「魔法少女(後編)」(2007/07/26 (木) 23:29:37) の最新版変更点
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**魔法少女(後編)◆guAWf4RW62
◇ ◇ ◇
亜沙達が苦戦している最中、双葉恋太郎は未だ放送のショックから立ち直れないでいた。
それも仕方の無い事だろう――絶対に必要な存在を、失ってしまったのだから。
自分達は三人で一つだった。
自分と、沙羅と、双樹の三人で一つの存在――双葉探偵事務所を成していた。
三人が揃っていたからこそ、どんな困難にだって立ち向かえたし、毎日が楽しかった。
自分にとって沙羅と双樹は掛け替えの無い存在であり、絶対に手放したくなかった。
一人として欠けては駄目な筈だった。
たとえこの身を犠牲にしてでも、守りたいと思っていた。
双樹はおっとり笑ってるだけのように見えるけど、何時も誰かの事を考えている娘だった。
こんな所で死んで良い人間じゃなかった。
それなのに、それなのに――
双樹は死んでしまった。
自分は双樹を見つけてやれなかった。
自分は双樹を守ってやれなかった。
自分達の正三角形から、双樹は抜け落ちてしまったのだ。
もしも学校の屋上にワープさせられた時に、脇目も振らず双樹だけを探し回っていれば――
もしもこの島に連れてこられる前日に、もう少し身辺に注意を払っていれば――
そんな後悔が、雪崩の如く押し寄せてくる。
もうこのまま何もせず、ただ盲目の闇の中で佇んでいたい。
そんな諦念が、止め処も無く溢れてくる。
だがそこで、闇を乗り越え一つの声が聞こえてきた。
『……リンちゃんは間違ってる! 稟ちゃんだって……死んじゃったシアちゃんだって、そんな事望んでないよ!』
その言葉を聞いた瞬間、恋太郎は痺れにも似た感覚を感じた。
言葉自体は、自分とは別の人間に向けられたものだろう。
だがこの言葉に籠められた想いは、そのまま今の自分にも当て嵌まる。
そうだ――双樹は、こんな事を望んでいない。
あの心優しい少女が、何時だって周りの事を考えてきた少女が、こんな結末を望む筈が無い。
双樹が望むのは、残された者達――即ち自分と沙羅の幸せに決まっているのだ。
それなのに自分は、自身の命も沙羅の救助も放棄して、こんな所で終わる気か?
目が見えずとも、今亜沙とことみが必死に戦っているのは分かる。
非力な少女の身体で、それでも勇気を振り絞って戦っている。
それに比べて、自分は何だ?
こんな所でへタレ込んでいる男は、何者だ?
(そんなの決まってる……俺は探偵――双葉恋太郎だ!!)
もしもなんて無い、あるのは今だけだ。
自分は二度とあの日々を取り戻せないが、まだやるべき事はある。
沙羅も、亜沙も、ことみも、まだ生きている。
目が見えずとも、動く事は出来る。
目が見えずとも、音を頼りに戦う事は出来る――!
◇ ◇ ◇
――必死の説得を試みた亜沙だったが、ネリネの返事は冷たいものだった。
「……そんな事は判っています。ですが他に稟さまをお守りする方法など無いのですから、仕方無いじゃないですか。
もう御託は結構です――さようなら、時雨先輩」
それで最後。
今度こそ決着をつけるべく、ネリネは三度目の――そして最後の突撃を敢行する。
ネリネは槍の長いリーチを活かして、亜沙とことみの射程外から攻撃を繰り出した。
「ヤアアアアアアアアアッ!!」
かつてない気迫で打ち込まれる振り下ろしの一撃は、亜沙を狙ってのものだ。
相当な破壊力を誇るソレは、受け止めた所で衝撃までは殺し切れぬだろう。
だが亜沙程度の運動神経でこの攻撃を躱し切るなど、絶対に無理だ。
故に受ければ不利になると分かっていても、選択肢は一つしか有り得ない。
「くぁ……!」
受け止めた亜沙の腕に、脳髄まで痺れさせるような電撃が奔る。
ネリネの打ち終わりを狙って、ことみが攻撃を仕掛けようとするが、前の激突時とは大きく状況が違う。
今回ネリネは自身の間合いぎりぎりから攻撃した為、両者の距離はまだ大きく開いていた。
そして距離が開いていれば、余裕を持って回避に移れるのは自明の理。
ネリネは闘牛士のようにことみの突撃をいなし、空いている手でその背中を思い切り押した。
ことみが前のめりに転倒するのを確認しないままに、ネリネは前方――亜沙の方へと踏み込む。
亜沙はまだ手の痺れから立ち直ってはおらず、ゴルフクラブを構える事すら出来ていない。
「――チェックメイトですッ!!」
「あ……」
ネリネと目が合った瞬間、亜沙は自身の死を確信した。
ネリネの瞳には、敵を殺すという明確な殺意しか籠められていない。
自分はこのまま、何の抵抗も出来ずに胸を貫かれてしまうのだ。
硬直した亜沙の視界の中、ネリネが恐るべき速さで攻撃動作に移ってゆく。
そんなネリネを止めたのは、誰もが予想し得なかった人物だった。
「――――やめろおおおおおおおおおおっ!!!」
「えっ…………!?」
ネリネの横から、男――恋太郎が飛び込んできたのだ。
恋太郎はまるで勢いを緩めず、そのまま直進してくる。
慌ててネリネは足を止め、恋太郎の方に向けて槍を構え直した。
多少槍の扱いに慣れてきたのか、無駄の少ない動作で凄まじい突きを繰り出す。
刺突とは数ある技の中でも特に避け辛く、回避に徹さねば防ぎ切れぬ攻撃。
前進したまま避けれるような、甘い攻撃ではない。
……通常ならば。
「な――――」
ネリネの顔が驚愕の色に染まる。
恋太郎が予測不可能な動きで、唐突に進路をズラしたのだ。
槍は恋太郎の脇腹を掠め、鮮血を撒き散らしたが、この程度では致命傷になどならないだろう。
――盲目状態の恋太郎は、『足音』と『声』を頼りに戦おうとしていた。
そしてネリネの足音が途絶えてしまった所為で、突撃の指針を失ってしまったのだ。
だからこその予測不可能な動きだったが、今回はそれが功を為した。
そしてネリネが驚きの声を上げた今、攻撃の照準は再び定まった。
恋太郎は苦痛に顔を歪めながらも突撃し続け、滑り込む形でネリネの足に飛びついた。
「今だ、亜沙ぁっ!!」
恋太郎の号令と同時、亜沙がゴルフクラブを横凪ぎに振るう。
ネリネにとっては、正しく絶体絶命の危機。
全力の刺突を放った直後な上に、足まで掴まれていてはどうしようも無い。
いくら身体能力を強化されていようとも、これだけの悪条件下では敗北は必死なのだ。
――されど、その結末を覆してこそ魔王の娘……!
