「猟人は鬼と獅子」(2007/11/03 (土) 16:35:07) の最新版変更点
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**猟人は鬼と獅子 ◆Qz0e4gvs0s
辺りに朝靄が立ちこめた頃、詩音は未だ視力の戻らない事に苛立っていた。
(う~ん。さすがにここいらで休まないと体が持ちませんね)
つぐみとの戦闘を引き分けた時に集中し過ぎたためか、疲労も溜まっている。
「こんな事なら、あの女を可能な限りの拷問で嬲って、ストレス発散しておくんでした」
だからと言って、今から死体のある場所まで戻る訳にもいかない。
それよりも、このまま下手に動き続けるより、一息入れるべきなのではと考える。
眠気と疲労が溜まっていく中、いざというときに頭が働かなくてはどうしようもない。
あれこれ考えた末、近くにあった木の枝や枯れ葉で身を擬態し、大木に身を任せる事にした。
もちろん、眠るつもりもなければ座るつもりもない。ほんの数分間だけ、少しの休憩を入れるだけだ。
◇ ◇ ◇ ◇
ひっそりと静まる森の中を、レオはひたすら走っていた。
トウカの言っている事は信用できない。だから、自分が身をもって証明するしかない。
そのためにはまずカニを捕まえる。そして、トウカの前に突き出すのが一番だと思った。
それに、もともとカニやスバル……生徒会の面々を探す予定だったのだ。その目的に変更はない。
(そう言えば、予定ではもともと学校に行くつもりだったんだよな)
先程四人で居た位置ならば、橋を経由して北上したほうが近道だったが、
怒りに任せて走り出した結果、見事森の中を突っ切る事になってしまったのである。
林の中は靄がかかった状態で、一見すると方向を見失いかねない。コンパスがあって助かった。
なにより駆け出した手前、方向転換して橋ある方まで戻るのが恥ずかしかった。
(学校にカニが居るとは限らないしな)
誰に言うでもなく、レオは自らの行動を正当化すると、休む事無く北を目指した。
やがて、ハイキングコースと思わしき道を発見すると同時に、レオは視界の先にある物体があるのに気付いた。
(あれ、人だよな)
人間らしき物体に、木の枝や枯れ葉が上手い具合に積もっているので見落としやすいが、
偶然かなのか、それとも人を探しながらだったためか、レオは『彼女』を発見出来た。
ここが今までの日常だったら、カニ辺りが面白がって突っついただろうがレオはそんな事はしない。
(少なくとも、カニ……じゃないな)
あれが探し人ならば問題が一気に片付くが、見た限りどうもそうではないらしい。
(あそこまでキッチリ擬態できるとは思えない。むしろ、堂々と道路の真ん中で寝るのがカニだな)
それでも万が一という可能性が捨てきれず、ジャケットでFN P90を隠すと、レオはギリギリまで接近した。
だが、相手ばかりに気を取られていたからか、足元に並べられた小枝までは気を配れなかった。
静寂の中、小枝の折れる音が二人の間に確かに伝わる。
そして『彼女』は目を覚ました。その小さな狩りの合図で。
◇ ◇ ◇ ◇
その小さな音を聞くと同時に、詩音は接近してきた相手の男に向かって銃を構えた。
そして続けざま発砲するも、焦点が合っていないためか命中はしない。
男は慌てて走り出すと、近くにあった樹木に身を隠した。
(チッ!! 油断し過ぎました!)
男目掛けて発砲するが、視界が定まらず思うように狙えない。
(小町つぐみ! このツケは大きいですよ!)
視界が戻らないのに加え、うっかり眠ってしまい脳が完全に活性化していない。
やはり、無理してでも拠点となる場所を押さえておくべきだったか。
「寝込みを襲うとは卑怯な男ですね~!」
「襲ってない! 第一、俺はこんなゲーム乗ったつもりもない!」
「へぇ、なら――」
撃ち終えたマガジンを投げ捨てると、手馴れた手つきでマガジンを装填し走り出す。
「さっさと死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
隠れた男の姿を確認すると、詩音は容赦なく発砲した。
それに合わせて、男も場所を移動し詩音の死角まで駆け抜ける。
「ほらほらほらほらほらほらほらほらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
逃げた男をまた詩音が追う。男は反撃出来ずにひたすら逃げ回る。
(逃げ回ってるって事は、銃は持ってないんですかね? あるのは右手の刀ぐらいですか)
隠し持っている可能性もあったが、それならば使われる前に殺せばいい。
万が一跳弾する恐れがあるため、発砲はなるべく控える事にした。
立ち並ぶ樹木の位置を把握しながら、銃を構えて威嚇しつつ男を追う詩音。
男は攻撃の意思がないのか、ひたすら逃げに徹している。
闇雲に走り回る男と、徐々にだが戦場を頭に叩き込む詩音の差は段々と短くなっていく。
完全に詩音のペースだ。着実と、二人の距離はさらに縮まっていく。
「くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ!!」
この一方的な狩りが楽しいのか、詩音は興奮を抑えられず笑い出した。
そして、遂に一発の銃弾が男の足を捕らえた。
「ぅッがぁ!」
走っていた勢いが止まらず、男は盛大に転倒した。
「ぐぎゃぎゃぎゃぐげげぎゃぎゃで! 当たった! 当たったねぇぇぇぇぇ!!」
喉を掻き毟りながら、詩音は倒れた男へとゆっくり近づいた。
「ぐげげ、あの女に出来なかった拷問。ついでだから全部しちゃいましょぉぉねぇ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
(テンションに流されるな)
追いかけられる中、レオは必死に頭を落ち着かせていた。
だが、目を覚ましたかと思えば、その相手が突然銃を乱射。冷静になれというのも無理な話だ。
それでも、なんとか心を落ち着け出来る限りの状況判断を行う。
(問答無用に撃ってきた。つまりこのゲームに『乗った側』だ)
ならば、こちらも武力を持って退けるのが第一だ。
(撃てるのか……さっきみたいに躊躇してる暇はないんだぞ!)
ジャケットに隠れたトリガーに指をかけるが、そこから先に進めない。
(撃たなきゃ殺されるんだぞ! 撃つんだ対馬レオ!)
