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「CROSS††POINT」(2007/08/07 (火) 03:45:53) の最新版変更点
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**CROSS††POINT ◆tu4bghlMI
「はぁっ……はぁっ……やっと森を抜けた。
ちくしょー、あのヘタレめ……。こんなに、ボクに、苦労かけやがって……」
きぬは廃線の上、ボロボロに錆付いたレールの上で肩で息をしながら悪態をつく。
正直な話、もう身体は疲労で崩れ落ちそうなくらいボロボロになっている。
無理も無い話だ。
彼女はこの島にやって来てから今の今まで、ずっと走りっぱなしだったのだから。
マシンガンを乱射する空飛ぶ魔法少女に追いかけられたり。
稟と一度分かれてから、クールに病院で待ち合わせをするつもりだったのに何故か正反対の方向にあるキラキラと光る海を拝む羽目になったり。
そして。
放送の後は何も考えられなくなって、ただ走って、泣いて、叫んで、そしてまた走って。
瑞穂、アルルゥ、アセリアと出会い、別れて。
闇と静寂が支配する森の中を一気に突っ走ってここまで来たのだ。
実際、もう何時間走り続けて来たのか見当もつかない。
荷物は逃げる際にほとんど失ってしまった。
故に時間も、他の参加者も、現在位置も、全てあの一瞬の記憶と感覚に頼るしかない。
皮肉にも、皮肉にも放送のおかげで今が一日目の朝六時以降だという事だけは分かるのだが。
そう考えると最低、六時間。おそらく体感的には八時間くらいだろうか。
とにかく島を駆け回っていた事になる。
野山を裸足で走り回る田舎の子供では無いのだから、もっとクールで理知的な行動を取りたいものだ。
もっとも、普段の自分が姫にこそ劣るものの、よっぴーと肩を並べるくらいには冷静なレディである事は重々承知な訳だが。
「まぁ、ボクにとっちゃこの程度の逆境、どうってことないけどね。
……ふぅ。さてと、病院は――」
……。
…………あれ?
「病院、どっちだ?」
■
きぬが支給品一式を所持していたのは稟と出会うまでの時間と、稟と出会い他愛も無い会話を交わしたほんの数分の間だけ。
そして中身を確認したのも後者のほんのわずかな時間に過ぎない。だから自分は時計すら持っていない。
荷物をほとんど置き去りにして、さくらから逃げ出したせいだ。
コンパス?地図?もちろん、そんなもの持っている訳が無い。
というか、この二つが無いのによくココまで来れたものだ。
下手をしたら森の中で迷って、迷子になっていた可能性も大いにあるというのに。
「やべーな……てかここ何処だよ。っと廃線廃線廃線……」
頭の中に、ほんの数秒しか確認していない地図を思い描く。
ぼんやり、本当にぼんやりとだが島が形になる。
……そう、確か川を挟んだ南側に病院はあったはずだ。
困った事は自分が川の左岸にいるのか、右岸にいるのか分からないという事。
こんな事になるくらいならば、瑞穂達に地図を借りるか現在位置を尋ねておくべきだった。
何も考えずに走り回っていた時間が長過ぎるのだ
北も南も分からない以上、自分がどこにいるのかという安易な決め付けは出来ない。
とはいえレールは確か島をほぼ縦に縦断出来るくらいの距離が轢かれていたはず。
つまり、とりあえず方角的には南に向かえば良い事になる。
「うん、ボクやるじゃん。素晴らしい記憶力。さてと、どっちが南かな……と、ん?」
何気なく辺りを見回した時に、視界の中に何か赤い、ものがあることに気付いた。
赤。天然に赤い物体は意外と少ない。
こんな樹木も生えていないような場所では、果実が落ちていると言う可能性はほとんど無いし、ジュース缶のような人工物である可能性が高い。
何となく、何となくではあるのだがきぬはコレが気になった。妙に頭の中に引っ掛かりを残したのだ。
だから近づいた。本当にそれだけだった。
「え……て、ちょ、マジで!?嘘、うちの……制服じゃん……」
そこに丸めるように捨ててあったのは汚れた血で濡れた、今自分が身に纏っているのと同じ竜鳴館の制服だった。
白い布地の部分から赤いネクタイの部分まで、まるでホースで血液をぶっかけたように紅で染まっている。
既に鮮やかな赤、とは言えずその大半が真っ黒に変色していたのだが。
恐る恐る手を伸ばす。触る。冷たい。固い。パリパリする。
人の体温は感じられない。明らかにこの場所に脱ぎ捨てられてから数時間は経過している感じだ。
よっぴー?姫?乙女さん?自分以外にこの島に来ている竜鳴館の人間は三人だけだ。
何故かうちの制服が他の参加者にも支給されていた、という可能性も無くは無いがコレはこじ付けに近い。
普通は彼女達のどちらかがここに脱ぎ捨てた、と考えるのが妥当だ。
だが制服を脱いで、下着のまま島を闊歩しているとは考えにくい。
よっぴー達がそんな色情狂、発情魔のような真似をするはずが無い。ならば何かが原因で血を被り、着替えたと考えるのが自然。
そしてもう一つ。『この血は誰の血なのか』という事だ。
