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「完璧な間違い(前編)」(2007/07/27 (金) 19:32:27) の最新版変更点
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**完璧な間違い ◆/P.KoBaieg
人っ子一人いない新市街を悠人と衛は歩き続ける。
プラネタリウムでハクオロ達と離れて以降、悠人の足取りは酷く重いものだった。
(エスペリア……)
彼女の死を知ってから、悠人はずっと彼女の事を考えていた。
エスペリアは共に戦った仲間であり、そしてラキオス王国におけるスピリット達のまとめ役でもあった。
思えば、ファンタズマゴリアに飛ばされて最初に目が覚めた時、傍にいてくれたのは彼女だった。
妹――佳織――を人質に取られ、戦う事を強要された自分が頑張ってこれたのは彼女の助力に拠るところも大きい。
(アセリアと合流して、ファンタズマゴリアへ帰ることが出来たとしても、もうエスペリアはいない……)
そう、もはや彼女の淹れてくれるお茶を飲む事も、甲斐甲斐しく世話をしてくれるその姿を見ることももう叶わないのだ。
だから悠人は思う。
エスペリアを殺した奴はどんな事があろうと許す事は出来ないと。
別れ際、ハクオロに「会ったら殺すのか?」と問われた時その事を否定した悠人だが、
やはり心の奥底では彼女を殺した当事者への怒りが燻り続け、暗い感情が渦巻いている。
今はまだ「一応」相手を殺すつもりは無いが、出会った時は容赦しない。
(いや、気を抜けばこちらが殺されるな……)
永遠神剣抜きでもエスペリアはラキオスにおける屈指のスピリットだった。
その彼女を倒すというのは余程の実力者ということになる。
しかもその人物は、この殺人遊戯に「乗ってしまっている」という事実。
もし対峙した時、手加減すれば自分が殺されかねない。
悠人の視線は、自然と2丁の銃と刀が入ったディパックへと向く。
(やはり使うしかないのか、これを……)
博物館で襲撃者を退けた時ですら、最後まで手をつけなかった武器。
だが、いつまでも今日子のハリセンが電撃を放つ事は出来ないだろう。
そうなったらおのずと手をつけざるを得ない。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
(今の悠人さん、なんだか怖い……)
悠人がプラネタリウムを出てから一言も口をきいてくれない事に対して、衛は不安を感じていた。
思えば、エスペリアという悠人の知り合いが死んだという事を知ってから、悠人の雰囲気が変わった様に思える。
ハクオロや瑛理子、観鈴と分かれる際に「ボクがついているから大丈夫」とは言ったが、正直なところ衛は不安だった。
今の悠人は、足取りが衛にもハッキリ分かるほど重く、どこか暗い雰囲気を漂わせている。
それは、初めて出会ってからプラネタリウムに入った時までの悠人にはなかったものだ。
もしかしたら、悠人はこの殺し合いに乗ってしまうのではないか。
そんな不安が衛の心をよぎる。
ぎゅっ
そう思ったから、衛は次の瞬間悠人の背に抱きついていた。
「衛?」
衛の思わぬ行動に、悠人は後ろを振り返る。
「驚かせてごめんね。でも、こうしないと悠人さんが遠くに行ってしまいそうだったから……」
「どうしたんだ衛?何を言って……?」
「だって……だって、今の悠人さんとても怖い顔しているよ。それに、悠人さんさっきから一言も口きいてくれないから……。だからボク、とても不安で……」
「そうか……衛、すまない」
やはり顔に出ていたか。と悠人は思う。
その一方で、衛に今の心情を伝えておいた方がいいだろうとも思った。
やがて悠人はそのままの状態で、自分の本心を語りだした。
「正直に言って、俺は許せないんだ。エスペリアを殺した奴の事が」
「うん……」
「彼女は俺にとってかけがえの無い仲間だった。それに、こんなところで彼女が死ぬなんて思えなかった……」
「うん……」
「あの時は『殺すつもりは無い』と言ったけど、本当のところ出会ったら容赦はしない」
「エスペリアさんを殺した人、見つけたら殺すの?」
「それは、そいつと実際に会ってみるまで分からない。だけど、その時は全力で立ち向かうつもりだから場合によっては……」
自分の本心を語り終えて悠人は黙り込む。
もしかして衛を怖がらせたかもしれないとも思う。
それから暫くして、衛が口を開いた。
「ありがとう悠人さん。本音を聞かせてくれて……。でも……でもね。そんな事思わないでほしい……」
自然と悠人に抱きついたままの衛の手に力がこもる。
「衛……」
「ボクは悠人さんみたいに上手く言えないけど、ボクだって遙あねぇや四葉ちゃんが死んだって知った時とても悲しかったから、
エスペリアさんが死んだって知った今の悠人さんがどれだけ悲しんでいるかわかるよ……」
「ああ、そうだよな……」
衛の言葉に悠人はそう呟く。
そう、衛だって自分と同じだ。
