「第二回定時放送」(2007/09/03 (月) 22:21:58) の最新版変更点
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**第二回定時放送 ◆guAWf4RW62
戦艦のブリッジのようにも、何かの研究室のようにも見える、広大で薄暗い部屋。
部屋の至る所に設置されたモニターとスピーカーは、参加者達に関する情報を絶え間無く示し続けていた。
映し出される阿鼻驚嘆の図、響き渡る断末魔の叫び声。
まだ年端もいかぬ少年少女達が、次々に若い命を散らせてゆく。
それはとても正視に耐えぬ程、悲惨且つ残酷な光景。
僅かでも良心を持った者ならば、この場に居るだけでも精神を削り取られてしまうだろう。
事実オペレーターとおぼしき男達は、一目で分かる程に疲弊した顔付きとなっている。
だがそんな中、凄惨に口元を吊り上げ哂い続ける女が一人。
美しく艶やかな金色の髪、妖しい色気を帯びた切れ長の瞳。
見目麗しき妙齢の女性であるにも関わらず、その瞳の奥には底知れぬ闇が見え隠れしている。
「――フフ、そろそろかしらね」
謡うかのような甘い音響で言葉を紡ぎ、女は立ち上がった。
周囲の喧騒を気にも留めず、落ち着いた足取りでマイクの前まで突き進む。
女の名前は鷹野三四――この殺人遊戯の管理者にして、工作部隊『山狗』の指揮権を持つ人物でもある。
心底愉しげなその姿は余りにも異様、余りにも不気味。
それを見かねたのか、オペレーターの一人が恐る恐る声を発する。
「……ご機嫌ですね」
「ええ、最高に気分が良いわよ。これはただの殺し合いなんかじゃない。
神の命により行われし儀式なのだから……貴方には分からないでしょうけどね。くすくすくす……」
「は、はあ……」
オペレーターはまるで理解出来ないといった様子で、困惑気味に眉を顰めるばかり。
それも当然だろう。
現状では、余りにも情報が不足し過ぎているのだ。
此度の殺人遊戯がどのような目的で行われたか、オペレーター達は全く知らされていない。
オペレーター達が請け負っている任務は、あくまでも常識の範囲で考え得るものに過ぎない。
異能者達に対する能力制限も、参加者達の転送も、自分達では無い何者かが行っている事だった。
オペレーターの困惑をよそに、鷹野は言葉を続けてゆく。
「この儀式を経て、私は人の身を放棄するの。儀式に協力した褒美として、神の眷族にして貰うの」
「……神の眷族、でありますか」
「ええ、そうよ! 神の眷族、即ち神族!」
死に往く者達の断末魔を背景曲に、何も知らぬ愚かな凡人達を観客として。
鷹野は手を振るい始める――まるで、オーケストラの指揮者のように。
「今の世界に祟る神が何人いる? 世界を統べ得る神が何人いる? ……1人もいやしない! でも、私に力を貸してくれた『大神』は違う!
『大神』は全てを凌駕する力と、人の身では決して及ばぬ叡智を兼ね備えた存在……」
紡がれるは狂気の独白。
常人では決して理解し得ぬ、歓喜に満ちた言霊達。
「そして、私もまた人間を凌駕する! 有名無実の神などとは違う、人を超越せし存在になる!
アハハハハハ、ハハハハ、アッハハハハハハハハハハハハハ!」
全ての人間を見下し、多くの神々すらも罵倒し、鷹野は哂う。
オペレーター達の誰もが口を開けぬ中、鷹野の狂笑だけが響き渡る。
それでも、時計の針は確実に進んでゆき――そして、第二回放送の刻が訪れた。
◇ ◇ ◇ ◇
『――参加者の皆さん、ご機嫌如何かしら?
正面からの殺し合いも、水面下での腹の探り合いも、殆どの人が初体験でしょ?
相手の生命を奪い尽くす快感!
相手を騙し切った時の達成感!
日常ではまず体験出来ないであろう、スリルに満ちた殺人ゲーム!