姫なら自分に襲い掛かってきた人間をぶちのめす、程度の事はするかもしれない。
それでも流石にここまで血が流れるほど相手を痛めつけるとは思わない。
ソレよりも誰かに襲われて血を流した、と考えた方が分かり易い。
だが、こんなに大量の血を流している人間がわざわざ着替えをするか、と言われれば疑問が湧く。
自分の頭ではこれ以上の分析は不可能だ。
「あーもう、分かんねぇ。とりあえずこの制服は拾って……。えーとこっち、行くか」
左と右、どちらに行くべきか。正直はきぬは迷っていた。
だが、彼女も一応女子高生である。
不可解な血染めのセーラー服を不気味に思うのも仕方が無い事だ。
もっとも誰であろうとこの気味の悪さは感じ取るだろうが。
竜鳴館の制服は彼女が森を抜けた地点から見て、右側にあった。
だから彼女は、左に進む事にした。
つまり北進。病院とは正反対の方向へ。
■
急げ、急げ、急げ。
真っ直ぐ、このまま真っ直ぐ前へ。
地図によるとこのまま突っ切れば森にぶち当たるはず。
そこで原付を乗り捨てる事になると思うが、仕方無い。
さすがに樹木や茂み、段差や不安定な足場を気にしながらこの乗り物に執着する必要は無い。
そこからは徒歩だ。
いや違う、歩いてなどいられるはずが無い。ただ無心で脚を前へ突き動かすのみ。
舗装されたアスファルトやよく世話の行き届いた花壇が視界に入っては消える。
見据えるのはただ前方のみ。寄り道をしている暇は無い。
風を切って進む。今何キロ出ているのだろう。顎の辺りを刺激する風が少し心地よく感じる。
「痒いな……な。虫刺されの薬でもあればよかったんだけど。このアンプルは……試せないよな、いくらなんでも」
稟は誰に言うとでも無しに、そう呟く。
目覚めて、デイパックを漁るといつの間にか俺の荷物の中に"銃"が加わっていた。
だがソレはよく刑事もののドラマや海外の映画などで使われる、鉛弾を発射する鉄の凶器では無い。"麻酔銃"だ。
当然、弾丸を火薬で飛ばす訳ではない。これはエアガンの一種。
もっとも最近のエアガンの進歩は凄まじく、飛距離数十メートルを誇るものもあるらしいが。
支給された弾丸、もといアンプルは二種類。無記名の注射器と『H173』と書かれた注射器だ。
この『H173』がどのような効果を及ぼすのかは分からない。
とはいえこのアルファベットと数字の組み合わせは、おそらく何かの病原菌である可能性が高い。
一時期流行った食中毒の菌も、似たような名前だった事だし。
そう考えると無記名の注射器の方に注目したくなる。
何か『人間以外の生き物』が近くにいれば試し撃ち出来るのだが、この島に来てから人間にしか出くわしていない。
確率的には"麻酔銃"なのだから、純粋に麻酔である可能性が最も高いのだが……。
「さっきはどっちを撃ったんだろうな……。とりあえず、威嚇用とはいえ病原菌を注射するのはマズイ……か」
原付を運転する片手間に弾丸を銃に込める。どうやら弾は一度に一つだけしか入れる事が出来ないらしい。
連射が利かないというのは確実に当てなければならないと言う事。
そしてコレはエアガンであるという事。
相手にこれが知られてしまえば、実際何の威嚇にもならないだろう。
危険人物と相対する場合でも100%命中させる事が可能な距離まで近づかなければならない、という結論に達する。
――そんなに強力な武装って訳でも無いか……厳しいな。
先程の病院の爆発から考えるに、おそらく爆薬を支給された参加者もいたのでは無いだろうか。
それに麻酔銃などという奇をてらった物では無く、"本物"の銃を持っている人間も存在するのだ。
安心出来る装備では決して無い。
ふと視界の中に見慣れた形の建物が見える。学校だ。
古今東西、基本的に学校と言うものの構造は変わらない。
自分が通うバーベナ学園もモデル校的な側面は持ち合わせているが、校舎の形などの基本的な部分は一般的な学校の概念と変わりはない。
「戻れないよな……もう、今までの日常には」
吐き出すようにそう零す。当たり前のように自分の命を狙ってくる人間。
映画の中でしか見られないようなドラスティックな光景。
そして最愛の人の死。
違う。既に自分の中の常識が通用する世界ではないし、環境もまるで別物。
楓や亜沙先輩やネリネに関しても今、どうなってしまっているのか分からない。
大体、自分は最初の放送を聞き逃している。目覚めたときは側に六時過ぎであったのだから。
今まで出会った人間がどうなったのか、まるで分からないのだ。
「あれ……蟹、沢?」
ハッとする。思わずブレーキレバーを思い切り握り締めてしまう。
急停止。反動で身体が前方に吹っ飛びそうになる。
そうだ、蟹沢きぬ。俺はアイツと別れて、そして――。
「糞ッ!!何で忘れてたんだ!!
今は……十一時か、日の出なんて何時間前だよ!!」
『上手く撒けたらこの先の街……そうだな、病院で待ってる。
日の出までに来なかったら置いてくからな』
俺は馬鹿か。自分でそんな軽口を叩いておきながら、そんな大切な事を忘れていたなんて。
蟹沢の性格からして、病院に到着できたとして、そこに俺がいなかったらどうするのだろうか。
そのまま待ち続ける?