自分だけではないのは分かっていたはずなのに。
「だけどね……お願いだから、一人で悩んだり悲しんだりしないで欲しい……それに、エスペリアさんを殺した人が憎いのはわかるけど、
簡単に殺すとか思わないで欲しいよ……」
「済まない……気を使わせて……」
「うん……だけど、今はまだボクの話を聞いて」
「ああ、ちゃんと聞いているよ」
衛は自分の事を心配してくれている――
その事は悠人にも痛いほどよくわかった。
だから、そのまま衛の言葉に耳を傾ける。
「遙あねぇを埋葬した後、休憩していたときのこと覚えてる?」
「覚えている、忘れもしないさ……」
最初に見つけた二つの遺体と、その後すぐに発見した涼宮遙の無残な遺体。
そしてその遺体を埋葬した時の事。
血まみれになりながらも穏やかな死に顔だった遙――。
最後に「頼んだぜ」と言い残して逝った対馬レオ(第一回放送で彼の名を知った)――。
首から下が血で染まったまま苦悶の表情を浮かべて死んでいた少女――。
多分、一生忘れられない光景だろう。
「ボクね、あの時聞いたんだ。悠人さんが『畜生……』って呟くの……。その時、思ったんだよ『悠人さんも辛いんだ』って……」
「あの時の……聞いてたのか……」
「うん……。だから、ボクその時決めたんだ『悠人さんの足手まといにはなりたくない』って、それから『もう泣かない』ってね……」
悠人は嬉しかった。
自分の事を、衛が想像以上に心配してくれている事を。
それと共に、心の奥にあった暗い感情が薄らいでいくのが分かった。
「でもね……」
そのまま衛は言葉を続ける。
「その後、四葉ちゃんが死んだのを知ってまた泣いて、プラネタリウムでも夢で遙あねぇと四葉ちゃんに会った後にも泣いて……。
でもその度に悠人さんはボクを慰めて、励ましてくれた。だから……」
そこで一度言葉を切り、衛は再び口を開く。
「今度は……ううん、これからはボクも悠人さんの支えになってあげたい。ボクも悠人さんの事が心配だから……。
それにボクの事を励ましてくれるのに、一人で悩んでいる悠人さんを見るのはつらいから……。励ましてあげたりするのは
悠人さんみたいに上手じゃないけど、悩み事ぐらいは黙って聞いてあげたいから……」
「衛……本当にありがとう……」
悠人はそう言って、自分を抱きしめる衛の手に自分の手を重ねる。
衛とは出会ってまだ10時間程度の仲だが、ここまでの一連の出来事は二人の絆を強いものとしていた。
「それにね……」
「なんだい?」
「もし、エスペリアさんを殺した人と会った時に『仕返しに殺す』なんてやったら、他の殺し合いに乗った人と変わらないよ……。
悠人さんは遙あねぇや四葉ちゃん、エスペリアさんを殺した人たちと同じようになりたいの?そんなのボク嫌だよ……」
「ああ、そうだな……その通りだ……」
悠人は衛の方へ向き直り、衛がそうしてくれたように今度は自分が衛を抱きしめてやる。
衛の言うとおりだった。
本当に許されないのは、こんな馬鹿げた殺人遊戯を主催するタカノをはじめとした人間のはず。
仲間を、エスペリアを失った悲しみは消えないが、彼女を殺した相手と会った時の事にとらわれては主催者の思う壺だ。
何よりエスペリア一人を失った自分と違い、衛は姉妹と知人の二人――死者の数で全てを語っていいわけではないが――を失っているのだ。
今の自分は衛と同じ位置に立っている筈なのに。
その衛が自身を見失ってないのに、ここで自分が悲しみにとらわれていてどうするのか。という気持ちが悠人の中に湧き上がってくる。
(そうさ、本当に大事なのは殺し合いに乗らないこと。そして、アセリアや衛の残る姉妹と合流する事だ。最初の目的を忘れてどうするんだ)
改めて悠人はそう思う。
悠人は衛の頭をなでてやると、衛の顔を見ながら言った。
「ありがとう、衛。確かにエスペリアを殺した相手を復讐の為に殺すなんて愚劣だよな。それに、心配かけて
すまなかった……衛がそう言ってくれなかったら、多分俺は復讐の為そのまま殺し合いに乗っていたかもしれない。
でも、もう大丈夫だよ。衛に余計な心配をかけない為にも、復讐するなんて考えるのはやめるよ」
「悠人さん……」
確固たる意思を込めた悠人の言葉を聞いて安心したのか、衛の表情はほころぶ。
そのまま悠人は真剣な眼差しのまま言葉を続ける。
「だけど、衛も忘れないでくれ。時にはどうしても武器をとって戦わなければならない時があるって……。
エスペリアを殺した奴以外にもこのゲームに乗った人間は確かにいるんだ。そう、話の通じない人間が。
そういった奴と出会った時は全力で戦わないといけない。その事を忘れないで欲しいんだ。きっとそういった
人間はまず俺より衛を狙ってくるだろうから、だから俺は衛や他の乗ってない人を守る為に全力で戦うという事を」
「うん、わかったよ。悠人さん……」
「それじゃ、行こうか。まずは、映画館だ」
(これでいいんだよな。エスペリア)
最後に心の中で亡き仲間へ呟いた悠人は衛と共に映画館へ向かって歩き出す。
