「涙をこえて」(2007/11/17 (土) 08:34:54) の最新版変更点
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**涙をこえて ◆7JMGjHarIw
瑞穂とアルルゥが放送を聞いたのは、吊り橋を渡り終えて、近くの木陰で休憩しているときであった。
アルルゥがあまり喋らないので少し時間がかかり苦労をしたが、情報交換を終えた二人は放送を静かに聴く……。
(なんてことだ……)
瑞穂は禁止エリアをメモした後、次々と流れてくる死者の名前に胸を痛めていた。11人もの命がこんな馬鹿げたゲームで失ってしまったことを、彼女たちの命を奪った殺人者を、そして主催者である鷹野たちに対する激しい怒りが胸の中で渦巻いていた。
それに……
「おねーちゃん……カルラおねーちゃん……レオ……」
そうアルルゥが探していると言ったエルルゥ、カルラ、対馬レオの3人が呼ばれたのだ。
アルルゥは不安そうな顔をしながら、瑞穂に尋ねる。注意してみるとアルルゥの目が真っ赤になっているのに気づく。
「なんでおねーちゃんたちの名前呼ばれた……? ……おねーちゃんたちが……死んだ?」
「っ!!」
(そうだ。いくら幼いとはいっても言葉の理解できない歳でもないんだ……。このまま嘘をつくことは不可能じゃないが、いずれ分かることなんだ。だから僕には事実をアルルゥに伝える責任がある……)
1年前の瑞穂ならなんとかごまかして嘘を吐き通していただろう。
だが、おじいさんの遺言で聖央女学院に入ってからの瑞穂は変わった。
エルダーに選出され、それから1年弱、文化祭の演劇、ダンスパーティーなどエルダーとしての責務を果たすうちに、瑞穂自身も大きく成長したのだ。
だから瑞穂は両手でアルルゥの肩をつかみ、自分の目とアルルゥの目を合わせ、唇を噛みしめながら、辛い事実を伝える。
「そう。アルルゥのお姉さん、カルラさん、レオさん、いま名前を呼ばれた人はもう死んだの」
「!……」
アルルゥの目に涙が溜まっていくのが見える。
「じゃあ……もうおねーちゃんたちに会えない?」
アルルゥの問いに頷きをもって答える。
「うそだ……瑞穂おねえちゃんうそつくのダメ!」
縋りつくような目で瑞穂を見るアルルゥに、瑞穂は優しく、だがはっきりと伝える。
「アルルゥちゃん……ごめん。嘘じゃ……ないの」
その答えを聞き、限界まで溜まっていた涙が決壊する。
「やだ……やだぁ!! うそ……うそって言って!! ひっぐ……ぅぁ……ぅわああああん! 嫌ぁ! 嫌ぁっ!!」
泣き叫ぶアルルゥを瑞穂はぎゅっと優しく抱きしめる。その小さな体を感じながら、瑞穂はどんなことがあってもアルルゥのことを守り抜くと心に誓った
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
どれくらい抱きしめていただろう。
しばらく経つと泣き疲れたのか、アルルゥの泣き声もだんだん勢いを失い、しまいには聞こえなくなった。
アルルゥを見ると、目を真っ赤に腫らしながらもだいぶ落ち着いたようだ。今度はアルルゥのほうから瑞穂にぎゅっと抱きつき、瑞穂もそれを優しく抱きとめる。
そんなときだった。
アルルゥの耳がピクリと反応する。
アルルゥが顔を上げ、後ろに振り向いてじっと見つめる。
「どうしたの?」
疑問に思って瑞穂が尋ねると、アルルゥははっきりと声を返す。
「誰か……くる」
「え……。っ!!」
その答えを疑う間もなく、瑞穂もそれに気づいた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
蟹沢きぬは放送を聴いてからずっと走り続けていた。
特に目的も理由もなくただただ自然に走り続けていた。
走るのをやめたら、自分がどうにかなってしまいそうで走り続けていた。
(レオのヘタレ! レオのビビリ! レオのチキン! レオの……バカ)
「ぅぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「ぅぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!」
声が近づいてきている。
先ほどアルルゥが泣き叫んでいたよりも大きな声だ。
こんな状況で走りながら大声で叫ぶなんて真似、普通ではできないだろう。
何か考えがあるのか、ただのバカなのか、その判断はひとまず保留にして、瑞穂はとりあえずアルルゥを連れて、太い木の木陰に体を隠した。
「ぅぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおっ!」
その間も声の主は橋の向こう側からまっすぐかなりの速さで向かってきている。
やがて、吊り橋も猛スピードで渡りだし、その姿も確認できるようになった。 (女の子……それもたぶん僕より年下。中学生くらい?)
