「二人の出会いは」(2007/07/18 (水) 11:48:03) の最新版変更点
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**二人の出会いは ◆i8opowxlh
「まったく。何の冗談だよこれは……」
倉成武は地図を見ながら暗い森の中で呟いた。
目が覚めたら訳の分からない場所にいて、訳の分からない連中に殺し合いをしろと言われた。
誰もが思っていた疑問をぶつけた男の額には大きな風穴が開けられ、首輪が爆発することを皆に知らせるためという理不尽な理由で一人の少女が死んだ。
まったくもって冗談のような出来事である。しかし、
「冗談じゃないんだよな……」
そう。これは夢でも幻でも冗談でも、ましてやあのメガネの少年が言っていたドッキリでもない。正真正銘のデスゲームなのだ。
立ち止まってる暇はない。
自分の現在位置と支給品を確認するとすぐに走り出す。
幸か不幸か、自分の知り合いでこのゲームに参加しているのは小町つぐみただ一人。
ならば最初にすべきこと、そしてそれからの行動方針は自ずと決まる。
つぐみを探し出し、出来るだけ多くの人間とともにこのゲームから脱出、もしくはゲーム自体をぶっ壊す。
そのためにはつぐみ以外にも多くの協力者が必要になることは間違いない。
出来る限り多くの人間と接触して、協力してくれる人物を集める必要がある。
ゲームに乗った殺人者と遭遇してしまう可能性があるだろうが、それは覚悟の上だ。
もちろん、出会った人間が殺人者であった場合の対処を考えておかねばならない。
あの女は支給品には当たり外れがあると言っていた。
ナイフやスタンガンなら走って逃げることも可能だろうが、拳銃やマシンガンの類となるとそうはいかない。
生憎、自分に支給されたアイテムは戦闘向きではない。むしろ外れの部類に入るだろう。
となると、無用心に他人に近寄るのは危険か?
――いや。
――しかし。
纏まらない思考を繰り返しながら走り続けていると、近くで物音がするのが聞こえる。
考え事をしていた為、周囲への注意を怠ってしまった。
自分の迂闊さを呪いながら近くの木へ身を隠し、物音がしたほうをゆっくり覗き込む。
――そこにいたのは女だった。
制服を着ているところと背格好から判断すると高校生だろうか。
こちらを見るその瞳は……
と、ここで武はようやく気がつく。
視界に映る女性が、怯える目つきでこちらを見ていることに。
「なあ、あんた――」
「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
警戒を解くように、出来るだけ穏やかな感じで声をかけたつもりだったが失敗した。
返ってきたのは悲鳴という名の返事だった。
もう一度声をかけようとするが、女は武に背を向け走り始めた。
「って、おい!待てよ!」
慌てて追いかけようとする。が、必要はなかった。
女は10mも走らないうちに、足をもつれさせ盛大に転んだからだ。
暗い森の中で足元も見ずに走ったのだから、転んだのはある意味自明の理かもしれない。
「おいおい、大丈夫か?」
「いやぁっ!?」
近寄って手を差し伸べようとするが、手を振り払われる。
女はそのまま地面を這いながら近くの木にしがみつき、目を閉じたまま震えている。
まるでこの木こそが自分の命だといわんばかりである。
「いや、だから……」
「いやぁっ!?」
「俺の話を……」
「いやぁっ!?」
「聞いてくれよ……」
「いやぁっ!?」
その後もなんとか彼女を落ち着かせようと努力するが、すべてが徒労に終わってしまった。
なにせ声をかけても、手を差し伸ばしても、何をしても、
「いやぁっ!?」
と、万事に於いてこの調子である。
ついには涙を流し流し始め、
「助けて、助けて……」とうわ言のように繰り返し始める始末。
何故か、自分がこの子をいじめているような気分にさえなってきた。
まあ怯えさせているのは事実だろうが……。
「ああ、もう……。どうすりゃいいんだよ……」
若干イラつきながら呟く。
困った。こういう時どうすればいいのか、必死に考える。
このまま放っておいて自分はどこかへ行くか?
いや、その選択肢はあり得ない。
出来るだけ多くの人間と協力してこのゲームを脱出するという目的がある以上、ここでこの女性と情報交換することが絶対必要だ。
ではこのまま根気よく声をかけ続けるか?
確かに堅実な方法だろうが、先程から拒絶の嵐を受けている身としてはあまり気乗りしない。
じゃあこちらから余計な刺激を与えるよりも、彼女が自分で冷静さを取り戻すまで待つか?
