daiseieroge @ ウィキ
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daiseieroge @ ウィキ
ja
2009-10-05T20:43:21+09:00
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**夏休みだしエロゲー作ろうぜ@大学生活板
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- 規制されたらここに書きますw -- ◆r7oGVq5qy4BM (2009-08-13 01:44:16)
- スレが落ちた。今のところ立てられない -- 1 (2009-08-27 18:56:08)
- 新スレ立てたじぇー -- 名無しさん (2009-08-27 19:21:10)
- おい、なんか荒れてるぞw -- ◆cDHwwwva1A (2009-08-31 22:04:01)
- 固定が居なくなるまでコツコツ製作……コツコツ -- ◆cDHwwwva1A (2009-10-05 20:43:21)
#comment()
**参加表名した人(トリップ)
◆df31.73jH. 絵
◆cDHwwwva1A 音楽
◆50qY7IFXzQ シナリオ(きゃっち★The Rainbow!!)
◆r7oGVq5qy4BM >>1 シナリオ 絵(ほのか・莉央だけ担当)
**参加してくれそうな人(初出ID)
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莉央
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1251216334
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登場人物紹介
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<登場人物紹介>
●明石 透(あかし とおる)
…本編の主人公。法慶大学3年生。小学校高学年から中学卒業までを
家族とともにフランスで過ごし、ネイティブレベルの会話力を有する。
見た目も性格も悪くはないが、帰国後は何となく同年代の友人との
付き合いに馴染めず、大学に入ってからはサークルデビューに失敗
したこともあってすっかり引きこもり気味。
両親はすでに他界し、幼馴染の夕華の世話になりながら、なんとか
学生生活を送っている。
●赤峰 夕華(あかみね ゆうか)
…ヒロインその①。法慶大学3年生。透とその家族が渡仏する直前まで、
お隣同士の関係にあった。以後、お互いに音信不通となっていたが、
大学入学後、帰国した透と運命的な再会を果たし、現在は昔のように
気の置けない間柄となっている。
スレンダーな美人であることに加え、姐御肌なところがあり、面倒見
がいいので老若男女問わず慕われる人気者。ツンデレ気質もある。
透との会話においては少々口の悪さが見受けられるが、それは透を
信頼し慕っていることの表れである。幼いころから透のことを想い続けて
いるが、態度には出せないでいる。
●シュゼット=ノワリエル
…ヒロインその②。法慶大学1年生。透の渡仏時代、最初に友達となった
幼馴染。透が母の死にショックを受け落ち込んでいた時、「秘密の丘」で
透に虹の架け橋を見せ、立ち直らせた。彼女もまた幼いころに父親を失って
おり、現在は母親と二人暮らしである(他に叔父がいる)。
透のことを想い続けていたが、別れの挨拶も交わさないうちに彼が
引っ越してしまったことにより、音信不通状態が続いていた。家庭の
都合上、急遽日本行きが決まり、就学先として法慶大学を選んだところで
透と再会を果たす。フランス語以外の言語が不得意で、透を通訳として
学生生活を送る。基本的に天真爛漫な少女だが、時折しっかりした面も
見せる巨乳ロリっ娘。
●山吹ほのか(やまぶき ほのか)
…ヒロインその③。法慶大学3年生。日本有数の国際的財閥、山吹
グループの一人娘。本来なら、グループの時期指導者となるべく海外の
大学で帝王学を学ぶところだが、本人のダメっぷりを見かねた父に
学部のうちは日本の私大で学んでいいと言われ、法慶大に入学した。
主体性に欠けるところがあり、お付きのメイドである莉央にはいつも
いじめられているが、それでも唯一無二の親友として頼り切っている。
性格は明るく無邪気だが、趣味はパソコンで引きこもりがち
(これは莉央に仕込まれた)。幼女体型なことを気にしている。
●藍染莉央(あいぜん りお)
…ヒロインその④。法慶大学3年生。ほのかの教育係兼精神的ご主人さま。
頼りないほのかに付き従って生活全般の面倒を見ているが、その実、
極度のS気質で、ほのかを困らせては言葉責めをして楽しんでいる。
性格は常にクールで皮肉っぽい。メイド服を常用しており、学内では
とても目立った存在。
●六条紫(ろくじょう ゆかり)
…ヒロインその⑤。法慶大学4年生。学内きっての秀才で、人望にも厚い。
若干2年生にして法慶大学の生徒会的役割を果たすサークル『めんへる会』
の部長に抜擢され、以後、輝かしい実績を残してきた。
キレのある顔立ちに前髪パッツンの黒髪ストレートが映える、和風美人。
口数は少ないが発言の一つ一つに重みがあり、相手に有無を言わせない
威圧感がある。恋愛事に関してはそっけない。
同大学の医学部で若くして教鞭をとる兄がおり、こちらも秀才。
2009-08-25T21:40:07+09:00
1251204007
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きゃっち★The Rainbow!!(原案) 2話目
https://w.atwiki.jp/daiseieroge/pages/18.html
●第2話
その後、30分ほどしてようやく目覚めた俺は、怒り冷めやらぬ夕華に引きずられながら『めんへる会』を後にし、
寝ている間に纏まった話を聞きながら帰途に着いた。
結局のところ、めんへる会の誰かが週単位でローテーションしながらシュゼ(と俺)の面倒をみることで落ち着いたらしい。
当初の予定通りというか、その陰には夕華の強い意見があったことは言うまでもない。
「今度やったら東京湾に沈めるからね」と語る夕華の表情は、これまで見たことがないほどの威圧感を湛えており、
俺は今度こそ過剰なスキンシップは控えようと心に決めた。
次の日には履修申請を一通り終え、あとはシュゼに学内の主要施設を案内したり、
近場を散策したりしながら、俺は久しぶりに心温まる週末を過ごすことができた。
そして、週明けの月曜日。
俺はシュゼとともに、彼女の大学生活で初めてとなる講義を受けていた。
題目は『コンピューター操作方法論(Ⅰ)』。
ブラウザを立ち上げてサイトを閲覧してメールを送って・・・という、小学生でも出来そうな一般教養の講義だ。
一日中パソコンの前にいることの多い俺にはぶっちゃけ面白くも何ともない内容だが、これならシュゼにも何とかなるだろう。
パソコン操作なんて国が変わっても変わるものではないし、大学の授業の雰囲気を味わうには丁度いいと思って、試しに入れてみたのだ。
まあ、俺も3年生まで無事進級できたとはいえ、取得単位はギリギリな状態だ。
これからの一年はまだ一般教養の科目もいくつか取っていかなければならないのだから、そう選り好みもしていられない。
シュゼに加えて「今週のお目付役」となった夕華もいることだし、両手に花だと思えば気分はいいな。
うん、それはいい。それはいいのだが・・・。
【ほのか】「わぁ~、やっぱりパソコン関係の講義は人気高いねー。すっごい人の数!教室に入りきるのかなぁ」
【莉央】「みたところ、ギリギリ大丈夫でしょう。一人分は予備席もありますし、溢れる人はいなさそうですね」
【ほのか】「え?予備?何か特別な設備でもあったっけ?」
【莉央】「いえ。溢れた人の代わりにお嬢様が出ていけばいいんです」
【ほのか】「そんなの聞いてないよ!?で、でも、そうなったら莉央も一緒に出てってくれるんだよね?」
【莉央】「予備は一人分と言ったはずです。私は残りますので」
【ほのか】「うわーん!!」
何故あんたたちまでいる!?