本音をぶつけ合った二人に、もう迷いはなかった。
そんな時だった。
二人の耳に車の走る音が聞こえてきたのは。
「悠人さん!この音って……!」
「ああ、拙いな……。衛、隠れるぞ!」
すぐさま二人は、狙撃による攻撃を受けた時と同じように大通りから雑居ビルの間に入り、路地裏に身を隠した。
衛をかばいつつ物陰から様子を伺う悠人。
暫くして、大通りをあの時の車が走り去って行った。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「つぐみ、本当にプラネタリウムとレジャービルは無視していいのか?」
「ええ、時間的に考えると、もうプラネタリウムを出てレジャービルに向かっている筈よ。あるいは到着していると思うわ」
すぐ近くに数時間前、音夢とネリネが襲撃した二人が隠れている事を知らない二人――小町つぐみと朝倉純一――は車で北を目指していた。
ちなみにプラネタリウムとレジャービルを無視してプールを目指そうと言い出したのはつぐみである。
純一は一度プラネタリウムに人がいないか調べてからの方が良いと思っていたが、つぐみはメモの内容を思い出しつつそれを否定した。
「あのメモに書かれていた時刻は午前8時、現在の時刻から逆算すると二時間と少し経過しているわ。
それにここは道路の整備された市街地よ。徒歩でも映画館からプラネタリウムまでは遅くても30分強で到着できるはず」
「つまり、そこで探索と休憩に時間を潰してから出発したとしても、まだ1時間ぐらい残る事になる、か……」
助手席では地図を拡げた純一が、映画館からプラネタリウムを、そこからレジャービル、プール、工場
(更にプールと工場の間に存在する廃墟群も含む)を鉛筆で引いた線により結んでいる。
大まかな地図なので、各ポイントの具体的な距離は分からないが、地図を見る限りプラネタリウムからレジャービルを経由してプールに向かう
場合よりもプラネタリウムから直接プールへむかう方が時間短縮となるのは確かだった。
「そういうことよ。ならば最初の二つを無視してプールで先回りする方が時間短縮にもなるし、効率もいいわ」
「なるほど、そういう事なら納得だ。 ……あ、だけど」
「どうしたの純一?」
「いや、今思ったんだけどさ。あのメモが手の込んだ罠という可能性はないのか?」
「そうね……名前を書いている以上ゲームに乗っている可能性は低いと思うけど、用心に越した事はないわ」
純一の指摘はもっともだったが、つぐみはその可能性を極めて低いものと見ていた。
根拠となるのは、やはり名前を記入しているという事だったが、もう一つは「ゲームに乗った者が徒党を組む可能性は低い」という事だった。
ゲームに乗っている以上、基本的には優勝目的が前提だ(ネリネの様に他者への奉仕という形でゲームに乗ることもあるが)。
そうなると他の人間は厄介者にしかならない。
もっとも、つぐみ自身は音夢とネリネというゲームに乗った二人と「信頼関係抜き・一時的に利用しあう関係」という形で行動を共にしていたが、こういったケースは極めてレアなものだ。
これらの点を考慮すると、彼らが乗っている可能性は低いと思えた。
(でも、あのメモを見た人間が私達だけとは限らない……もし、あのメモを見た人間の中に殺し合いに乗った人間がいたとしたら……)
(そういった人間と鉢合わせになった時、一戦交えるということも十分起こりえる事だわ……)
(ここはやはり保険をかけたほうがいいわね……)
だが、ハンドルを握ったまま純一の言葉を頭の中でリピートしながら、つぐみはしばし思案する。
「純一、万一の事もあるからあなたの銃、ディパックの一番上に放り込んでおいた方がいいわよ」
「え?……ああ、分かった」
「それから、あなた銃の腕は素人でしょ?だったらセレクターはセミオートにしておいた方がいいわ。フルオートだったら撃ちつくすのに5秒もかからないわよ、それ」
「ありがとう、そこまで気を使ってくれて」
(思えば、音夢やネリネにはこんなアドバイスしなかったわね……)
つぐみは、そんな事を思いつつプールに向けて車を走らせる。
そして純一との間に生まれたもの――音夢やネリネと組んだときには無かった信頼関係――を心に巡らせながら。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
車が走り去った後、悠人と衛は路地裏から姿を現した。
そのまま北に走り去ったみたいで、車が戻ってくる様子は微塵も無い。
「行ったみたいだな……」
「うん、だけどあの方向そのまま行ったら……」
「ああ、判っているさ衛。これは大変な事になったぞ……」
二人は顔を見合わせ互いに不安な顔つきになる。
先ほどの車は間違いなく、博物館で自分達を襲撃した少女二人を乗せていた車と同じものだ。
窓ガラスが閉まっていたのでよく判らなかったが、少なくとも運転席と助手席に計2名は確実に乗っているのは確かだった。