そろそろ楽しく思えてきた頃じゃないかしら。
……と、無駄話が過ぎたわね。
今回も私、鷹野三四が放送を担当させて貰うわ。
――まず禁止エリアは十四時からB-4、十六時からE-3。
禁止エリア付近でこそこそと実験してた人達もいるみたいだけど、そんなの無駄よ。
やろうと思えば、私達は何時でも首輪を爆発させる事が出来るのだから。
貴方達の生殺与奪は、こちらが完全に掌握しているの。
首輪を外すなんて絶対に無理よ、くすくすくす……。
――続いて、お待ちかねの死亡者発表よ。
第一回放送から今までの六時間で、脱落した人間は、
アルルゥ
オボロ
エスペリア
厳島貴子
相沢祐一
岡崎朋也
芙蓉楓
朝倉音夢
芳乃さくら
杉並
鉄乙女
霧夜エリカ
伊達スバル
大石蔵人
双葉恋太郎
以上、十五名よ。
あらあら、随分とペースアップしてるじゃない。
皆そんなに殺し合いがしたいのかしら、くすくすくす……。
殺し合いを否定していた人達も、これでいい加減目が醒めたわよね?
甘い夢に縋り付こうとした所で、無惨に殺されてしまうだけ。
死んだ人と同じ数だけ、覚悟を決めた狩猟者がいる。
人を殺す覚悟と強力な凶器を併せ持った、冷酷な狩猟者がね……。
――では、今回の放送はここまでよ。
次の放送は今から六時間後、十八時に行われるわ。
一切の躊躇も情けも必要無い。
この島には法律なんて存在しないのだから、思う存分殺し合いなさい』
◇ ◇ ◇ ◇
「さて……貴方達も精一杯働きなさい。参加者達の動向を逃さず把握して、この儀式を成功させるのよ。
そうすれば、貴方達も神の眷族にして貰えるかも知れないわよ?」
放送を終えた鷹野は、何処までも愉しげに命令を下す。
残虐なる殺人遊戯を完遂させよと、悪事への加担を強要する。
「……いよいよなの。もうじきなの。私の……ずっと見続けてきた夢が、もうすぐ叶えられるのよ。フフフ……」
神罰を下すかの如く、無慈悲に殺人遊戯を推し進める女。
それはきっと、人の姿をした怪物。
&COLOR(red){[残り37人]}
|112:[[童貞男の乾坤一擲]]|投下順に読む|114:[[This is the Painkiller]]|
|112:[[童貞男の乾坤一擲]]|時系列順に読む|114:[[This is the Painkiller]]|
|073:[[第一回定時放送]]|鷹野三四|146:[[第三回定時放送]]|
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**第二回定時放送 ◆guAWf4RW62
戦艦のブリッジのようにも、何かの研究室のようにも見える、広大で薄暗い部屋。
部屋の至る所に設置されたモニターとスピーカーは、参加者達に関する情報を絶え間無く示し続けていた。
映し出される阿鼻驚嘆の図、響き渡る断末魔の叫び声。
まだ年端もいかぬ少年少女達が、次々に若い命を散らせてゆく。
それはとても正視に耐えぬ程、悲惨且つ残酷な光景。
僅かでも良心を持った者ならば、この場に居るだけでも精神を削り取られてしまうだろう。
事実オペレーターとおぼしき男達は、一目で分かる程に疲弊した顔付きとなっている。
だがそんな中、凄惨に口元を吊り上げ哂い続ける女が一人。
美しく艶やかな金色の髪、妖しい色気を帯びた切れ長の瞳。
見目麗しき妙齢の女性であるにも関わらず、その瞳の奥には底知れぬ闇が見え隠れしている。
「――フフ、そろそろかしらね」
謡うかのような甘い音響で言葉を紡ぎ、女は立ち上がった。
周囲の喧騒を気にも留めず、落ち着いた足取りでマイクの前まで突き進む。
女の名前は鷹野三四――この殺人遊戯の管理者にして、工作部隊『山狗』の指揮権を持つ人物でもある。
心底愉しげなその姿は余りにも異様、余りにも不気味。
それを見かねたのか、オペレーターの一人が恐る恐る声を発する。
「……ご機嫌ですね」
「ええ、最高に気分が良いわよ。これはただの殺し合いなんかじゃない。
神の命により行われし儀式なのだから……貴方には分からないでしょうけどね。くすくすくす……」
「は、はあ……」
オペレーターはまるで理解出来ないといった様子で、困惑気味に眉を顰めるばかり。
それも当然だろう。
現状では、余りにも情報が不足し過ぎているのだ。
此度の殺人遊戯がどのような目的で行われたか、オペレーター達は全く知らされていない。
オペレーター達が請け負っている任務は、あくまでも常識の範囲で考え得るものに過ぎない。
異能者達に対する能力制限も、参加者達の転送も、自分達では無い何者かが行っている事だった。
オペレーターの困惑をよそに、鷹野は言葉を続けてゆく。
「この儀式を経て、私は人の身を放棄するの。儀式に協力した褒美として、神の眷族にして貰うの」
「……神の眷族、でありますか」
「ええ、そうよ! 神の眷族、即ち神族!」
死に往く者達の断末魔を背景曲に、何も知らぬ愚かな凡人達を観客として。
鷹野は手を振るい始める――まるで、オーケストラの指揮者のように。
「今の世界に祟る神が何人いる? 世界を統べ得る神が何人いる? ……1人もいやしない! でも、私に力を貸してくれた『大神』は違う!
