て上げるのは難しい。
だが自分の境遇をそのまま相手に擦り付けたのだとすれば――?
上手く辻褄が合うのではないか。
「ハクオロでも……コトミを馬鹿にするのは許さない」
「あはははははっ、本当に頼もしい仲間が出来て良かったなぁ、一ノ瀬ッ!」
「あゆ、自暴自棄になるな! アセリアも武器を収めてくれ!」
口論になる三人。私は傍観。背後でことみさんは震えている。
この仮説が正しいとすれば、大空寺あゆの行動は演技、と考えるのが自然。
つまり彼女はこの状況を打破すべく、ハクオロさんにこの場を一度納めさせようとする筈。
それは危険な展開だろう。
彼女とことみさんが同じテーブルについて話をするという未来、それは確実に血塗られた道を暗示している。
ならば――
「アセリアさん、この場は――任せてもいいですか」
「……ん、ミズホが言うならそうする」
「ありがとうございます。頃合を見て、例の場所へ来て下さい」
アセリアさんは頷くとと同時に立ち位置を若干調整し、私達の前へ移動してくれた。
それはつまり『時間を稼いで欲しい』という事。
私も彼女を危険には晒したくない。だけど三人でこのまま逃亡するのはリスクが大き過ぎる。
そして何よりもことみさんを守らなければならないのだから。
「瑞穂!! 待ってくれ、一度話し合いを――!!」
「……その誘いには乗れません。ハクオロさんは……彼女に騙されている可能性があります。
アセリアさんも……気をつけて下さい」
「くくく、そっちのお嬢さんも完全に一ノ瀬に言いように懐柔されているようで……」
「――ッ!! 行きましょう、ことみさん」
「う、うん……」
大空寺あゆとハクオロさん、どちらも追って来ない事を確認してから私はことみさんの手を引いて走り出した。
目的地は海の家。アセリアさんの足ならば無傷で順当に追いついて来る筈。
間違った判断ではない。
しかし……マズイ展開になった。
本来ならば倉成武と前原さんの決闘を何とかするのが目的だった筈なのに……。
結果は二人に加え連れて行かれた遠野さんに出会う事も出来ず、病院から撤退するという結末。
加えてハクオロさんに関して、二見さん達にも伝えておかなければならない。
だけど前原さんの力では武さんに勝つのは難しい。
でも大空寺あゆを殺して強行突破する、という選択肢を取る事は私には出来なかった。
祈るしかないのだろうか、前原さんの勝利を。
なんて――無力。
しばらく走った後、私達はなんとか無事に病院のあるエリアから出る事が出来た。
後はアセリアさんがやって来るのを期待しながら海の家へ向かうまで。
「あの……瑞穂さん」
「え、は、はい。どうしましたか、ことみさん。少し速かったでしょうか?」
「ううん、違うの。そうじゃなくて……」
走る速度が速すぎたのかと思ったが違うようだ。
隣のことみさんは非常に言い難そうな仕草で視線を辺りに散らす。
どうしたのだろう。まるで……見当がつかない。
「そ、その大して大事な話じゃないとは分かっているのっ。でも……その、瑞穂さんって……!!」
「は……はい」
「男の……人?」
"僕"は、思わず立ち止まった。そして固まった。
こちらを見つめることみさんの恥らうような視線は、まるで恋する乙女の――いや、違う。
その瞳は"僕の胸"を見つめている。
――あの時だ。
ことみさんを思わず抱き締めた時、彼女が見せた一瞬の戸惑い。
それはつまり……豊胸パットの材質であるシリコン特有の感触に対する違和感だったのだ。
この島では最後まで、エルダー・シスター宮小路瑞穂として行動する決意を固めたんだ。
だから一番近くに居たアセリアさんにも僕が男である事実は伝えていないし、そうする意思も無かった。
でも……これはもしかして……もっと、マズイ展開になったのかも……しれない。
【G-6 平原(マップ東)/二日目 早朝】
【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾0/15+)、バーベナ学園女子制服@SHUFFLE! ON THE STAGE、豊胸パットx2】
【所持品:支給品一式×3、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-、
多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧、レザーソー、投げナイフ3本、
フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2~3割ほど完成)、予備マガジンx3、情報を纏めた紙×2 】
【状態:強い決意】
【思考・行動】
基本:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める)
0;ど……どどどどどうしよう
1:ことみを連れて海の家へ行きアセリアが来るのを待つ
2:圭一、武、美凪を救いに行けず後悔
3:瑛理子達にハクオロが大空寺あゆに騙されているかもしれないと伝える
4:川澄舞を警戒
【備考】
※参加者全員に性別のことは隠し続けることにしました。
【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:Mk.22(7/8)】
【所持品:ビニール傘、クマのぬいぐるみ@CLANNAD、支給品一式×3、予備マガジン(8)x3、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル、i-pod、陽平のデイバック、分解された衛の首輪(NO.35)】
【所持品2:TVカメラ付きラジコンカー(カッターナイフ付き バッテリー残量50分/1時間)、ローラースケート@Sister Princess、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数、】