自らを奮い立たせるが、なぜか先程のアルルゥが飛び出してきた事を思い出してしまう。
(撃てば怪我する。下手したら、死んじまうんだぞ……)
アルルゥとこの女は関係ない。それでも、嫌なイメージが頭から離れない。
その一瞬の迷いを狙うように、一発の銃弾がレオの太ももを貫通した。
「ぅッがぁ!」
焼けて痺れる様な感覚に戸惑い、足を滑らせ大きく転倒してしまう。
その際、右手に持った刀は抜き身のまま地面に放られた。
(痛い痛いッ痛いッ痛いッッ――)
頭の中が真っ白になる。今までに味わった事のない痛みだった。
「ぐぎゃぎゃぎゃぐげげぎゃぎゃで! 当たった! 当たったねぇぇぇぇぇ!!」
気味の悪い声が、レオを嘲笑う。
ゆっくりと、ゆっくりと……近付いてくる。
「ぐげげ、あの女に出来なかった拷問。ついでだから全部しちゃいましょぉぉねぇ!!」
朝日が昇り始める。陽の光を背負い、鬼が姿を現した。
「みぃぃぃぃぃぃつぅぅぅぅけぇぇぇぇたぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
少し時間は遡る。
市街地から森に入ったところを、悠人と衛は走っていた。
「悠人さん。早く早く!」
「ちょ、待ってくれ衛。そんな慌てなくても」
「駄目だよっ。遙あねぇ一人じゃきっと寂しいよ!」
「わ、分かった。急ごう」
「うん!」
衛のペースに乗せられっぱなしの悠人は、苦笑いを浮かべながらも走り続けていた。
周囲に誰かいるか警戒しながら走っているが、今のところそういった気配はない。
「で、その遙……さん? 誰を探してくれって言ってたんだ?」
「えっと、孝之って人だよ」
「孝之? その人も、このこ――参加しているのか?」
「え?」
「だから、その探してくれって言われた人物が本当にいるのかって事」
「あ!」
言われてから気付いた。衛は名簿でその名前を確認していなかったのだ。
その途端、衛は少し暗くなる。探すべき相手がいなければ遙の願いが叶わない。
「やれやれ。ちょっと確認してみようか」
「う、うん」
一度立ち止まり名簿を確認する二人。恥ずかしがりながらも、衛は悠人に顔を近づけて名簿を見始めた。
「孝之、孝之、孝之っと……お、これかな」
「どれどれ?」
衛がそこに目をやると、確かに『鳴海孝之』と記されていた。
「一応他の参加者も見てみたけど、タカユキって名前はこの人だけだ」
「じゃあ」
「ああ。探せば見つかるって事だ」
「やぁったぁぁぁぁ!」
思わず悠人の手を取って喜ぶ衛。その直後、恥ずかしくなって手を背中に引っ込めた。
「ただ、この人がどこに居るか分からない以上、楽観視はできないな」
「え~」
「それにほら、その遙さんは歩けないんだろ? だとすると、その孝之って人に来てもらうしかないなぁ」
(……第一、この孝之が遙さんの望む孝之じゃない可能性もある)
その言葉に、衛は不安な表情を浮かべる。
「あっでも、遙あねぇの傍にも誰か居た方が良いんじゃないかな」
「そうだなぁ。とりあえず、遙さんに会った後は孝之って人を探しつつ協力者も探そう」
「あっ、そうだね! それなら早く探せるし心細くないし。悠人さんスゴイよ!」
「いや、まー……ほら、いくぞ!」
「あ、ちょっと、まって――」
衛の言葉を遮る様に、森の奥から銃声が響く。
「遙あねぇ!」
「まて衛っ! くそっ!」
飛び出した衛を追うため、悠人は慌てて走り出した。
◇ ◇ ◇ ◇
倒れ伏したまま、レオは痛みを堪えていた。
立ち上がろうも上手くいかない。下半身に目をやると、足が不自然な方向に曲がっている。
(くそっ! 立ってくれ……立てよ畜生!)
拳を強く握り締めるが、レオの足は言う通りにはならない。
(もう撃たなくちゃ殺される! 撃つしかないんだ!)
近付いてくる女に悟られないよう、右手をジャケットの中に入れ、トリガーを指に掛ける。
「鬼ごっこはおしまいですねぇ」
気持ち良さそうに呟くと、女はレオの足に銃弾を放った。
「ぃぁ、ッ……」
「ほらほら、黙ってないで何とか言ってください……よ!」
再びレオの足に銃弾を浴びせる。
「ぅ、ッぐぁ」
「我慢しないで叫べばいいじゃないですか」
痛みで気を失いそうになるのを堪え、ひたすら機を見計らっていた。
そんな撃つたび痙攣するのレオが面白いのか、女はテンポ良くトリガーを引いた。
「――ぃ、やめ、ぁぁッ」
「これは、下手な玩具より面白いですねぇ。あはははははははははははははは!!」
やがて全弾撃ち尽くすと、素早くマガジンを取替えレオに近づく。
「さて、そろそろ飽きてきました。弾がもったいないですし、拷問もしたいですしね」
ボリボリと何かを掻き毟るような音を出し、女は銃を構えてレオの傍まで来た。
その一瞬。警戒を緩めて近付いたチャンスをレオは逃さなかった。
「っぁぁあああああああああああああ!!」
立つ事は出来ないが、体を起こすぐらいは出来たのだ。
レオは叫び声とともにFN P90を無我夢中で乱射した。
銃を撃つのも初めてで、おまけに怪我をしていたため撃った反動に体が持っていかれたが、何とか堪えた。
そして運がよかったのは、女が避けようもない位置まで近付いてくれていた事だった。
「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
銃口から飛び出る銃弾が、女の両足や腕を貫通していく。
「あ、あが、ああっあぁぁああああいだいいだいいだいいだいいだいだあぁぁぁあぁ!!」
不意打ちを食らった女は、足の力が抜け勢い良く地面に倒れた。
「ァァ……としくん……いだぁい。いだぁいよぉぉぉ」
そして、何度か痙攣すると静かに目を閉じた。
「ぐ、や、やった……のか」
動かなくなった女を見て、レオは深々とため息をついた。
「くそっ、足が動かねぇ」
見るとレオの足は肉が削げ落ち、骨が剥き出しになっている部分ある。
「う、ぉおぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
グロテスクな自分の足に、思わず嘔吐してしまう。
「せめて、ぅッ……車椅子でもあれば」
この場から立ち去るため、這うようにして移動を開始するレオ。
「え?」
動こうとした矢先、背中に何かが突然重くのしかかる。同時に、抉り出される痛みがレオの体を走る。
「うぁぁぎゃぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァあああああアアアアアア!!」
「逃がすかぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
男の撃った弾で倒れた詩音は、咄嗟の判断で「死んだフリ」を行った。
気付かれないように、自分の体のダメージを判断する。
両足は肉片が飛び散り無残な事になっている。右肘もありえない場所が抉れている。
(畜生……糞野郎がぁ! 調子に乗りやがってぇぇぇ!!)