呆れて他の場所に移動する?
どちらの可能性のほうが高い?
……そうだ、放送。放送を基準に行動するに違いない。
死んだ者は動かない、話さない、考えない。
つまりそれは生きている人間にとって、全てその逆説が成り立つ事になる。
俺が生きている限り、アイツは病院の周辺にいるはずだ。俺が到着する可能性を信じて。
アイツはちゃらんぽらんなように見えるが、実直な人間だと思う。
必ず、生きていれば病院にやって来る。
今から俺が行って既に移動してしまっていたとしても、書置きの一つくらいあるはずだ。
……だが待てよ。俺はさっきまで"何処"にいた?
そうだ、俺は『病院に』いた。
六時前に到着し、出たのも八時過ぎ。しかし蟹沢らしき人物とは一切出会っていない。
常識的に考えれば『まだ来ていなかった』か『もう来れなくなった』その二択になる。
どちら……だ?後者は正直考えたくない可能性だ。明らかに判断材料が足りない。
放送を聞き逃した事がまさかここまで痛手になるとは思わなかった。
「無視する事なんて……出来るわけ無いだろ」
俺が神社を目指しているのは、そこに人殺しが集結しているという情報を得たからだ。
逆を言えば神社はそんな人間が、互いに潰し合いをしてくれる可能性が存在する場所でもある。
加えてこの場所に楓達がいる、という確定的な情報がある訳では無いのも大きい。
危険で今すぐにでも駆け付けたい場所である事は確かだが、確実に待っている相手がいるのにそれを無視する事は出来ない。
稟は原付のキーを回した。
丁度学校の校門の前で減速させつつ、慎重にUターンさせる。
視界の端で土が掘り返され、小山が出来ているのを視認したが、今はそんなものに構っている時間は無い。
ひとまず病院へ。先程の連中と出くわす可能性もあるが、未だあの倒壊しつつある病院にいるとは思えない。
それに今の俺には機動力がある。出くわしても舗装された道なら十分に振り切る事が出来るはずだ。
■
行く先の見えない深い森を抜けると学校であった。
思わず顔が青くなった。焦りに脚が止まった。
「あれ……なんで?」
学校。学校だ。どこをどう見ても学校である。
蟹沢きぬはたっぷりと時間をかけてココまで辿り着いた。否、時間をかけるしか無かった。
なにしろ彼女の身体は既に満身創痍状態に近い。コレまでは完全に気力で手足を動かしているに近い状態だったのだ。
疲労が溜まり過ぎている。本来ならば少しは休憩を挟んだほうがいいレベルのソレが。
途中、山小屋のような場所に立ち寄ったが中にめぼしい物は無かった。
明らかに誰かが既に訪れた痕跡があったことこそ僥倖だったが、それ以外に役に立ちそうな物は何も見つけることが出来なかった。
そしてふらふらになりながら脚を進めて、いい加減目的地に辿り着いた、そう思えばコレだ。
明らかに運が無い。
「学校……って、えーと地図を思い出すと……真逆? ってオイオイ、ボク明らかに内の方に向かってんじゃん!!」
ミスった。完全に判断ミスだ。
左か右、なんとなく左を選んでしまったがどうも正解はもう片方の答えだったらしい。
時間は……校舎の入り口の上のほうに設置された時計によると、今は十一時三十分らしい。
そうだ、少し学校の中に寄って行こう。色々役に立つ道具があるはずだ。
時計と地図、最低でもこれくらいは手に入れておきたい。
もう約束の時間からは相当な時間が経過している。
既に稟は病院からいなくなっているのではないかと言う不安が頭を過ぎる。
「ま、あのヘタレも本当にボクを置いていくような鬼畜な真似はしねーだろうし……ちょっと寄ってくか」
そう自分に言い聞かせると、きぬは茂みから出て、校門の方に向かう。
そこで彼女は、明らかに自らの日常の感覚とは異質な、二つの違和感に気付いた。
一つ目が小山。校門の柱の部分に明らかに最近掘り返されたと思わしき土の山が出来ている。
こんもりと盛り上がった土肌の上には三つの花が置かれ、まるでソレは何かを供養しているかのように見えた。
二つ目がその小山の少し先に見えた、赤い水溜り、ではない血の池。
身体のどこか一部分を蛇口にでもしたようなおびただしい量の血液。
「お……コレ、コレって……マジで……?」
二つを結びつける。
大量の血液。何か大きな質量を持つ物体を埋めたような土の山。
血液、土山。つまりは――。
「は、は、は……マジかよ。じゃあこの土の中には……死体、が埋まってる事……か」
ゴクリと息を飲み込む。
思わずその場にへたり込んでしまう。
無理もない。様々な襲撃者と出くわしてはいたものの、彼女が生の死体と出くわしたのはコレが初めてなのだから。
その時。
後ろに付いた右手に何か硬い物が当たる。
掌に感じた芝生の感触と同時に指先に感じる鉄の触覚。
「痛ッ!?」