「ク――――風よ、守りの力となれ! ウィンドウィスパーッ!!」
ネリネは回避を棄て、ウィンドウィスパー、即ち風を身体の周りに纏う防御呪文を発動させた。
そして、衝突。
ゴルフクラブは風の守りを打ち破り、ネリネの左腕へと吸い込まれていった。
「――――あつっ……!」
衝撃はかなり緩和出来たものの、それでも打撲程度の傷は負ってしまっただろう。
堪らずネリネは恋太郎を振りほどき、後ろへと跳ねてゆく。
その最中、もう一人の少女――ことみの後ろ姿が視界に入った。
ことみが駆けていく先には、先程イングラムM10が落ちた茂みがある。
考えるまでも無く、イングラムM10を回収するつもりなのだと判った。
その事実を認めたネリネは即断を下す――今回は退くべきだと。
「……此処は一旦退かせて頂きます。ですがこの決着は、いずれ必ずッ!」
博物館の時から戦い続けてきた所為で、自分の体力は大きく低下してしまっているし、マシンガン相手では分が悪過ぎる。
たちまちネリネは後ろへと振り向き、脇目も振らずに駆け出した。
「――待ってリンちゃん! もう殺し合いなんてっ……」
後ろから亜沙の声が聞こえてきたが、まるで意に介さずネリネは走り続ける。
何を言われようとも、道を変えるつもりなど毛頭無い。
たとえ稟に懇願されようともだ。
自分は悪鬼羅刹と化してでも、絶対に稟を生還させてみせる。
そして、目的を果たすのに必要な『力』も手に入れた。
永遠神剣第七位“献身”――これを完璧に使いこなせれば、稟以外の人間全てを打倒するのも十分に可能な筈。
何せこと魔力に関して、自分の右に出る者など世界でも数える程しかいないのだから。
とは言え、今の状態で戦い続けるのは余りにも下策。
……まずは、休息だ。
体力を回復させ、魔力を回復させ、傷を癒す。
それから稟を探し出すべく、そして次なる獲物を刈り取るべく行動を再開しよう。
◇ ◇ ◇
「リンちゃん……」
亜沙は哀しげな瞳で、遠ざかるネリネの背中を見守っていた。
自分達『土見ラバーズ』は恋のライバルであると同時に、とても強い友情で結ばれていた筈。
それがどうして、こんな事になってしまったのだろうか。
ネリネが自分に刃物を向けたという事実が、そして恐らく説得は不可能だろうという現実が、唯只悲しかった。
「ぐ……うっ……」
「――――恋太郎さん!」
そこで後ろから聞こえてきた呻き声が、亜沙の思考を現実へと引き戻す。
亜沙とことみは慌てて恋太郎に駆け寄って、その身体を支え上げた。
負傷箇所――赤く染まった脇腹の辺りを調べてみると、出血の割に怪我はそこまで酷く無かった。
だがそれはあくまでも運が良かっただけであり、一歩間違えば恋太郎は死んでしまっていただろう。
「恋太郎さん……目が見えないのに、どうしてあんな無茶したの?」
亜沙は聞かずにいられなかった。
目が見えぬ状態で乱戦に飛び込むなど、自殺行為も良い所だ。
少し前まで抜け殻同然の状態だった男が、やる行動とはとても思えない。
恋太郎は光の失った目を亜沙に向け、ゆっくりと口を開いた。
「あの時亜沙の声が聞こえたから……」
「――え?」
疑問の表情を浮かべる亜沙をよそに、恋太郎が続ける。
「『死んじゃったシアちゃんだって、そんな事望んでないよ!』って声が聞こえたから……それは双樹の叫びのような気がしたから……俺は再び立ち上がる事が出来たんだ。
後は簡単、お前達の声を聞いてヤバイって思ったから、形振り構わず飛び込んだって訳さ。これ以上大切な仲間を失うなんて、絶対に嫌だったからな」
「な――――ボクを助ける、為に?」
亜沙は胸が締め付けられるような思いだった。
自分の軽率な行動の所為で、恋太郎は光を失ってしまった。
自分が魔法を使わなかった所為で、恋太郎は失明したままだった。
にも関わらず恋太郎は、保身など一切考えずに、命懸けで自分を救ってくれたというのか。
(ボクは……馬鹿だ…………。恋太郎さんはあんなにも傷付いて、それでもボクを助ける為に頑張ってくれたのに……。
ボクは自分の都合ばかり考えて……恋太郎さんに何一つしてあげれてない……!)