だが幸いな事に、内臓の詰まった中心部は無傷だった。
男が下手糞だったからか、それとも殺すつもりがなかったのか
(殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスッコロスッッコロスッッッ――)
銃は痛みの衝撃で放ってしまったが、まだこちらには武器があるのだ。
腰に備えていた果物ナイフを抜き取り、気付かれないように息を潜める。
そして、こちらに背中を向けて這いずり去る男目掛けて飛び掛った。
「うぁぁぎゃぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァあああああアアアアアア!!」
「逃がすかぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
果物ナイフが男の背中に突き刺さる。突然の事に、男は悲鳴を上げてのた打ち回った。
「ぃがぁい、ごぅっ、ごふっ、ぁッ」
その隙に、男に馬乗りになる詩音。
「よくもやってくれたな……何百倍にして返してやる!」
男は刺さったナイフを抜くため、必死で背中を掻き毟る。
その青くなった顔面目掛けて、詩音は近くにあった石を叩きつける。
「ぁあぁぐぃぃぃぎゃぁぁぁぁぁぁああああ」
「この! この! このぉ! このっ! このぉぉぉ!」
鼻の皮がめくれ、頬から肉壁が見え始めてきた。
「よくもッ! やってッ! くれたなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
石が砕けると、今度は相手の眼球目掛けて左拳を叩き込む。
「―――」
もはや悲鳴にならない言葉を放つと、男の動きがピタリと静止する。
それでも、詩音は殴るのをやめなかった。ただひたすら、男の顔を殴る。殴る。殴る。
◇ ◇ ◇ ◇
遠くなる意識の中、レオはまだかろうじて見える左目で、相手の顔を覗き見ていた。
鬼のような形相で、レオの顔に拳を叩きつける。
殴っては咆え、殴っては哂うその顔は、人間には見えなかった。
(昔話の鬼って、こな感じだったかな)
場違いで意味不明な疑問を浮かべながら、レオの意識は静かに閉じていく。
もう何も見えない。目を開けているはずなのに、暗すぎてよく分からない。
(終わって目が覚めたら、ドッキリだったりしてな)
意識が暗闇に覆われていく中、あの教室での悲劇を思い出していた。
(フカヒレ……仇とれなくて済まねえ)
無残に殺された親友は、どんな思いで死んでしまったのだろう。
(スバル……生き残ってくれよ)
兄貴分である親友は、自分の死を受け入れてくれるだろうか。
(カニ……お前が人を襲うなんてないよな。なにかの誤解なんだろ?)
ちっとも成長しない幼馴染は、この逆境を跳ね除けてくれるかもしれない。
(姫と佐藤さん……ここでも一緒に居るのかな)
憧れていた人と優しかった人は、このゲームでどうしているだろうか。
(乙女さん……俺、負けちまったよ)
自分を指導し、世話してくれた姉は、負けを認めてくれるだろうか。
――もう動かない体。
――働かない思考。
――疲れきった精神。
レオは限界を過ぎていた。
(あきらめるなよ!)
静寂を打ち破る力強い声が響く。誰の声か分からない。
(目を開けろ! お前はまだ負けちゃいない!)
その声は、必死にレオを呼ぶ。
(テンションに身を任せて戦え! 任せちまえ!)
体中を駆け巡る獅子の精神。
(ここで諦めちまっていいのか! 違うだろ!)
再び呼吸を始める思考。
(違うなら、最期まで戦い抜け!)
徐々に熱を帯びていく体。
(さあ、行け!)
その叫びが合図となり、レオの全てが覚醒した。
◇ ◇ ◇ ◇
気が済むまで殴るり終えた詩音は、もはや顔ではない物体に唾を吐きつけた。
殴れば怒りが収まると思ったが、一向に収まる気配がない。
むしろ、手の甲がボロボロになった事で、もっと大きな怒りを生んだ。
馬乗りのまま、憎々しげに男を睨む。血だらけの男は、息をしているとは思えなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
そこで、詩音は鬱憤を晴らす不気味な名案を閃く。
(腹を掻っ捌いてあげます)
男の背中に刺さった果物ナイフは、未だ動く事無く存在していた。
上半身を倒し、男にかぶさるように倒れると、左手で果物ナイフの柄に手を伸ばした。
「えっ――」
「……」
世界が反転する。今まで地面を見ていた視界に空が広がる。
男が死んで油断したのと、突然の事で思考が真っ白になってしまう。
(あれ? なんで?)
軽いパニックを起こしかけたが、喉元の嫌な感覚で覚醒した。
死んだはずの男が、自分の喉に文字通り「喰らいついて」いるのだ。
ギチギチと鳥肌が立つ音を立て、男の歯は詩音の喉元に突き刺さる。
砕かれず残っていた歯は、鋭い牙となっていた。
「やめ、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!」
危険を悟った詩音は、男の頭を必死で剥がそうとする。
だが、どこにそんな力が残っていたのか、男の口は詩音の喉から離れる事はなく堪えた。
むしろ着実に危険領域まで牙を埋め、ガリガリと肉や筋を削り取る。
「はなっ、離せぇぇぇぇぇ! 死に底ないがあああああああああああああああ!!」
目に留まった果物ナイフを抜き去ると、男の頭目掛けて突き刺す。
無意識なのか、男は両腕で頭を守り迫りくる刃を腕で受け止めていた。
血と脂肪の付着した果物ナイフは、切れ味を失い刺さることはなかった。
そんな事はお構いなしに、詩音は男の腕や肩や背中を何度も突く。
背中から大量の血が飛び散っても、両腕や背中に点々と穴を開けられても、男は牙を立て続けた。
必死で逃げ惑う詩音。それを逃さない男。今度は詩音が悲鳴を上げる。
そう……狩る者と狩られる者が逆転していた。
詩音は気付いていなかった。自分が喉を掻き毟っていた事を。
そのせいで、首の血管の守りが薄くなっている事を。
――プチュ
可愛い音を立て、遂に詩音の血管が千切れる。
首に流れていた血は、行き場を失い辺り一面に飛び散った。
その光景を、詩音は理解できないまま惚けていた。
「え? あれ? あ、え?」
気付いた時には、男に目もくれず必死で飛び散る血に手を伸ばしていた。
「あ、あ、やだ……やめて」
左手で飛び散る血を受け止め、その血を首に戻す。
だが、今度はその何倍もの量の血が首から溢れ出る。
「なん、とまッ、やだ。出て行かないで!」
上半身を起き上がらせ、必死に左手で同じ行為を行う。受け止めては戻す。受け止めては戻す。
「あ、あは、あははははははははははははははははははッ――」
そして呆気なく、笑いながら地面に倒れた。
詩音の首から噴出する血は、やがて勢いを失い何事も無かったかのように終わった。
◇ ◇ ◇ ◇
悠人と衛が辿り着いた場所は、無残な光景だった。
「衛! 見るな!」
顔面蒼白になりしゃがみ込む衛を支え、悠人は激しい後悔に襲われた。
(間に合わなかった。くそっ)
まずは震える衛を何とかするため、悠人はこの場を離れ、血と死臭の臭わない場所に衛を休ませた。
「なにかあったら声を上げるんだぞ」
努めて優しく声をかけると、衛はなんとか頷き返した。
そして、再び二つの死体が並ぶ場所まで戻ってきた。
(まさか、この女の子が遙さん?)