(この位置からじゃ、連中が何処に行くのかさっぱり判らないな。3人に連絡しようにも、ここから歩いたところで絶対に追いつく事はできない)
悠人は、今頃おそらくはレジャービルを目指しているであろう3人へどうにかして連絡する手段を考える。
いっそのこと襲撃者の様に、車に乗って移動することも考えたが運転に自信が無いし、そんな状況で衛を同乗させるとなればリスクが大きすぎる。
「……さん、悠人さんっ!」
このまま探索を続行するべきか、すぐに車を追うべきか悠人は悩んでいたが、衛の声で現実に引き戻された。
「どうした、衛?」
「確かここって電気が通じているんでしょ?それなら電話とかかけられない?」
衛が指差す方向を見ると、そこには電話ボックスが鎮座していた。
「電話か……確かに盲点だったな。ありがとう衛、すぐかけてみる!」
悠人は、早速電話の受話器を取ったものの大事な事に気が付いた。
肝心の小銭をまったく持ってなかったのだ……。
だが、受話器に耳を当てると電話機独特の電子音がする。
つまりこれは小銭さえ入れたら通話可能ということだ。
(小銭を調達している暇は無いな……それなら)
悠人は電話ボックスから電話帳だけを持ち出すと、衛と共にオフィスビルの一つへ裏口から入っていった。
幸い、オフィスビルの事務所内にある電話もつながるらしく、悠人はすぐに電話帳を開いてレジャービルの電話番号を探し出す。
電話帳には、索引が無い為探すのに苦労するかと思ったが、意外な方法で探すページを絞り込む事が出来た。
電話帳の五十音順の目次代わりに振られている「A-1」「A-2」の番号。
それは支給品の地図に振られたエリアの番号らしかった。
これに注目した悠人と衛はさっそくレジャービルのある「D-1」の項をしらみつぶしに調べていく。
調べ始めて数分後、D-1項の最後のページをめくった時、そこには
「○○レジャービル……***-****-****」
と電話番号が記されていた。
「よし!これだっ!」
「やったぁっ!!」
思わずガッツポーズを作る悠人と親指を立てる衛。
だが、電話をかけた先にあの3人がいてくれなくては意味が無い。
なによりあの襲撃者が電話を取られるても困る。
(その時は速攻で電話を切るだけだ)
3人がもうレジャービルに到着している事を祈りつつ悠人はレジャービルの電話番号を打ち込む。
番号を打ち終えるとすぐにコール音が響きだした。
PRRRR、PRRRR……
(まだか?まだでてくれないのか?)
(お願い、誰でもいいから早く出てよ……!)
二人は祈るような気持ちで電話に誰かが出るのをひたすら待つ。
しかし、まだコール音がむなしく響くだけである。
PRRRR、PRRRR、PRRR……
5回、6回……コール音がむなしく繰り返されていく。
(やはりダメか……仕方が無い……)
コール音は既に10回を超えて20回に達しようとしている。
そのコール音が30回に達し、もう二人が諦めようとしたその時……。
PRRRR、PRRRR、PRRRR……ガチャ
「もしもし、そっちはレジャービルか?」
念の為、悠人は電話をとった相手の名前を聞くより先に場所を確認する。
この電話番号が主催者によるダミーとも考えられるからだ。
悠人が受話器の向こう側の反応を待つ。
一瞬の沈黙、そして。
『はい、こちらはレジャービルです……ってその声、高嶺さん!?』
「ああ、そうだよ。二見さんか?」
良かった。もう到着してくれてたかと悠人は安堵する。
声のトーンから瑛理子であるのはすぐにわかった。
悠人はそのまま用件を伝え始める。
|110:[[誰にだって人を信じる権利はある、難しいのはその履行]]|投下順に読む|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|110:[[誰にだって人を信じる権利はある、難しいのはその履行]]|時系列順に読む|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|高嶺悠人|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|衛|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|ハクオロ|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|二見瑛理子|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|神尾観鈴|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|100:[[I do not die; cannot die]]|朝倉純一|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|100:[[I do not die; cannot die]]|小町つぐみ|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