今週は担当じゃなかったろうが!!
【ほのか】「透く~ん、莉央がいじめるよぉ!!」
【莉央】「いじめてなどおりません。これは調教です」
【ほのか】「余計悪いよぉ!ねぇ、透くんも何か言ってあげてよぅ」
【莉央】「ウフフ、透さんも欲望の赴くままに色々仕込んでくださって結構ですよ?」
【ほのか】「えっ、透くんが・・・いやん ///」
そして何故俺に話しかけてくる。しかも下ネタで!!
特にメイド、お前は言動も服装も目立ってるぞ!
お前のせいで俺たちまで白い目で見られてるじゃないか!
【シュゼ】「(わぁ、みんな一緒に授業出れるんだ~。楽しいね、トオルちゃん!)」
【透】「(そうか?俺は激しく不安なんだが・・・)」
【ほのか】「おおっ、流暢なフランス語!さすがは帰国子女!語学だいっ嫌いな私には、透くんがジローラモに見えるよ」
【透】「あれイタリア人だし、俺そんなに老けてないし、毛深くもないし」
【莉央】「何を言っているのですか。お嬢様も、いずれ透さんみたいに外国語を話せるようにならなくてはいけませんよ?
せっかくですから、透さんとシュゼちゃんから習ったらどうです?」
【ほのか】「えっ!無理、無理!!」
【夕華】「あ、それいいわね!シュゼちゃんの日本語の勉強にもなるし!どう、本当にやってみない?」
【透】「俺としてはうやうやしく辞退させていただきたいところだが・・・。
第一、こういうのは習うもんじゃなくて慣れの問題だぜ。いっそのこと2年くらい留学しちゃえばいいんじゃね?」
【ほのか】「そんなぁ!透くんは、私が留学先でチョイ悪風のイケメンと恋に落ちて、実はそれがマフィアの若頭で、
綺麗になれる薬だよとか言われて白い粉飲んでるうちにシャブ漬けになっちゃって、
クスリのお金を稼ぐために人気のない裏路地で春を売るようになっちゃって、そのうち通りがかった
敵ファミリーのボスに見初められて、お前のためにカレを殺すとか言われちゃって、
私をめぐって血で血を洗う抗争劇が始まっちゃってもいいの?」
【透】「いやそれもイタリアだし、想像力逞しすぎだし、そもそも心配いらねーし」
【ほのか】「あっ、いま馬鹿にした!お前みたいな子供体型に引っかかる男はいないって、馬鹿にした!!」
【透】「そこまで言っていない・・・ていうか自覚あったのか」
【ほのか】「ああっ!!心のなかでは思ってたのね、ヒドイっ!!
優しい人かと思ったのに、透くんはウソつきだっ!!」
【シュゼ】「(トオルちゃん、ホノカ泣かせたの?女の子泣かせちゃダメだよ~)」
【透】「ああ・・・もうカオスすぎる・・・」
お嬢様たちに合わせていると、どんどん話が脇に逸れていく。
ヤバい、この講義を生きて帰れる気がしなくなってきたぞ、俺・・・。
【夕華】「・・・ちょっと透、漫才も程々にしとかないと叱られるよ」
夕華が諌めてくれたおかげで、俺ははっと我に返る。
なるほど、珍獣ショーでも見るかのように周囲の視線は俺たちへと注がれていた。
痛い。痛すぎるっ。
授業が始まる前からこの騒ぎ・・・大丈夫なんだろうか本当に。
【透】「で、何でほのかちゃんたちまで一般教養の講義に出てるんだ。3年なら普通はもう単位取り終えてるだろ?」
【ほのか】「やだなぁ、透くんに逢いたかったからに決まってるじゃん・・・///」
【透】「え゛っ」
【ほのか】「そこは嬉しがったり恥ずかしがったりするところだよぉ!何で本気でイヤそうな声なの!?」
【透】「イヤァ、ソンナコトナイデスヨ?」
【ほのか】「棒読みになってるよ!感情がまったく感じられないよ!!うわぁーん!!」
何だか俺も莉央ちゃんのようなキャラになってきてるような・・・。
しかも、小動物のようなほのかちゃんが俺の一挙手一投足で表情を変える様は、ちょっと楽しかったりして・・・。
イジラレ体質の魔力は何とも恐ろしい。
【透】「それはそうと、実際のところどうなんだ」
【莉央】「実は、お嬢様は昨年もこの講義を受けているのです」
【透】「そうなの?じゃあ何でまた・・・まさか、単位落とした!?」
【ほのか】「違うんだよぅ・・・話すと色々あるから言わないけど」
【透】「?」
【莉央】「お嬢様は、講義を最後まで受けておきながら、講義そのものの履修登録を忘れていて単位にならなかったのです」
【ほのか】「あっ、言っちゃダメぇ~!!」
何という凡ミス・・・。
笑い話としてはよく聞くが、まさか実際にやった奴がいるとは。
大学生にもなって、恥ずかしすぎる失敗だ。
それにしても、登録できていなかったという事実を知った時のほのかちゃんの落胆ぶりはいかほどだったのだろう。
あまりに不憫で、想像もできない。
【透】「じゃあ二人揃って今年度に単位取り直しってことか。そりゃ災難だったな」
【莉央】「いえ、私は昨年度はちゃんと登録して単位取得しましたが?」
【ほのか】「えっ」
【透】「えっ」
【莉央】「えっ」
【ほのか】「・・・莉央、履修登録の時、一緒にいてくれたよね・・・?」
【莉央】「いましたが?」
【ほのか】「履修内容も、合わせて書いてくれてたよね・・・?」
【莉央】「書きましたが?」
【ほのか】「じゃあ、何で一言教えてくれないの~!!?」
【莉央】「ウフフ・・・事実を知って無様にも打ちひしがれるお嬢様の姿・・・可愛かった(ジュン」
【ほのか】「うわぁ~ん!!ひどいよ!!ひどいよぉ!!」
・・・駄目だコイツ、早く何とかしないと。
(途中)
2009-08-25T20:34:04+09:00
1251200044
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きゃっち★The Rainbow!!(原案) 1話目