目を見開き、首から全身が血だらけの女の子を見る。
(あのファンンタズゴリアの戦場でも、ここまで無残な殺され方をした者はいなかったはずだ)
これをやった奴は、本当に同じ人間なのかと言う疑問が浮かぶ。
まともな神経でこんな事をやれるとは思いたくなかったのだ。
(こっちの男は……)
もう一人の男は、背中を赤黒く染めて、うつ伏せに倒れていた。
悠人は、顔を見るため覚悟を決めて男を抱き起こした。
「うっ」
その顔は、もはや原型を留めてはいなかった。顔と言われなければ気付かない。出来の悪い粘土細工だ。
「……ぃ」
「え?」
男の口らしき場所から、何か聞こえた。
◇ ◇ ◇ ◇
レオが再び目を開けると、そこには懐かしい顔があった。
「ようフカヒレ」
「なんだレオ。お前もう来ちまったのか」
寂しい様な、だが少し嬉しそうにフカヒレは笑った。
「来ちまったって?」
「いや、分かってないならいいんだ。それより、あっちに来ないか?」
「ん?」
「うんめぇ食べ物もあるし、美人揃いだぞ~」
「はは、なんだか長く会ってない気がしたけど、相変わらずだなお前は」
どこか懐かしむように、二人は会話を続ける。
「ま、最初に来ちまったのがレオなのはショックだったけどな」
「さっきから意味が分かんねーよ。大体俺まだやる事があるし」
「やる事って例の?」
「ああ。トウカさんの誤解を解くためカニを探す。あのまま二人を会わせたら危険だろ?」
「大丈夫だって! カニなら自力でなんとかするさ」
無責任な発言だが、なぜか怒る気にはなれなかった。
「う~ん。あ、そう言えばスバルは来てるのか?」
レオの疑問に、フカヒレはいつもとは違う雰囲気で質問を返した。
「なあレオ。スバルに来て欲しいか?」
数秒の沈黙の後、レオはゆっくりと言葉を紡いだ。
「……いや、スバルは来なくていい気がする」
「そっかそっか。んまぁ、積もる話は向こうで聞くぜ」
そう言うと、フカヒレは口笛を吹きながら歩き出した。
レオも、それに続いて歩き始める。
そして、一度だけ後ろを振り返って呟いた。
「スバル……頼んだぜ」
◇ ◇ ◇ ◇
「……ぃ……ぁ……」
「おい! しっかりしろ! おい!」
確かに生きている。もう虫の息だが、それでも男の方は息があった。
「くそ! 返事をしてくれ! 頼む!」
「……ぃ……ぁ……ぉ」
うわ言のように、男は何か呟く。
(なんだ!? なにか喋ってるのか?)
男の口元まで耳を近付け、全神経を集中させる。
「……カニ……と、トウカ……危険」
「カニ? トウカ?」
悠人の声が聞こえたのか、男は喋るのをやめた。
「頼んだ……ぜ」
そう最期に呟くと、男は静かにこの世を去った。
「なんで、なんで間に合わなかったよ! こんな……こんな!」
溢れそうになる悔しい気持ちを、必死で押し留める。
そして、目を閉じて気持ちを落ち着かせる。
(取り乱すな。俺が取り乱したら衛はどうなる)
溢れそうになる涙を堪えて、悠人は名簿を取り出した。
「いた。蟹沢きぬ……トウカ」
男の残した最期の言葉は、悠人の頭に深く残った。
(この二人が、この男と女の子を殺したんだろうか?)
二人の死体に上着をかけると、強く目を閉じ手を合わせて祈る。
目を開けると、視界の端に一振りの刀が投げ出されているのを見付けた。
近寄って持ち上げる。日本刀のようだが、重さはそんなには感じない。
「二人のどちらかの遺品か?」
鞘から抜いてみる。ウルカならば使えたかもしれないが、悠人には難しかった。
それでも、捨て去るつもりにはなれなかった。
落ちている二丁の銃には気付かず、悠人はその場を離れ衛のもとへ戻った。
遠目でも死体を見たショックからか、衛は小さく震えていた。
それでも、泣き叫ぶ事だけはしなかった。
「衛……」
悠人の言葉に、ビクッと反応する。
「遙さんは、あの女の子なのか?」
首を横に振る。
「は、遙ねぇと、髪が違う……し、服も違う」
「そうか」
幸か不幸か、この死体は遙ではなかった。とりあえず安堵する悠人。
「ゆ、悠人さん……なんで。なんであの人達死んじゃったの?」
「!」
「夢……だよね。こんな事現実に起こらないよね!?」
「……」
静かに首を振る悠人。それでも、衛は食い下がった。
「お願いだよ! 夢って言ってよ! ねえ!」
そこで、抑えていたものが堪えられなくなったのか、衛は静かに泣き出した。
悠人は衛を抱きしめると、安心するように肩を叩いた。衛の我慢はそこが限界だった。
「わぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
泣き叫ぶ衛を抱きしめるしか出来ない自分が、悠人は歯痒かった。
やがて、衛は泣き終えると、そっと悠人の体から身を離した。
「行こう。遙あねぇの所に」
「ああ」
衛の目は真っ赤に腫れている。それでも、強い眼差しを失ってはいなかった。
悠人は、二人の死体に目をやる。
(済まない。必ず供養するから……待っていてくれ)
頭を下げると、衛の手を握りゆっくり歩き出した。
【C-4 森のハイキングコース/1日目 時間 早朝】
【高嶺悠人@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【装備:今日子のハリセン@永遠のアセリア】
【所持品:支給品一式、バニラアイス@Kanon(残り9/10、トウカの刀@うたわれるもの】
【状態:やや精神不安定、背中に軽い打ち身】
【思考・行動】
基本方針1:衛と遥を守る
基本方針2:なんとしてもファンタズマゴリアに帰還する
1:涼宮遙の元へと向かう
2:アセリアとエスペリアと合流
3:出来る限り多くの人を保護
4:蟹沢きぬとトウカをマーダーとして警戒
【備考】
バニラアイスは小型の冷凍庫に入っています。
上着は脱いでいます
【衛@シスタ―プリンセス】
【装備:ロ―ラ―スケ―ト】
【所持品:支給品一式、未確認支給武器(1)】
【状態:やや精神不安定、健康】
【思考・行動】
基本方針:死人を見た事で不安定になるが、ゲームには乗らない
思考:あにぃに会いたい
1:高嶺悠人と涼宮遙の元へと戻る
2:1の後で「孝之」を探す(どのような人物かという情報は無し)
3:できれば知り合いにも会いたいが、無理に探そうとは思っていない(咲耶、千影、四葉)
&color(red){【対馬レオ@つよきす~Mighty Heart~ 死亡】}
&color(red){【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に祭 死亡】}
※詩音とレオのディパック、及びベレッタM92F2丁とFN P90はC-4ハイキングコースに放置
|054:[[珍道中の始まり]]|投下順に読む|056:[[連鎖する誤解~chain misunderstanding~]]|