覚悟は決まった。
恋太郎は命を懸けてまで、自分を救ってくれたのだ。
ならば自分も、命と同じくらい大切な誓いを捧げよう。
「亜沙……?」
「亜沙さん……?」
恋太郎も、ことみも、揃って疑問の声を上げる。
亜沙が突然、恋太郎の身体を抱き締めていたのだ。
亜沙はとても穏やかな笑みを浮かべて、言った。
「恋太郎さん、今までごめんなさい……そして、有り難う。今までのお詫びとお礼に、貴方はボクが治します」
「え――――!?」
瞬間、辺りが暖かい光で包まれた。
見ているだけで心も身体も癒されるような、そんな光。
その中心で亜沙が――長髪となった亜沙が、天使のように微笑んでいる。
亜沙は己に課した誓いを破り、回復魔法を発動させたのだ。
恋太郎の視界に、徐々に光が戻ってゆく。
脇腹や額の傷はみるみるうちに塞がってゆき、出血も止まった。
暫く時間が経ち、光が止んだ時にはもう、恋太郎の目は万全の状態に戻っていた。
亜沙が疲弊しきった顔で、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「――恋太郎、さん……、目は治った……かな?」
「ああ。目だけじゃなくて、他の怪我もだいぶ良くなったぞ」
「……そう。良かっ――た……」
「――亜沙!? おい、しっかりしろ!」
恋太郎の回復を確認するや否や、亜沙はドサリと地面に倒れ込んだ。
二人は大急ぎで亜沙を抱き起こす。
恋太郎が混乱する頭を必死に宥めながら、亜沙の呼吸や脈を確認すると、幸い異常は無かった。
同じ結論を得たことみが、冷静に症状を分析する。
「これは……きっと疲労による気絶なの。暫く休ませてあげれば良くなると思う」
「そうか……。となると、今のは多分魔法の一種で――対象の怪我を治す代わりに、大幅に疲労が蓄積してしまうって事か」
恋太郎がそう言うと、ことみはこくりと頷いた。
恋太郎は視線を下へと移し、寝そべる亜沙の頭を優しく撫でる。
「亜沙、お疲れ様……。お前は俺が絶対に守ってやるから、今はゆっくり休んでくれ」
自分を救ってくれた少女に感謝しながら、恋太郎は考える。
亜沙の回復魔法は極めて優れた効果を持ってはいるが、乱発するのはどう考えても無理だ。
それに今回は自分の怪我が比較的浅かったから良かったものの、もっと大きな怪我まで治せるかは分からない。
全く効果が無かったり、治癒の代償として、亜沙が大きな副作用に襲われるという可能性も有り得るのだ。
頼りにし過ぎるのは危険だろう。
やはり基本的には、極力怪我を負わぬよう立ち回るべきだ。
「……ん?」
そこでことみが一枚の紙を差し出してきた。
その紙の冒頭には、こう書いてあった。
『声を上げずに読んで欲しいの。多分――盗聴されてるから』
「――――ッ!?」
恋太郎は驚愕に声を洩らしたい衝動を抑え、鞄から筆記用具を取り出した。
たどたどしい手つきで、疑問を紙に書き綴る。
『それは本当か? どうしてそんな事が分かるんだ?』
『亜沙さんを抱き起こした時に、少し首輪を調べてみたら。集音用の小さな穴が開けてあったの。
レンズは付いてなかったら、多分盗撮はされてない筈』
『成る程な……』
ことみの鋭い推理に、恋太郎は心底感嘆していた。
これではどちらが探偵か分からない。
恋太郎には知る由も無い事だが――ことみは全国でも有数の、天才少女なのだ。
その膨大な知識量は、一流の学者にも決して引けを取らぬだろう。
『それでね、これからの事なんだけど……恋太郎さんはどうするべきだと思う?』
『う~ん、もうハクオロって奴を追っても間に合わないだろうし……。まずは仲間を探すべきだと思う』
双樹や、亜沙達の仲間が心配だし、戦力だってまるで足りていない。
この殺人遊戯を破壊するには、もっと人数が必要なのでは無いか。
それが恋太郎の判断だったが、ことみはゆっくりと首を横に振った。
『残念だけど、探し当てる方法が無いの。無闇に歩き回っても、時間を浪費するだけ』
それは、その通りだった。
有力な情報があるなら別だが、そうでない以上はアテも無く探し回るしかない。
この大きな島の中、そんな捜索方法で目的の人物を発見出来る可能性は、限りなく低い。
『だからね、私は今自分が出来る事からしていこうと思うの。鷹野さんって人を倒せば殺し合いもしなくて済むし、皆助けられる』
『……と、言うと?』
『鷹野さんを直接倒すには、首輪を外さないといけない。でも今の所、首輪をどうやって外したら良いかは分からないの。
直接戦えないんだったら、間接的に何とかするしかない。つまり――』
次の瞬間、恋太郎は驚愕に大きく目を見開いた。
『爆弾を作れば良いの』
『――爆弾ッ!?』
『英語で言うとボム、フランス語だとボンブ、イギリス語だと……』
『……いや、英語もフランス語もイギリス語もどうでも良い。それより爆弾なんて、本当に作れるのか?』
恋太郎が訝しげな視線を送ると、ことみは鞄から地図を取り出した。
その中の一点を指差しながら、紙に鉛筆を走らせる。
『この工場に行けば、多分必要な材料が手に入るの。作り方は私が知ってるから大丈夫』
『……そうか。だとしても、爆弾なんか何に使うんだ?』
『今はまだ分からないけど――鷹野さんが隠れている場所を見つけ出して、そこを爆破するの。
まだまだ作戦を詰めてかないといけないけど、上手く行けば一網打尽に出来る』
爆弾を作成し、鷹野の本拠地を破壊する――それが、ことみの作戦だった。
鷹野はこの島の何処に隠れているのか?