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**完璧な間違い ◆/P.KoBaieg
人っ子一人いない新市街を悠人と衛は歩き続ける。
プラネタリウムでハクオロ達と離れて以降、悠人の足取りは酷く重いものだった。
(エスペリア……)
彼女の死を知ってから、悠人はずっと彼女の事を考えていた。
エスペリアは共に戦った仲間であり、そしてラキオス王国におけるスピリット達のまとめ役でもあった。
思えば、ファンタズマゴリアに飛ばされて最初に目が覚めた時、傍にいてくれたのは彼女だった。
妹――佳織――を人質に取られ、戦う事を強要された自分が頑張ってこれたのは彼女の助力に拠るところも大きい。
(アセリアと合流して、ファンタズマゴリアへ帰ることが出来たとしても、もうエスペリアはいない……)
そう、もはや彼女の淹れてくれるお茶を飲む事も、甲斐甲斐しく世話をしてくれるその姿を見ることももう叶わないのだ。
だから悠人は思う。
エスペリアを殺した奴はどんな事があろうと許す事は出来ないと。
別れ際、ハクオロに「会ったら殺すのか?」と問われた時その事を否定した悠人だが、
やはり心の奥底では彼女を殺した当事者への怒りが燻り続け、暗い感情が渦巻いている。
今はまだ「一応」相手を殺すつもりは無いが、出会った時は容赦しない。
(いや、気を抜けばこちらが殺されるな……)
永遠神剣抜きでもエスペリアはラキオスにおける屈指のスピリットだった。
その彼女を倒すというのは余程の実力者ということになる。
しかもその人物は、この殺人遊戯に「乗ってしまっている」という事実。
もし対峙した時、手加減すれば自分が殺されかねない。
悠人の視線は、自然と2丁の銃と刀が入ったディパックへと向く。
(やはり使うしかないのか、これを……)
博物館で襲撃者を退けた時ですら、最後まで手をつけなかった武器。
だが、いつまでも今日子のハリセンが電撃を放つ事は出来ないだろう。
そうなったらおのずと手をつけざるを得ない。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
(今の悠人さん、なんだか怖い……)
悠人がプラネタリウムを出てから一言も口をきいてくれない事に対して、衛は不安を感じていた。
思えば、エスペリアという悠人の知り合いが死んだという事を知ってから、悠人の雰囲気が変わった様に思える。
ハクオロや瑛理子、観鈴と分かれる際に「ボクがついているから大丈夫」とは言ったが、正直なところ衛は不安だった。
今の悠人は、足取りが衛にもハッキリ分かるほど重く、どこか暗い雰囲気を漂わせている。
それは、初めて出会ってからプラネタリウムに入った時までの悠人にはなかったものだ。
もしかしたら、悠人はこの殺し合いに乗ってしまうのではないか。
そんな不安が衛の心をよぎる。
ぎゅっ
そう思ったから、衛は次の瞬間悠人の背に抱きついていた。
「衛?」
衛の思わぬ行動に、悠人は後ろを振り返る。
「驚かせてごめんね。でも、こうしないと悠人さんが遠くに行ってしまいそうだったから……」
「どうしたんだ衛?何を言って……?」
「だって……だって、今の悠人さんとても怖い顔しているよ。それに、悠人さんさっきから一言も口きいてくれないから……。だからボク、とても不安で……」
「そうか……衛、すまない」
やはり顔に出ていたか。と悠人は思う。
その一方で、衛に今の心情を伝えておいた方がいいだろうとも思った。
やがて悠人はそのままの状態で、自分の本心を語りだした。
「正直に言って、俺は許せないんだ。エスペリアを殺した奴の事が」
「うん……」
「彼女は俺にとってかけがえの無い仲間だった。それに、こんなところで彼女が死ぬなんて思えなかった……」
「うん……」
「あの時は『殺すつもりは無い』と言ったけど、本当のところ出会ったら容赦はしない」
「エスペリアさんを殺した人、見つけたら殺すの?」
「それは、そいつと実際に会ってみるまで分からない。だけど、その時は全力で立ち向かうつもりだから場合によっては……」
自分の本心を語り終えて悠人は黙り込む。
もしかして衛を怖がらせたかもしれないとも思う。
それから暫くして、衛が口を開いた。
「ありがとう悠人さん。本音を聞かせてくれて……。でも……でもね。そんな事思わないでほしい……」
自然と悠人に抱きついたままの衛の手に力がこもる。
「衛……」
「ボクは悠人さんみたいに上手く言えないけど、ボクだって遙あねぇや四葉ちゃんが死んだって知った時とても悲しかったから、
エスペリアさんが死んだって知った今の悠人さんがどれだけ悲しんでいるかわかるよ……」
「ああ、そうだよな……」
衛の言葉に悠人はそう呟く。
そう、衛だって自分と同じだ。
自分だけではないのは分かっていたはずなのに。
「だけどね……お願いだから、一人で悩んだり悲しんだりしないで欲しい……それに、エスペリアさんを殺した人が憎いのはわかるけど、