|053:[[おいてきたもの]]|時系列順に読む|057:[[涙は朝焼けに染まって]]|
|053:[[おいてきたもの]]|高嶺悠人|068:[[せめて、安らかに/高嶺悠人の推理/衛の誓い]]|
|053:[[おいてきたもの]]|衛|068:[[せめて、安らかに/高嶺悠人の推理/衛の誓い]]|
|046:[[みんなで広げよう勘違いの輪(後編)]]|対馬レオ||
|036:[[もう戻れない優しい日々]]|園崎詩音||
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**猟人は鬼と獅子 ◆Qz0e4gvs0s
辺りに朝靄が立ちこめた頃、詩音は未だ視力の戻らない事に苛立っていた。
(う~ん。さすがにここいらで休まないと体が持ちませんね)
つぐみとの戦闘を引き分けた時に集中し過ぎたためか、疲労も溜まっている。
「こんな事なら、あの女を可能な限りの拷問で嬲って、ストレス発散しておくんでした」
だからと言って、今から死体のある場所まで戻る訳にもいかない。
それよりも、このまま下手に動き続けるより、一息入れるべきなのではと考える。
眠気と疲労が溜まっていく中、いざというときに頭が働かなくてはどうしようもない。
あれこれ考えた末、近くにあった木の枝や枯れ葉で身を擬態し、大木に身を任せる事にした。
もちろん、眠るつもりもなければ座るつもりもない。ほんの数分間だけ、少しの休憩を入れるだけだ。
◇ ◇ ◇ ◇
ひっそりと静まる森の中を、レオはひたすら走っていた。
トウカの言っている事は信用できない。だから、自分が身をもって証明するしかない。
そのためにはまずカニを捕まえる。そして、トウカの前に突き出すのが一番だと思った。
それに、もともとカニやスバル……生徒会の面々を探す予定だったのだ。その目的に変更はない。
(そう言えば、予定ではもともと学校に行くつもりだったんだよな)
先程四人で居た位置ならば、橋を経由して北上したほうが近道だったが、
怒りに任せて走り出した結果、見事森の中を突っ切る事になってしまったのである。
林の中は靄がかかった状態で、一見すると方向を見失いかねない。コンパスがあって助かった。
なにより駆け出した手前、方向転換して橋ある方まで戻るのが恥ずかしかった。
(学校にカニが居るとは限らないしな)
誰に言うでもなく、レオは自らの行動を正当化すると、休む事無く北を目指した。
やがて、ハイキングコースと思わしき道を発見すると同時に、レオは視界の先にある物体があるのに気付いた。
(あれ、人だよな)
人間らしき物体に、木の枝や枯れ葉が上手い具合に積もっているので見落としやすいが、
偶然かなのか、それとも人を探しながらだったためか、レオは『彼女』を発見出来た。
ここが今までの日常だったら、カニ辺りが面白がって突っついただろうがレオはそんな事はしない。
(少なくとも、カニ……じゃないな)
あれが探し人ならば問題が一気に片付くが、見た限りどうもそうではないらしい。
(あそこまでキッチリ擬態できるとは思えない。むしろ、堂々と道路の真ん中で寝るのがカニだな)
それでも万が一という可能性が捨てきれず、ジャケットでFN P90を隠すと、レオはギリギリまで接近した。
だが、相手ばかりに気を取られていたからか、足元に並べられた小枝までは気を配れなかった。
静寂の中、小枝の折れる音が二人の間に確かに伝わる。
そして『彼女』は目を覚ました。その小さな狩りの合図で。
◇ ◇ ◇ ◇
その小さな音を聞くと同時に、詩音は接近してきた相手の男に向かって銃を構えた。
そして続けざま発砲するも、焦点が合っていないためか命中はしない。
男は慌てて走り出すと、近くにあった樹木に身を隠した。
(チッ!! 油断し過ぎました!)
男目掛けて発砲するが、視界が定まらず思うように狙えない。
(小町つぐみ! このツケは大きいですよ!)
視界が戻らないのに加え、うっかり眠ってしまい脳が完全に活性化していない。
やはり、無理してでも拠点となる場所を押さえておくべきだったか。
「寝込みを襲うとは卑怯な男ですね~!」
「襲ってない! 第一、俺はこんなゲーム乗ったつもりもない!」
「へぇ、なら――」
撃ち終えたマガジンを投げ捨てると、手馴れた手つきでマガジンを装填し走り出す。
「さっさと死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
隠れた男の姿を確認すると、詩音は容赦なく発砲した。
それに合わせて、男も場所を移動し詩音の死角まで駆け抜ける。
「ほらほらほらほらほらほらほらほらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
逃げた男をまた詩音が追う。男は反撃出来ずにひたすら逃げ回る。
(逃げ回ってるって事は、銃は持ってないんですかね? あるのは右手の刀ぐらいですか)
隠し持っている可能性もあったが、それならば使われる前に殺せばいい。
万が一跳弾する恐れがあるため、発砲はなるべく控える事にした。
立ち並ぶ樹木の位置を把握しながら、銃を構えて威嚇しつつ男を追う詩音。
男は攻撃の意思がないのか、ひたすら逃げに徹している。
闇雲に走り回る男と、徐々にだが戦場を頭に叩き込む詩音の差は段々と短くなっていく。
完全に詩音のペースだ。着実と、二人の距離はさらに縮まっていく。
「くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ!!」
この一方的な狩りが楽しいのか、詩音は興奮を抑えられず笑い出した。
そして、遂に一発の銃弾が男の足を捕らえた。
「ぅッがぁ!」
走っていた勢いが止まらず、男は盛大に転倒した。
「ぐぎゃぎゃぎゃぐげげぎゃぎゃで! 当たった! 当たったねぇぇぇぇぇ!!」
喉を掻き毟りながら、詩音は倒れた男へとゆっくり近づいた。
「ぐげげ、あの女に出来なかった拷問。ついでだから全部しちゃいましょぉぉねぇ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
(テンションに流されるな)
追いかけられる中、レオは必死に頭を落ち着かせていた。
だが、目を覚ましたかと思えば、その相手が突然銃を乱射。冷静になれというのも無理な話だ。
それでも、なんとか心を落ち着け出来る限りの状況判断を行う。
(問答無用に撃ってきた。つまりこのゲームに『乗った側』だ)
ならば、こちらも武力を持って退けるのが第一だ。
(撃てるのか……さっきみたいに躊躇してる暇はないんだぞ!)
ジャケットに隠れたトリガーに指をかけるが、そこから先に進めない。
(撃たなきゃ殺されるんだぞ! 撃つんだ対馬レオ!)