【状態:肉体的疲労大、腹部に軽い打撲、精神的疲労小、後頭部に痛み、強い決意、全身に軽い打撲、左肩に槍で刺された跡(処置済み)】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。必ずゲームから脱出する。
0:瑞穂さんってやっぱり……
1:ハクオロとあゆに強い不信感
2:アセリアと瑞穂に付いて行く
3:首輪、トロッコ道ついて考察する
4:工場あるいは倉庫に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
5:鷹野の居場所を突き止める
6:ネリネとハクオロ、そして武と名雪(外見だけ)を強く警戒
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています。(ほぼ確信しています)
※首輪の盗聴に気付いています。
※魔法についての分析を始めました。
※あゆは自分にとっては危険人物。良美に不信感。
※良美のNGワードが『汚い』であると推測
※原作ことみシナリオ終了時から参戦。
※瑞穂とアセリアを完全に信用しました。
※i-podに入っていたプログラム、もしくは情報などは次の書き手におまかせ
※研究棟一階に瑞穂達との筆談を記した紙が放置。
|180:[[Justice to Believe]]|投下順に読む|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|180:[[Justice to Believe]]|時系列順に読む|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|175:[[クレイジートレイン/約束(後編)]]|小町つぐみ|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|175:[[クレイジートレイン/約束(後編)]]|千影|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|174:[[おとといは兎を見たの きのうは鹿、今日はあなた]]|一ノ瀬ことみ|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|170:[[決着は、初めて出会った場所で――(後編) ]]|宮小路瑞穂|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|170:[[決着は、初めて出会った場所で――(後編) ]]|アセリア|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|178:[[信じる者、信じない者(Ⅲ)]]|前原圭一|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|178:[[信じる者、信じない者(Ⅲ)]]|遠野美凪|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|178:[[信じる者、信じない者(Ⅲ)]]|倉成武|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|177:[[今、復讐が始まる]]|ハクオロ|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|177:[[今、復讐が始まる]]|大空寺あゆ|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
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**うたかたの恋人(前編) ◆tu4bghlMI
「……ミズホ、大丈夫?」
「平気です、アセリアさん。それよりも――」
「……ああ。先回りしてケイイチの手助けをする。それが……一番」
ミズホは小さく一度、こくりと頷いた。
彼女、ミズホは……凄いと思う。
相当スピードを出しているにも関わらず、しっかりと私に付いて来るし疲れた表情もまるで見せない。
同じ女、しかも彼女はスピリットでもない筈なのに一体どうしてなのだろう。
私は不思議だった。
「ここが……病院?」
「そのようですね、建物自体は二つあるようですけど……」
私達はそんな事を話しながら、周囲に気を配った。
タケシは確実に私達より早くこの病院という建物にやって来ている筈。
二人が初めて会った場所――その表現では厳密な位置は断定出来ない。
病院の屋上かもしれないし、そこの広場かもしれない。具体的にタケシが何処にいるかは分からないのだ。
「とりあえず、院内……と考えるのが妥当でしょうか――あれ?」
「ミズホ、どうした……? む」
傍目から見てもグチャグチャになっている病院、とりあえず私達は大きい方の建物に入ってる見る事にした。
だが、先を歩くミズホの足が止まった。
横顔を一瞥すると、その視線は入り口の辺り、丁度水平方向に注がれている。
「『隣の研究棟まで来て下さい。話があります。 一ノ瀬ことみ』?
一ノ瀬ことみ……」
大きなガラスの扉に貼られた張り紙を読み上げるミズホ。
その後ドアを開けようと入り口に近付くも、どうやら鍵が掛かっているらしかった。
イチノセ……コトミ?
…………とりあえず聞き覚えは無い。
おそらく出会っていない参加者のうちの一人。名前を聞いた時に湧き出る感想はプラスもマイナスも全くなしのゼロ。
それは多分、ミズホも同じなのだろう。考え込むような表情がその事実を証明している。
――迷っている。
それに関して言葉を交わした訳ではないけれど、見るだけで分かる。どこか、そういう雰囲気だ。
研究棟に向かう事、タケシやケイイチを探す事。二つに一つ。
「……行こう」
「アセリア、さん?」