これは中々魅力的な選択肢に思える。
幸い彼女は木にしがみついたままここから動くつもりは無いようだし、彼女が落ち着くまで根気よく待てばいい。
本当のところは、声をかけ続けたほうが良いのかもしれない……
しかし、前述の理由により武は三番目の選択肢を選ぶことにした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そのまま待ち続けること数分。
ようやく女は落ち着いてきたのか、はたまた涙が涸れてきたのか泣き声が止まってきた。
そしてゆっくりと目を開けてこちらを見る。
どうやら自分の考えはうまくいったらしい。安堵しながら武は声をかけた。
「やっとこっちを向いてくれたか。俺は倉成武。あんたの名前は?」
「え……」
まだうまく状況を飲み込めてないのか、返ってきた返事は武が望んだものではなかった。
「倉成武だ。あんたの名前を教えてくれないか?」
彼女の瞳にようやく理解の色が走る。
「あ、わ……わたく……え……わた……いつ……か……わ……」
まだ震えが収まってないようだ。
必死に自己紹介しようとしてくれるのは分かるが、体全体が震えておりうまく発声が出来ないようである。
「す……わた……しま……こ……いつく……ど……どうして……」
頭では理解しても体がついてこないのがもどかしいのか、彼女の目から再び涙がこぼれはじめる。
せっかくここまできたのにまた泣かれては元の木阿弥である。
「ああいや、慌てる必要はないぞ。ゆっくりでいいから。ゆっくりでいいんだ」
なんとか彼女を落ち着かせる方法を考えないといけない。
と、そこで思い出す。昔見たテレビ番組を。あるアイテムを使って恐慌をきたした人を落ち着かせる方法を。
そして自分はそのアイテムを持っていることを。
実際に効果があるかは怪しいが、他に手段が思いつかないため藁にもすがる思いで試してみることにした。
ゴソゴソとデイパックの中を探り始める。
武がデイパックの中から取り出したのはジッポライターである。
そして、ジッポライターを彼女の顔の30cmほど手前に持ってきて火をつける。
それから、なおも自己紹介をしようとしている女性の言葉を遮って強い口調で言った。
「いいか。何も考えずに、このライターの火を目だけで追うんだ」
不思議そうに彼女の目の焦点がライターの火にあてられたのを確認してから、武はゆっくりとライターを動かしはじめた。
上へ、下へ、右へ、左へ、時には円を描きながらただひたすらライターを動かす。
彼女の目も忠実にその動きについていく。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
武が行っているこの行為、『一点集中法』と催眠法の一種である『驚愕法』を利用したものである。
混乱状態、つまり思考が拡散している人間を落ち着かせるにはどうすればいいのか?
言うまでもなく、拡散した思考を一つにまとめればいいのである。
そこで武が用いた方法が(といってもテレビの受け売りだが)驚愕法と一点集中法だ。
まず驚愕法――何らかの方法で相手を驚かせ、理性が働かないうちに暗示をかける――を用いる。
後は一点集中法――文字通り何らかの対象に視線を集めリラックス、あるいは集中する方法――で落ち着かせればいい。
今回の場合は何の前触れもなくライターに火をつけ、ライターの火を目で追えと指示したのが驚愕法にあたる。
何も考えずに火を目だけで追うという行為が一点集中法だ。
無論武はそのような仕組みは知らず、テレビでやっていたことを思い出しながら再現しているだけに過ぎないのだが……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
何分もやる必要があるかと思っていたが、思っていたより早く効果は表れた。
あれほどまでに震えていた彼女の体は静寂を取り戻し、目だけが活発に動きライターの火を追いかけている。
武は彼女の体全体に期待していた効果が現れたことを確認して火を消し、尋ねた。
「どうだ。落ち着いたか?」
そこで彼女もようやく自分の体の変化に気づいたようである。
「え……は、はい! 落ち着きました」
「それじゃあ、もう一度自己紹介だ。俺は倉成武。あんたは?」
「貴子。厳島貴子と申します」
【A-7 森/1日目 深夜】
【倉成武@Ever17】
【装備: ジッポライター】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:貴子と情報交換
2:つぐみを探す
3:ゲームからの脱出、
【厳島貴子@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:不明 次の書き手さん任せ】
【所持品:不明 次の書き手さん任せ】
【状態:健康 転んだため制服が若干汚れています】
【思考・行動】
1:武と情報交換
2:???