自らを奮い立たせるが、なぜか先程のアルルゥが飛び出してきた事を思い出してしまう。
(撃てば怪我する。下手したら、死んじまうんだぞ……)
アルルゥとこの女は関係ない。それでも、嫌なイメージが頭から離れない。
その一瞬の迷いを狙うように、一発の銃弾がレオの太ももを貫通した。
「ぅッがぁ!」
焼けて痺れる様な感覚に戸惑い、足を滑らせ大きく転倒してしまう。
その際、右手に持った刀は抜き身のまま地面に放られた。
(痛い痛いッ痛いッ痛いッッ――)
頭の中が真っ白になる。今までに味わった事のない痛みだった。
「ぐぎゃぎゃぎゃぐげげぎゃぎゃで! 当たった! 当たったねぇぇぇぇぇ!!」
気味の悪い声が、レオを嘲笑う。
ゆっくりと、ゆっくりと……近付いてくる。
「ぐげげ、あの女に出来なかった拷問。ついでだから全部しちゃいましょぉぉねぇ!!」
朝日が昇り始める。陽の光を背負い、鬼が姿を現した。
「みぃぃぃぃぃぃつぅぅぅぅけぇぇぇぇたぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
少し時間は遡る。
市街地から森に入ったところを、悠人と衛は走っていた。
「悠人さん。早く早く!」
「ちょ、待ってくれ衛。そんな慌てなくても」
「駄目だよっ。遙あねぇ一人じゃきっと寂しいよ!」
「わ、分かった。急ごう」
「うん!」
衛のペースに乗せられっぱなしの悠人は、苦笑いを浮かべながらも走り続けていた。
周囲に誰かいるか警戒しながら走っているが、今のところそういった気配はない。
「で、その遙……さん? 誰を探してくれって言ってたんだ?」
「えっと、孝之って人だよ」
「孝之? その人も、このこ――参加しているのか?」
「え?」
「だから、その探してくれって言われた人物が本当にいるのかって事」
「あ!」
言われてから気付いた。衛は名簿でその名前を確認していなかったのだ。
その途端、衛は少し暗くなる。探すべき相手がいなければ遙の願いが叶わない。
「やれやれ。ちょっと確認してみようか」
「う、うん」
一度立ち止まり名簿を確認する二人。恥ずかしがりながらも、衛は悠人に顔を近づけて名簿を見始めた。
「孝之、孝之、孝之っと……お、これかな」
「どれどれ?」
衛がそこに目をやると、確かに『鳴海孝之』と記されていた。
「一応他の参加者も見てみたけど、タカユキって名前はこの人だけだ」
「じゃあ」
「ああ。探せば見つかるって事だ」
「やぁったぁぁぁぁ!」
思わず悠人の手を取って喜ぶ衛。その直後、恥ずかしくなって手を背中に引っ込めた。
「ただ、この人がどこに居るか分からない以上、楽観視はできないな」
「え~」
「それにほら、その遙さんは歩けないんだろ? だとすると、その孝之って人に来てもらうしかないなぁ」
(……第一、この孝之が遙さんの望む孝之じゃない可能性もある)
その言葉に、衛は不安な表情を浮かべる。
「あっでも、遙あねぇの傍にも誰か居た方が良いんじゃないかな」
「そうだなぁ。とりあえず、遙さんに会った後は孝之って人を探しつつ協力者も探そう」
「あっ、そうだね! それなら早く探せるし心細くないし。悠人さんスゴイよ!」
「いや、まー……ほら、いくぞ!」
「あ、ちょっと、まって――」
衛の言葉を遮る様に、森の奥から銃声が響く。
「遙あねぇ!」
「まて衛っ! くそっ!」
飛び出した衛を追うため、悠人は慌てて走り出した。
◇ ◇ ◇ ◇
倒れ伏したまま、レオは痛みを堪えていた。
立ち上がろうも上手くいかない。下半身に目をやると、足が不自然な方向に曲がっている。
(くそっ! 立ってくれ……立てよ畜生!)
拳を強く握り締めるが、レオの足は言う通りにはならない。
(もう撃たなくちゃ殺される! 撃つしかないんだ!)
近付いてくる女に悟られないよう、右手をジャケットの中に入れ、トリガーを指に掛ける。
「鬼ごっこはおしまいですねぇ」
気持ち良さそうに呟くと、女はレオの足に銃弾を放った。
「ぃぁ、ッ……」
「ほらほら、黙ってないで何とか言ってください……よ!」
再びレオの足に銃弾を浴びせる。
「ぅ、ッぐぁ」
「我慢しないで叫べばいいじゃないですか」
痛みで気を失いそうになるのを堪え、ひたすら機を見計らっていた。
そんな撃つたび痙攣するのレオが面白いのか、女はテンポ良くトリガーを引いた。
「――ぃ、やめ、ぁぁッ」
「これは、下手な玩具より面白いですねぇ。あはははははははははははははは!!」
やがて全弾撃ち尽くすと、素早くマガジンを取替えレオに近づく。
「さて、そろそろ飽きてきました。弾がもったいないですし、拷問もしたいですしね」
ボリボリと何かを掻き毟るような音を出し、女は銃を構えてレオの傍まで来た。
その一瞬。警戒を緩めて近付いたチャンスをレオは逃さなかった。
「っぁぁあああああああああああああ!!」
立つ事は出来ないが、体を起こすぐらいは出来たのだ。
レオは叫び声とともにFN P90を無我夢中で乱射した。
銃を撃つのも初めてで、おまけに怪我をしていたため撃った反動に体が持っていかれたが、何とか堪えた。
そして運がよかったのは、女が避けようもない位置まで近付いてくれていた事だった。
「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
銃口から飛び出る銃弾が、女の両足や腕を貫通していく。
「あ、あが、ああっあぁぁああああいだいいだいいだいいだいいだいだあぁぁぁあぁ!!」
不意打ちを食らった女は、足の力が抜け勢い良く地面に倒れた。
「ァァ……としくん……いだぁい。いだぁいよぉぉぉ」
そして、何度か痙攣すると静かに目を閉じた。
「ぐ、や、やった……のか」
動かなくなった女を見て、レオは深々とため息をついた。
「くそっ、足が動かねぇ」
見るとレオの足は肉が削げ落ち、骨が剥き出しになっている部分ある。
「う、ぉおぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
グロテスクな自分の足に、思わず嘔吐してしまう。
「せめて、ぅッ……車椅子でもあれば」
この場から立ち去るため、這うようにして移動を開始するレオ。
「え?」
動こうとした矢先、背中に何かが突然重くのしかかる。同時に、抉り出される痛みがレオの体を走る。
「うぁぁぎゃぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァあああああアアアアアア!!」
「逃がすかぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
男の撃った弾で倒れた詩音は、咄嗟の判断で「死んだフリ」を行った。
気付かれないように、自分の体のダメージを判断する。
両足は肉片が飛び散り無残な事になっている。右肘もありえない場所が抉れている。
(畜生……糞野郎がぁ! 調子に乗りやがってぇぇぇ!!)
