「魔法少女の探索。」(2007/08/22 (水) 16:52:37) の最新版変更点
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**魔法少女の探索。 ◆jWwIlynQcU
「これほどの大きさとは、思ってもいませんでした……」
今、ネリネの眼前にはあまりにも場違いな建物がそびえている。
休息を終えてからネリネの向かった先、そこはホテルだった。
あの放送を聞いたつぐみが博物館に現われる可能性はやはり限りなく低い。
彼女の性格からすれば、音夢の首無し死体を弔ったりするとは到底思えない。
あるとすれば、つぐみが音夢の兄である朝倉純一を発見しており、その上で放送を
聞いていた場合だろうが、その可能性はもっと低いはず。
それならば、いっその事他の場所へ移動し、そこで探索なり潜伏している他の参加者を
殺害するほうが効率ははるかにいい、というのが彼女の導き出した結果だった。
さらに、博物館を除外した残る二つの選択肢――ホテルと学校――のうち他の参加者が
潜伏あるいは拠点として用いる可能性が高いのはどちらかと言えば建物の用途からすれば
当然ホテルということになる。
結果、ネリネは森を南に歩き続け、ホテルに到着した。
だが到着してみるや、その大きさに思いっきり呆れてしまったのである。
地図上では森の中にポツンと存在するだけであったから、その大きさはせいぜい場末の
安ホテル程度と思っていた。
しかし、そこにあったのは大都市や一流リゾート地にでもあるような高さ数十メートル、
階数にして15階はあろうかという巨大なホテルだったからだ。
そんな建物が道路もロクにない森の中にいきなりドカンと建っているのを見ればネリネで
なくとも思いっきり呆れるに違いない。
(でも、これだけ大きいなら隠れる場所にも困りませんね……)
呆れたのは一時の事。
気を取り直したネリネは、そう考えると右手にデザートイーグルを、左手に“献身”を
それぞれ手にしてホテルの裏側より侵入していく。
その行動は博物館の時と同じ様に見えるが、あの時とは目的が全く違う。
博物館の時は、音夢との不和からあの様にしたが、今回は周囲を警戒しての事だ。
(今思えば、あの場所からでも目立ったのですから既に誰か侵入していてもおかしくは
ないでしょう)
ネリネの言う「あの場所」とは一時の休息をとった神社の外周のことだ。
あのときは神社の方ばかりを見ていたが、考えてみればあの場所からでもホテルの外観が
確認できた。
大きさがこれほどのものと思わなかったのは、多分生い茂った木々のせいだろう。
(ですが……森の中にこれほどの大きなホテルを建てるというのは、何か意味があるの
でしょうか?とりあえず入ったらホテル内の構造を把握しておく必要がありますね)
目立たない従業員用の出入り口から、内部へ侵入したネリネの目についたのは、ドアに
「コントロール室」のプレートが貼られた部屋だ。
デザートイーグルを構えながら扉を開き、室内へ入っていくと、そこは無数のモニターと
複数のコンピュータが設置されていた。
ネリネがコンピュータの画面を覗き込むと、画面上には「空調」「照明」「防犯カメラ」
といった文字が多数並んでいる。
どうやら、このコンピュータでホテル内の各設備をコントロールしているらしい。
続いてネリネは、壁面に埋め込まれたモニターへ目を向け、そこに映し出される画面から
モニターの意味をすぐ理解した。
「なるほど……、これは使えますね」
モニターの正体は、ホテル内の各部を監視する防犯カメラ用だった。
流石に客室内までは監視していないが、それ以外のパブリックなスペースについては
ほぼ全域を監視しているのが分かる。
これを使えばホテル内に誰が入ったか、あるいは既に誰がいるかを簡単に把握する事が
出来る。
ここを拠点にすれば、ホテルでの戦いは自分が一方的に主導権を握る事も可能だろう。
「あとは、建物内の見取り図があるといいのですが……」
そう言いながら、ネリネは室内の書類棚を調べていく。
直接建物内を歩いて調べていくのも手だが、見取り図があるのと無いのでは話が違う。
探す事数分、ネリネはようやく目当てのものを発見した。
「……お客様の目に触れないスペースがこんなにあるなんて、思いもしませんでした」
見取り図に目を通したネリネはそう呟く。