簡単に殺すとか思わないで欲しいよ……」
「済まない……気を使わせて……」
「うん……だけど、今はまだボクの話を聞いて」
「ああ、ちゃんと聞いているよ」
衛は自分の事を心配してくれている――
その事は悠人にも痛いほどよくわかった。
だから、そのまま衛の言葉に耳を傾ける。
「遙あねぇを埋葬した後、休憩していたときのこと覚えてる?」
「覚えている、忘れもしないさ……」
最初に見つけた二つの遺体と、その後すぐに発見した涼宮遙の無残な遺体。
そしてその遺体を埋葬した時の事。
血まみれになりながらも穏やかな死に顔だった遙――。
最後に「頼んだぜ」と言い残して逝った対馬レオ(第一回放送で彼の名を知った)――。
首から下が血で染まったまま苦悶の表情を浮かべて死んでいた少女――。
多分、一生忘れられない光景だろう。
「ボクね、あの時聞いたんだ。悠人さんが『畜生……』って呟くの……。その時、思ったんだよ『悠人さんも辛いんだ』って……」
「あの時の……聞いてたのか……」
「うん……。だから、ボクその時決めたんだ『悠人さんの足手まといにはなりたくない』って、それから『もう泣かない』ってね……」
悠人は嬉しかった。
自分の事を、衛が想像以上に心配してくれている事を。
それと共に、心の奥にあった暗い感情が薄らいでいくのが分かった。
「でもね……」
そのまま衛は言葉を続ける。
「その後、四葉ちゃんが死んだのを知ってまた泣いて、プラネタリウムでも夢で遙あねぇと四葉ちゃんに会った後にも泣いて……。
でもその度に悠人さんはボクを慰めて、励ましてくれた。だから……」
そこで一度言葉を切り、衛は再び口を開く。
「今度は……ううん、これからはボクも悠人さんの支えになってあげたい。ボクも悠人さんの事が心配だから……。
それにボクの事を励ましてくれるのに、一人で悩んでいる悠人さんを見るのはつらいから……。励ましてあげたりするのは
悠人さんみたいに上手じゃないけど、悩み事ぐらいは黙って聞いてあげたいから……」
「衛……本当にありがとう……」
悠人はそう言って、自分を抱きしめる衛の手に自分の手を重ねる。
衛とは出会ってまだ10時間程度の仲だが、ここまでの一連の出来事は二人の絆を強いものとしていた。
「それにね……」
「なんだい?」
「もし、エスペリアさんを殺した人と会った時に『仕返しに殺す』なんてやったら、他の殺し合いに乗った人と変わらないよ……。
悠人さんは遙あねぇや四葉ちゃん、エスペリアさんを殺した人たちと同じようになりたいの?そんなのボク嫌だよ……」
「ああ、そうだな……その通りだ……」
悠人は衛の方へ向き直り、衛がそうしてくれたように今度は自分が衛を抱きしめてやる。
衛の言うとおりだった。
本当に許されないのは、こんな馬鹿げた殺人遊戯を主催するタカノをはじめとした人間のはず。
仲間を、エスペリアを失った悲しみは消えないが、彼女を殺した相手と会った時の事にとらわれては主催者の思う壺だ。
何よりエスペリア一人を失った自分と違い、衛は姉妹と知人の二人――死者の数で全てを語っていいわけではないが――を失っているのだ。
今の自分は衛と同じ位置に立っている筈なのに。
その衛が自身を見失ってないのに、ここで自分が悲しみにとらわれていてどうするのか。という気持ちが悠人の中に湧き上がってくる。
(そうさ、本当に大事なのは殺し合いに乗らないこと。そして、アセリアや衛の残る姉妹と合流する事だ。最初の目的を忘れてどうするんだ)
改めて悠人はそう思う。
悠人は衛の頭をなでてやると、衛の顔を見ながら言った。
「ありがとう、衛。確かにエスペリアを殺した相手を復讐の為に殺すなんて愚劣だよな。それに、心配かけて
すまなかった……衛がそう言ってくれなかったら、多分俺は復讐の為そのまま殺し合いに乗っていたかもしれない。
でも、もう大丈夫だよ。衛に余計な心配をかけない為にも、復讐するなんて考えるのはやめるよ」
「悠人さん……」
確固たる意思を込めた悠人の言葉を聞いて安心したのか、衛の表情はほころぶ。
そのまま悠人は真剣な眼差しのまま言葉を続ける。
「だけど、衛も忘れないでくれ。時にはどうしても武器をとって戦わなければならない時があるって……。
エスペリアを殺した奴以外にもこのゲームに乗った人間は確かにいるんだ。そう、話の通じない人間が。
そういった奴と出会った時は全力で戦わないといけない。その事を忘れないで欲しいんだ。きっとそういった
人間はまず俺より衛を狙ってくるだろうから、だから俺は衛や他の乗ってない人を守る為に全力で戦うという事を」
「うん、わかったよ。悠人さん……」
「それじゃ、行こうか。まずは、映画館だ」
(これでいいんだよな。エスペリア)
最後に心の中で亡き仲間へ呟いた悠人は衛と共に映画館へ向かって歩き出す。
本音をぶつけ合った二人に、もう迷いはなかった。
そんな時だった。
二人の耳に車の走る音が聞こえてきたのは。
「悠人さん!この音って……!」