https://w.atwiki.jp/daiseieroge/pages/15.html
●第1話
<カレンダー表示:4月9日(木)>
<背景:透の部屋>
<立ち画:右側・夕華(シリアス)>
【夕華】「・・・なるほど、そういうこと、ね」
【透】「ああ。そういうことだ」
【夕華】「シュゼちゃんが、あなたのフランス時代の親友だってことはよーく分かったわ。あなたにとって、
かけがえのない存在だってのも、よーくね」
【透】「納得してもらえたなら何よりだ」
【夕華】「でも、ね・・・」
<立ち画:左側・シュゼ(笑顔)、右側・夕華(怒り)>
【夕華】「人前でベタベタいちゃつくのは止めんかぁぁぁぁぁっ!!!!」
【シュゼ】「(トオルちゃん、トオルちゃぁ~ん!えへへぇ~)」
ひとしきり俺たちが再会を喜んだあと、事の顛末を夕華に説明しだしてから約30分。
その間、シュゼは話をしている俺に構わずまとわりついてきて、夕華の目も気にせず、
前から後ろからハグしたり、頬を摺り寄せたりし続けていた。
ああ、そうだった。
こいつはその可憐でおしとやかな見た目とは裏腹に、普段から愛情表現の激しい子犬みたいな奴だったよな。
いや~、懐かしいなぁ。
俺は、目の前で瞳をきらきら輝かせながら笑顔を振りまいているシュゼの頭を、そっと撫でてやる。
するとシュゼは、ちょっと頬を赤らめながら、くしゃくしゃになった顔をさらに綻ばせて俺に抱きついてきた。
【夕華】「ちょっと、シュゼちゃん!その男から離れなさい!あんたも、お触り禁止っっ!!」
【透】「いや、でも十数年ぶりの再会だぜ?少しくらいは喜び合ったっていいじゃん。ただのハグだよ、ハグ」
【シュゼ】「(とっおーるちゃーん!うふふー)」
【透】「(おぉ~、よしよし。シュゼも大きくなったなぁ。尻も胸もでっかくなっちゃって、フヒヒ・・・)」
【シュゼ】「(あっ、ん・・・ト、トオルちゃん・・・そんな、ダメ・・・もっと、優しく・・・んっ)」
【夕華】「あんたたちの抱き合い方は尋常じゃないのよ!こら、さっきから人の話聞いてるの?
って、何やってんのよアンタは!!はーなーれーなーさぁーーいっ!!」
【透】「ぐぇっ!ゆ・・・夕華・・・く、苦し・・・」
俺は着ていたTシャツの襟元を掴まれ、見事なチョークスリーパーを食らいながら力づくでシュゼと引き剥がされてしまった。
・・・あ、でもこの体勢だと、夕華のたわわに実ったおっぱいの感触が背中越しにはっきりと・・・
・・・えへへ・・・気持ちいいよ・・・・・・母さん・・・・・・
・・・いやいやいや!!気をしっかり持て、俺!!
【透】「げほっ、げはっ!!お、お前、少しは手加減しろよ!!」
<立ち画:右側・夕華(驚き)>
【夕華】「あら、ごめんなさい?少しやりすぎたかしら?」
【透】「少しどころか、逝きかけたぞ!!元あった所に戻るだけとか、そんなチャチなレベルじゃ断じてねえくらいにっ!!」
<立ち画:右側・夕華(怒り)>
【夕華】「なら、二度と同じことされないようにしっかり反省しなさいっ!」
【透】「すっ、すいませんしたっ!!」
・・・ふぅ、マジで危ないところだった。まさかシュゼに続いて母さんにも会えるとは。
だが、確かに俺もちょっと調子に乗りすぎたか。
俺は気を取り直し、シュゼと少し距離を置いてから夕華に向き直った。
<立ち画:左側・シュゼ(泣き)、右側・夕華(ジト目)>
【シュゼ】「(あぁーん、トオルちゃーん・・・)」
【透】「(シュゼ。この日本じゃ、あんまり激しい愛情表現は周りの人たちの反感を買うんだよ。
俺もお前に会えて嬉しいけど、少しだけ、我慢してくれ。な?)」
【シュゼ】「(うぅ~~・・・はい・・・)」
シュゼはまだ名残惜しそうにこちらを眺めている。
これから、日本語だけじゃなくてこういうマナーも教えてかなきゃならないのか。
夕華の小言もきっと普段の10倍増しくらいになるだろう。色々と気苦労は絶えなさそうだ。
けれど、不思議と俺の胸には、わくわくとした感じが生まれていた。。
欠けていたパズルのピースが埋まったような、ずっと動かせなかった歯車がようやくかみ合いだしたような、そんな充足感。
これから、何か素敵なことが起こってくれそうな予感で、俺の心はいっぱいだった。
<立ち画:左側・シュゼ(通常)、右側・夕華(通常)>
【夕華】「それで、このあとの話なんだけどね」
【透】「はいはい」
【夕華】「さっきも言ったとおり、透にはまず、シュゼちゃんの履修登録やウチの大学のカリキュラムについての説明を
お願いするわ。ただ、さっきの二人の関係を見ていると激しく不安だから、今後何かするときには
『めんへる会』の人間も同行させることにする」
【透】「うっ、信用ねえな・・・」
<立ち画:右側・夕華(ジト目)>
【夕華】「当たり前でしょうが。アンタも海外長くてちょっとズレてる所あるし、軽いハグくらいならともかく、
その、人前で・・・胸揉んだりなんて・・・」
夕華は、小声でそう言うとちょっと顔を赤らめた。
こいつ、下ネタ関係の耐性はあんまりないな。
【透】「あんなこと、所かまわず人前でするような真似はしませんて」
【夕華】「どうだかっ!?ともかく、2人っきりの行動は絶対禁止っ!何か起こったとき、
責任取らなきゃならないのはウチのサークルなんだからねっ!」
【透】「ふぇーい」
でも、俺もまともな大学生活からヒキって久しいし、もう一人くらいサポーターがいてくれたほうが
リハビリにはちょうどいいのかもしれない。
履修登録だって、これまでのところ実際には夕華が俺の分まで代行してくれてたわけだし。