皮膚が切れる。赤いモノが飛び出す。指先から出てきたソレがすぐ側の血液と混じる。
気味が悪い。気持ち悪い。湧き上がる生理的な嫌悪感。
誰のものとも分からない血と自分の血。それが混淆する、という奇妙な体験に目が眩みそうになる。
手を切ったのは何か、金属の固まりと思しき、鉄の破片だった。
目を凝らしてみると辺り一面にパラパラと、似たようなものが見受けられる。
ガラスでなくて、ココまで鉄が細かくなった姿は初めて見た。
きぬは辺りを見回す。
土山、血の池。それ以外にこの場所に違和感を感じる原因は存在しない。
おそらくこの場所で戦闘が行われ、そして誰かが命を落としたのだろう。
人間を埋葬した跡があるという事は、その人物には仲間がいた、と言う事になる。
その人物はどこに行ったのだろうか。
自分の手で今の今まで生きていた人間の墓を作る気持ちと言うのは、どんな感じがするのだろう。
先程のセーラ服の件といい、よく分からない事が多過ぎるのだ。
深く考えれば答えが出るような問題ではないのが難しい。
ならば。
とりあえず、難しい事を考えるのはソレが得意な奴にやらせる。これでいいのではないだろうか。
稟にしろ、姫やよっぴーにしろ、物事の分析に関しては自分よりもよっぽど長けているはず。
無理をして自分がその役割を担おうとする必要はどこにも無い。
「……でも気味悪いな、ホント。変な事ばっかじゃん」
ため息。そして一瞬垣間見せる不安な表情。
血染めの竜鳴館のセーラ服。
謎の血溜まり。
そして、埋葬された人間の墓。
このほんの数時間の間に、自分に降りかかって来た謎にはまるで"筋"と言うものが無い。
この周辺で命のやり取りが行われた、それすら信じ難い現実であるのだ。
だがそこから感じる不気味さは所詮、感覚的なものであって、悲しみや怒りといった直接的な感情に結びつくレベルにまでは達していない。
それは放送の際、名簿で名前を確認しただけの人間の名前が次々と読み上げられていくのを静観する状態と似ている。
この時の自分の心を支配するのは『知り合いの名前が呼ばれないで欲しい』という感情だけ。
知らない人間の名前が呼ばれる事に対しては、悲劇めいた感想を持ちはしないものだ。
せいぜい『もうこんなに沢山の人間が死んだなんて……』くらい。自らの冷静さを奪い去るほどの効力を発揮はしない。
「……ま、いいか。それより、地図とか探さねーとマトモにどこにも行けないぜ」
きぬは両足に力を込めると力強く立ち上がった。
掌をキツく、一度握り締める。
その顔つきにもう、迷いは無い。校門をくぐる。そして校舎に向かってゆっくりと歩き出す。
彼女の親友のうち、既に二人はこの世にいない。
生半可な不思議と出くわしても、それに怯え、意志を曲げるような不実はもう彼女にとっては在りえない事となっていた。
彼女は背負っている。死んでいったレオとフカヒレの意志を。
そしてこの馬鹿げたゲームを考えた人間を仲間と協力して一度、痛い目に合わせる。
ソレが今、蟹沢きぬがやらなければならない唯一の事なのだから。
女々しい事で涙を流すわけには、いかない。
【E-5 学校/1日目 昼】
【蟹沢きぬ@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:精神高揚。両肘と両膝に擦り傷。左手指先に切り傷。数箇所ほど蜂に刺された形跡。疲労極大。】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:学校で地図や時計などの道具を入手
2:待ってろよヘタレ(土見稟と合流)
3:稟と合流後、博物館へ急ぐ(宮小路瑞穂達と合流)
4:ゲームをぶっ潰す
5:スバル、乙女さん、姫、よっぴーのうち誰かと合流したい。
【備考】
※レオの死を乗り越えました
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。
【F-4 住宅街/1日目 昼】
【土見稟@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:麻酔銃(IMI ジェリコ941型-麻酔薬装填)】
【所持品:支給品一式x2、投げナイフ一本、ハクオロの鉄扇@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、拡声器、
麻酔薬入り注射器×3 H173入り注射器×2、炭酸飲料水、食料品沢山(刺激物多し)】
【状態:L5侵蝕中。背中に軽い打撲。頚部にかなりの痒み(出血中)。腕に痺れ。酷い頭痛】
【思考・行動】
基本方針:参加者全員でゲームから脱出、人を傷つける気はない。
1:L5侵攻中
2:襲ってくるならば戦うしかない?