建物の図面など見るのはこれが初めてだが、見取り図には色々と彼女の知らなかった事が
書かれていた。
宿泊客の目に触れないところへ配置された各階の機械室や分電盤室、倉庫に従業員用の
エレベーター、パイプスペース、天井裏に入る為の隠しハシゴ……。
客としてホテルに入っていれば、絶対に気が付かない場所ばかりだ。
これらも使い方によっては待ち伏せや移動、身を隠すのに使うことが出来る。
倉庫も調べれば使える物が眠っているだろう。
慎重に裏側から侵入した事が、ネリネに思わぬ宝の山をもたらすことになったといえる。
「さて、まずは地下から調べましょうか」
見取り図のファイルを手にしたネリネは、コントロール室をあとにしようとする。
調べたところ、地下はテナントと従業員のエリア、そして駐車場になっているみたいだ。
駐車場は無視するとして、ネリネが最初に目指すはテナントエリアである。
「その前に、鍵をかけておく必要がありますね」
ネリネは部屋を出る前にキーボックスから一本の鍵を取り出すと、コントロール室を施錠する。
これで、この部屋にあとから来た者が入る事は出来なくなった。
(もし、戻ったとき扉の前に誰かいたらその時は……殺しちゃいましょう)
「いい物が並んでますね」
地下のテナントエリアに降りたネリネは、その品揃えの良さを前にして少し笑った。
流石に武器は売ってないものの、洋服類に飲食物の類は結構な数が売られている。
「とりあえずはこの中からいくらか持っていった方がいいでしょう」
思えば、ここまでの連戦で、服は自分の血と返り血で徐々に汚れている。
支給品の食料もいずれは底を尽きるのが目に見えている。
ならば、ここで手っ取り早く補給を済ませてしまうのがいいだろう。
そう考えたネリネは、まずブティックに入り服を手に入れることとした。
並んでいるのはいずれも高級品ばかり、その中から今身に付けている物と似ていて、
より生地のいい服と下着を選び出す。
他にも複数の洋服やアクセサリーを入手し、ディパックへと詰め込んでいく。
(状況に応じて服装を変えれば、他の参加者を混乱させられるでしょう)
そんなことをネリネは考えた上で新たな洋服を手に入れたわけだが、これはある意味
おしゃれに気を使う女性ならではの発想かもしれない。
次に入ったのはすぐ隣の化粧品販売店だ。
高級な香水や化粧品には目もくれず、ネリネが手にしたのは染髪剤である。
そこに並んでいた様々な色の洗髪剤を片っ端から手に取り、まとめてディパックに突っ込む。
最後に入ったのは食料品店。
ここで、食糧と飲料物と補給していく。
もし、参加する前のネリネならば高級食材や菓子類を確保しようとしたかもしれない。
しかし、ここまでの経験がそういったものよりも少量で十分な栄養を得られる携行食糧や
栄養ドリンクを彼女に選ばせていた。
(稟さまと合流したあとのことも考えて、十分な量を補給しなければなりませんね)
その中で洋酒の並んだコーナーがふと目に入った。
何を思ったのか、ネリネはそこに近づくとラム酒の瓶を手に取り、ディパックから音夢の生首が
入ったビニール袋を取り出す。
「昔、こんな話を聞いた事があります」
ビニール袋から血まみれになった音夢の制服を取り出し、それをディパックへ放り込むネリネ。
そして彼女はラム酒の瓶を開けると、その中身を生首の入ったビニール袋へ注ぎ込んでいく。
「ある国で解体中の家から出てきた樽に入ったラム酒を飲んだ大工は、樽の中から死体が出て
きたのを見て最後に最悪の気分を味わったと……」
2本3本とラム酒をビニール袋へ注ぎ込み、音夢の生首が完全にラム酒へ浸ったのを見て、
ネリネは満足そうに呟く。
「その時のラム酒は、なんでも『特別な味』がしたそうですよ。あなたの首を浸したラム酒は
どのようなお味がするのでしょうかね」
ラム酒の中でプカプカと浮かぶ音夢の生首がネリネに答えるはずも無い。
その姿はまるでホルマリン漬けの標本みたいでどこかおかしかった。
「あなたのお兄さんである純一さんと二回目の放送までにお会いすることはできませんでした。
ですが、その代わりにあなたの首を浸したお酒を飲んでいただこうかと思います」
そして、最後に音夢の生首を純一に見せ付けてやろう――
自分の妹、その生首を浸したラム酒を飲み、最後にその味の正体が何であったか知らされた時、
純一はどんな顔をするだろうか?