隠れている場所が分かった所で、爆弾を設置する程近付く事が可能なのか?
鷹野の本拠地を破壊したとしても、それで全てが解決するのか?
それ以外にも、不安要素は数え切れない程多くある。
それでも現状では、これ以上に具体的な作戦など無かった。
『そうか――そうだな。他に方法なんて思いつかないし、俺もその作戦に乗るよ。
でも少し休憩してからで良いか? 亜沙をもう少し休ませてやりたいし、それに――』
書き終る前に、恋太郎の腹の虫が鳴り響いた。
夜から緊張の連続で、碌に食事を取っていなかったのだ。
バツが悪そうに後頭部を掻いている恋太郎を眺め見て、ことみは柔らかい笑みを浮かべた。
「ええと……パン、食べる?」
そう言ってことみが取り出したのは、小麦色をした長い物体――通称、レインボーパンだった。
鮮やかなオレンジ色をした物体――通称謎ジャムを塗りたくり、半分に千切って恋太郎に手渡す。
「――サンキュな。じゃ、遠慮なく食わせて貰うぜ」
嬉々とした様子で、恋太郎はパンを貪ろうとする。
五秒後には、断末魔の悲鳴が森の中に木霊していた。
【D-4 森/1日目 時間 午前】
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身”】
【所持品1:支給品一式 IMI デザートイーグル 10/2+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10】
【所持品2:支給品一式 トカレフTT33の予備マガジン10 S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5】
【所持品3:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 九十七式自動砲弾 数5/7(重いので鞄の中に入れています) 朝倉音夢の制服及び生首】
【状態:肉体的疲労極大・魔力消費大・腹部に痣、左腕打撲、右耳に裂傷、左足首に切り傷、非常に強い意志】
【思考・行動】
1:まずは安全な場所で休憩したい
2:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し。知人であろうとも容赦無く殺す
3:出来れば次の定時放送までに純一を見つけ出し、音夢の生首を見せつけ最大級の絶望を味あわせた後で殺す。
4:つぐみの前で武を殺して、その後つぐみも殺す
5:亜沙の一団と決着をつける
6:稟を守り通して自害。
【備考】
私服(ゲーム時の私服に酷似)に着替えました。(汚れた制服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、 制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣第七位“献身”は制限を受けて、以下のような性能となっています。
・永遠神剣の自我は消し去られている。
・魔力を送れば送る程、所有者の身体能力を強化する(但し、原作程圧倒的な強化は不可能)。
以下の魔法が使えます。
尚、使える、といってもウインドウィスパー以外は、実際に使った訳では無いので、どの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー 回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、僅かな間だけ防御力を高める。
ハーベスト 回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。
※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※音夢とつぐみの知り合いに関する情報を知っています。
※音夢の生首は音夢の制服と一緒にビニール袋へ詰め込みディパックの中に入れてます。
【D-4 森/1日目 午前】
【双葉恋太郎@フタコイ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、昆虫図鑑、参加者の術、魔法一覧、.357マグナム弾(40発)、四葉のデイパック】
【状態:悶絶。額と脇腹に軽傷。肉体的に中度の疲労】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。探偵としての役目を果たす
1・どう見ても致死量です、本当にありがとうございました
2.まずは暫く休憩する
3.工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
4.鷹野の居場所を突き止める
5・可能ならば沙羅、四葉の姉妹達、ことみの知り合いや亜沙の知り合いを探し出してみんなで悪の秘密結社(主催)を倒す
6.ネリネとハクオロを強く警戒
【備考】
※校舎の屋上から周辺の地形を把握済み
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※首輪の盗聴に気付いています
【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:イングラムM10(9ミリパラベラム弾17/32)】
【所持品:鉈@ひぐらしのなく頃に、謎ジャム(半分消費)@Kanon、レインボーパンwith謎ジャム(半分)@CLANNAD&KANON】
【状態:肉体的に中度の疲労、腹部に軽い打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1.謎ジャムにレインボーパン……思い付つく限り最悪の組み合わせなの
2・まずは暫く休憩する
3.工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
4.鷹野の居場所を突き止める
5・恋太郎達と行動を共にする
6・朋也たちが心配
7.ネリネとハクオロを強く警戒
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※首輪の盗聴に気付いています
【時雨亜沙@SHUFFLE!】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に】
【所持品2:イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×8、ゴルフクラブ】
【状態:肉体的疲労極大、精神的に中度の疲労、魔力消費極大、気絶。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1・???