単位の取り易さとか授業の雰囲気とかも分からないし、肝心要となる科目の選択は夕華たちに任せて、
俺はしばらくの間通訳に徹しているのがよさそうだ。
<立ち画:右側・夕華(通常)>
【透】「じゃあ、さしあたってその2点を進めようか。もうあまり時間ないよな?」
【夕華】「うん。登録期限は明日の午後5時までだからね。今日のうちに出来るだけのことはやっておかないと」
【透】「おいおい、ギリギリじゃねえか!」
【夕華】「だから急いでんのよ。のんびりお茶なんかしてる暇はないわ。あなたたちのサポートをする『めんへる会』の
メンバーも紹介しなきゃいけないだろうし。ねぇ、今から大学行ける?」
【透】「ああ、大丈夫」
【夕華】「よかった。それじゃあ、急いで支度してね」
<立ち画:なし>
それから俺は、取るものも取りあえず手早く荷物をまとめて、大学へ向かう準備を整えた。
いざ出発しようと玄関先へ出た、その時。シュゼがそっと寄ってきて、俺の袖を引っ張りながら話しかけてきた。
<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>
【シュゼ】「(トオルちゃん)」
【透】「(ん?何だ、シュゼ?ほっぽりっぱなしで悪かったな。後でお前にもちゃんと説明するから)」
【シュゼ】「(あ、うん。それはいいんだけどね。さっき、ユーカと喧嘩してたの?)」
【透】「(はぁ?喧嘩?・・・ああ、違うよ。あれは俺たちのいつもの会話。まあ、じゃれ合ってたみたいなもんかな。
あいつとも結構付き合い長いから、外からは言い合ってる風に見えても、当人同士は楽しんでるんだぜ)」
【シュゼ】「(そうなんだ・・・)」
【透】「(お前、まさか自分のせいで揉めてるんじゃないかって心配してたのか?)」
【シュゼ】「(うん。それもあるけど、ユーカはいい人だから、トオルちゃんと仲良くしててほしいなって)」
【透】「(ほう・・・?)」
【シュゼ】「(ユーカはね、私が日本の大学に入ることを決めて、最初に説明を受けに行ったとき、
学生代表としてその場で応対してくれた人なんだ。日本語が全然分からない私を気遣って、
辞書引きながらの片言だったけどフランス語で話してくれて、すごく親切にしてくれたの。
それでね、お仕事が全部終わった後に、言ってくれたんだ。『お友達になりましょう。よろしくね』って。
だからね、ユーカは、私にとって初めての日本のお友達。トオルちゃんはフランスで出来た
日本人のお友達だけど、ユーカは、日本に来て、日本で出来た、初めての日本人のお友達なんだ)」
【透】「(そうだったのか)」
【シュゼ】「(うん。だから、私もトオルちゃんも、このさきユーカと仲良くやっていけたらいいなって思うの。
時には喧嘩したりするかもしれないけど、進んで傷付けあうようなことは嫌だから)」
【透】「(それだったら心配いらないぜ。あいつがいい奴だってのは充分承知してるから。
言い合うことはあっても、いがみ合うことなんか絶対にねーよ)」
<立ち画:右側・シュゼ(通常)>
【シュゼ】「(そう・・・なんだ。なら、よかった)」
【透】「(さ、あんまり長く待たせてたらまた怒られちまうし、とりあえず大学行くぞ)」
【シュゼ】「(あ、うん!・・・ねえトオルちゃん、もう一つだけ聞いてもいい?)」
【透】「(ああ。何?)」
【シュゼ】「(ユーカのこと、好きなの?)」
【透】「ブッ!!!!」
いきなり何を言い出すんだこいつは。
急にそんなことを聞かれると、落ち着かなくなるじゃないか。
<選択肢:①「ああ、好きだよ」/②「あいつはただの幼馴染だよ」>
<(選択肢①):夕華+1>
【透】「(ああ、好きだよ)」
だが俺は、ためらうことなく本音を口にする。
<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>
【シュゼ】「(やっぱり・・・。ふたりとも、すごく分かり合ってそうだもんね。ユーカと、お付き合いしてるの?)」
【透】「(あ、いや、そういう関係じゃなくてだな。何ていうか、あいつとは家族みたいなもんなんだ)」
【シュゼ】「(家族・・・?)」
【透】「(ああ。俺と夕華って、俺がフランスに渡るずっと前、ガキの頃からの知り合いだったんだけどさ。
ほら、俺の母さん、あんなことになったじゃん?あのあと、父さんも事故で死んじゃってな。
天涯孤独になって日本に帰ってきた俺の面倒を見てくれたのが、夕華とその家族なんだ」
【シュゼ】「(ユーカが・・・トオルちゃんを、お世話してたの?)」
【透】「(うん。だからな、俺はあいつに恩義を感じっぱなしなの。ここ数年、ずっとな。もっと言えば、
好きとか愛してるとかって言葉で片付けられるようなレベルじゃなく、俺の人生の中でかけがえのない存在なんだよ)」
【シュゼ】「(そうなんだ・・・)」
それからシュゼは少し考え込むふうにして間をおいたあと、暖かい光を秘めた眼差しを俺に向けながら、こう言った。
<立ち画:右側・シュゼ(通常)>
【シュゼ】「(ねえ、トオルちゃん)」
【透】「どうした?」
【シュゼ】「(ユーカと、これからもずっと一緒にいられるといいね)」
【透】「(ああ、そうだな。あいつだって好きな男の一人や二人はいるだろうし、ずっとってのは無理かもしれねえけど。
でも、いつまでも仲良くやっていけるといいよな)」
【シュゼ】「(うん、私もそうなってほしい)」
ずっと、一緒に・・・か。
考えたこともなかったけど、夕華とのこの関係にも、いつかまた別れは来るんだよな。
そのとき俺は、どんな顔をしているんだろう?泣いているんだろうか?それとも、笑ってあいつを送り出しているんだろうか?