気分を悪くしてその場で吐き戻すだろうか?それとも狂わんばかりに泣き叫ぶだろうか?
どちらにしても想像するだけでゾクゾクしてくるものがある。
だが、それは朝倉純一と会ったときのこと。
補給は終わったが、まだ他にやることがネリネにはあった。
テナントエリアをあとにしたネリネが次に向かったのは従業員用のエリアである。
彼女の目的地は、そこのシャワー室だった。
中に入るや、ネリネは服を脱衣場で脱ぎ捨ててシャワーを浴び始める。
(気持ちいい……)
ボディソープで体の汚れを落としながら、ネリネは微笑む。
思えばもう12時間が経過し、体はいたる所が汚れている。
その汚れが、血の臭いが洗い流されていく。
腹部に目を向けると、音夢によってつけらえた痣はかなり消えかけていた。
(ですが……心の汚れまでは洗い落とせるはずが無いですね……)
シャワーを浴びながらネリネはそう低く笑う。
だが、今の彼女はもう汚れる事を厭わない。
稟を守り抜く為には他の参加者を全員殺すつもりでいるのだから。
その為には心を暗黒に染める事となろうとも、決して止まるつもりなど無い……。
今のネリネはそういう覚悟を決めた少女なのだ。
(でも、稟さまが亡くなったら?次の放送で稟さまの名前が呼ばれたら?)
一瞬、頭をよぎる想像。
それは、最悪の展開――
(稟さまが亡くなったら。その時は……)
かつてのネリネなら泣き喚くだけで、もはやこの世の終わりとばかりに稟の後を追うだろう。
だが、今のネリネはもはやそうではない。
なぜならここまでの戦いが、彼女の心を根本から強靭なものに変えてしまったのだから。
だからこそ、冷静に考えられる。
稟が死んだならば、それが誰かの手にかかるなり不慮の事故で命を落とすなりしたならば。
(その時は、稟さまの亡骸を持ち帰り、お墓に納めてあげる為にも優勝を目指しましょう)
そして、自分は稟と過ごした思い出を抱いて残りの人生を生きればいい。
そこまで考えると、ネリネはシャワーの蛇口を止めて脱衣場へ向かう。
服を新しいものに着替え終わったネリネは、再び1階のコントロール室に戻ってきた。
監視モニターに目を通すが、どの階も人の動きはない。
自分以外の人間はこのホテルにはいないのか、それともカメラの届かないエリアにいるのか。
「もう暫くは監視をしたほうがいいでしょうね。その前に下準備だけでもしておきましょうか」
ディパックからオレンジ色の染髪剤を取り出したネリネはそれを手にとって髪に塗り始める。
徐々に、彼女の美しい青い髪が鮮やかなオレンジ色に変わってゆく。
この色をあえて選んだのは、神社の戦闘で稟への想いを胸に戦い、散っていった楓への
敬意を含んでいるからに他ならない。
最後に地下で入手した赤いリボンを髪に結びつけ、髪型をポニーテールにする。
この方が、狭いところなどに入ったとき、周囲へ引っかけずにすむという利点があるからだ。
「これで、準備は整いました。あとは、待つだけですね」
コントロール室の鍵を握り締めながら、ネリネは監視モニターに目を走らせる。
いつどこでどんな動きがあってもすぐ動けるように。
【D-5 ホテル1階コントロール室 /1日目 午後】
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身” コントロール室の鍵、ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品1:支給品一式 IMI デザートイーグル 9/10+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10 九十七式自動砲 弾数2/7】
【所持品2:支給品一式 トカレフTT33の予備マガジン10 S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5、洋服・アクセサリー・洗髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】
【所持品3:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 朝倉音夢の生首(左目損失・ラム酒漬け) 朝倉音夢の制服 桜の花びら】