3:病院で蟹沢と合流(少し待ってこなければ移動)
4:第一回放送の内容を知りたい
5:神社へ向かう(ネリネ、楓、亜沙がいれば救出)
6:ネリネ、楓、亜沙の捜索
7:水澤真央が気になる
8:もう誰も悲しませない
【備考】
※シアルートEnd後からやってきました。
※H173が二本撃たれています。今後のL5の侵蝕状況は次の書き手さんにお任せします。
※倉成武を危険人物と断定
※稟の乗っている原付車の燃料は残り半分です。
※稟は第一回放送を聞き逃しています
|098:[[交錯する意志]]|投下順に読む|100:[[I do not die; cannot die]]|
|097:[[静かな湖畔?]]|時系列順に読む|104:[[来客の多い百貨店]]|
|092:[[聖者の行進]]|土見稟||
|090:[[無垢なる刃]]|蟹沢きぬ||
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**CROSS††POINT ◆tu4bghlMI
「はぁっ……はぁっ……やっと森を抜けた。
ちくしょー、あのヘタレめ……。こんなに、ボクに、苦労かけやがって……」
きぬは廃線の上、ボロボロに錆付いたレールの上で肩で息をしながら悪態をつく。
正直な話、もう身体は疲労で崩れ落ちそうなくらいボロボロになっている。
無理も無い話だ。
彼女はこの島にやって来てから今の今まで、ずっと走りっぱなしだったのだから。
マシンガンを乱射する空飛ぶ魔法少女に追いかけられたり。
稟と一度分かれてから、クールに病院で待ち合わせをするつもりだったのに何故か正反対の方向にあるキラキラと光る海を拝む羽目になったり。
そして。
放送の後は何も考えられなくなって、ただ走って、泣いて、叫んで、そしてまた走って。
瑞穂、アルルゥ、アセリアと出会い、別れて。
闇と静寂が支配する森の中を一気に突っ走ってここまで来たのだ。
実際、もう何時間走り続けて来たのか見当もつかない。
荷物は逃げる際にほとんど失ってしまった。
故に時間も、他の参加者も、現在位置も、全てあの一瞬の記憶と感覚に頼るしかない。
皮肉にも、皮肉にも放送のおかげで今が一日目の朝六時以降だという事だけは分かるのだが。
そう考えると最低、六時間。おそらく体感的には八時間くらいだろうか。
とにかく島を駆け回っていた事になる。
野山を裸足で走り回る田舎の子供では無いのだから、もっとクールで理知的な行動を取りたいものだ。
もっとも、普段の自分が姫にこそ劣るものの、よっぴーと肩を並べるくらいには冷静なレディである事は重々承知な訳だが。
「まぁ、ボクにとっちゃこの程度の逆境、どうってことないけどね。
……ふぅ。さてと、病院は――」
……。
…………あれ?
「病院、どっちだ?」
■
きぬが支給品一式を所持していたのは稟と出会うまでの時間と、稟と出会い他愛も無い会話を交わしたほんの数分の間だけ。
そして中身を確認したのも後者のほんのわずかな時間に過ぎない。だから自分は時計すら持っていない。
荷物をほとんど置き去りにして、さくらから逃げ出したせいだ。
コンパス?地図?もちろん、そんなもの持っている訳が無い。
というか、この二つが無いのによくココまで来れたものだ。
下手をしたら森の中で迷って、迷子になっていた可能性も大いにあるというのに。
「やべーな……てかここ何処だよ。っと廃線廃線廃線……」
頭の中に、ほんの数秒しか確認していない地図を思い描く。
ぼんやり、本当にぼんやりとだが島が形になる。
……そう、確か川を挟んだ南側に病院はあったはずだ。
困った事は自分が川の左岸にいるのか、右岸にいるのか分からないという事。
こんな事になるくらいならば、瑞穂達に地図を借りるか現在位置を尋ねておくべきだった。
何も考えずに走り回っていた時間が長過ぎるのだ
北も南も分からない以上、自分がどこにいるのかという安易な決め付けは出来ない。
とはいえレールは確か島をほぼ縦に縦断出来るくらいの距離が轢かれていたはず。
つまり、とりあえず方角的には南に向かえば良い事になる。
「うん、ボクやるじゃん。素晴らしい記憶力。さてと、どっちが南かな……と、ん?」
何気なく辺りを見回した時に、視界の中に何か赤い、ものがあることに気付いた。
赤。天然に赤い物体は意外と少ない。
こんな樹木も生えていないような場所では、果実が落ちていると言う可能性はほとんど無いし、ジュース缶のような人工物である可能性が高い。
何となく、何となくではあるのだがきぬはコレが気になった。妙に頭の中に引っ掛かりを残したのだ。
だから近づいた。本当にそれだけだった。
「え……て、ちょ、マジで!?嘘、うちの……制服じゃん……」
そこに丸めるように捨ててあったのは汚れた血で濡れた、今自分が身に纏っているのと同じ竜鳴館の制服だった。
白い布地の部分から赤いネクタイの部分まで、まるでホースで血液をぶっかけたように紅で染まっている。
既に鮮やかな赤、とは言えずその大半が真っ黒に変色していたのだが。
恐る恐る手を伸ばす。触る。冷たい。固い。パリパリする。
人の体温は感じられない。明らかにこの場所に脱ぎ捨てられてから数時間は経過している感じだ。
よっぴー?姫?乙女さん?自分以外にこの島に来ている竜鳴館の人間は三人だけだ。