どっちにしても、俺たちが誰とどこにいて何をしていようと、俺たちの「絆」が変わることなんてないはずだ。
だって、一度別れを迎えてなお、俺たちは再び仲良くなれたんだから。
この先何が起きようと、俺たちは俺たちだ。
心が通じ合った俺たちが、お互いを思いあい、尊重しあい、支えあうことを邪魔するものなんて何もないと、
このときの俺は心から信じていた。
そう、疑いもせず、信じていたんだ。
<(選択肢②):シュゼ+1>
【透】「(あいつはただの幼馴染だよ)」
少し返答に窮したあと、俺はやや申し訳なさそうにそう答えた。
<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>
【シュゼ】「(そうなの?でも、ふたりともすごく分かり合ってる感じだよ)」
【透】「(まあ、お前と同じで、俺にとってはあいつも大切な人だからなあ)」
【シュゼ】「(大切な、人・・・)」
【透】「(そう。大切な人だ。俺の家族、母さんに続いて父さんもすぐ死んじゃったからな。日本に帰ってきてからは
ずっと夕華とその家族にお世話になりっぱなしなんだけど、今じゃ、あいつが家族みたいなもんなんだ)」
【シュゼ】「(そうなんだ・・・)」
【透】「(言われてみれば確かに、あいつとの間には、普通の幼馴染以上に分かり合える関係があるかもしれない。
でも、それは家族間にあるような関係であって、恋愛感情とか、そういうのとは別物だよ」
【シュゼ】「(・・・・・・)」
それからシュゼは少し考え込むふうにして間をおいたあと、真剣な眼差しを俺に向けながらこう尋ねた。
<立ち画:右側・シュゼ(シリアス)>
【シュゼ】「(ねえ、トオルちゃん。さっき、『お前と同じ』って言ったけど・・・
トオルちゃんにとっては、私との思い出も、大切な一部になってるの?)」
【透】「(ははは、もちろんだっての。母さんが死んだあの時なんて、お前がいなかったら、俺、立ち直れなかっただろうしな!
シュゼも、俺にとってはかけがえのない存在だよ)」
【シュゼ】「(私が・・・トオルちゃんの、大切な存在に・・・)」
【透】「(ああ。今までだってそうだし、これからもだぜ?いや、せっかくまた出会えたんだ。前よりもずっと
仲良くなれれば、もっといいな)」
<立ち画:右側・シュゼ(笑顔)>
【シュゼ】「(・・・うん。私も、もっと仲良くなりたい。トオルちゃんのことたくさん知って、前よりもあなたに近付きたい)」
突然、ドキっとするようなことを言うシュゼ。
まるで、告白されたかのようだった。
シュゼがそんなつもりで言ってるんじゃないというのは分かっていても、俺は胸の高鳴りを感じてしまう。
俺はドギマギとしっぱなしだったが、色好い答えが返ってくるのを待ちわびているかのように、シュゼはそれからしばらくの間
俺をまっすぐに見つめ続けていた。
・・・・・・いやいやいや、これじゃ、本当に告白シーンじゃないか。
落ち着け、俺。落ち着け・・・。ふぅ。
それにしてもシュゼってば、本当に可愛くなったよな。
何ていうか、一緒にいられるだけでも、俺の人生は「幸せ」に向かってまっしぐらに突き進んでいるような幸福感に満たされる。
ガキの頃には、そんなの微塵も考えたことなかったのにな。
そんなことを思っていると、先を行く夕華から催促の声がかかった。
<選択分岐終了>
<立ち画:左側・夕華(通常)、右側・シュゼ(通常)>
【夕華】「ちょっとー、ふたりだけで何話し込んでるのー?早くしないと、おいてっちゃうぞー」
俺たちより数メートル前を歩んでいた夕華が、いたずらっぽい顔をしながら振り返り、俺たちを急かす。
【透】「あ、わりぃわりぃ。(シュゼ、行くぞっ!)」
【シュゼ】「(うんっ!)」
俺たちは駆け足で夕華のあとを追う。
その足取りは、独りで大学へ通ういつもよりも、若干軽やかに感じられた。
<背景:透の部屋/場面転換のエフェクト>
<立ち画:なし>
<背景:大学キャンパス>
それから30分ほどして、俺たちは大学に着いた。
春休みの間ずっと引きこもっていた事もあり、大学まで来たのは実に2か月ぶりくらいだ。
大学の中は活気に溢れ、さながらお祭り状態であった。
新歓時期もピークを迎え、そこかしこでサークル勧誘のビラまきやミニイベントが行われている。
これからコンパでもするのだろうか、駄弁りながらたむろしている集団も、一つや二つではない。
かつては俺も同じようなことをやっていたはずだが、長い間人との交流を絶っていると、ちょっと気圧されてしまう。
こういう人ごみ、やっぱり苦手だなぁ・・・。
<立ち画:左側・シュゼ(通常)、右側・夕華(通常)>
【夕華】「ほらほら、ぼーっとしないの。このまま部室へ直行するよ」
【透】「あ、うん。(シュゼ、迷子になるなよ)」
【シュゼ】「(はーい)」
といったそばから、俺たちの間に学生たちの行列が割り込んできて、シュゼが人ごみの向こうへと押しやられていく。
<立ち画:左側・夕華(通常)、右側・シュゼ(驚き)のまま右方向へフェードアウト>
【男子学生】「あ、すんませーん。ちょっとどいてー。おい皆、移動すんぞー!!」
【学生たち】「ウェイ?ウェーーイ!!!!」
【シュゼ】「(きゃっ、きゃああっ!?)」
【透】「あっ、シュゼっ!?」
<選択肢:①急いで助けなきゃ!/②とりあえず行列が過ぎ去るまで、待とう>
<(選択肢①):シュゼ+1、夕華+1>
急いで助けなきゃ!
そう思うと同時に、俺はさっきまで気後れしていた人の海の中へと突っ込んでいた。
<立ち画:右側・シュゼ(驚き)>
【DQN学生】「ワハハハ!センパイ、最近マジパネぇっすね!!実は俺も・・・あっ、って~な、何かぶつかったぞ」
【シュゼ】「(あうっ!?い、痛いっ!!)」
【男子学生】「うわっ、どこ見て歩いてんだよ!しっかりしろ!!」
【シュゼ】「(きゃっ!?ご、ごめんなさいっ!?)」
【女子学生】「わ~、あなた外人さんよね?どこの人?イギリス?それともフランスかな?すっごい肌きれーい!