|002:[[STRANGE ENCOUNTER]]|投下順に読む|004:[[月下の出会い]]|
|002:[[STRANGE ENCOUNTER]]|時系列順に読む|004:[[月下の出会い]]|
||倉成武|045:[[温泉に集いし者たち(前編)]]|
||厳島貴子|045:[[温泉に集いし者たち(前編)]]|
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**二人の出会いは ◆i8opowxlh
「まったく。何の冗談だよこれは……」
倉成武は地図を見ながら暗い森の中で呟いた。
目が覚めたら訳の分からない場所にいて、訳の分からない連中に殺し合いをしろと言われた。
誰もが思っていた疑問をぶつけた男の額には大きな風穴が開けられ、首輪が爆発することを皆に知らせるためという理不尽な理由で一人の少女が死んだ。
まったくもって冗談のような出来事である。しかし、
「冗談じゃないんだよな……」
そう。これは夢でも幻でも冗談でも、ましてやあのメガネの少年が言っていたドッキリでもない。正真正銘のデスゲームなのだ。
立ち止まってる暇はない。
自分の現在位置と支給品を確認するとすぐに走り出す。
幸か不幸か、自分の知り合いでこのゲームに参加しているのは小町つぐみただ一人。
ならば最初にすべきこと、そしてそれからの行動方針は自ずと決まる。
つぐみを探し出し、出来るだけ多くの人間とともにこのゲームから脱出、もしくはゲーム自体をぶっ壊す。
そのためにはつぐみ以外にも多くの協力者が必要になることは間違いない。
出来る限り多くの人間と接触して、協力してくれる人物を集める必要がある。
ゲームに乗った殺人者と遭遇してしまう可能性があるだろうが、それは覚悟の上だ。
もちろん、出会った人間が殺人者であった場合の対処を考えておかねばならない。
あの女は支給品には当たり外れがあると言っていた。
ナイフやスタンガンなら走って逃げることも可能だろうが、拳銃やマシンガンの類となるとそうはいかない。
生憎、自分に支給されたアイテムは戦闘向きではない。むしろ外れの部類に入るだろう。
となると、無用心に他人に近寄るのは危険か?
――いや。
――しかし。
纏まらない思考を繰り返しながら走り続けていると、近くで物音がするのが聞こえる。
考え事をしていた為、周囲への注意を怠ってしまった。
自分の迂闊さを呪いながら近くの木へ身を隠し、物音がしたほうをゆっくり覗き込む。
――そこにいたのは女だった。
制服を着ているところと背格好から判断すると高校生だろうか。
こちらを見るその瞳は……
と、ここで武はようやく気がつく。
視界に映る女性が、怯える目つきでこちらを見ていることに。
「なあ、あんた――」
「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
警戒を解くように、出来るだけ穏やかな感じで声をかけたつもりだったが失敗した。
返ってきたのは悲鳴という名の返事だった。
もう一度声をかけようとするが、女は武に背を向け走り始めた。
「って、おい!待てよ!」
慌てて追いかけようとする。が、必要はなかった。
女は10mも走らないうちに、足をもつれさせ盛大に転んだからだ。
暗い森の中で足元も見ずに走ったのだから、転んだのはある意味自明の理かもしれない。
「おいおい、大丈夫か?」
「いやぁっ!?」
近寄って手を差し伸べようとするが、手を振り払われる。
女はそのまま地面を這いながら近くの木にしがみつき、目を閉じたまま震えている。
まるでこの木こそが自分の命だといわんばかりである。
「いや、だから……」
「いやぁっ!?」
「俺の話を……」
「いやぁっ!?」
「聞いてくれよ……」
「いやぁっ!?」
その後もなんとか彼女を落ち着かせようと努力するが、すべてが徒労に終わってしまった。
なにせ声をかけても、手を差し伸ばしても、何をしても、
「いやぁっ!?」
と、万事に於いてこの調子である。
ついには涙を流し流し始め、
「助けて、助けて……」とうわ言のように繰り返し始める始末。
何故か、自分がこの子をいじめているような気分にさえなってきた。
まあ怯えさせているのは事実だろうが……。
「ああ、もう……。どうすりゃいいんだよ……」
若干イラつきながら呟く。
困った。こういう時どうすればいいのか、必死に考える。
このまま放っておいて自分はどこかへ行くか?
いや、その選択肢はあり得ない。
出来るだけ多くの人間と協力してこのゲームを脱出するという目的がある以上、ここでこの女性と情報交換することが絶対必要だ。
ではこのまま根気よく声をかけ続けるか?
確かに堅実な方法だろうが、先程から拒絶の嵐を受けている身としてはあまり気乗りしない。
じゃあこちらから余計な刺激を与えるよりも、彼女が自分で冷静さを取り戻すまで待つか?