「ああ、拙いな……。衛、隠れるぞ!」
すぐさま二人は、狙撃による攻撃を受けた時と同じように大通りから雑居ビルの間に入り、路地裏に身を隠した。
衛をかばいつつ物陰から様子を伺う悠人。
暫くして、大通りをあの時の車が走り去って行った。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「つぐみ、本当にプラネタリウムとレジャービルは無視していいのか?」
「ええ、時間的に考えると、もうプラネタリウムを出てレジャービルに向かっている筈よ。あるいは到着していると思うわ」
すぐ近くに数時間前、音夢とネリネが襲撃した二人が隠れている事を知らない二人――小町つぐみと朝倉純一――は車で北を目指していた。
ちなみにプラネタリウムとレジャービルを無視してプールを目指そうと言い出したのはつぐみである。
純一は一度プラネタリウムに人がいないか調べてからの方が良いと思っていたが、つぐみはメモの内容を思い出しつつそれを否定した。
「あのメモに書かれていた時刻は午前8時、現在の時刻から逆算すると二時間と少し経過しているわ。
それにここは道路の整備された市街地よ。徒歩でも映画館からプラネタリウムまでは遅くても30分強で到着できるはず」
「つまり、そこで探索と休憩に時間を潰してから出発したとしても、まだ1時間ぐらい残る事になる、か……」
助手席では地図を拡げた純一が、映画館からプラネタリウムを、そこからレジャービル、プール、工場
(更にプールと工場の間に存在する廃墟群も含む)を鉛筆で引いた線により結んでいる。
大まかな地図なので、各ポイントの具体的な距離は分からないが、地図を見る限りプラネタリウムからレジャービルを経由してプールに向かう
場合よりもプラネタリウムから直接プールへむかう方が時間短縮となるのは確かだった。
「そういうことよ。ならば最初の二つを無視してプールで先回りする方が時間短縮にもなるし、効率もいいわ」
「なるほど、そういう事なら納得だ。 ……あ、だけど」
「どうしたの純一?」
「いや、今思ったんだけどさ。あのメモが手の込んだ罠という可能性はないのか?」
「そうね……名前を書いている以上ゲームに乗っている可能性は低いと思うけど、用心に越した事はないわ」
純一の指摘はもっともだったが、つぐみはその可能性を極めて低いものと見ていた。
根拠となるのは、やはり名前を記入しているという事だったが、もう一つは「ゲームに乗った者が徒党を組む可能性は低い」という事だった。
ゲームに乗っている以上、基本的には優勝目的が前提だ(ネリネの様に他者への奉仕という形でゲームに乗ることもあるが)。
そうなると他の人間は厄介者にしかならない。
もっとも、つぐみ自身は音夢とネリネというゲームに乗った二人と「信頼関係抜き・一時的に利用しあう関係」という形で行動を共にしていたが、こういったケースは極めてレアなものだ。
これらの点を考慮すると、彼らが乗っている可能性は低いと思えた。
(でも、あのメモを見た人間が私達だけとは限らない……もし、あのメモを見た人間の中に殺し合いに乗った人間がいたとしたら……)
(そういった人間と鉢合わせになった時、一戦交えるということも十分起こりえる事だわ……)
(ここはやはり保険をかけたほうがいいわね……)
だが、ハンドルを握ったまま純一の言葉を頭の中でリピートしながら、つぐみはしばし思案する。
「純一、万一の事もあるからあなたの銃、ディパックの一番上に放り込んでおいた方がいいわよ」
「え?……ああ、分かった」
「それから、あなた銃の腕は素人でしょ?だったらセレクターはセミオートにしておいた方がいいわ。フルオートだったら撃ちつくすのに5秒もかからないわよ、それ」
「ありがとう、そこまで気を使ってくれて」
(思えば、音夢やネリネにはこんなアドバイスしなかったわね……)
つぐみは、そんな事を思いつつプールに向けて車を走らせる。
そして純一との間に生まれたもの――音夢やネリネと組んだときには無かった信頼関係――を心に巡らせながら。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
車が走り去った後、悠人と衛は路地裏から姿を現した。
そのまま北に走り去ったみたいで、車が戻ってくる様子は微塵も無い。
「行ったみたいだな……」
「うん、だけどあの方向そのまま行ったら……」
「ああ、判っているさ衛。これは大変な事になったぞ……」
二人は顔を見合わせ互いに不安な顔つきになる。
先ほどの車は間違いなく、博物館で自分達を襲撃した少女二人を乗せていた車と同じものだ。
窓ガラスが閉まっていたのでよく判らなかったが、少なくとも運転席と助手席に計2名は確実に乗っているのは確かだった。
(この位置からじゃ、連中が何処に行くのかさっぱり判らないな。3人に連絡しようにも、ここから歩いたところで絶対に追いつく事はできない)
悠人は、今頃おそらくはレジャービルを目指しているであろう3人へどうにかして連絡する手段を考える。