ねぇ、どう?私たちと一緒にインカレのテニスサークル入らない?」
【シュゼ】「(あ、あわわわわ・・・・)」
圧倒的なまでの物量に抗うことができず、シュゼはどんどんあさってのほうへ向かってしまう。
俺は必死で人ごみを掻き分けシュゼのいる方へと向かうが、その間にもシュゼは通行人に衝突したかと思えば
サークル勧誘に捕まったりしている。
あっヤバイ、ナンパまでされてるじゃないか!!
【池面学生】「君、すっげカワイくね?何年生?ちょっとその辺でお茶でもしない?」
【シュゼ】「(ひぇっ!?と、トオルちゃん!助けてぇ~~っ!!)」
【透】「ちょ、ちょっと待ったぁっっ!!」
【池面学生】「うぉ!?何すんだ、コイツ!・・・あ、おい、ちょっと待てよ!」
【透】「(シュゼ、こっちだ!)」
【シュゼ】「(は、はいっ!!)」
俺は、執拗に声をかけてくるキムタク風のイケメン学生から何とかシュゼを救い出し、彼女の手を引いてその場を離れた。
<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>
【シュゼ】「(ハァ、ハァ・・・トオルちゃん・・・ありがと・・・)」
突然のことで余程驚いたのか、透き通るように白かったはずのシュゼの顔色は、真っ青になってしまっていた。
【透】「(おい、大丈夫か?もう離れないように、俺の手しっかり握っとけよ)」
【シュゼ】「(う、うんっ!)」
俺はシュゼの手を包み込むようにしっかりと握り、彼女を落ち着かせる。
そうこうしていると、夕華が駆け寄ってきて俺たちの無事を確認してから、両手をパチパチとたたきはじめた。
<立ち画:左側・夕華(笑顔)、右側・シュゼ(困り顔)>
【夕華】「おぉ~!透、あんたなかなかやるじゃない。見直したわ」
【透】「夕華っ、お前、見てたんなら早く助けろよっ!!」
【夕華】「だってあんた、こっちが気付いたときにはもう飛び出してたじゃない。あんな勇気があるとは思わなかったわよ。
しかもナンパ野郎まで追い払っちゃって!何だかんだいって、やっぱり透も男の子よねぇー。
シュゼちゃん、よかったね」
【シュゼ】「(び、びっくりした・・・)」
俺たちが大変な目にあったというのに、夕華はどことなく満足そうだ。
だがまあ、シュゼを守り通せただけでもよしとするか。
これからも似たようなことは起こるだろうが、そのたびに俺がしっかりこいつをサポートしてやろう。
俺は決意も新たに、シュゼとの学生生活を責任もって送ろうと考えた。
<(選択肢②):シュゼ+1、夕華-1>
とりあえず行列が過ぎ去るまで、待つか。
そう考えて学生たちの行列を前にぼーっと突っ立っていると、後ろから夕華が頭を小突いてきた。
<立ち画:左側・夕華(怒り)>
【夕華】「ちょっと、透っ!シュゼちゃん、どんどん流されてってるじゃないの!早く助けに行ってあげなさいっ!」
【透】「え、でも誰かに攫われてるわけでもないんだし、人の流れがおさまってからでも・・・」
【夕華】「つべこべ言わず、男なら早く行きなさいっ!!」
【透】「は、はいっ!!」
<立ち画:なし>
俺は必死で人ごみを掻き分け、シュゼのいる方へと向かう。
シュゼの元へとたどり着くと、彼女はキムタク風のイケメン学生にナンパされていた。
<立ち画:右側・シュゼ(驚き)>
【池面学生】「おー、君、すっげカワイくね?何年生?ちょっとその辺でお茶でもしない?」
【シュゼ】「(と、トオルちゃん!助けてぇ~~っ!!)」
【透】「ちょ、ちょっと待ったぁっっ!!」
【池面学生】「うぉ!?何すんだ、コイツ!・・・あ、おい、ちょっと待てよ!」
【透】「(シュゼ、こっちだ!)」
【シュゼ】「(は、はいっ!!)」
俺は、執拗に声をかけてくる学生から何とかシュゼを救い出し、シュゼの手を引いてその場を離れた。
<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>
【シュゼ】「(ハァ、ハァ・・・トオルちゃん・・・ありがと・・・)」
突然のことで余程驚いたのか、透き通るように白かったはずのシュゼの顔色は、真っ青になってしまっていた。
【透】「(おい、大丈夫か?もう離れないように、俺の手しっかり握っとけよ)」
【シュゼ】「(う、うんっ!)」
俺はシュゼの手を包み込むようにしっかりと握り、彼女を落ち着かせる。
<立ち画:左側・夕華(怒り)、右側・シュゼ(困り顔)>
そうこうしていると、夕華も駆け寄ってきた。夕華は、俺たちの無事を確認してから、俺に批難の言葉を浴びせかける。
【夕華】「透、もうちょっと早く助けに行ってあげなさいよ。あんたがぼさっとしてたから、ほら、
シュゼちゃん真っ青になっちゃってるじゃない。大丈夫?シュゼちゃん」
【シュゼ】「(び、びっくりした・・・)」
【透】「いや、だってさ、大学内はいつも人多いし、こういうのも少し慣れとかなきゃマズイだろ・・・」
【夕華】「あれこれ言い訳しないの!シュゼちゃんはまだ右も左も分かんないんだから、あんたがしっかり守ってあげなさい!