【状態:肉体的疲労はほぼ解消・魔力消費中、腹部に痣(消えかけ)、左腕打撲、右耳に裂傷、左足首に切り傷、非常に強い意志】
【思考・行動】
1:ホテルにやって来る者、あるいは既にいる者を監視。発見次第、稟以外は皆殺しにする
2:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し。知人であろうとも容赦無く殺す(出来る限り単独行動している者を狙う)
3:ハイリスク覚悟で魔力を一気に回復する為の方法、或いはアイテムを探す
4:トウカを殺し、楓の仇を討つ
5:純一に音夢の生首を浸したラム酒を飲ませ、最後に音夢の生首を見せつけ殺す
6:つぐみの前で武を殺して、その後つぐみも殺す
7:亜沙の一団と決着をつける
8:桜の花びらが気になる
9:稟を守り通して自害
10:最悪、稟が死亡した時は稟の遺体を持ち帰るために優勝を目指す。
【備考】
現在は髪を鮮やかなオレンジに染め、髪は赤いリボンでポニーテールにしています。
私服(ゲーム時の私服に酷似。ただし高級品)に着替えました。(汚れた制服と前の私服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、 制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣第七位“献身”は制限を受けて、以下のような性能となっています。
永遠神剣の自我は消し去られている。
魔力を送れば送る程、所有者の身体能力を強化する(但し、原作程圧倒的な強化は不可能)。
魔力持ちの敵に突き刺せば、ある程度魔力を奪い取れる。
以下の魔法が使えます。
尚、使える、といってもウインドウィスパー以外は、実際に使った訳では無いので、どの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー 回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、僅かな間だけ防御力を高める。
ハーベスト 回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。
※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※音夢とつぐみの知り合いに関する情報を知っています。
※音夢の生首はビニール袋へ詰め込みラム酒漬けにした上、ディパックの中に入れてます。
※魔力が極端に消耗する事と、回復にひどく時間がかかる(ネリネの魔力なら完全回復まで数日)という事に気が付きました。
※トウカと、川澄舞(舞に関しては外見の情報のみ)を危険人物と認識しました。
※千影の“時詠”を警戒。ただし“時詠”の能力までは把握していません。
※魔力持ち及び永遠神剣の持ち主を献身で殺せばさらに魔力が回復する仮説を思いつきました。
※ある程度他の永遠神剣の気配を感じ取れます。
※桜の花びらは管理者の一人である魔法の桜のものです。
※見取り図によってホテルの内部構造をかなり熟知しています。
※現在、コントロール室の鍵は内側からかけられています。
ホテルについて
建物は高さ数十メートル、地上15階建てぐらい。
1階のコントロール室からはホテル内の照明、空調などを制御可能。
さらに監視カメラで人間の動きを知る事が可能。
地下はテナントエリアと従業員のエリア、他に駐車場や倉庫が存在する。
ホテル内に誰か既にいるのかどうかは次の書き手さんに任せます。
|124:[[信じる者、信じない者(Ⅱ)]]|投下順に読む|126:[[私の救世主さま(前編)]]|
|124:[[信じる者、信じない者(Ⅱ)]]|時系列順に読む|128:[[残酷な罰が降り注ぐ]]|
|118:[[心のかたち、愛のかたち]]|ネリネ||134:[[戦の前。]]
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**魔法少女の探索。 ◆jWwIlynQcU
「これほどの大きさとは、思ってもいませんでした……」