【備考】
※恋太郎たちは危険ではないと判断しました。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
症候群を抑えるには1日数回の注射が必要です。
亜沙・ことみ・恋太郎はC120の効果を知りません。
※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。
・回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
・治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
・命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。
|087:[[魔法少女(前編)]]|投下順に読む|088:[[復讐鬼とブリーフと]]|
|087:[[魔法少女(前編)]]|時系列順に読む|088:[[復讐鬼とブリーフと]]|
|081:[[博物館戦争(後編)]]|ネリネ|096:[[彼女は眠らぬ山猫の様に、深く静かに休息す ]]|
|066:[[そこには、もう誰もいない]]|双葉恋太郎|093:[[恋獄少女]]|
|066:[[そこには、もう誰もいない]]|一ノ瀬ことみ|093:[[恋獄少女]]|
|066:[[そこには、もう誰もいない]]|時雨亜沙|093:[[恋獄少女]]|
**魔法少女(後編)◆guAWf4RW62
◇ ◇ ◇
亜沙達が苦戦している最中、双葉恋太郎は未だ放送のショックから立ち直れないでいた。
それも仕方の無い事だろう――絶対に必要な存在を、失ってしまったのだから。
自分達は三人で一つだった。
自分と、沙羅と、双樹の三人で一つの存在――双葉探偵事務所を成していた。
三人が揃っていたからこそ、どんな困難にだって立ち向かえたし、毎日が楽しかった。
自分にとって沙羅と双樹は掛け替えの無い存在であり、絶対に手放したくなかった。
一人として欠けては駄目な筈だった。
たとえこの身を犠牲にしてでも、守りたいと思っていた。
双樹はおっとり笑ってるだけのように見えるけど、何時も誰かの事を考えている娘だった。
こんな所で死んで良い人間じゃなかった。
それなのに、それなのに――
双樹は死んでしまった。
自分は双樹を見つけてやれなかった。
自分は双樹を守ってやれなかった。
自分達の正三角形から、双樹は抜け落ちてしまったのだ。
もしも学校の屋上にワープさせられた時に、脇目も振らず双樹だけを探し回っていれば――
もしもこの島に連れてこられる前日に、もう少し身辺に注意を払っていれば――
そんな後悔が、雪崩の如く押し寄せてくる。
もうこのまま何もせず、ただ盲目の闇の中で佇んでいたい。
そんな諦念が、止め処も無く溢れてくる。
だがそこで、闇を乗り越え一つの声が聞こえてきた。
『……リンちゃんは間違ってる! 稟ちゃんだって……死んじゃったシアちゃんだって、そんな事望んでないよ!』
その言葉を聞いた瞬間、恋太郎は痺れにも似た感覚を感じた。
言葉自体は、自分とは別の人間に向けられたものだろう。
だがこの言葉に籠められた想いは、そのまま今の自分にも当て嵌まる。
そうだ――双樹は、こんな事を望んでいない。
あの心優しい少女が、何時だって周りの事を考えてきた少女が、こんな結末を望む筈が無い。
双樹が望むのは、残された者達――即ち自分と沙羅の幸せに決まっているのだ。
それなのに自分は、自身の命も沙羅の救助も放棄して、こんな所で終わる気か?
目が見えずとも、今亜沙とことみが必死に戦っているのは分かる。
非力な少女の身体で、それでも勇気を振り絞って戦っている。
それに比べて、自分は何だ?
こんな所でへタレ込んでいる男は、何者だ?
(そんなの決まってる……俺は探偵――双葉恋太郎だ!!)
もしもなんて無い、あるのは今だけだ。
自分は二度とあの日々を取り戻せないが、まだやるべき事はある。
沙羅も、亜沙も、ことみも、まだ生きている。
目が見えずとも、動く事は出来る。
目が見えずとも、音を頼りに戦う事は出来る――!
◇ ◇ ◇
――必死の説得を試みた亜沙だったが、ネリネの返事は冷たいものだった。
「……そんな事は判っています。ですが他に稟さまをお守りする方法など無いのですから、仕方無いじゃないですか。
もう御託は結構です――さようなら、時雨先輩」
それで最後。
今度こそ決着をつけるべく、ネリネは三度目の――そして最後の突撃を敢行する。
ネリネは槍の長いリーチを活かして、亜沙とことみの射程外から攻撃を繰り出した。
「ヤアアアアアアアアアッ!!」
かつてない気迫で打ち込まれる振り下ろしの一撃は、亜沙を狙ってのものだ。
相当な破壊力を誇るソレは、受け止めた所で衝撃までは殺し切れぬだろう。
だが亜沙程度の運動神経でこの攻撃を躱し切るなど、絶対に無理だ。
故に受ければ不利になると分かっていても、選択肢は一つしか有り得ない。
「くぁ……!」
受け止めた亜沙の腕に、脳髄まで痺れさせるような電撃が奔る。
ネリネの打ち終わりを狙って、ことみが攻撃を仕掛けようとするが、前の激突時とは大きく状況が違う。
今回ネリネは自身の間合いぎりぎりから攻撃した為、両者の距離はまだ大きく開いていた。
そして距離が開いていれば、余裕を持って回避に移れるのは自明の理。
ネリネは闘牛士のようにことみの突撃をいなし、空いている手でその背中を思い切り押した。
ことみが前のめりに転倒するのを確認しないままに、ネリネは前方――亜沙の方へと踏み込む。
亜沙はまだ手の痺れから立ち直ってはおらず、ゴルフクラブを構える事すら出来ていない。
「――チェックメイトですッ!!」
「あ……」
ネリネと目が合った瞬間、亜沙は自身の死を確信した。
ネリネの瞳には、敵を殺すという明確な殺意しか籠められていない。