・・・でもまあ、ちゃんとナンパ野郎を追い払ったし、今回はこのくらいで見逃してあげるわ」
男らしくない態度をとってしまったせいか、夕華は機嫌を損ねてしまった。
確かに、ちょっと無責任だったかもしれない。俺は反省し、シュゼに謝った。
【透】「(ごめんな。お前がこっちの生活に慣れるまで、俺がちゃんと守ってやらなきゃいけなかったのに)」
【シュゼ】「(いいよ。私が前見てなかったのがいけないんだもん。それに、トオルちゃん来てくれて嬉しかったから)」
これからも似たようなことは起こるだろうが、今度からは俺がしっかりこいつをサポートしてやろう。
俺は決意も新たに、シュゼとの学生生活を責任もって送ろうと考えた。
<選択分岐終了>
そして、一呼吸おいてシュゼが落ち着いたのを確認してから、俺たち一行は『めんへる会』へと向かった。
<背景/場面転換のエフェクト>
<背景:めんへる会部室>
めんへる会の部室は、大学の敷地のほぼど真ん中に建てられた、豪奢なサークル棟の一画にあった。
このサークル棟、かつては礼拝堂として利用していたそうだが、10年ほど前に学内の施設を一斉に
改修した際リフォームされたらしい。
講義棟や学食、購買部にほど近く、中央広場にも面しているため、学内でも特に利便性が高い。
こんな条件のいい建物、普通は講堂や記念館などに使いそうなものだが、そこは自由主義を掲げる我が大学。
太っ腹というか大胆というか、改修と同時に学生たちに開放してしまい、今やリア充たちのすくつとなっていた。
各サークルの入り口にはカラフルなPOPや手作りのビラが飾られ、あちこちから楽しそうな談笑が漏れ聞こえてくる。
だが、サークル棟の最奥に鎮座するめんへる会の部室は、それらとは明らかに異質な存在感を放っていた。
無機質なステンレスの扉が据え付けられた他のサークルの部室とは違い、マホガニーか何かの高そうな木材で出来た、
観音開きの扉が大仰に俺たちを迎えている。
間口の広さからすると、中も他の部屋の倍くらいは余裕でありそうだ。
他のサークルが身廊や翼廊を改修したものだとすれば、ここは至聖所のあった場所なのだろうか。
『めんへる会』の部室は、それ自身が神聖なものであるかのように他の部室を睥睨しており、
周辺の備品にも以前の荘厳な面影が残されていた。
【透】「この扉、ライオンが取っ手を咥えてるぞ・・・」
【シュゼ】「(わ~、ここの窓、ステンドグラスになってるよ!)」
【透】「ここだけ天井が吹き抜けでシャンデリア付きとか、やりすぎだろ・・・」
【シュゼ】「(あ、そっちには彫刻も飾ってある!すごーい、美術館にいるみたい!)」
場違いなほどにファンタジックな装飾品を目の前に、しばし呆気にとられる俺達。
夕華はしばらくの間、俺たちが物見し終えるのを待ってから、俺たちを扉の前へと促した。
【夕華】「ほら、そんな調度品に見惚れてないで、こっち来て。みんなに挨拶するんだから」
【透】「あ、ああ・・・」
【夕華】「くす。そんな緊張しなくていいよ。みんな個性的だけど、悪い人たちじゃないから」
いやいや、俺、部員に会う前からもう気圧されてしまってるんですが。
だがそんな俺の気も知らず、夕華は勢いよく扉を開く。
すると、カランカラン、とライオンから鈴の音が鳴り響いた。
あのライオン、取っ手だけじゃなくてベルの役割も果たしてたのか。
【夕華】「こんにちはー。って、あれ?」
部室に入ると、中はとても閑散としていた。
壁際にはこれまた高そうなキャビネットが置かれていたり、パイプオルガンが据え付けられていたりと、
所々で豪華なインテリアたちが主張していたし、部屋も想像以上に広い。それ自体は、期待を裏切ってはいなかった。
だが、そこには不釣り合いなほど人の気配がなかったのだ。
【透】「何だ、誰もいないじゃん」
【夕華】「あれー、おかしいなあ。今日はみんな出てきてるはずなんだけど・・・」
首をかしげる夕華。
案内されなければ何もできない俺とシュゼは、どうしていいのか分からず、ただ棒立ち状態。
一方、こんな事態は想定していなかったのだろう。夕華もまた、どうしたらいいのか思案しあぐねているようだった。
【夕華】「うーん、困ったなあ・・・」
部室の入口で立ち尽くしていると、背後から女性の声が響いてきた。
【????】「あら、夕華さん。シュゼちゃんも。いま来られたんですか?」
振り返ると、そこにはメイド服を着た可憐な女性が立っていた。
その異様な姿に、しばし思考が停止する。
な、何だこの娘は?近くにコスプレ喫茶でもあるのか?それともデリヘル嬢か?
状況的にはどちらもありえないが、かといってうまく説明がつかない。
何故、大学にメイドがいる!?
【夕華】「あっ、莉央ちゃん!みんないないけど、どうしちゃったの?」
【莉央】「すみません。サークル同士のいざこざが同時に何件か起きてしまって、みんな仲裁のために出払ってたんです。
どうやら、他の方はまだ帰ってないみたいですね」
【夕華】「そうだったんだ。ごめんね、手伝えなくって。・・・ところで、ほのかは?」
【莉央】「ああ、お嬢様ならそこにいますよ。ほらお嬢様、しっかりしてください」
【ほのか】「ひ、ひぃ~・・・。重いよぅ・・・莉央、ちょっと、助けてぇ~」
【莉央】「何を言ってるんです。手が汚れるじゃないですか。私は嫌です」
【ほのか】「ひ、ひどぉ~い!!」
ほのかと呼ばれた育ちの良さそうな女の子は、半泣きになりながら身の丈ほどもある大きな看板を背負っていた。
その傍らには、ほのか嬢をお嬢様と語りかける、莉央と呼ばれるメイドさん。
何だこの状況は。まったく意味が分からない。
だが、慌てふためく俺を除け者にして、話はどんどん進む。
【夕華】「何その重そうな立て看板。テニスサークルのやつじゃない」
【ほのか】「さっき中庭で新入生を無理やり勧誘してたサークルがあってね~。なかなか言うこと聞いてくれないから、
強権発動させて、当分活動できないようにサークルの看板取り上げてきちゃった」
【夕華】「だからって、本当に看板持ち帰ることはなかったんじゃ・・・」
【莉央】「バカなんです。残念ながら」
【ほのか】「バカじゃないよ~!!だって、注意するだけじゃ安心できないんだもんっ!!」
【夕華】「その注意だけで済ませるために、各部の活動許可も私たちが執り仕切ってるんじゃない。
もう、そんなの置いときなさいよ」
そう言うと夕華は、ほのか嬢の背中から重そうな看板をひょいと取り上げ、近くの壁に立て掛けた。
【ほのか】「あ~ん、夕華ちゃんも優しくしてくれないよ~。もうこうなったら、シュゼちゃんに慰めてもらうもん!」
【シュゼ】「(きゃっ!!ホノカ、くすぐったいよぅ~)」
【ほのか】「おっ?おっ?見た目の割に、結構発育がいいですなぁ~。さすがは外人さん!この、この!!」
【シュゼ】「(あっ、や、やぁ~ん!)」
ほのか嬢はシュゼに抱きつくと、その全身を余すところなくまさぐり始めた。
その様子は、姉妹がじゃれ合っているみたいでいやらしい感じは微塵もなく、微笑ましくさえある。
だが、エロ耐性の低い夕華にはやっぱり目の毒だったらしく、すぐにストップがかかってしまった。
【夕華】「ちょっ、ちょっと!ほのか!人目もあるんだから、いい加減にしなさいよ!」
【ほのか】「へ?人目?・・・あっ」
そこでほのか嬢はようやく手を止め、初めて俺の存在に気付いたようだった。
・・・もしかして存在感ないのか、俺?