今、ネリネの眼前にはあまりにも場違いな建物がそびえている。
休息を終えてからネリネの向かった先、そこはホテルだった。
あの放送を聞いたつぐみが博物館に現われる可能性はやはり限りなく低い。
彼女の性格からすれば、音夢の首無し死体を弔ったりするとは到底思えない。
あるとすれば、つぐみが音夢の兄である朝倉純一を発見しており、その上で放送を
聞いていた場合だろうが、その可能性はもっと低いはず。
それならば、いっその事他の場所へ移動し、そこで探索なり潜伏している他の参加者を
殺害するほうが効率ははるかにいい、というのが彼女の導き出した結果だった。
さらに、博物館を除外した残る二つの選択肢――ホテルと学校――のうち他の参加者が
潜伏あるいは拠点として用いる可能性が高いのはどちらかと言えば建物の用途からすれば
当然ホテルということになる。
結果、ネリネは森を南に歩き続け、ホテルに到着した。
だが到着してみるや、その大きさに思いっきり呆れてしまったのである。
地図上では森の中にポツンと存在するだけであったから、その大きさはせいぜい場末の
安ホテル程度と思っていた。
しかし、そこにあったのは大都市や一流リゾート地にでもあるような高さ数十メートル、
階数にして15階はあろうかという巨大なホテルだったからだ。
そんな建物が道路もロクにない森の中にいきなりドカンと建っているのを見ればネリネで
なくとも思いっきり呆れるに違いない。
(でも、これだけ大きいなら隠れる場所にも困りませんね……)
呆れたのは一時の事。
気を取り直したネリネは、そう考えると右手にデザートイーグルを、左手に“献身”を
それぞれ手にしてホテルの裏側より侵入していく。
その行動は博物館の時と同じ様に見えるが、あの時とは目的が全く違う。
博物館の時は、音夢との不和からあの様にしたが、今回は周囲を警戒しての事だ。
(今思えば、あの場所からでも目立ったのですから既に誰か侵入していてもおかしくは
ないでしょう)
ネリネの言う「あの場所」とは一時の休息をとった神社の外周のことだ。
あのときは神社の方ばかりを見ていたが、考えてみればあの場所からでもホテルの外観が
確認できた。
大きさがこれほどのものと思わなかったのは、多分生い茂った木々のせいだろう。
(ですが……森の中にこれほどの大きなホテルを建てるというのは、何か意味があるの
でしょうか?とりあえず入ったらホテル内の構造を把握しておく必要がありますね)
目立たない従業員用の出入り口から、内部へ侵入したネリネの目についたのは、ドアに
「コントロール室」のプレートが貼られた部屋だ。
デザートイーグルを構えながら扉を開き、室内へ入っていくと、そこは無数のモニターと
複数のコンピュータが設置されていた。
ネリネがコンピュータの画面を覗き込むと、画面上には「空調」「照明」「防犯カメラ」
といった文字が多数並んでいる。
どうやら、このコンピュータでホテル内の各設備をコントロールしているらしい。
続いてネリネは、壁面に埋め込まれたモニターへ目を向け、そこに映し出される画面から
モニターの意味をすぐ理解した。
「なるほど……、これは使えますね」
モニターの正体は、ホテル内の各部を監視する防犯カメラ用だった。
流石に客室内までは監視していないが、それ以外のパブリックなスペースについては
ほぼ全域を監視しているのが分かる。
これを使えばホテル内に誰が入ったか、あるいは既に誰がいるかを簡単に把握する事が
出来る。
ここを拠点にすれば、ホテルでの戦いは自分が一方的に主導権を握る事も可能だろう。
「あとは、建物内の見取り図があるといいのですが……」
そう言いながら、ネリネは室内の書類棚を調べていく。
直接建物内を歩いて調べていくのも手だが、見取り図があるのと無いのでは話が違う。
探す事数分、ネリネはようやく目当てのものを発見した。
「……お客様の目に触れないスペースがこんなにあるなんて、思いもしませんでした」
見取り図に目を通したネリネはそう呟く。
建物の図面など見るのはこれが初めてだが、見取り図には色々と彼女の知らなかった事が
書かれていた。
宿泊客の目に触れないところへ配置された各階の機械室や分電盤室、倉庫に従業員用の