どうやら声の主である少女のほうは瑞穂たちに気づいているわけではなく、ただがむしゃらに走っているだけのように見えた。
少女を止めて声をかけるべきかどうか、迷っているうちに、もうすでに少女は勢いよく橋を渡り終えようとして……
「うおおおおおおおお……へ?」
最後の最後で足がもつれたのかつまずいて、ヘッドスライディングを決めるように滑って瑞穂たちの前を通り過ぎていった。
ポカーン
漫画ならそんな擬音が描かれる場面だが、瑞穂はそんな想像を振り払い、うつぶせのまま動かない少女の元へ向かった。アルルゥもそれを止めずに、瑞穂についていく。
「ぅぅ……ぐすっ」
近づいて気づいたが、少女は泣いているようだ。
「あの……大丈夫ですか?」
少女が瑞穂の声に反応して顔を上げる。
少女の顔は涙で濡れていた。
「ぐすっ……だれだおめえら?」
「私は宮小路瑞穂。こっちがアルルゥちゃんです」
「ん……」
アルルゥが肯定するように頷く。
「それよりこれを使って涙を拭いてください」
瑞穂がポケットからハンカチを取り出す。
「泣いてない、泣いてないもんねっ!」
瑞穂の幼馴染なら、「いや、どう見ても泣いてるじゃん」と無粋なツッコミを入れるだろうが、瑞穂はさすがにそんなことはせずに黙ってそっとハンカチを少女の手に載せる。
少女は瑞穂の顔をじっと見つめた後、
「ありがと」
と小さくつぶやいた。
【C-6森 吊り橋付近/1日目 朝】
【蟹沢きぬ@つよきす】
【装備:なし】
【所持品:フカヒレのギャルゲー@つよきす】
【状態:両肘と両膝に擦り傷。疲労困憊】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:レオのバカ……
2:瑞穂たちと情報交換。
3:病院に向かって稟と合流。
4:鷹野に対抗できる武器を探す。
5:スバル、乙女さん、姫、よっぴーのうち誰かと合流したい。
【備考】
フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。
【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:目の前の少女に事情を聞く。
2:アルルゥを絶対に守る。
3:新市街へ行き、脱出のための協力者を探す。
4:ハクオロ・トウカ・オボロ・赤坂を探す。
5:知り合いを探す。
【備考】
陽平には男であることを隠し続けることにしました。
アルルゥにも男性であることは話していません。他の人にどうするかはお任せ
【アルルゥ@うたわれるもの】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式(コンパス、時計、ランタン以外)、ベネリM3の予備弾】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:瑞穂についていく。
2:おとーさんに会いたい。
3:知り合いと合流したい。
【備考】
エルルゥたちの死を理解しました。
(注)カニの大声は近くにいる参加者に聞こえた可能性があります。
|078:[[彼女は戦士だった]]|投下順に読む|080:[[はばたく未来]]|
|078:[[彼女は戦士だった]]|時系列順に読む|080:[[はばたく未来]]|
|059:[[二度と触れ得ぬキョウキノサクラ]]|蟹沢きぬ|090:[[無垢なる刃]]|
|061:[[下半身に罪はない!~トイレを求めて全力疾走~]]|宮小路瑞穂|092:[[聖者の行進]]|
|061:[[下半身に罪はない!~トイレを求めて全力疾走~]]|アルルゥ|092:[[聖者の行進]]|
**涙をこえて ◆7JMGjHarIw
瑞穂とアルルゥが放送を聞いたのは、吊り橋を渡り終えて、近くの木陰で休憩しているときであった。
アルルゥがあまり喋らないので少し時間がかかり苦労をしたが、情報交換を終えた二人は放送を静かに聴く……。
(なんてことだ……)
瑞穂は禁止エリアをメモした後、次々と流れてくる死者の名前に胸を痛めていた。11人もの命がこんな馬鹿げたゲームで失ってしまったことを、彼女たちの命を奪った殺人者を、そして主催者である鷹野たちに対する激しい怒りが胸の中で渦巻いていた。