「ミズホも……知らない名前。……なら、会って見ないと……分からない。それに……ここは、危険」
多分、私が何も言わなくてもミズホは同じ結論を出したと思う。
だけど自分の名前と居場所を晒して、何か話したいと言う人間を放っておく事なんて出来ない。
このメッセージが誰に当てたものなのかは分からない。
ただ研究棟に人が、しかも戦いに乗っていない人間がいるのならば会わない訳には行かない。
これからこの病院では二つの力がぶつかり合う。
最悪、この文章を見たクラナリタケシが彼女を殺しに向かっている可能性もある。
「――そうですね、行きましょう。アセリアさん」
「……ん。行こう」
■
「誰も……いない?」
「……ミズホ、気をつけて」
足を踏み入れた研究棟は嘘のようにひっそりとした空気を放っていた。
ヒンヤリとした独特の雰囲気、微かに鼻腔を刺激する薬の匂い。
無音だ。全く人の気配は――いや一つだけ、何か動く物体の存在を感じる。
ケイイチから預かったバットを持った私が先、そのすぐ後ろに銃を持ったミズホ。
私達は周囲に気を張り巡らせながら、前進する。
おそらくイチノセコトミがいると思われるのは……一階のあの部屋だ。
「アセリアさん」
それは多分、「私が先に」という意味を込めた言葉だと思う。
ミズホが寄せた視線はそう言っているように感じた。私も小さく頷く。
コン、コン。
思った通り、ミズホは私の一歩前に出ると問題の部屋の扉を軽くノックした。
中から感じる、人間の動く気配が大きくなる。
私は突然の奇襲に備え武器を構えた。背筋に緊張が走る。
「はい。待ってたの、ハク――……ッ!?」
「一ノ瀬……ことみさん、ですか?」
部屋の中から小さな人影が顔を出す。
現れた人間を確認した瞬間、私の中を張り巡っていた緊張の糸が解けた。
出て来たのは名前で判断した通り、女だった。
薄黄色の制服を赤い血液で染め、若干青みの掛かった髪を頭部で二つに纏めた少女。
「あなた……達は?」
彼女、イチノセコトミは気弱そうな眼をした仔犬のような佇まいを浮かべる。
"仔犬"なんて言い得て妙だと、我ながら思った。
不安と疑惑に濡れた眼。あらゆる人間から疑われ、何もかもを失い、雨に打たれて震える捨て犬。
そんなイメージと彼女は見事なまでにリンクして見えた。
こういう時、どんな風に声を掛ければいいんだろう。私には分からなかった。
彼女は酷く脅えていた。全く予想外の人間が現れて戸惑っている。
いますぐ逃げ出してしまいたい、そんな表情をしている。
その時、ミズホがもう一歩、前へ出た。その距離は一メートルにも満たない。
コトミはビクっと肩を震わせる。形容し難い感情をその顔面に刻む。足はガクガクと震え始める。
ミズホは更に距離を詰め、そして――
「え……」
「心配しなくても大丈夫です。私達はことみさんを――襲ったりしませんから」
コトミを優しく、そして強く抱き締めた。
やっぱり、ミズホは凄い。私は改めて思った。
周りの世界から脅え、全てを疑い、心に大きな傷を負った少女。
同じ事をミズホも彼女から感じ取っていたのだろう。
でも信号をキャッチして、それからが大事だ。何もしないで見ているのは誰にだって出来る。
だけど、そこから本当に相手の事を考えて行動出来る人間なんてほとんど存在しないと思う。だってそれは凄く勇気が要る事だから。
でも、息をするみたいに自然とミズホはコトミを抱き締めた。
コトミも最初何か妙な事に気付き、驚いたような表情を浮かべたがすぐにミズホの胸に顔を埋めた。
言葉じゃなくて、態度で示した。こればかりは思っていも中々出来る行動じゃない。
「あ、あ、あ、あ……」
ミズホは無言のまま、更にギュッとコトミを抱き締める力を強める。
コトミの口から漏れるのは意味を成さない母音の集合体。
だけど震える喉が紡ぎ出すその叫びは小さくて、弱々しくて、でも――打ち震えんばかりの悦びに満ちていた。
「ああああああああああああっ!!」
コトミの瞳から涙がぽろぽろと零れた。声は更に大きくなり、小さな喘ぎは泣き声に変わる。
コトミもミズホの胸に強く顔を押し付ける。
チカゲから貰った胸部に大きなリボンの付いたミズホの制服が涙と鼻水と涎でグチャグチャになった。
それでもミズホは柔らかな顔付きのまま、目の前で泣きじゃくる少女の頭をぽんぽんと軽く叩く。
その光景は子供をあやす母親が行う仕草に似ていた。
時はコマ送りになり、流れ去る時間は矢のように世界を横切る。
超一流の画家であれば、この一コマを見るやいなや、すぐさま絵筆を取るだろう事を確信出来る。
そんな、光景だった。
そんな、幸せな光景だった。
■
「これは……!!」
「瑞穂さん!!【ここから先は筆談でお願いするの】」
「あ、ご、ごめんなさい、大きな声を出してしまって。【分かりました】」
泣き止んだコトミに室内へ通された際、その中は物凄いことになっていた。
窓は完全に締め切られ、黒いカーテンが降ろされている。そして室内の机や本棚と言った備品は片付けられ、それらにもシーツが被されていたのだ。
そして最も私達を驚かせたのは――部屋の中央の机に置かれたバラバラになった首輪の存在だった。
【ことみさん、これって……】
【順を追って説明するの。その、信じてもらえないかもしれないけど、だけど信じて欲しいの】
【……はい】
瑞穂が頷く。私は半ば確信していた。
おそらくその話の中に何一つ、嘘偽りが無いだろうという事を。
そもそも首輪を分析するだけの能力を有し、その結果を惜しげもなく私達に開示している時点で彼女が怪しい人物であるという疑惑は吹き飛んでしまった訳だが。
それから先、コトミが始めたのはとても悲惨な話だった。
親しくなった人間はほとんど死んでしまった。
よく分からない誤解で他の参加者に命を狙われ、ボロボロになりながらここまで逃げて来たらしい。
自嘲気味に自らを"疫病神"と呼んだ時のコトミの表情はまるで何もかもに絶望した廃人のような印象さえ受けた。