何故かうちの制服が他の参加者にも支給されていた、という可能性も無くは無いがコレはこじ付けに近い。
普通は彼女達のどちらかがここに脱ぎ捨てた、と考えるのが妥当だ。
だが制服を脱いで、下着のまま島を闊歩しているとは考えにくい。
よっぴー達がそんな色情狂、発情魔のような真似をするはずが無い。ならば何かが原因で血を被り、着替えたと考えるのが自然。
そしてもう一つ。『この血は誰の血なのか』という事だ。
姫なら自分に襲い掛かってきた人間をぶちのめす、程度の事はするかもしれない。
それでも流石にここまで血が流れるほど相手を痛めつけるとは思わない。
ソレよりも誰かに襲われて血を流した、と考えた方が分かり易い。
だが、こんなに大量の血を流している人間がわざわざ着替えをするか、と言われれば疑問が湧く。
自分の頭ではこれ以上の分析は不可能だ。
「あーもう、分かんねぇ。とりあえずこの制服は拾って……。えーとこっち、行くか」
左と右、どちらに行くべきか。正直はきぬは迷っていた。
だが、彼女も一応女子高生である。
不可解な血染めのセーラー服を不気味に思うのも仕方が無い事だ。
もっとも誰であろうとこの気味の悪さは感じ取るだろうが。
竜鳴館の制服は彼女が森を抜けた地点から見て、右側にあった。
だから彼女は、左に進む事にした。
つまり北進。病院とは正反対の方向へ。
■
急げ、急げ、急げ。
真っ直ぐ、このまま真っ直ぐ前へ。
地図によるとこのまま突っ切れば森にぶち当たるはず。
そこで原付を乗り捨てる事になると思うが、仕方無い。
さすがに樹木や茂み、段差や不安定な足場を気にしながらこの乗り物に執着する必要は無い。
そこからは徒歩だ。
いや違う、歩いてなどいられるはずが無い。ただ無心で脚を前へ突き動かすのみ。
舗装されたアスファルトやよく世話の行き届いた花壇が視界に入っては消える。
見据えるのはただ前方のみ。寄り道をしている暇は無い。
風を切って進む。今何キロ出ているのだろう。顎の辺りを刺激する風が少し心地よく感じる。
「痒いな……な。虫刺されの薬でもあればよかったんだけど。このアンプルは……試せないよな、いくらなんでも」
稟は誰に言うとでも無しに、そう呟く。
目覚めて、デイパックを漁るといつの間にか俺の荷物の中に"銃"が加わっていた。
だがソレはよく刑事もののドラマや海外の映画などで使われる、鉛弾を発射する鉄の凶器では無い。"麻酔銃"だ。
当然、弾丸を火薬で飛ばす訳ではない。これはエアガンの一種。
もっとも最近のエアガンの進歩は凄まじく、飛距離数十メートルを誇るものもあるらしいが。
支給された弾丸、もといアンプルは二種類。無記名の注射器と『H173』と書かれた注射器だ。
この『H173』がどのような効果を及ぼすのかは分からない。
とはいえこのアルファベットと数字の組み合わせは、おそらく何かの病原菌である可能性が高い。
一時期流行った食中毒の菌も、似たような名前だった事だし。
そう考えると無記名の注射器の方に注目したくなる。
何か『人間以外の生き物』が近くにいれば試し撃ち出来るのだが、この島に来てから人間にしか出くわしていない。
確率的には"麻酔銃"なのだから、純粋に麻酔である可能性が最も高いのだが……。
「さっきはどっちを撃ったんだろうな……。とりあえず、威嚇用とはいえ病原菌を注射するのはマズイ……か」
原付を運転する片手間に弾丸を銃に込める。どうやら弾は一度に一つだけしか入れる事が出来ないらしい。
連射が利かないというのは確実に当てなければならないと言う事。
そしてコレはエアガンであるという事。
相手にこれが知られてしまえば、実際何の威嚇にもならないだろう。
危険人物と相対する場合でも100%命中させる事が可能な距離まで近づかなければならない、という結論に達する。
――そんなに強力な武装って訳でも無いか……厳しいな。
先程の病院の爆発から考えるに、おそらく爆薬を支給された参加者もいたのでは無いだろうか。
それに麻酔銃などという奇をてらった物では無く、"本物"の銃を持っている人間も存在するのだ。
安心出来る装備では決して無い。
ふと視界の中に見慣れた形の建物が見える。学校だ。
古今東西、基本的に学校と言うものの構造は変わらない。
自分が通うバーベナ学園もモデル校的な側面は持ち合わせているが、校舎の形などの基本的な部分は一般的な学校の概念と変わりはない。
「戻れないよな……もう、今までの日常には」
吐き出すようにそう零す。当たり前のように自分の命を狙ってくる人間。
映画の中でしか見られないようなドラスティックな光景。
そして最愛の人の死。
違う。既に自分の中の常識が通用する世界ではないし、環境もまるで別物。
楓や亜沙先輩やネリネに関しても今、どうなってしまっているのか分からない。
大体、自分は最初の放送を聞き逃している。目覚めたときは側に六時過ぎであったのだから。
今まで出会った人間がどうなったのか、まるで分からないのだ。
「あれ……蟹、沢?」
ハッとする。思わずブレーキレバーを思い切り握り締めてしまう。
急停止。反動で身体が前方に吹っ飛びそうになる。
そうだ、蟹沢きぬ。俺はアイツと別れて、そして――。
「糞ッ!!何で忘れてたんだ!!