それに……
「おねーちゃん……カルラおねーちゃん……レオ……」
そうアルルゥが探していると言ったエルルゥ、カルラ、対馬レオの3人が呼ばれたのだ。
アルルゥは不安そうな顔をしながら、瑞穂に尋ねる。注意してみるとアルルゥの目が真っ赤になっているのに気づく。
「なんでおねーちゃんたちの名前呼ばれた……? ……おねーちゃんたちが……死んだ?」
「っ!!」
(そうだ。いくら幼いとはいっても言葉の理解できない歳でもないんだ……。このまま嘘をつくことは不可能じゃないが、いずれ分かることなんだ。だから僕には事実をアルルゥに伝える責任がある……)
1年前の瑞穂ならなんとかごまかして嘘を吐き通していただろう。
だが、おじいさんの遺言で聖央女学院に入ってからの瑞穂は変わった。
エルダーに選出され、それから1年弱、文化祭の演劇、ダンスパーティーなどエルダーとしての責務を果たすうちに、瑞穂自身も大きく成長したのだ。
だから瑞穂は両手でアルルゥの肩をつかみ、自分の目とアルルゥの目を合わせ、唇を噛みしめながら、辛い事実を伝える。
「そう。アルルゥのお姉さん、カルラさん、レオさん、いま名前を呼ばれた人はもう死んだの」
「!……」
アルルゥの目に涙が溜まっていくのが見える。
「じゃあ……もうおねーちゃんたちに会えない?」
アルルゥの問いに頷きをもって答える。
「うそだ……瑞穂おねえちゃんうそつくのダメ!」
縋りつくような目で瑞穂を見るアルルゥに、瑞穂は優しく、だがはっきりと伝える。
「アルルゥちゃん……ごめん。嘘じゃ……ないの」
その答えを聞き、限界まで溜まっていた涙が決壊する。
「やだ……やだぁ!! うそ……うそって言って!! ひっぐ……ぅぁ……ぅわああああん! 嫌ぁ! 嫌ぁっ!!」
泣き叫ぶアルルゥを瑞穂はぎゅっと優しく抱きしめる。その小さな体を感じながら、瑞穂はどんなことがあってもアルルゥのことを守り抜くと心に誓った
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
どれくらい抱きしめていただろう。
しばらく経つと泣き疲れたのか、アルルゥの泣き声もだんだん勢いを失い、しまいには聞こえなくなった。
アルルゥを見ると、目を真っ赤に腫らしながらもだいぶ落ち着いたようだ。今度はアルルゥのほうから瑞穂にぎゅっと抱きつき、瑞穂もそれを優しく抱きとめる。
そんなときだった。
アルルゥの耳がピクリと反応する。
アルルゥが顔を上げ、後ろに振り向いてじっと見つめる。
「どうしたの?」
疑問に思って瑞穂が尋ねると、アルルゥははっきりと声を返す。
「誰か……くる」
「え……。っ!!」
その答えを疑う間もなく、瑞穂もそれに気づいた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
蟹沢きぬは放送を聴いてからずっと走り続けていた。
特に目的も理由もなくただただ自然に走り続けていた。
走るのをやめたら、自分がどうにかなってしまいそうで走り続けていた。
(レオのヘタレ! レオのビビリ! レオのチキン! レオの……バカ)
「ぅぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「ぅぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!」
声が近づいてきている。
先ほどアルルゥが泣き叫んでいたよりも大きな声だ。
こんな状況で走りながら大声で叫ぶなんて真似、普通ではできないだろう。
何か考えがあるのか、ただのバカなのか、その判断はひとまず保留にして、瑞穂はとりあえずアルルゥを連れて、太い木の木陰に体を隠した。
「ぅぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおっ!」
その間も声の主は橋の向こう側からまっすぐかなりの速さで向かってきている。
やがて、吊り橋も猛スピードで渡りだし、その姿も確認できるようになった。 (女の子……それもたぶん僕より年下。中学生くらい?)