会話の最後の辺りで"ハクオロ"と"マモル"の名前が出た。
そして――コトミが分解した首輪の持ち主がマモルであるという事実も一緒に伝えられた。
下手人は青い髪と制服の女。多分それは水瀬名雪、という人物だ。確かケイイチ達がその名前を出していた気がする。
サトウヨシミ、サクヤなどと言った人間と戦った際に、敵側に回った人間。だけど明確に戦いに乗っているとは断定出来ないグレーな人物。
【でもことみさん……首輪を分解なんかして、その大丈夫なんですか?】
【えと多分、大丈夫なの。盗聴はもちろん外部からの盗撮も警戒して、室内には準備を整えたの。
首輪の反応が消えている事もここのレントゲン装置でしっかりと調べたの】
【それじゃあ私達の首輪も……?】
コトミはミズホのその文字を見た後、悲しそうに左右に首を小さく振った。
それは否定。ミズホも「そうですか」と残念そうに呟く。
首輪、か。この銀色の輪っかは一体どういう構造になっているのだろう。
微妙に力が抑えられている感じがするのも、コレの力なのだろうか。
【対策無しじゃ生きている人間の首輪を外すのは流石に無理。作業もし難いし、確実に察知されるの】
【なるほど……】
ちなみにコトミと筆談をしているのはミズホ一人。私は隣で見ているだけ。
私が何もしなくてもおそらく、ミズホが意見は代弁してくれる筈。
それに加わっても話の腰を折るだけの気がする。
ああ、あのボタンを押して遊んでいるというのは――いや、ダメだ。そんな事をしていてはミズホに怒られてしまう。
【でもいくつか分かった事があるの。例えば首輪の構造】
コトミはバラバラになった首輪をこちらに見せながら、その中身を詳しく解説する。
数十分間、二人の会話が続いた。私は椅子に座り、足をブラブラさせながらぼんやりしていた。
いや、せざるを得なかった。
……よく分からない。
目の前に紙には細かい文字で色々書かれている。
・首輪は主に六つのメインパーツ、【外殻】【生存確認装置】【盗聴器】【信管】【爆薬】【発信機】で構成される。
・生存確認装置は熱、脈拍、その他各種人体信号を処理し、これによって正式な"死"を判断する。
・外殻は一人で外す事はほぼ不可能だが、"何故か"溶接されていたりする訳ではなく、技術を持った者ならば首輪機能を維持したまま取り外しが可能。だが盗聴器の存在ゆえ、確実にバレて首輪を爆破される。
……ふう。
他にも色々あるけど……頭が痛くなりそうだったので、私は考えるのをやめた。
うん、ミズホに任せよう。
【でも首輪を解体なんてして大丈夫だったんですか?】
【ううん、それがね……衛ちゃんの首輪は初めから壊れていたの】
【というと?】
ぼんやりと二人の筆談を眺める。
ミズホの字は凄く綺麗だ。カチカチッと整っているというよりも、どことなく女性的な丸みを帯びた文字。
だけどその傾向が極端な訳ではなく、絶妙なバランスが保たれている。
【水瀬名雪が執拗に衝撃を加えたせいか、外殻が一部分壊れかけていたの。信管自体はほとんど無事だったのは幸い。
これが壊されていたら多分、彼女の指ごとドカン! だったの。
あと首輪に使われているのは完全な衝撃式の爆弾じゃなくて、遠隔起爆専用の近接信管に似たものだと思うの。
これは乱暴に扱っても滅多な事では爆破しない優れもの。ケース自体も相当頑丈に作られているし。
おそらく首輪の形状からしてC4爆弾が使われていると思っていたんだけど……妙に造りが荒かったり、適当だったり。作った人間の顔が見てみたい微妙な構造だったの
多分鷹野の『衝撃を与えれば爆破する』という言葉も、あちらからの操作があっての話だと思う。
今回はゲームに乗っている彼女の奇行だけに多分、鷹野達も止める事が出来なかったような気がするの】
コトミの字は凄く小さい。それに何かナナメだ。
まるで何か立派な文章にサインする時の文字みたい。
そういう事をするのはもっと歳を取った男のイメージがあるのだけど。
【衛さんの首輪はどの程度無事だったんですか?】
【とりあえず発信機と盗聴器は完全に壊れてて……それに造りが荒いと言うか……。
ああ、そうだコレを見て欲しいの】
【首輪に……番号?】
コトミが差し出したマモルの首輪、丁度喉仏に当たる部分だろうか。
そこに金属の文字で消えないように"35"とナンバリングされていた。
【他の首輪も見てみないと分からないけど……この三十五番というのは名簿の順番と一致するの】
【あの支給された名簿ですね】
番号か。ん……番号。そういえば……どこかで……。
……ああ。そうだ、あの時だ。
隣に座っているミズホの肩をトントンと叩く。そしてその指先に握られたペンを指差した。
ミズホは数秒の逡巡の後、口元に微笑を浮かべながらそれを私に手渡した。
私は少し緊張しながら紙に文字を書く。
【その、私は……"なんばーいれぶん"らしい】
【……どういう事なの?】
コトミが不思議そうな顔をしてコチラを眺める。ミズホもだ。
こう注目を浴びると若干照れてしまうが、仕方ない。
思い出した事について、二人にまだ話していない事があったのだ。
【海の家に……なんか変な人形がいた。そいつが私を"なんばーいれぶん"と呼んだんだ】
【アセリアさんは……確かに名簿では十一番目なの。
やっぱり私達の管理は名簿の順番どおりの番号で行われていると考えるのが妥当。でも……トロッコ?】
【海の家のトロッコ通路の事ですね】
【……詳しくお願いするの】
何処かから書くものを探して来たミズホがフォローしてくれる。
そして私の後を引き継いで海の家の通路について代わりに説明してくれた。
【それは……海の家の中に地下へと繋がる隠し通路があるって事?】
【多分、そうでしょう。管理しているロボットと言うのも気になりますが……】
【ん、違う】
二人が同時に「え?」という顔付きでこちらを見た。そう二人とも、ミズホも含めてだ。
言ってなかったっけ……。
……えーと、あれ。もしかして……言い忘れてた?