だが幸いな事に、内臓の詰まった中心部は無傷だった。
男が下手糞だったからか、それとも殺すつもりがなかったのか
(殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスッコロスッッコロスッッッ――)
銃は痛みの衝撃で放ってしまったが、まだこちらには武器があるのだ。
腰に備えていた果物ナイフを抜き取り、気付かれないように息を潜める。
そして、こちらに背中を向けて這いずり去る男目掛けて飛び掛った。
「うぁぁぎゃぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァあああああアアアアアア!!」
「逃がすかぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
果物ナイフが男の背中に突き刺さる。突然の事に、男は悲鳴を上げてのた打ち回った。
「ぃがぁい、ごぅっ、ごふっ、ぁッ」
その隙に、男に馬乗りになる詩音。
「よくもやってくれたな……何百倍にして返してやる!」
男は刺さったナイフを抜くため、必死で背中を掻き毟る。
その青くなった顔面目掛けて、詩音は近くにあった石を叩きつける。
「ぁあぁぐぃぃぃぎゃぁぁぁぁぁぁああああ」
「この! この! このぉ! このっ! このぉぉぉ!」
鼻の皮がめくれ、頬から肉壁が見え始めてきた。
「よくもッ! やってッ! くれたなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
石が砕けると、今度は相手の眼球目掛けて左拳を叩き込む。
「―――」
もはや悲鳴にならない言葉を放つと、男の動きがピタリと静止する。
それでも、詩音は殴るのをやめなかった。ただひたすら、男の顔を殴る。殴る。殴る。
◇ ◇ ◇ ◇
遠くなる意識の中、レオはまだかろうじて見える左目で、相手の顔を覗き見ていた。
鬼のような形相で、レオの顔に拳を叩きつける。
殴っては咆え、殴っては哂うその顔は、人間には見えなかった。
(昔話の鬼って、こな感じだったかな)
場違いで意味不明な疑問を浮かべながら、レオの意識は静かに閉じていく。
もう何も見えない。目を開けているはずなのに、暗すぎてよく分からない。
(終わって目が覚めたら、ドッキリだったりしてな)
意識が暗闇に覆われていく中、あの教室での悲劇を思い出していた。
(フカヒレ……仇とれなくて済まねえ)
無残に殺された親友は、どんな思いで死んでしまったのだろう。
(スバル……生き残ってくれよ)
兄貴分である親友は、自分の死を受け入れてくれるだろうか。
(カニ……お前が人を襲うなんてないよな。なにかの誤解なんだろ?)
ちっとも成長しない幼馴染は、この逆境を跳ね除けてくれるかもしれない。
(姫と佐藤さん……ここでも一緒に居るのかな)
憧れていた人と優しかった人は、このゲームでどうしているだろうか。
(乙女さん……俺、負けちまったよ)
自分を指導し、世話してくれた姉は、負けを認めてくれるだろうか。
――もう動かない体。
――働かない思考。
――疲れきった精神。
レオは限界を過ぎていた。
(あきらめるなよ!)
静寂を打ち破る力強い声が響く。誰の声か分からない。
(目を開けろ! お前はまだ負けちゃいない!)
その声は、必死にレオを呼ぶ。
(テンションに身を任せて戦え! 任せちまえ!)
体中を駆け巡る獅子の精神。
(ここで諦めちまっていいのか! 違うだろ!)
再び呼吸を始める思考。
(違うなら、最期まで戦い抜け!)
徐々に熱を帯びていく体。
(さあ、行け!)
その叫びが合図となり、レオの全てが覚醒した。
◇ ◇ ◇ ◇
気が済むまで殴るり終えた詩音は、もはや顔ではない物体に唾を吐きつけた。
殴れば怒りが収まると思ったが、一向に収まる気配がない。
むしろ、手の甲がボロボロになった事で、もっと大きな怒りを生んだ。
馬乗りのまま、憎々しげに男を睨む。血だらけの男は、息をしているとは思えなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
そこで、詩音は鬱憤を晴らす不気味な名案を閃く。
(腹を掻っ捌いてあげます)
男の背中に刺さった果物ナイフは、未だ動く事無く存在していた。
上半身を倒し、男にかぶさるように倒れると、左手で果物ナイフの柄に手を伸ばした。
「えっ――」
「……」
世界が反転する。今まで地面を見ていた視界に空が広がる。
男が死んで油断したのと、突然の事で思考が真っ白になってしまう。
(あれ? なんで?)
軽いパニックを起こしかけたが、喉元の嫌な感覚で覚醒した。
死んだはずの男が、自分の喉に文字通り「喰らいついて」いるのだ。
ギチギチと鳥肌が立つ音を立て、男の歯は詩音の喉元に突き刺さる。
砕かれず残っていた歯は、鋭い牙となっていた。
「やめ、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!」
危険を悟った詩音は、男の頭を必死で剥がそうとする。
だが、どこにそんな力が残っていたのか、男の口は詩音の喉から離れる事はなく堪えた。
むしろ着実に危険領域まで牙を埋め、ガリガリと肉や筋を削り取る。
「はなっ、離せぇぇぇぇぇ! 死に底ないがあああああああああああああああ!!」
目に留まった果物ナイフを抜き去ると、男の頭目掛けて突き刺す。
無意識なのか、男は両腕で頭を守り迫りくる刃を腕で受け止めていた。
血と脂肪の付着した果物ナイフは、切れ味を失い刺さることはなかった。
そんな事はお構いなしに、詩音は男の腕や肩や背中を何度も突く。
背中から大量の血が飛び散っても、両腕や背中に点々と穴を開けられても、男は牙を立て続けた。
必死で逃げ惑う詩音。それを逃さない男。今度は詩音が悲鳴を上げる。
そう……狩る者と狩られる者が逆転していた。
詩音は気付いていなかった。自分が喉を掻き毟っていた事を。
そのせいで、首の血管の守りが薄くなっている事を。
――プチュ
可愛い音を立て、遂に詩音の血管が千切れる。
首に流れていた血は、行き場を失い辺り一面に飛び散った。
その光景を、詩音は理解できないまま惚けていた。
「え? あれ? あ、え?」
気付いた時には、男に目もくれず必死で飛び散る血に手を伸ばしていた。
「あ、あ、やだ……やめて」
左手で飛び散る血を受け止め、その血を首に戻す。
だが、今度はその何倍もの量の血が首から溢れ出る。
「なん、とまッ、やだ。出て行かないで!」
上半身を起き上がらせ、必死に左手で同じ行為を行う。受け止めては戻す。受け止めては戻す。
「あ、あは、あははははははははははははははははははッ――」
そして呆気なく、笑いながら地面に倒れた。
詩音の首から噴出する血は、やがて勢いを失い何事も無かったかのように終わった。
◇ ◇ ◇ ◇
悠人と衛が辿り着いた場所は、無残な光景だった。
「衛! 見るな!」
顔面蒼白になりしゃがみ込む衛を支え、悠人は激しい後悔に襲われた。
(間に合わなかった。くそっ)
まずは震える衛を何とかするため、悠人はこの場を離れ、血と死臭の臭わない場所に衛を休ませた。
「なにかあったら声を上げるんだぞ」
努めて優しく声をかけると、衛はなんとか頷き返した。
そして、再び二つの死体が並ぶ場所まで戻ってきた。
(まさか、この女の子が遙さん?)