今は……十一時か、日の出なんて何時間前だよ!!」
『上手く撒けたらこの先の街……そうだな、病院で待ってる。
日の出までに来なかったら置いてくからな』
俺は馬鹿か。自分でそんな軽口を叩いておきながら、そんな大切な事を忘れていたなんて。
蟹沢の性格からして、病院に到着できたとして、そこに俺がいなかったらどうするのだろうか。
そのまま待ち続ける?
呆れて他の場所に移動する?
どちらの可能性のほうが高い?
……そうだ、放送。放送を基準に行動するに違いない。
死んだ者は動かない、話さない、考えない。
つまりそれは生きている人間にとって、全てその逆説が成り立つ事になる。
俺が生きている限り、アイツは病院の周辺にいるはずだ。俺が到着する可能性を信じて。
アイツはちゃらんぽらんなように見えるが、実直な人間だと思う。
必ず、生きていれば病院にやって来る。
今から俺が行って既に移動してしまっていたとしても、書置きの一つくらいあるはずだ。
……だが待てよ。俺はさっきまで"何処"にいた?
そうだ、俺は『病院に』いた。
六時前に到着し、出たのも八時過ぎ。しかし蟹沢らしき人物とは一切出会っていない。
常識的に考えれば『まだ来ていなかった』か『もう来れなくなった』その二択になる。
どちら……だ?後者は正直考えたくない可能性だ。明らかに判断材料が足りない。
放送を聞き逃した事がまさかここまで痛手になるとは思わなかった。
「無視する事なんて……出来るわけ無いだろ」
俺が神社を目指しているのは、そこに人殺しが集結しているという情報を得たからだ。
逆を言えば神社はそんな人間が、互いに潰し合いをしてくれる可能性が存在する場所でもある。
加えてこの場所に楓達がいる、という確定的な情報がある訳では無いのも大きい。
危険で今すぐにでも駆け付けたい場所である事は確かだが、確実に待っている相手がいるのにそれを無視する事は出来ない。
稟は原付のキーを回した。
丁度学校の校門の前で減速させつつ、慎重にUターンさせる。
視界の端で土が掘り返され、小山が出来ているのを視認したが、今はそんなものに構っている時間は無い。
ひとまず病院へ。先程の連中と出くわす可能性もあるが、未だあの倒壊しつつある病院にいるとは思えない。
それに今の俺には機動力がある。出くわしても舗装された道なら十分に振り切る事が出来るはずだ。
■
行く先の見えない深い森を抜けると学校であった。
思わず顔が青くなった。焦りに脚が止まった。
「あれ……なんで?」
学校。学校だ。どこをどう見ても学校である。
蟹沢きぬはたっぷりと時間をかけてココまで辿り着いた。否、時間をかけるしか無かった。
なにしろ彼女の身体は既に満身創痍状態に近い。コレまでは完全に気力で手足を動かしているに近い状態だったのだ。
疲労が溜まり過ぎている。本来ならば少しは休憩を挟んだほうがいいレベルのソレが。
途中、山小屋のような場所に立ち寄ったが中にめぼしい物は無かった。
明らかに誰かが既に訪れた痕跡があったことこそ僥倖だったが、それ以外に役に立ちそうな物は何も見つけることが出来なかった。
そしてふらふらになりながら脚を進めて、いい加減目的地に辿り着いた、そう思えばコレだ。
明らかに運が無い。
「学校……って、えーと地図を思い出すと……真逆? ってオイオイ、ボク明らかに内の方に向かってんじゃん!!」
ミスった。完全に判断ミスだ。
左か右、なんとなく左を選んでしまったがどうも正解はもう片方の答えだったらしい。
時間は……校舎の入り口の上のほうに設置された時計によると、今は十一時三十分らしい。
そうだ、少し学校の中に寄って行こう。色々役に立つ道具があるはずだ。
時計と地図、最低でもこれくらいは手に入れておきたい。
もう約束の時間からは相当な時間が経過している。
既に稟は病院からいなくなっているのではないかと言う不安が頭を過ぎる。
「ま、あのヘタレも本当にボクを置いていくような鬼畜な真似はしねーだろうし……ちょっと寄ってくか」
そう自分に言い聞かせると、きぬは茂みから出て、校門の方に向かう。
そこで彼女は、明らかに自らの日常の感覚とは異質な、二つの違和感に気付いた。
一つ目が小山。校門の柱の部分に明らかに最近掘り返されたと思わしき土の山が出来ている。
こんもりと盛り上がった土肌の上には三つの花が置かれ、まるでソレは何かを供養しているかのように見えた。
二つ目がその小山の少し先に見えた、赤い水溜り、ではない血の池。
身体のどこか一部分を蛇口にでもしたようなおびただしい量の血液。
「お……コレ、コレって……マジで……?」
二つを結びつける。
大量の血液。何か大きな質量を持つ物体を埋めたような土の山。
血液、土山。つまりは――。
「は、は、は……マジかよ。じゃあこの土の中には……死体、が埋まってる事……か」
ゴクリと息を飲み込む。
思わずその場にへたり込んでしまう。
無理もない。様々な襲撃者と出くわしてはいたものの、彼女が生の死体と出くわしたのはコレが初めてなのだから。
その時。
後ろに付いた右手に何か硬い物が当たる。
掌に感じた芝生の感触と同時に指先に感じる鉄の触覚。
「痛ッ!?」
皮膚が切れる。赤いモノが飛び出す。指先から出てきたソレがすぐ側の血液と混じる。
気味が悪い。気持ち悪い。湧き上がる生理的な嫌悪感。