私はポリポリと頬を掻いた。少しだけ冷や汗が額を伝う。
どうしよう……また、怒られるかもしれない。
でも黙っている訳にはいかない。とりあえず伝えておかなければ。
【その、強い者に会いたいと言ったら……目の前がピカッと光ってトロッコ道に飛ばされた】
【アセリアさん、あなた――】
【出る時も……地上に向かう道はいくつか枝分かれはしていたが、光が漏れていたのは私が飛ばされた道だけだった】
【つまり……ただのトロッコ通路ではないという事……?】
コトミが私の話を聞くや否や眉を顰めた。
ミズホは何か言いたい事がありそうな目でこちらを見ている。
状況が状況だけに声を出して怒れないのがもどかしい、という感じだろうか。
【そういえばことみさん、もう一つ分かった事と言うのは?】
【ああ、まずこのi-podを――】
そして――その瞬間だった。
隣の部屋から凄まじい轟音、つまりガラスの叩き割れる音が響いたのは。
■
私はスッと立ち上がる。
近い。そしてガラリと変わった周囲の空気。つまりコレは――
「ミズホ」
「……ええ。ことみさん、急いでここから離れる準備をして下さい」
「わ、分かったの」
コトミはその大きな瞳を更に丸くして驚愕の表情を浮かべた。
だがすぐに我に返ると、"ぱそこん"という機械の箱に繋いであった白い板のようなものを自分のデイパックにケーブルごと放り込む。
次に分解した首輪、机の上に置いてあったクマのぬいぐるみと次々道具を回収して行く。
私もケイイチのバットを握り締め、力を込める。
隣の部屋から突然聞こえた音……どう考えても襲撃者と考えるのが妥当。
ここにはハクオロがやって来ると聞いていたが、それより先に襲撃者に居場所を嗅ぎ付けられてしまったらしい。
「ミズホ……私が敵を引き付ける。コトミを連れて逃げて」
「……一人で、大丈夫なんですか?」
「ん、平気。無理はしない」
私の言葉にミズホは数秒考えた後大きく一度、首を縦に振った。
そして「集合場所は海の家で」とコトミにも聞こえる声で口にする。
私達は頷いた。
役目は……切り込み隊長。ドアの前、バットを正眼に構え思索する。
誰よりも早く、そして確実に襲撃者を発見し二人が逃亡するための時間を稼ぐ。
窓が割れたという事は考えられる可能性は二つ。
つまり投擲か打撃。
何かを投げ込んでこちらをおびき出す、もしくは牽制するパターンとガラス窓を叩き割って直接乗り込んでくるかの二択だ。
だが、一番考えなければならないのは相手が"銃"を持っているか否か。この一点である。
あの武器は厄介だ。射線軸は直線で、変化は無い。発射時に凄まじい爆音を発する為、自らの居場所を特定される。
そんな弱点を容易く補うほどの破壊力と、そして使い手を選ばない、という利点を持つ。
何故敵の初撃が『明らかに外れた』のだろうか。それは敵は私達の居場所を確実に知っていた訳では無いという事。
そして――
「ん……変な匂いがする」
「……もしかして毒ガス?」
「微量ながら眼に独特の刺激……? 塩化フェナシル……クロロベンジリデンマロノ……ッ!! ダメなの、眼を塞いで!!」
コトミの小さな叫び。
敵に位置を知らせないため、最小のボリュームでありながらそれは最大の勧告であった。
訳の分からないまま私とミズホは眼を瞑る。
一面の黒、コトミの言葉が聞こえる。
「多分、CNガス・CSガスに該当する催涙剤……だと思うの。
皮膚吸収に加え眼に入ったら最後、痛みで一時的に失明する可能性もあるの」
「それでは……」
「うん、ドアの先は多分ガスで溢れてるの。この部屋の中もすぐに……!! 出口が……」
「……いや、出口は他にもある」
確信めいた一言。発言者はもちろん、私。
コトミが何を言っているのかは分からないが、ドアの外に気持ち悪い空気が溢れているのは感じる。
とりあえず――相手が乗り込んで来る訳ではないのは分かった。
ならば……こちらから出向くまで。
「ミズホ、頼みがある」
□
私、ハクオロが背後から凄まじい音、要するにガラスの割れる音を聞いたのは衛の死体を埋葬するために体の良い土を探している最中だった。
その方向は院内とは全くの逆――つまり研究棟の方向。
タイミングからして確実に奏者は大空寺あゆだろう。つまり彼女の"復讐"がついに始まったという事になる。
地面を撫でる手が止まる。そして思案。
このままで、いいのだろうか。
あゆが心に秘めた筆舌し難い憎悪、その感情の受け水となった少女、一ノ瀬ことみ。
本当に彼女が衛を殺したのか。
弱者の振りをして、多数の人間を殺し回っている。
彼女が涙を流し、震え、必死で言葉を紡ぎ出した仕草。それら何もかもが演技だというのだろうか。
……分からない。
私達、そして仲間達がここ病院には多数やってくるであろう事は衛から聞いていた筈だ。
それなのに病院の中で衛を殺害し、死体を隠蔽もせず、なおかつ施設の中に留まるとは考え難い。
いや、そこまでしても我々を殺害出来ると言う自信の表れかもしれない。
駄目だ、一度じっくりと話し合って見た方がいい。
あゆとことみの言っている内容はまるで正反対。そしてどちらも嘘を付いているようには見えなかった。
一度二人を同じ席に、同じ話し合いの席に立たせなければ。
それが年長者としての務め、人の上に立つ人間が尽力しなければならない命題のように思えた。
……衛、少しだけ待っていてくれ。
私は変わり果てた衛の死体を本棟の正面入り口近くの木陰に隠し、研究棟へと足を向けた。
■
噴水のある広場を抜け、少しだけ走ると背の低い、どちらかと言えば平べったい印象を受ける建物が見えてきた。
正面の入り口は閉まったまま、どこかから煙が出ているという雰囲気も無い。
何とか間に合ったのだろうか、私はどこか安堵の色を含む溜息を漏らした。
更に研究棟へと近付くと近くの茂みに体勢を低くした金色の影が見えた。
おそらくあゆだろう。良かった、まだ二人は接触していなかったのか。
「あゆ――」
「アセリアさん、行って!!」
私の声を遮るようにして、再度ガラスの割れる音、それに加えて強烈な銃撃音が木霊した。
同時に女の声が聞こえたような気もしたが、一体何を喋っていたのかは分からない。
だが唯一つ分かる事は……
棟のガラスを室内から何者かが銃で撃ち抜き、そこから青色の影が飛び出して来た事だ。
青い影は天高く飛翔。高い、そして――非常識だ。
ただ上に飛び上がっただけではない。研究棟のコンクリートの壁をその影は"蹴って登っている"のだから。
一メートル、二メートル、三メートル、四メートル……そして到達した。
――辺り一面が空から見渡せる高度まで。
「ちッ!!」
そして室内からは周りの茂みに向けて、所構わず放たれる弾丸の雨。
縦と横、完全に息の合ったコンビネーションだ。
茂みの中のあゆも空を舞う物体に対して対空射撃を試みるが――影は手に持った銀色の獲物で、その銃撃を全て弾き返した。
だが問題はそんな事では無い。
掃射に耐え切れず、また空に向けて射撃を行った事であゆの居場所が空襲者に知られてしまった事――
「づぅッ!!!」
そして影はあゆを一刀両断――では無い、どうも持っていた武器が鈍器だったらしい。
"必殺"の信念の元、真っ直ぐ振り下ろされたその打撃をあゆは左腕を犠牲にする事で何とか回避した。
だが全力で振り下ろした鈍器の破壊力は格別だ。
あゆは衝撃に耐え切れず、右手に持った銃を取り落とし、地面に膝を付く。
待て――影?