エレベーター、パイプスペース、天井裏に入る為の隠しハシゴ……。
客としてホテルに入っていれば、絶対に気が付かない場所ばかりだ。
これらも使い方によっては待ち伏せや移動、身を隠すのに使うことが出来る。
倉庫も調べれば使える物が眠っているだろう。
慎重に裏側から侵入した事が、ネリネに思わぬ宝の山をもたらすことになったといえる。
「さて、まずは地下から調べましょうか」
見取り図のファイルを手にしたネリネは、コントロール室をあとにしようとする。
調べたところ、地下はテナントと従業員のエリア、そして駐車場になっているみたいだ。
駐車場は無視するとして、ネリネが最初に目指すはテナントエリアである。
「その前に、鍵をかけておく必要がありますね」
ネリネは部屋を出る前にキーボックスから一本の鍵を取り出すと、コントロール室を施錠する。
これで、この部屋にあとから来た者が入る事は出来なくなった。
(もし、戻ったとき扉の前に誰かいたらその時は……殺しちゃいましょう)
「いい物が並んでますね」
地下のテナントエリアに降りたネリネは、その品揃えの良さを前にして少し笑った。
流石に武器は売ってないものの、洋服類に飲食物の類は結構な数が売られている。
「とりあえずはこの中からいくらか持っていった方がいいでしょう」
思えば、ここまでの連戦で、服は自分の血と返り血で徐々に汚れている。
支給品の食料もいずれは底を尽きるのが目に見えている。
ならば、ここで手っ取り早く補給を済ませてしまうのがいいだろう。
そう考えたネリネは、まずブティックに入り服を手に入れることとした。
並んでいるのはいずれも高級品ばかり、その中から今身に付けている物と似ていて、
より生地のいい服と下着を選び出す。
他にも複数の洋服やアクセサリーを入手し、ディパックへと詰め込んでいく。
(状況に応じて服装を変えれば、他の参加者を混乱させられるでしょう)
そんなことをネリネは考えた上で新たな洋服を手に入れたわけだが、これはある意味
おしゃれに気を使う女性ならではの発想かもしれない。
次に入ったのはすぐ隣の化粧品販売店だ。
高級な香水や化粧品には目もくれず、ネリネが手にしたのは染髪剤である。
そこに並んでいた様々な色の洗髪剤を片っ端から手に取り、まとめてディパックに突っ込む。
最後に入ったのは食料品店。
ここで、食糧と飲料物と補給していく。
もし、参加する前のネリネならば高級食材や菓子類を確保しようとしたかもしれない。
しかし、ここまでの経験がそういったものよりも少量で十分な栄養を得られる携行食糧や
栄養ドリンクを彼女に選ばせていた。
(稟さまと合流したあとのことも考えて、十分な量を補給しなければなりませんね)
その中で洋酒の並んだコーナーがふと目に入った。
何を思ったのか、ネリネはそこに近づくとラム酒の瓶を手に取り、ディパックから音夢の生首が
入ったビニール袋を取り出す。
「昔、こんな話を聞いた事があります」
ビニール袋から血まみれになった音夢の制服を取り出し、それをディパックへ放り込むネリネ。
そして彼女はラム酒の瓶を開けると、その中身を生首の入ったビニール袋へ注ぎ込んでいく。
「ある国で解体中の家から出てきた樽に入ったラム酒を飲んだ大工は、樽の中から死体が出て
きたのを見て最後に最悪の気分を味わったと……」
2本3本とラム酒をビニール袋へ注ぎ込み、音夢の生首が完全にラム酒へ浸ったのを見て、
ネリネは満足そうに呟く。
「その時のラム酒は、なんでも『特別な味』がしたそうですよ。あなたの首を浸したラム酒は
どのようなお味がするのでしょうかね」
ラム酒の中でプカプカと浮かぶ音夢の生首がネリネに答えるはずも無い。
その姿はまるでホルマリン漬けの標本みたいでどこかおかしかった。
「あなたのお兄さんである純一さんと二回目の放送までにお会いすることはできませんでした。
ですが、その代わりにあなたの首を浸したお酒を飲んでいただこうかと思います」
そして、最後に音夢の生首を純一に見せ付けてやろう――
自分の妹、その生首を浸したラム酒を飲み、最後にその味の正体が何であったか知らされた時、
純一はどんな顔をするだろうか?