自分はこのまま、何の抵抗も出来ずに胸を貫かれてしまうのだ。
硬直した亜沙の視界の中、ネリネが恐るべき速さで攻撃動作に移ってゆく。
そんなネリネを止めたのは、誰もが予想し得なかった人物だった。
「――――やめろおおおおおおおおおおっ!!!」
「えっ…………!?」
ネリネの横から、男――恋太郎が飛び込んできたのだ。
恋太郎はまるで勢いを緩めず、そのまま直進してくる。
慌ててネリネは足を止め、恋太郎の方に向けて槍を構え直した。
多少槍の扱いに慣れてきたのか、無駄の少ない動作で凄まじい突きを繰り出す。
刺突とは数ある技の中でも特に避け辛く、回避に徹さねば防ぎ切れぬ攻撃。
前進したまま避けれるような、甘い攻撃ではない。
……通常ならば。
「な――――」
ネリネの顔が驚愕の色に染まる。
恋太郎が予測不可能な動きで、唐突に進路をズラしたのだ。
槍は恋太郎の脇腹を掠め、鮮血を撒き散らしたが、この程度では致命傷になどならないだろう。
――盲目状態の恋太郎は、『足音』と『声』を頼りに戦おうとしていた。
そしてネリネの足音が途絶えてしまった所為で、突撃の指針を失ってしまったのだ。
だからこその予測不可能な動きだったが、今回はそれが功を為した。
そしてネリネが驚きの声を上げた今、攻撃の照準は再び定まった。
恋太郎は苦痛に顔を歪めながらも突撃し続け、滑り込む形でネリネの足に飛びついた。
「今だ、亜沙ぁっ!!」
恋太郎の号令と同時、亜沙がゴルフクラブを横凪ぎに振るう。
ネリネにとっては、正しく絶体絶命の危機。
全力の刺突を放った直後な上に、足まで掴まれていてはどうしようも無い。
いくら身体能力を強化されていようとも、これだけの悪条件下では敗北は必死なのだ。
――されど、その結末を覆してこそ魔王の娘……!
「ク――――風よ、守りの力となれ! ウィンドウィスパーッ!!」
ネリネは回避を棄て、ウィンドウィスパー、即ち風を身体の周りに纏う防御呪文を発動させた。
そして、衝突。
ゴルフクラブは風の守りを打ち破り、ネリネの左腕へと吸い込まれていった。
「――――あつっ……!」
衝撃はかなり緩和出来たものの、それでも打撲程度の傷は負ってしまっただろう。
堪らずネリネは恋太郎を振りほどき、後ろへと跳ねてゆく。
その最中、もう一人の少女――ことみの後ろ姿が視界に入った。
ことみが駆けていく先には、先程イングラムM10が落ちた茂みがある。
考えるまでも無く、イングラムM10を回収するつもりなのだと判った。
その事実を認めたネリネは即断を下す――今回は退くべきだと。
「……此処は一旦退かせて頂きます。ですがこの決着は、いずれ必ずッ!」
博物館の時から戦い続けてきた所為で、自分の体力は大きく低下してしまっているし、マシンガン相手では分が悪過ぎる。
たちまちネリネは後ろへと振り向き、脇目も振らずに駆け出した。
「――待ってリンちゃん! もう殺し合いなんてっ……」
後ろから亜沙の声が聞こえてきたが、まるで意に介さずネリネは走り続ける。
何を言われようとも、道を変えるつもりなど毛頭無い。
たとえ稟に懇願されようともだ。
自分は悪鬼羅刹と化してでも、絶対に稟を生還させてみせる。
そして、目的を果たすのに必要な『力』も手に入れた。
永遠神剣第七位“献身”――これを完璧に使いこなせれば、稟以外の人間全てを打倒するのも十分に可能な筈。
何せこと魔力に関して、自分の右に出る者など世界でも数える程しかいないのだから。
とは言え、今の状態で戦い続けるのは余りにも下策。
……まずは、休息だ。
体力を回復させ、魔力を回復させ、傷を癒す。
それから稟を探し出すべく、そして次なる獲物を刈り取るべく行動を再開しよう。
◇ ◇ ◇
「リンちゃん……」
亜沙は哀しげな瞳で、遠ざかるネリネの背中を見守っていた。
自分達『土見ラバーズ』は恋のライバルであると同時に、とても強い友情で結ばれていた筈。
それがどうして、こんな事になってしまったのだろうか。
ネリネが自分に刃物を向けたという事実が、そして恐らく説得は不可能だろうという現実が、唯只悲しかった。
「ぐ……うっ……」
「――――恋太郎さん!」
そこで後ろから聞こえてきた呻き声が、亜沙の思考を現実へと引き戻す。
亜沙とことみは慌てて恋太郎に駆け寄って、その身体を支え上げた。
負傷箇所――赤く染まった脇腹の辺りを調べてみると、出血の割に怪我はそこまで酷く無かった。
だがそれはあくまでも運が良かっただけであり、一歩間違えば恋太郎は死んでしまっていただろう。
「恋太郎さん……目が見えないのに、どうしてあんな無茶したの?」
亜沙は聞かずにいられなかった。
目が見えぬ状態で乱戦に飛び込むなど、自殺行為も良い所だ。
少し前まで抜け殻同然の状態だった男が、やる行動とはとても思えない。
恋太郎は光の失った目を亜沙に向け、ゆっくりと口を開いた。
「あの時亜沙の声が聞こえたから……」
「――え?」
疑問の表情を浮かべる亜沙をよそに、恋太郎が続ける。
「『死んじゃったシアちゃんだって、そんな事望んでないよ!』って声が聞こえたから……それは双樹の叫びのような気がしたから……俺は再び立ち上がる事が出来たんだ。
後は簡単、お前達の声を聞いてヤバイって思ったから、形振り構わず飛び込んだって訳さ。これ以上大切な仲間を失うなんて、絶対に嫌だったからな」
「な――――ボクを助ける、為に?」
亜沙は胸が締め付けられるような思いだった。
自分の軽率な行動の所為で、恋太郎は光を失ってしまった。
自分が魔法を使わなかった所為で、恋太郎は失明したままだった。
にも関わらず恋太郎は、保身など一切考えずに、命懸けで自分を救ってくれたというのか。
(ボクは……馬鹿だ…………。恋太郎さんはあんなにも傷付いて、それでもボクを助ける為に頑張ってくれたのに……。
ボクは自分の都合ばかり考えて……恋太郎さんに何一つしてあげれてない……!)