いっそのこと襲撃者の様に、車に乗って移動することも考えたが運転に自信が無いし、そんな状況で衛を同乗させるとなればリスクが大きすぎる。
「……さん、悠人さんっ!」
このまま探索を続行するべきか、すぐに車を追うべきか悠人は悩んでいたが、衛の声で現実に引き戻された。
「どうした、衛?」
「確かここって電気が通じているんでしょ?それなら電話とかかけられない?」
衛が指差す方向を見ると、そこには電話ボックスが鎮座していた。
「電話か……確かに盲点だったな。ありがとう衛、すぐかけてみる!」
悠人は、早速電話の受話器を取ったものの大事な事に気が付いた。
肝心の小銭をまったく持ってなかったのだ……。
だが、受話器に耳を当てると電話機独特の電子音がする。
つまりこれは小銭さえ入れたら通話可能ということだ。
(小銭を調達している暇は無いな……それなら)
悠人は電話ボックスから電話帳だけを持ち出すと、衛と共にオフィスビルの一つへ裏口から入っていった。
幸い、オフィスビルの事務所内にある電話もつながるらしく、悠人はすぐに電話帳を開いてレジャービルの電話番号を探し出す。
電話帳には、索引が無い為探すのに苦労するかと思ったが、意外な方法で探すページを絞り込む事が出来た。
電話帳の五十音順の目次代わりに振られている「A-1」「A-2」の番号。
それは支給品の地図に振られたエリアの番号らしかった。
これに注目した悠人と衛はさっそくレジャービルのある「D-1」の項をしらみつぶしに調べていく。
調べ始めて数分後、D-1項の最後のページをめくった時、そこには
「○○レジャービル……***-****-****」
と電話番号が記されていた。
「よし!これだっ!」
「やったぁっ!!」
思わずガッツポーズを作る悠人と親指を立てる衛。
だが、電話をかけた先にあの3人がいてくれなくては意味が無い。
なによりあの襲撃者が電話を取られるても困る。
(その時は速攻で電話を切るだけだ)
3人がもうレジャービルに到着している事を祈りつつ悠人はレジャービルの電話番号を打ち込む。
番号を打ち終えるとすぐにコール音が響きだした。
PRRRR、PRRRR……
(まだか?まだでてくれないのか?)
(お願い、誰でもいいから早く出てよ……!)
二人は祈るような気持ちで電話に誰かが出るのをひたすら待つ。
しかし、まだコール音がむなしく響くだけである。
PRRRR、PRRRR、PRRR……
5回、6回……コール音がむなしく繰り返されていく。
(やはりダメか……仕方が無い……)
コール音は既に10回を超えて20回に達しようとしている。
そのコール音が30回に達し、もう二人が諦めようとしたその時……。
PRRRR、PRRRR、PRRRR……ガチャ
「もしもし、そっちはレジャービルか?」
念の為、悠人は電話をとった相手の名前を聞くより先に場所を確認する。
この電話番号が主催者によるダミーとも考えられるからだ。
悠人が受話器の向こう側の反応を待つ。
一瞬の沈黙、そして。
『はい、こちらはレジャービルです……ってその声、高嶺さん!?』
「ああ、そうだよ。二見さんか?」
良かった。もう到着してくれてたかと悠人は安堵する。
声のトーンから瑛理子であるのはすぐにわかった。
悠人はそのまま用件を伝え始める。
|110:[[誰にだって人を信じる権利はある、難しいのはその履行]]|投下順に読む|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|110:[[誰にだって人を信じる権利はある、難しいのはその履行]]|時系列順に読む|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|高嶺悠人|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|衛|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|ハクオロ|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|二見瑛理子|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|103:[[星の館]]|神尾観鈴|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|100:[[I do not die; cannot die]]|朝倉純一|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
|100:[[I do not die; cannot die]]|小町つぐみ|111:[[完璧な間違い(後編)]]|
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