気分を悪くしてその場で吐き戻すだろうか?それとも狂わんばかりに泣き叫ぶだろうか?
どちらにしても想像するだけでゾクゾクしてくるものがある。
だが、それは朝倉純一と会ったときのこと。
補給は終わったが、まだ他にやることがネリネにはあった。
テナントエリアをあとにしたネリネが次に向かったのは従業員用のエリアである。
彼女の目的地は、そこのシャワー室だった。
中に入るや、ネリネは服を脱衣場で脱ぎ捨ててシャワーを浴び始める。
(気持ちいい……)
ボディソープで体の汚れを落としながら、ネリネは微笑む。
思えばもう12時間が経過し、体はいたる所が汚れている。
その汚れが、血の臭いが洗い流されていく。
腹部に目を向けると、音夢によってつけらえた痣はかなり消えかけていた。
(ですが……心の汚れまでは洗い落とせるはずが無いですね……)
シャワーを浴びながらネリネはそう低く笑う。
だが、今の彼女はもう汚れる事を厭わない。
稟を守り抜く為には他の参加者を全員殺すつもりでいるのだから。
その為には心を暗黒に染める事となろうとも、決して止まるつもりなど無い……。
今のネリネはそういう覚悟を決めた少女なのだ。
(でも、稟さまが亡くなったら?次の放送で稟さまの名前が呼ばれたら?)
一瞬、頭をよぎる想像。
それは、最悪の展開――
(稟さまが亡くなったら。その時は……)
かつてのネリネなら泣き喚くだけで、もはやこの世の終わりとばかりに稟の後を追うだろう。
だが、今のネリネはもはやそうではない。
なぜならここまでの戦いが、彼女の心を根本から強靭なものに変えてしまったのだから。
だからこそ、冷静に考えられる。
稟が死んだならば、それが誰かの手にかかるなり不慮の事故で命を落とすなりしたならば。
(その時は、稟さまの亡骸を持ち帰り、お墓に納めてあげる為にも優勝を目指しましょう)
そして、自分は稟と過ごした思い出を抱いて残りの人生を生きればいい。
そこまで考えると、ネリネはシャワーの蛇口を止めて脱衣場へ向かう。
服を新しいものに着替え終わったネリネは、再び1階のコントロール室に戻ってきた。
監視モニターに目を通すが、どの階も人の動きはない。
自分以外の人間はこのホテルにはいないのか、それともカメラの届かないエリアにいるのか。
「もう暫くは監視をしたほうがいいでしょうね。その前に下準備だけでもしておきましょうか」
ディパックからオレンジ色の染髪剤を取り出したネリネはそれを手にとって髪に塗り始める。
徐々に、彼女の美しい青い髪が鮮やかなオレンジ色に変わってゆく。
この色をあえて選んだのは、神社の戦闘で稟への想いを胸に戦い、散っていった楓への
敬意を含んでいるからに他ならない。
最後に地下で入手した赤いリボンを髪に結びつけ、髪型をポニーテールにする。
この方が、狭いところなどに入ったとき、周囲へ引っかけずにすむという利点があるからだ。
「これで、準備は整いました。あとは、待つだけですね」
コントロール室の鍵を握り締めながら、ネリネは監視モニターに目を走らせる。
いつどこでどんな動きがあってもすぐ動けるように。
【D-5 ホテル1階コントロール室 /1日目 午後】
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身” コントロール室の鍵、ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品1:支給品一式 IMI デザートイーグル 9/10+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10 九十七式自動砲 弾数2/7】
【所持品2:支給品一式 トカレフTT33の予備マガジン10 S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5、洋服・アクセサリー・洗髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】