そういえば私は少し前にも似たような経験をした覚えがある。
そうだ。数時間前、私は壁を蹴って非常識な攻撃を行う戦士に、"青い戦士"に出会っていたのではなかったか。
「アセリアッ!!!!」
「ん?」
私は大声で思いついた名前を叫んだ。
しかし、その瞬間"知り合い"を発見したのは私だけではなかった。
「ハクオロさん!?」
ガラスが全て撃ち抜かれた窓枠から地面へと降り立つ一人の女性。
アセリアと同時に行動していた宮小路瑞穂の姿がそこにはあった。
だが、その背後に隠れるように小さな少女が立っている事に"私達"は気付いた。
「やっと、やっと……会えた……」
三名の叫び声が空間に響き渡る。
そして一拍遅れて紡がれる脅えた、声。
宮小路瑞穂の背中から顔を出し、こちらを見る一人の少女。
「一ノ瀬ことみッ!!!!」
「大空寺……あゆ」
■
地面に膝を付き、ことみを睨み付けるあゆ。
その隣、あゆが不自然な行動を取ればいつでもその命を奪いに行ける位置にアセリア。
二人から若干南、離れた場所にことみの前に立つ宮小路瑞穂。その背後に一ノ瀬ことみ。
そして正反対の方向、アセリア達の北側に私、ハクオロ。
「くくく……あはははははっ!! またかい、一ノ瀬ことみ。また新しいお仲間を見つけたって訳。
このゴミ虫が……そうやって他人に寄生してさぞかし楽しいだろうねぇ?」
「あなたは……何を言っているの……。まるで……意味が分からないの」
あゆはケラケラと笑った。それはまるで金色の髪を振り翳す――鬼のようだった。
青眼を狂気で染め、ことみを睨み付けるあゆの姿は私を殺す事が出来なかった無力な女のそれでは無い。
これっぽちの迷いも存在しない純粋な殺意の塊。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い、ただ徒然と重なる憎悪の連鎖。
「私にもあなたに聞きたいことがあるの!! 亜沙さんは……亜沙さんは一体……」
「――その口で時雨の名前を呼ぶな」
闇夜に瞬く猫の瞳、まるで獲物を狙う狩人のような眼光がことみを射抜いた。
その一言には一切の笑いや嘲りのニュアンスを含まない、清々しいまでに澄み切った怒りが込められていた。
敵意は刃となり、言葉を鼓膜を通過し脳を揺らす。
「時雨を殺した薄汚い売女が何を抜け抜けと……あの時佐藤じゃなくてアンタを先に狙っておくべきだったかぁ」
「ば、売女って……!!」
「ああ、売女じゃ上品過ぎたって事。罵られて濡れるタイプかい、アンタ?」
「あゆッ!!」
舌戦となると露骨なまであゆに軍配が上がる。
彼女の口が悪いのは理解していたが、私に対してはほとんど侮蔑の言葉を使いはしなかった。だがコレは……。
無害な人間、甘い人間、それが彼女の殺人のボーダーを決めるラインなのかもしれない。
あゆを見て私はそう感じていた。
彼女は積極的に殺し合いに乗るつもりは無いと言った。
そう"佐藤良美"と"一ノ瀬ことみ"を除いた人間に関しては。
本来のあゆは初対面の、そして無抵抗の私を殺すのさえ躊躇う――優しい人間なのだと思う。
そんな彼女にここまで血走った眼を、心の無い言葉を吐かせる一ノ瀬ことみ。
詳しい事情を聞いた訳では無いが、私の中ではやはりあゆの言葉が正しいのではないか、という思いが強くなって来ていた。
「……ミズホ」
「駄目です、アセリアさん……まだ」
アセリアが怒りに満ちた眼で瑞穂を一瞥するが、彼女は小さく首を振って否定する。
おそらく彼女の世界に『売女』のような、あゆが使った罵倒語は存在しない筈。
だがソレでも、彼女が使った言葉が醜悪な意味を持った単語であると理解しているように見える。
それは多分「あゆを攻撃して良いか?」という了解を得ようとしたのだと思う。
彼女は怒っていた。明らかに一ノ瀬ことみを侮辱された事によって、あゆに対して負の感情を抱いている。
瑞穂に関してもおそらく同じ。
両手を左右に広げ、ことみを庇うように立ちはだかる彼女の表情を見れば、アセリアと同等、いやそれ以上の憤りを感じている事は用意に推測出来た。
つまり――瑞穂とアセリアは一ノ瀬ことみを完全に信じているらしい、と分かる。
数時間前、一方的に怒鳴りつけられ喧嘩別れをした私達(主に悠人とアセリアが、ではあるが)だ。
二人がどういう経緯でここまでやって来たのかは分からないが、こちらに対しても良いイメージは持っていないだろう。
心拍のスピードが一段階ギアを上げたような気がした。状況は、芳しくない。
「ハクオロ」
「……何だ、アセリア」