覚悟は決まった。
恋太郎は命を懸けてまで、自分を救ってくれたのだ。
ならば自分も、命と同じくらい大切な誓いを捧げよう。
「亜沙……?」
「亜沙さん……?」
恋太郎も、ことみも、揃って疑問の声を上げる。
亜沙が突然、恋太郎の身体を抱き締めていたのだ。
亜沙はとても穏やかな笑みを浮かべて、言った。
「恋太郎さん、今までごめんなさい……そして、有り難う。今までのお詫びとお礼に、貴方はボクが治します」
「え――――!?」
瞬間、辺りが暖かい光で包まれた。
見ているだけで心も身体も癒されるような、そんな光。
その中心で亜沙が――長髪となった亜沙が、天使のように微笑んでいる。
亜沙は己に課した誓いを破り、回復魔法を発動させたのだ。
恋太郎の視界に、徐々に光が戻ってゆく。
脇腹や額の傷はみるみるうちに塞がってゆき、出血も止まった。
暫く時間が経ち、光が止んだ時にはもう、恋太郎の目は万全の状態に戻っていた。
亜沙が疲弊しきった顔で、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「――恋太郎、さん……、目は治った……かな?」
「ああ。目だけじゃなくて、他の怪我もだいぶ良くなったぞ」
「……そう。良かっ――た……」
「――亜沙!? おい、しっかりしろ!」
恋太郎の回復を確認するや否や、亜沙はドサリと地面に倒れ込んだ。
二人は大急ぎで亜沙を抱き起こす。
恋太郎が混乱する頭を必死に宥めながら、亜沙の呼吸や脈を確認すると、幸い異常は無かった。
同じ結論を得たことみが、冷静に症状を分析する。
「これは……きっと疲労による気絶なの。暫く休ませてあげれば良くなると思う」
「そうか……。となると、今のは多分魔法の一種で――対象の怪我を治す代わりに、大幅に疲労が蓄積してしまうって事か」
恋太郎がそう言うと、ことみはこくりと頷いた。
恋太郎は視線を下へと移し、寝そべる亜沙の頭を優しく撫でる。
「亜沙、お疲れ様……。お前は俺が絶対に守ってやるから、今はゆっくり休んでくれ」
自分を救ってくれた少女に感謝しながら、恋太郎は考える。
亜沙の回復魔法は極めて優れた効果を持ってはいるが、乱発するのはどう考えても無理だ。
それに今回は自分の怪我が比較的浅かったから良かったものの、もっと大きな怪我まで治せるかは分からない。
全く効果が無かったり、治癒の代償として、亜沙が大きな副作用に襲われるという可能性も有り得るのだ。
頼りにし過ぎるのは危険だろう。
やはり基本的には、極力怪我を負わぬよう立ち回るべきだ。
「……ん?」
そこでことみが一枚の紙を差し出してきた。
その紙の冒頭には、こう書いてあった。
『声を上げずに読んで欲しいの。多分――盗聴されてるから』
「――――ッ!?」
恋太郎は驚愕に声を洩らしたい衝動を抑え、鞄から筆記用具を取り出した。
たどたどしい手つきで、疑問を紙に書き綴る。
『それは本当か? どうしてそんな事が分かるんだ?』
『亜沙さんを抱き起こした時に、少し首輪を調べてみたら。集音用の小さな穴が開けてあったの。
レンズは付いてなかったら、多分盗撮はされてない筈』
『成る程な……』
ことみの鋭い推理に、恋太郎は心底感嘆していた。
これではどちらが探偵か分からない。
恋太郎には知る由も無い事だが――ことみは全国でも有数の、天才少女なのだ。
その膨大な知識量は、一流の学者にも決して引けを取らぬだろう。
『それでね、これからの事なんだけど……恋太郎さんはどうするべきだと思う?』
『う~ん、もうハクオロって奴を追っても間に合わないだろうし……。まずは仲間を探すべきだと思う』
双樹や、亜沙達の仲間が心配だし、戦力だってまるで足りていない。
この殺人遊戯を破壊するには、もっと人数が必要なのでは無いか。
それが恋太郎の判断だったが、ことみはゆっくりと首を横に振った。
『残念だけど、探し当てる方法が無いの。無闇に歩き回っても、時間を浪費するだけ』
それは、その通りだった。
有力な情報があるなら別だが、そうでない以上はアテも無く探し回るしかない。
この大きな島の中、そんな捜索方法で目的の人物を発見出来る可能性は、限りなく低い。
『だからね、私は今自分が出来る事からしていこうと思うの。鷹野さんって人を倒せば殺し合いもしなくて済むし、皆助けられる』
『……と、言うと?』
『鷹野さんを直接倒すには、首輪を外さないといけない。でも今の所、首輪をどうやって外したら良いかは分からないの。
直接戦えないんだったら、間接的に何とかするしかない。つまり――』
次の瞬間、恋太郎は驚愕に大きく目を見開いた。
『爆弾を作れば良いの』
『――爆弾ッ!?』
『英語で言うとボム、フランス語だとボンブ、イギリス語だと……』
『……いや、英語もフランス語もイギリス語もどうでも良い。それより爆弾なんて、本当に作れるのか?』
恋太郎が訝しげな視線を送ると、ことみは鞄から地図を取り出した。
その中の一点を指差しながら、紙に鉛筆を走らせる。
『この工場に行けば、多分必要な材料が手に入るの。作り方は私が知ってるから大丈夫』
『……そうか。だとしても、爆弾なんか何に使うんだ?』
『今はまだ分からないけど――鷹野さんが隠れている場所を見つけ出して、そこを爆破するの。
まだまだ作戦を詰めてかないといけないけど、上手く行けば一網打尽に出来る』
爆弾を作成し、鷹野の本拠地を破壊する――それが、ことみの作戦だった。
鷹野はこの島の何処に隠れているのか?