これは中々魅力的な選択肢に思える。
幸い彼女は木にしがみついたままここから動くつもりは無いようだし、彼女が落ち着くまで根気よく待てばいい。
本当のところは、声をかけ続けたほうが良いのかもしれない……
しかし、前述の理由により武は三番目の選択肢を選ぶことにした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そのまま待ち続けること数分。
ようやく女は落ち着いてきたのか、はたまた涙が涸れてきたのか泣き声が止まってきた。
そしてゆっくりと目を開けてこちらを見る。
どうやら自分の考えはうまくいったらしい。安堵しながら武は声をかけた。
「やっとこっちを向いてくれたか。俺は倉成武。あんたの名前は?」
「え……」
まだうまく状況を飲み込めてないのか、返ってきた返事は武が望んだものではなかった。
「倉成武だ。あんたの名前を教えてくれないか?」
彼女の瞳にようやく理解の色が走る。
「あ、わ……わたく……え……わた……いつ……か……わ……」
まだ震えが収まってないようだ。
必死に自己紹介しようとしてくれるのは分かるが、体全体が震えておりうまく発声が出来ないようである。
「す……わた……しま……こ……いつく……ど……どうして……」
頭では理解しても体がついてこないのがもどかしいのか、彼女の目から再び涙がこぼれはじめる。
せっかくここまできたのにまた泣かれては元の木阿弥である。
「ああいや、慌てる必要はないぞ。ゆっくりでいいから。ゆっくりでいいんだ」
なんとか彼女を落ち着かせる方法を考えないといけない。
と、そこで思い出す。昔見たテレビ番組を。あるアイテムを使って恐慌をきたした人を落ち着かせる方法を。
そして自分はそのアイテムを持っていることを。
実際に効果があるかは怪しいが、他に手段が思いつかないため藁にもすがる思いで試してみることにした。
ゴソゴソとデイパックの中を探り始める。
武がデイパックの中から取り出したのはジッポライターである。
そして、ジッポライターを彼女の顔の30cmほど手前に持ってきて火をつける。
それから、なおも自己紹介をしようとしている女性の言葉を遮って強い口調で言った。
「いいか。何も考えずに、このライターの火を目だけで追うんだ」
不思議そうに彼女の目の焦点がライターの火にあてられたのを確認してから、武はゆっくりとライターを動かしはじめた。
上へ、下へ、右へ、左へ、時には円を描きながらただひたすらライターを動かす。
彼女の目も忠実にその動きについていく。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
武が行っているこの行為、『一点集中法』と催眠法の一種である『驚愕法』を利用したものである。
混乱状態、つまり思考が拡散している人間を落ち着かせるにはどうすればいいのか?
言うまでもなく、拡散した思考を一つにまとめればいいのである。
そこで武が用いた方法が(といってもテレビの受け売りだが)驚愕法と一点集中法だ。
まず驚愕法――何らかの方法で相手を驚かせ、理性が働かないうちに暗示をかける――を用いる。
後は一点集中法――文字通り何らかの対象に視線を集めリラックス、あるいは集中する方法――で落ち着かせればいい。
今回の場合は何の前触れもなくライターに火をつけ、ライターの火を目で追えと指示したのが驚愕法にあたる。
何も考えずに火を目だけで追うという行為が一点集中法だ。
無論武はそのような仕組みは知らず、テレビでやっていたことを思い出しながら再現しているだけに過ぎないのだが……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
何分もやる必要があるかと思っていたが、思っていたより早く効果は表れた。
あれほどまでに震えていた彼女の体は静寂を取り戻し、目だけが活発に動きライターの火を追いかけている。
武は彼女の体全体に期待していた効果が現れたことを確認して火を消し、尋ねた。
「どうだ。落ち着いたか?」
そこで彼女もようやく自分の体の変化に気づいたようである。
「え……は、はい! 落ち着きました」
「それじゃあ、もう一度自己紹介だ。俺は倉成武。あんたは?」
「貴子。厳島貴子と申します」
【A-7 森/1日目 深夜】
【倉成武@Ever17】
【装備: ジッポライター】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:貴子と情報交換
2:つぐみを探す
3:ゲームからの脱出、
【厳島貴子@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:不明 次の書き手さん任せ】
【所持品:不明 次の書き手さん任せ】
【状態:健康 転んだため制服が若干汚れています】
【思考・行動】
1:武と情報交換
2:???
|002:[[STRANGE ENCOUNTER]]|投下順に読む|004:[[月下の出会い]]|
|002:[[STRANGE ENCOUNTER]]|時系列順に読む|004:[[月下の出会い]]|
||倉成武|045:[[温泉に集いし者たち(前編)]]|
||厳島貴子|045:[[温泉に集いし者たち(前編)]]|
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