『大神』は全てを凌駕する力と、人の身では決して及ばぬ叡智を兼ね備えた存在……」
紡がれるは狂気の独白。
常人では決して理解し得ぬ、歓喜に満ちた言霊達。
「そして、私もまた人間を凌駕する! 有名無実の神などとは違う、人を超越せし存在になる!
アハハハハハ、ハハハハ、アッハハハハハハハハハハハハハ!」
全ての人間を見下し、多くの神々すらも罵倒し、鷹野は哂う。
オペレーター達の誰もが口を開けぬ中、鷹野の狂笑だけが響き渡る。
それでも、時計の針は確実に進んでゆき――そして、第二回放送の刻が訪れた。
◇ ◇ ◇ ◇
『――参加者の皆さん、ご機嫌如何かしら?
正面からの殺し合いも、水面下での腹の探り合いも、殆どの人が初体験でしょ?
相手の生命を奪い尽くす快感!
相手を騙し切った時の達成感!
日常ではまず体験出来ないであろう、スリルに満ちた殺人ゲーム!
そろそろ楽しく思えてきた頃じゃないかしら。
……と、無駄話が過ぎたわね。
今回も私、鷹野三四が放送を担当させて貰うわ。
――まず禁止エリアは十四時からB-4、十六時からE-3。
禁止エリア付近でこそこそと実験してた人達もいるみたいだけど、そんなの無駄よ。
やろうと思えば、私達は何時でも首輪を爆発させる事が出来るのだから。
貴方達の生殺与奪は、こちらが完全に掌握しているの。
首輪を外すなんて絶対に無理よ、くすくすくす……。
――続いて、お待ちかねの死亡者発表よ。
第一回放送から今までの六時間で、脱落した人間は、
アルルゥ
オボロ
エスペリア
厳島貴子
相沢祐一
岡崎朋也
芙蓉楓
朝倉音夢
芳乃さくら
杉並
鉄乙女
霧夜エリカ
伊達スバル
大石蔵人
双葉恋太郎
以上、十五名よ。
あらあら、随分とペースアップしてるじゃない。
皆そんなに殺し合いがしたいのかしら、くすくすくす……。
殺し合いを否定していた人達も、これでいい加減目が醒めたわよね?
甘い夢に縋り付こうとした所で、無惨に殺されてしまうだけ。
死んだ人と同じ数だけ、覚悟を決めた狩猟者がいる。
人を殺す覚悟と強力な凶器を併せ持った、冷酷な狩猟者がね……。
――では、今回の放送はここまでよ。
次の放送は今から六時間後、十八時に行われるわ。
一切の躊躇も情けも必要無い。
この島には法律なんて存在しないのだから、思う存分殺し合いなさい』
◇ ◇ ◇ ◇
「さて……貴方達も精一杯働きなさい。参加者達の動向を逃さず把握して、この儀式を成功させるのよ。
そうすれば、貴方達も神の眷族にして貰えるかも知れないわよ?」
放送を終えた鷹野は、何処までも愉しげに命令を下す。
残虐なる殺人遊戯を完遂させよと、悪事への加担を強要する。
「……いよいよなの。もうじきなの。私の……ずっと見続けてきた夢が、もうすぐ叶えられるのよ。フフフ……」
神罰を下すかの如く、無慈悲に殺人遊戯を推し進める女。
それはきっと、人の姿をした怪物。
【残り37人】
|112:[[童貞男の乾坤一擲]]|投下順に読む|114:[[This is the Painkiller]]|
|112:[[童貞男の乾坤一擲]]|時系列順に読む|114:[[This is the Painkiller]]|
|073:[[第一回定時放送]]|鷹野三四|146:[[第三回定時放送]]|
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