隠れている場所が分かった所で、爆弾を設置する程近付く事が可能なのか?
鷹野の本拠地を破壊したとしても、それで全てが解決するのか?
それ以外にも、不安要素は数え切れない程多くある。
それでも現状では、これ以上に具体的な作戦など無かった。
『そうか――そうだな。他に方法なんて思いつかないし、俺もその作戦に乗るよ。
でも少し休憩してからで良いか? 亜沙をもう少し休ませてやりたいし、それに――』
書き終る前に、恋太郎の腹の虫が鳴り響いた。
夜から緊張の連続で、碌に食事を取っていなかったのだ。
バツが悪そうに後頭部を掻いている恋太郎を眺め見て、ことみは柔らかい笑みを浮かべた。
「ええと……パン、食べる?」
そう言ってことみが取り出したのは、小麦色をした長い物体――通称、レインボーパンだった。
鮮やかなオレンジ色をした物体――通称謎ジャムを塗りたくり、半分に千切って恋太郎に手渡す。
「――サンキュな。じゃ、遠慮なく食わせて貰うぜ」
嬉々とした様子で、恋太郎はパンを貪ろうとする。
五秒後には、断末魔の悲鳴が森の中に木霊していた。
【D-4 森/1日目 時間 午前】
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身”】
【所持品1:支給品一式 IMI デザートイーグル 10/2+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10】
【所持品2:支給品一式 トカレフTT33の予備マガジン10 S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5】
【所持品3:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 九十七式自動砲弾 数5/7(重いので鞄の中に入れています) 朝倉音夢の制服及び生首】
【状態:肉体的疲労極大・魔力消費大・腹部に痣、左腕打撲、右耳に裂傷、左足首に切り傷、非常に強い意志】
【思考・行動】
1:まずは安全な場所で休憩したい
2:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し。知人であろうとも容赦無く殺す
3:出来れば次の定時放送までに純一を見つけ出し、音夢の生首を見せつけ最大級の絶望を味あわせた後で殺す。
4:つぐみの前で武を殺して、その後つぐみも殺す
5:亜沙の一団と決着をつける
6:稟を守り通して自害。
【備考】
私服(ゲーム時の私服に酷似)に着替えました。(汚れた制服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、 制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣第七位“献身”は制限を受けて、以下のような性能となっています。
・永遠神剣の自我は消し去られている。
・魔力を送れば送る程、所有者の身体能力を強化する(但し、原作程圧倒的な強化は不可能)。
以下の魔法が使えます。
尚、使える、といってもウインドウィスパー以外は、実際に使った訳では無いので、どの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー 回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、僅かな間だけ防御力を高める。
ハーベスト 回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。
※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※音夢とつぐみの知り合いに関する情報を知っています。
※音夢の生首は音夢の制服と一緒にビニール袋へ詰め込みディパックの中に入れてます。
【D-4 森/1日目 午前】
【双葉恋太郎@フタコイ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、昆虫図鑑、参加者の術、魔法一覧、.357マグナム弾(40発)、四葉のデイパック】
【状態:悶絶。額と脇腹に軽傷。肉体的に中度の疲労】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。探偵としての役目を果たす
1・どう見ても致死量です、本当にありがとうございました
2.まずは暫く休憩する
3.工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
4.鷹野の居場所を突き止める
5・可能ならば沙羅、四葉の姉妹達、ことみの知り合いや亜沙の知り合いを探し出してみんなで悪の秘密結社(主催)を倒す
6.ネリネとハクオロを強く警戒
【備考】
※校舎の屋上から周辺の地形を把握済み
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※首輪の盗聴に気付いています
【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:イングラムM10(9ミリパラベラム弾17/32)】
【所持品:鉈@ひぐらしのなく頃に、謎ジャム(半分消費)@Kanon、レインボーパンwith謎ジャム(半分)@CLANNAD&KANON】
【状態:肉体的に中度の疲労、腹部に軽い打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1.謎ジャムにレインボーパン……思い付つく限り最悪の組み合わせなの
2・まずは暫く休憩する
3.工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
4.鷹野の居場所を突き止める
5・恋太郎達と行動を共にする
6・朋也たちが心配
7.ネリネとハクオロを強く警戒
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※首輪の盗聴に気付いています
【時雨亜沙@SHUFFLE!】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に】
【所持品2:イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×8、ゴルフクラブ】
【状態:肉体的疲労極大、精神的に中度の疲労、魔力消費極大、気絶。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1・???
【備考】
※恋太郎たちは危険ではないと判断しました。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
症候群を抑えるには1日数回の注射が必要です。
亜沙・ことみ・恋太郎はC120の効果を知りません。
※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。
・回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
・治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
・命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。
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