どうやら声の主である少女のほうは瑞穂たちに気づいているわけではなく、ただがむしゃらに走っているだけのように見えた。
少女を止めて声をかけるべきかどうか、迷っているうちに、もうすでに少女は勢いよく橋を渡り終えようとして……
「うおおおおおおおお……へ?」
最後の最後で足がもつれたのかつまずいて、ヘッドスライディングを決めるように滑って瑞穂たちの前を通り過ぎていった。
ポカーン
漫画ならそんな擬音が描かれる場面だが、瑞穂はそんな想像を振り払い、うつぶせのまま動かない少女の元へ向かった。アルルゥもそれを止めずに、瑞穂についていく。
「ぅぅ……ぐすっ」
近づいて気づいたが、少女は泣いているようだ。
「あの……大丈夫ですか?」
少女が瑞穂の声に反応して顔を上げる。
少女の顔は涙で濡れていた。
「ぐすっ……だれだおめえら?」
「私は宮小路瑞穂。こっちがアルルゥちゃんです」
「ん……」
アルルゥが肯定するように頷く。
「それよりこれを使って涙を拭いてください」
瑞穂がポケットからハンカチを取り出す。
「泣いてない、泣いてないもんねっ!」
瑞穂の幼馴染なら、「いや、どう見ても泣いてるじゃん」と無粋なツッコミを入れるだろうが、瑞穂はさすがにそんなことはせずに黙ってそっとハンカチを少女の手に載せる。
少女は瑞穂の顔をじっと見つめた後、
「ありがと」
と小さくつぶやいた。
【C-6森 吊り橋付近/1日目 朝】
【蟹沢きぬ@つよきす】
【装備:なし】
【所持品:フカヒレのギャルゲー@つよきす】
【状態:両肘と両膝に擦り傷。疲労困憊】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:レオのバカ……
2:瑞穂たちと情報交換。
3:病院に向かって稟と合流。
4:鷹野に対抗できる武器を探す。
5:スバル、乙女さん、姫、よっぴーのうち誰かと合流したい。
【備考】
フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。
【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:目の前の少女に事情を聞く。
2:アルルゥを絶対に守る。
3:新市街へ行き、脱出のための協力者を探す。
4:ハクオロ・トウカ・オボロ・赤坂を探す。
5:知り合いを探す。
【備考】
陽平には男であることを隠し続けることにしました。
アルルゥにも男性であることは話していません。他の人にどうするかはお任せ
【アルルゥ@うたわれるもの】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式(コンパス、時計、ランタン以外)、ベネリM3の予備弾】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:瑞穂についていく。
2:おとーさんに会いたい。
3:知り合いと合流したい。
【備考】
エルルゥたちの死を理解しました。
(注)カニの大声は近くにいる参加者に聞こえた可能性があります。
|078:[[彼女は戦士だった]]|投下順に読む|080:[[はばたく未来]]|
|078:[[彼女は戦士だった]]|時系列順に読む|080:[[はばたく未来]]|
|059:[[二度と触れ得ぬキョウキノサクラ]]|蟹沢きぬ|090:[[無垢なる刃]]|
|061:[[下半身に罪はない!~トイレを求めて全力疾走~]]|宮小路瑞穂|090:[[無垢なる刃]]|
|061:[[下半身に罪はない!~トイレを求めて全力疾走~]]|アルルゥ|090:[[無垢なる刃]]|
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