【所持品3:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 朝倉音夢の生首(左目損失・ラム酒漬け) 朝倉音夢の制服 桜の花びら】
【状態:肉体的疲労はほぼ解消・魔力消費中、腹部に痣(消えかけ)、左腕打撲、右耳に裂傷、左足首に切り傷、非常に強い意志】
【思考・行動】
1:ホテルにやって来る者、あるいは既にいる者を監視。発見次第、稟以外は皆殺しにする
2:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し。知人であろうとも容赦無く殺す(出来る限り単独行動している者を狙う)
3:ハイリスク覚悟で魔力を一気に回復する為の方法、或いはアイテムを探す
4:トウカを殺し、楓の仇を討つ
5:純一に音夢の生首を浸したラム酒を飲ませ、最後に音夢の生首を見せつけ殺す
6:つぐみの前で武を殺して、その後つぐみも殺す
7:亜沙の一団と決着をつける
8:桜の花びらが気になる
9:稟を守り通して自害
10:最悪、稟が死亡した時は稟の遺体を持ち帰るために優勝を目指す。
【備考】
現在は髪を鮮やかなオレンジに染め、髪は赤いリボンでポニーテールにしています。
私服(ゲーム時の私服に酷似。ただし高級品)に着替えました。(汚れた制服と前の私服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、 制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣第七位“献身”は制限を受けて、以下のような性能となっています。
永遠神剣の自我は消し去られている。
魔力を送れば送る程、所有者の身体能力を強化する(但し、原作程圧倒的な強化は不可能)。
魔力持ちの敵に突き刺せば、ある程度魔力を奪い取れる。
以下の魔法が使えます。
尚、使える、といってもウインドウィスパー以外は、実際に使った訳では無いので、どの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー 回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、僅かな間だけ防御力を高める。
ハーベスト 回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。
※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※音夢とつぐみの知り合いに関する情報を知っています。
※音夢の生首はビニール袋へ詰め込みラム酒漬けにした上、ディパックの中に入れてます。
※魔力が極端に消耗する事と、回復にひどく時間がかかる(ネリネの魔力なら完全回復まで数日)という事に気が付きました。
※トウカと、川澄舞(舞に関しては外見の情報のみ)を危険人物と認識しました。
※千影の“時詠”を警戒。ただし“時詠”の能力までは把握していません。
※魔力持ち及び永遠神剣の持ち主を献身で殺せばさらに魔力が回復する仮説を思いつきました。
※ある程度他の永遠神剣の気配を感じ取れます。
※桜の花びらは管理者の一人である魔法の桜のものです。
※見取り図によってホテルの内部構造をかなり熟知しています。
※現在、コントロール室の鍵は内側からかけられています。
ホテルについて
建物は高さ数十メートル、地上15階建てぐらい。
1階のコントロール室からはホテル内の照明、空調などを制御可能。
さらに監視カメラで人間の動きを知る事が可能。
地下はテナントエリアと従業員のエリア、他に駐車場や倉庫が存在する。
ホテル内に誰か既にいるのかどうかは次の書き手さんに任せます。
|124:[[信じる者、信じない者(Ⅱ)]]|投下順に読む|126:[[私の救世主さま(前編)]]|
|124:[[信じる者、信じない者(Ⅱ)]]|時系列順に読む|128:[[残酷な罰が降り注ぐ]]|
|118:[[心のかたち、愛のかたち]]|ネリネ|134:[[戦の前。]]|
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