「ダイクウジアユは……コトミに妙な疑いを掛けた相手だと聞いた」
私に向けられたアセリアの瞳は……疑惑で濡れていた。
そしてその台詞に反応し、あゆが不適な笑みを浮かべる。
「へぇ……やっぱりやる事はしっかりやってる訳か」
「違うッ!! 私はそんなつもりじゃ――」
「じゃあどういうつもりだったのさ、一ノ瀬ッ!!」
木々がざわめく。一ノ瀬ことみに向けられた腹から搾り出された全身全霊の叫び。
側に立つバットを構えたアセリアが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
地に膝を付く者と、大地に立つ者。両者の立場は明確だ。
どう考えてもあゆの状況は劣悪と言わざるを得ない。これだけ吼えれば――いつ殺されても可笑しくないのだから。
しかし、あゆの眼は死んではいなかった。爛々と燃える、黒い太陽のような歪な輝きを見せる。
「ハクオロさん、説明して下さい。あなたと……その、大空寺さんの関係を。このままじゃ……埒が明かないでしょう」
ここで瑞穂がこちらに向けて話を振って来た。
タイミングとしては最高だろう。
考えてみればそもそも私の目的はあゆとことみを同じ話し合いの席に付ける事だ。
そして困った事にあゆが殺され、私も攻撃の矛先を向けられるという破滅のシナリオに片足を突っ込んでいる状態だ。
怒りで頬を染めているものの、瑞穂は十分に話の通じる相手の筈。まだ、何とかなる。
「……ああ、そうだな。だが先に一つだけ聞かせてくれ。お前達は――」
気になる事がある。
それは最悪の可能性であり、最低の結末を招きかねない要素を多大に秘めている。
"一ノ瀬ことみではなく、大空寺あゆを信じる"のならば、この予想は多大な危険を私達にもたらす事になる。
そう、アセリアや瑞穂に対しても、だ。
故に私はこの台詞を言わずにはいられなかった。
結果として彼女達が怒りにその拳を振るわせる未来が訪れようと、二人の安全を望むのならば絶対に無視して通る事が出来ない問題がある。
頭から他人を信用してしまうのは危険、つまり――
「一ノ瀬ことみを疑っていないのか?」
□
ハクオロさんの台詞は私の脳天を一直線に貫き、落雷となって脊髄へと到達した。
そして神経を伝い、筋肉に電気信号が流れる。
鳴動。紡ぎ出された筋運動は両手両足に不自然なまでの震えを引き起こした。
元々、私とアセリアさんの心の中に、ハクオロさんを疑う気持ちはほとんど無かったと言ってもいい。
国崎往人、二見瑛理子との出会い。
そして戦いの末に分かち合った心は決して偽りなどでは無かったと確信出来るから。
そんな二人が心から信頼する男、ハクオロ。
いかに外見が怪しいとはいえ、彼がゲームに乗った人間だとは思っていない。
だから目の前に彼が現れた時、最初はホッとしたのだ。
『ああ、きっとこれで上手くこの場が収まる筈』と。
だけど……違ったのはハクオロさんが"大空寺あゆ"と行動を共にしていた、という事。
それはことみさんの説明に出て来た彼女に妙な疑いを掛けて攻撃しようとして来た人物の名前。
加えて私達に対して、明確な殺意を持って攻撃に及んだ人物でもあった。
まずことみさんを疑っているかと聞かれれば答えはノーだ。
私はこの島に来てから何十人もの見知らぬ人と出会い、戦い、言葉を交わして来た。
でも彼女ほど自らの背中に何一つの希望を持たず、悲しい横顔をした人間とは出会った事は無かった。
何度も殺し合いに乗った人間に襲われ、信頼出来る知り合いも誰一人生きていない。
ボロボロになりながら、それでも安息の時が来るのを待たずには居られない弱い、でもとても強い女の子。
だから――私は思った。彼女は何が何でも自分が守ってやらなければならない、と。
それがエルダー・シスター宮小路瑞穂として務め。
そしてそれは……多分、アセリアさんも同じ事を感じてくれたんだと思う。
故にことみさんに対して心の無い言葉を、口にするのも憚られるような単語を当たり前のように使う大空寺あゆに……私達は強い怒りの感情を覚えた。
そして逆にこうも考える事が出来た。
つまり『ハクオロさんは大空寺あゆの口車に乗せられている』のでは無いだろうか、と。
彼女が罵詈雑言以外の分野でもおそらく巧みな話術を誇っている事は容易に推測出来る。
ハクオロさんは優しい人柄だと、国崎さん達も言っていた。
故にあっさりと彼女の言葉を真に受けてしまっているのではないか。
完全に口から出任せだけで、ことみさんを悪人に仕立て上げるのは難しい。
だが自分の境遇をそのまま相手に擦り付けたのだとすれば――?