誰のものとも分からない血と自分の血。それが混淆する、という奇妙な体験に目が眩みそうになる。
手を切ったのは何か、金属の固まりと思しき、鉄の破片だった。
目を凝らしてみると辺り一面にパラパラと、似たようなものが見受けられる。
ガラスでなくて、ココまで鉄が細かくなった姿は初めて見た。
きぬは辺りを見回す。
土山、血の池。それ以外にこの場所に違和感を感じる原因は存在しない。
おそらくこの場所で戦闘が行われ、そして誰かが命を落としたのだろう。
人間を埋葬した跡があるという事は、その人物には仲間がいた、と言う事になる。
その人物はどこに行ったのだろうか。
自分の手で今の今まで生きていた人間の墓を作る気持ちと言うのは、どんな感じがするのだろう。
先程のセーラ服の件といい、よく分からない事が多過ぎるのだ。
深く考えれば答えが出るような問題ではないのが難しい。
ならば。
とりあえず、難しい事を考えるのはソレが得意な奴にやらせる。これでいいのではないだろうか。
稟にしろ、姫やよっぴーにしろ、物事の分析に関しては自分よりもよっぽど長けているはず。
無理をして自分がその役割を担おうとする必要はどこにも無い。
「……でも気味悪いな、ホント。変な事ばっかじゃん」
ため息。そして一瞬垣間見せる不安な表情。
血染めの竜鳴館のセーラ服。
謎の血溜まり。
そして、埋葬された人間の墓。
このほんの数時間の間に、自分に降りかかって来た謎にはまるで"筋"と言うものが無い。
この周辺で命のやり取りが行われた、それすら信じ難い現実であるのだ。
だがそこから感じる不気味さは所詮、感覚的なものであって、悲しみや怒りといった直接的な感情に結びつくレベルにまでは達していない。
それは放送の際、名簿で名前を確認しただけの人間の名前が次々と読み上げられていくのを静観する状態と似ている。
この時の自分の心を支配するのは『知り合いの名前が呼ばれないで欲しい』という感情だけ。
知らない人間の名前が呼ばれる事に対しては、悲劇めいた感想を持ちはしないものだ。
せいぜい『もうこんなに沢山の人間が死んだなんて……』くらい。自らの冷静さを奪い去るほどの効力を発揮はしない。
「……ま、いいか。それより、地図とか探さねーとマトモにどこにも行けないぜ」
きぬは両足に力を込めると力強く立ち上がった。
掌をキツく、一度握り締める。
その顔つきにもう、迷いは無い。校門をくぐる。そして校舎に向かってゆっくりと歩き出す。
彼女の親友のうち、既に二人はこの世にいない。
生半可な不思議と出くわしても、それに怯え、意志を曲げるような不実はもう彼女にとっては在りえない事となっていた。
彼女は背負っている。死んでいったレオとフカヒレの意志を。
そしてこの馬鹿げたゲームを考えた人間を仲間と協力して一度、痛い目に合わせる。
ソレが今、蟹沢きぬがやらなければならない唯一の事なのだから。
女々しい事で涙を流すわけには、いかない。
【E-5 学校/1日目 昼】
【蟹沢きぬ@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:精神高揚。両肘と両膝に擦り傷。左手指先に切り傷。数箇所ほど蜂に刺された形跡。疲労極大。】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:学校で地図や時計などの道具を入手
2:待ってろよヘタレ(土見稟と合流)
3:稟と合流後、博物館へ急ぐ(宮小路瑞穂達と合流)
4:ゲームをぶっ潰す
5:スバル、乙女さん、姫、よっぴーのうち誰かと合流したい。
【備考】
※レオの死を乗り越えました
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。
【F-4 住宅街/1日目 昼】
【土見稟@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:麻酔銃(IMI ジェリコ941型-麻酔薬装填)】
【所持品:支給品一式x2、投げナイフ一本、ハクオロの鉄扇@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、拡声器、
麻酔薬入り注射器×3 H173入り注射器×2、炭酸飲料水、食料品沢山(刺激物多し)】
【状態:L5侵蝕中。背中に軽い打撲。頚部にかなりの痒み(出血中)。腕に痺れ。酷い頭痛】
【思考・行動】
基本方針:参加者全員でゲームから脱出、人を傷つける気はない。
1:L5侵攻中
2:襲ってくるならば戦うしかない?
3:病院で蟹沢と合流(少し待ってこなければ移動)
4:第一回放送の内容を知りたい
5:神社へ向かう(ネリネ、楓、亜沙がいれば救出)
6:ネリネ、楓、亜沙の捜索
7:水澤真央が気になる
8:もう誰も悲しませない
【備考】
※シアルートEnd後からやってきました。
※H173が二本撃たれています。今後のL5の侵蝕状況は次の書き手さんにお任せします。
※倉成武を危険人物と断定
※稟の乗っている原付車の燃料は残り半分です。
※稟は第一回放送を聞き逃しています
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