目を見開き、首から全身が血だらけの女の子を見る。
(あのファンンタズゴリアの戦場でも、ここまで無残な殺され方をした者はいなかったはずだ)
これをやった奴は、本当に同じ人間なのかと言う疑問が浮かぶ。
まともな神経でこんな事をやれるとは思いたくなかったのだ。
(こっちの男は……)
もう一人の男は、背中を赤黒く染めて、うつ伏せに倒れていた。
悠人は、顔を見るため覚悟を決めて男を抱き起こした。
「うっ」
その顔は、もはや原型を留めてはいなかった。顔と言われなければ気付かない。出来の悪い粘土細工だ。
「……ぃ」
「え?」
男の口らしき場所から、何か聞こえた。
◇ ◇ ◇ ◇
レオが再び目を開けると、そこには懐かしい顔があった。
「ようフカヒレ」
「なんだレオ。お前もう来ちまったのか」
寂しい様な、だが少し嬉しそうにフカヒレは笑った。
「来ちまったって?」
「いや、分かってないならいいんだ。それより、あっちに来ないか?」
「ん?」
「うんめぇ食べ物もあるし、美人揃いだぞ~」
「はは、なんだか長く会ってない気がしたけど、相変わらずだなお前は」
どこか懐かしむように、二人は会話を続ける。
「ま、最初に来ちまったのがレオなのはショックだったけどな」
「さっきから意味が分かんねーよ。大体俺まだやる事があるし」
「やる事って例の?」
「ああ。トウカさんの誤解を解くためカニを探す。あのまま二人を会わせたら危険だろ?」
「大丈夫だって! カニなら自力でなんとかするさ」
無責任な発言だが、なぜか怒る気にはなれなかった。
「う~ん。あ、そう言えばスバルは来てるのか?」
レオの疑問に、フカヒレはいつもとは違う雰囲気で質問を返した。
「なあレオ。スバルに来て欲しいか?」
数秒の沈黙の後、レオはゆっくりと言葉を紡いだ。
「……いや、スバルは来なくていい気がする」
「そっかそっか。んまぁ、積もる話は向こうで聞くぜ」
そう言うと、フカヒレは口笛を吹きながら歩き出した。
レオも、それに続いて歩き始める。
そして、一度だけ後ろを振り返って呟いた。
「スバル……頼んだぜ」
◇ ◇ ◇ ◇
「……ぃ……ぁ……」
「おい! しっかりしろ! おい!」
確かに生きている。もう虫の息だが、それでも男の方は息があった。
「くそ! 返事をしてくれ! 頼む!」
「……ぃ……ぁ……ぉ」
うわ言のように、男は何か呟く。
(なんだ!? なにか喋ってるのか?)
男の口元まで耳を近付け、全神経を集中させる。
「……カニ……と、トウカ……危険」
「カニ? トウカ?」
悠人の声が聞こえたのか、男は喋るのをやめた。
「頼んだ……ぜ」
そう最期に呟くと、男は静かにこの世を去った。
「なんで、なんで間に合わなかったよ! こんな……こんな!」
溢れそうになる悔しい気持ちを、必死で押し留める。
そして、目を閉じて気持ちを落ち着かせる。
(取り乱すな。俺が取り乱したら衛はどうなる)
溢れそうになる涙を堪えて、悠人は名簿を取り出した。
「いた。蟹沢きぬ……トウカ」
男の残した最期の言葉は、悠人の頭に深く残った。
(この二人が、この男と女の子を殺したんだろうか?)
二人の死体に上着をかけると、強く目を閉じ手を合わせて祈る。
目を開けると、視界の端に一振りの刀が投げ出されているのを見付けた。
近寄って持ち上げる。日本刀のようだが、重さはそんなには感じない。
「二人のどちらかの遺品か?」
鞘から抜いてみる。ウルカならば使えたかもしれないが、悠人には難しかった。
それでも、捨て去るつもりにはなれなかった。
落ちている二丁の銃には気付かず、悠人はその場を離れ衛のもとへ戻った。
遠目でも死体を見たショックからか、衛は小さく震えていた。
それでも、泣き叫ぶ事だけはしなかった。
「衛……」
悠人の言葉に、ビクッと反応する。
「遙さんは、あの女の子なのか?」
首を横に振る。
「は、遙ねぇと、髪が違う……し、服も違う」
「そうか」
幸か不幸か、この死体は遙ではなかった。とりあえず安堵する悠人。
「ゆ、悠人さん……なんで。なんであの人達死んじゃったの?」
「!」
「夢……だよね。こんな事現実に起こらないよね!?」
「……」
静かに首を振る悠人。それでも、衛は食い下がった。
「お願いだよ! 夢って言ってよ! ねえ!」
そこで、抑えていたものが堪えられなくなったのか、衛は静かに泣き出した。
悠人は衛を抱きしめると、安心するように肩を叩いた。衛の我慢はそこが限界だった。
「わぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
泣き叫ぶ衛を抱きしめるしか出来ない自分が、悠人は歯痒かった。
やがて、衛は泣き終えると、そっと悠人の体から身を離した。
「行こう。遙あねぇの所に」
「ああ」
衛の目は真っ赤に腫れている。それでも、強い眼差しを失ってはいなかった。
悠人は、二人の死体に目をやる。
(済まない。必ず供養するから……待っていてくれ)
頭を下げると、衛の手を握りゆっくり歩き出した。
【C-4 森のハイキングコース/1日目 時間 早朝】
【高嶺悠人@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【装備:今日子のハリセン@永遠のアセリア】
【所持品:支給品一式、バニラアイス@Kanon(残り9/10、トウカの刀@うたわれるもの】
【状態:やや精神不安定、背中に軽い打ち身】
【思考・行動】
基本方針1:衛と遥を守る
基本方針2:なんとしてもファンタズマゴリアに帰還する
1:涼宮遙の元へと向かう
2:アセリアとエスペリアと合流
3:出来る限り多くの人を保護
4:蟹沢きぬとトウカをマーダーとして警戒
【備考】
バニラアイスは小型の冷凍庫に入っています。
上着は脱いでいます
【衛@シスタ―プリンセス】
【装備:ロ―ラ―スケ―ト】
【所持品:支給品一式、未確認支給武器(1)】
【状態:やや精神不安定、健康】
【思考・行動】
基本方針:死人を見た事で不安定になるが、ゲームには乗らない
思考:あにぃに会いたい
1:高嶺悠人と涼宮遙の元へと戻る
2:1の後で「孝之」を探す(どのような人物かという情報は無し)
3:できれば知り合いにも会いたいが、無理に探そうとは思っていない(咲耶、千影、四葉)
&color(red){【対馬レオ@つよきす~Mighty Heart~ 死亡】}
&color(red){【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に祭 死亡】}
※詩音とレオのディパック、及びベレッタM92F2丁とFN P90はC-4ハイキングコースに放置
|054:[[珍道中の始まり]]|投下順に読む|056:[[連鎖する誤解~chain misunderstanding~]]|
|053:[[おいてきたもの]]|時系列順に読む|057:[[涙は朝焼けに染まって]]|
|053:[[おいてきたもの]]|高嶺悠人|068:[[せめて、安らかに/高嶺悠人の推理/衛の誓い]]|
|053:[[おいてきたもの]]|衛|068:[[せめて、安らかに/高嶺悠人の推理/衛の誓い]]|
|046:[[みんなで広げよう勘違いの輪(後編)]]|&color(red){対馬レオ}||
|036:[[もう戻れない優しい日々]]|&color(red){園崎詩音}||
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