上手く辻褄が合うのではないか。
「ハクオロでも……コトミを馬鹿にするのは許さない」
「あはははははっ、本当に頼もしい仲間が出来て良かったなぁ、一ノ瀬ッ!」
「あゆ、自暴自棄になるな! アセリアも武器を収めてくれ!」
口論になる三人。私は傍観。背後でことみさんは震えている。
この仮説が正しいとすれば、大空寺あゆの行動は演技、と考えるのが自然。
つまり彼女はこの状況を打破すべく、ハクオロさんにこの場を一度納めさせようとする筈。
それは危険な展開だろう。
彼女とことみさんが同じテーブルについて話をするという未来、それは確実に血塗られた道を暗示している。
ならば――
「アセリアさん、この場は――任せてもいいですか」
「……ん、ミズホが言うならそうする」
「ありがとうございます。頃合を見て、例の場所へ来て下さい」
アセリアさんは頷くとと同時に立ち位置を若干調整し、私達の前へ移動してくれた。
それはつまり『時間を稼いで欲しい』という事。
私も彼女を危険には晒したくない。だけど三人でこのまま逃亡するのはリスクが大き過ぎる。
そして何よりもことみさんを守らなければならないのだから。
「瑞穂!! 待ってくれ、一度話し合いを――!!」
「……その誘いには乗れません。ハクオロさんは……彼女に騙されている可能性があります。
アセリアさんも……気をつけて下さい」
「くくく、そっちのお嬢さんも完全に一ノ瀬に言いように懐柔されているようで……」
「――ッ!! 行きましょう、ことみさん」
「う、うん……」
大空寺あゆとハクオロさん、どちらも追って来ない事を確認してから私はことみさんの手を引いて走り出した。
目的地は海の家。アセリアさんの足ならば無傷で順当に追いついて来る筈。
間違った判断ではない。
しかし……マズイ展開になった。
本来ならば倉成武と前原さんの決闘を何とかするのが目的だった筈なのに……。
結果は二人に加え連れて行かれた遠野さんに出会う事も出来ず、病院から撤退するという結末。
加えてハクオロさんに関して、二見さん達にも伝えておかなければならない。
だけど前原さんの力では武さんに勝つのは難しい。
でも大空寺あゆを殺して強行突破する、という選択肢を取る事は私には出来なかった。
祈るしかないのだろうか、前原さんの勝利を。
なんて――無力。
しばらく走った後、私達はなんとか無事に病院のあるエリアから出る事が出来た。
後はアセリアさんがやって来るのを期待しながら海の家へ向かうまで。
「あの……瑞穂さん」
「え、は、はい。どうしましたか、ことみさん。少し速かったでしょうか?」
「ううん、違うの。そうじゃなくて……」
走る速度が速すぎたのかと思ったが違うようだ。
隣のことみさんは非常に言い難そうな仕草で視線を辺りに散らす。
どうしたのだろう。まるで……見当がつかない。
「そ、その大して大事な話じゃないとは分かっているのっ。でも……その、瑞穂さんって……!!」
「は……はい」
「男の……人?」
"僕"は、思わず立ち止まった。そして固まった。
こちらを見つめることみさんの恥らうような視線は、まるで恋する乙女の――いや、違う。
その瞳は"僕の胸"を見つめている。
――あの時だ。
ことみさんを思わず抱き締めた時、彼女が見せた一瞬の戸惑い。
それはつまり……豊胸パットの材質であるシリコン特有の感触に対する違和感だったのだ。
この島では最後まで、エルダー・シスター宮小路瑞穂として行動する決意を固めたんだ。
だから一番近くに居たアセリアさんにも僕が男である事実は伝えていないし、そうする意思も無かった。
でも……これはもしかして……もっと、マズイ展開になったのかも……しれない。
【G-6 平原(マップ東)/二日目 早朝】
【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾0/15+)、バーベナ学園女子制服@SHUFFLE! ON THE STAGE、豊胸パットx2】
【所持品:支給品一式×3、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-、
多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧、レザーソー、投げナイフ3本、
フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2~3割ほど完成)、予備マガジンx3、情報を纏めた紙×2 】
【状態:強い決意】
【思考・行動】
基本:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める)
0;ど……どどどどどうしよう
1:ことみを連れて海の家へ行きアセリアが来るのを待つ
2:圭一、武、美凪を救いに行けず後悔
3:瑛理子達にハクオロが大空寺あゆに騙されているかもしれないと伝える
4:川澄舞を警戒
【備考】
※参加者全員に性別のことは隠し続けることにしました。
【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:Mk.22(7/8)】
【所持品:ビニール傘、クマのぬいぐるみ@CLANNAD、支給品一式×3、予備マガジン(8)x3、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル、i-pod、陽平のデイバック、分解された衛の首輪(NO.35)】
【所持品2:TVカメラ付きラジコンカー(カッターナイフ付き バッテリー残量50分/1時間)、ローラースケート@Sister Princess、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数、】
【状態:肉体的疲労大、腹部に軽い打撲、精神的疲労小、後頭部に痛み、強い決意、全身に軽い打撲、左肩に槍で刺された跡(処置済み)】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。必ずゲームから脱出する。
0:瑞穂さんってやっぱり……
1:ハクオロとあゆに強い不信感
2:アセリアと瑞穂に付いて行く
3:首輪、トロッコ道ついて考察する
4:工場あるいは倉庫に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
5:鷹野の居場所を突き止める
6:ネリネとハクオロ、そして武と名雪(外見だけ)を強く警戒
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています。(ほぼ確信しています)
※首輪の盗聴に気付いています。
※魔法についての分析を始めました。
※あゆは自分にとっては危険人物。良美に不信感。
※良美のNGワードが『汚い』であると推測
※原作ことみシナリオ終了時から参戦。
※瑞穂とアセリアを完全に信用しました。
※i-podに入っていたプログラム、もしくは情報などは次の書き手におまかせ
※研究棟一階に瑞穂達との筆談を記した紙が放置。
|180:[[Justice to Believe]]|投下順に読む|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|180:[[Justice to Believe]]|時系列順に読む|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|175:[[クレイジートレイン/約束(後編)]]|小町つぐみ|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|175:[[クレイジートレイン/約束(後編)]]|千影|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|174:[[おとといは兎を見たの きのうは鹿、今日はあなた]]|一ノ瀬ことみ|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|170:[[決着は、初めて出会った場所で――(後編) ]]|宮小路瑞穂|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|170:[[決着は、初めて出会った場所で――(後編) ]]|アセリア|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|178:[[信じる者、信じない者(Ⅲ)]]|前原圭一|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|178:[[信じる者、信じない者(Ⅲ)]]|遠野美凪|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|178:[[信じる者、信じない者(Ⅲ)]]|倉成武|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|177:[[今、復讐が始まる]]|ハクオロ|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
|177:[[今、復讐が始まる]]|大空寺あゆ|181:[[うたかたの恋人(中編)]]|
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