【ほのか】「ほぇ。もしかしてこのカレ、例の幼馴染クン?」
【夕華】「うん。そうよ」
【ほのか】「へ~、ちょっと頼りなさそうだけど、見た感じいい人っぽいね~。ねぇねぇ、紹介してよぉ」
【夕華】「はいはい。透、紹介するね。この娘が、めんへる会に4人いる3年生メンバーのひとり、山吹ほのかちゃん」
【ほのか】「山吹ほのかです!よろしく~」
【透】「明石透っす。よろしく」
【夕華】「それでこっちが、同じく3年生の藍染莉央ちゃん」
【莉央】「はじめまして」
【透】「はじめまして。明石です。よろしく」
簡単に挨拶を終えて一息つこうとしたが、ほのかちゃんはそれを許さなかった。
【ほのか】「えー、それだけでオシマイ?もっと他に、いろいろ聞くことないの?」
【透】「色々って・・・例えば?」
【ほのか】「色々あるじゃん!趣味とか、特技とか、好きな異性のタイプとか!」
【莉央】「具体的には、SとМのどっちかとか、言葉責めは得意かとか、お嬢様属性に
萌えを感じるか、とかを聞かれているのです」
【ほのか】「全部おかしいよ!?私、そんなんじゃないからね!!?」
何なんだ、この娘たちは。
俺の同級生ということは分かったが、どうにもキャラクターがつかめない。
そもそもお嬢様とかメイドとか、彼女たちはどういう関係なんだろう?
莉央ちゃんは恥ずかしがる様子もなく、さも当然のようにメイド服を着ているし・・・まさか言葉通りでもあるまい。
考えていても埒はあかないので、俺は思い切って直接疑問をぶつけてみる。
【透】「えーと、山吹さん?」
【ほのか】「んー?なーに?てゆーか同級生なんだし、名前で呼んでくれていいよぉ。
私も透くんって呼ばせてもらうから、ね?」
【莉央】「どうぞ、お嬢様のことは『ゴミクズ』でも『メスブタ』でも好きなようにお呼びください」
【ほのか】「私、そこまで言ってないよ!?」
【透】「いや、えーと・・・」
【莉央】「ほらほら。透さんが何か仰られてますよ、メスブタ様」
【ほのか】「透くんじゃなくて莉央が呼ぶの!?」
【透】「オイ、頼むから話を聞いてくれ」
彼女たちのペースに合わせていては、一向に話が進まない。
俺は2人の夫婦漫才を無理やり遮って、話を続けた。
【透】「さっきからいまいち理解できないんだけど、君たちってどういう間柄なんだ?」
【莉央】「見たまんまですが?」
【ほのか】「見たまんまだよぉ?」
【透】「いや、分かんねーよ」
特にメイド、お前だお前。何者なんだアンタは。
【莉央】「だから、お嬢様と、お付きのメイドです」
【ほのか】「そうなのですっ」
【透】「何で偉そうなんだよ。しかもメイドのほうが」
【ほのか】「あうぅ~・・・」
【莉央】「それはお嬢様に主体性が無いからです。まったく、いつになったら成長してくれるのでしょうか」
【ほのか】「・・・すいません」
ほのかちゃんはシュンとなって縮こまってしまった。
お嬢様と、メイドだと?さっき否定したはずの答えが正解だったというのか!?
いや待てよ、その割にはメイドが主人っぽいじゃないか。
【透】「ははーん、これは罰ゲームか何かなんだな?」
【莉央】「はぁ・・・理解力の無い方ですね。では詳しくご説明さし上げましょう」
さらりと毒を吐き、莉央ちゃんが哀れみの目を向けながら俺に語りかける。
【莉央】「ほのか様は、国内外のグループ傘下に2000余社をもつ日本有数のコングロマリット、山吹財閥の一人娘なのです」
【透】「えっ!あの、山吹グループの、一人娘!?」
【莉央】「はい。そしてお嬢様は、いずれ山吹を背負って立つ、将来の総帥候補なのです」
【透】「なっ!?」
山吹グループ。俺のようなダメ学生でも知っている、日本屈指の超有名財閥。
その業態は金融から情報産業、医療まであらゆる分野に及び、新卒大学生の1割は山吹と関係のある仕事に就くと
いわれるほどの規模を誇る、大企業連合体だ。
テレビでその社名を見ない日はないし、就職志望先としても毎年ランキングの上位を占めるほどの優良企業らしい。
グループ全体の年間売上高は日本の国家予算を上回るとか、絶対的な資本力を生かしてT‐ウィルスを開発しているとか、
ユダヤ財閥や華僑と並んで世界を陰から操る3大組織のひとつだとかいう怪しげな噂まである。
まさか、そんな世界に住む本物の「お嬢様」なるモノが目の前に現れるとは!!
【透】「しかし、そんなすげーお嬢様が何でこんな私立大学に・・・?」
【莉央】「疑問はもっともですが、それにも理由があります。
本来ならば、お嬢様のような方はオックスブリッジなどの一流大学で帝王学を学び、国際舞台に
躍り出る基盤を固められるべきところでした。ですが、お嬢様のお父上、つまり山吹財閥の現理事長が、
これからの企業経営者は市井の感覚を身をもって学ぶべきと考えられて、まず学部のうちは
日本の私立大学で学生生活を謳歌せよとのことで、この大学に通われることになったのです」
【ほのか】「いやぁ、ほんとそんな大した理由じゃないんだよぉ。私、留学できるほど頭良くないし」
【莉央】「それに、外国語以前に日本語も満足に使えないとか、社交界デビューするにはガキンチョ過ぎるとか、
いろいろ問題ありますもんね」
【ほのか】「・・・ヒドイ」
【透】「はー、こんなチンチクリンが、あの山吹の跡取りねぇ・・・」
【ほのか】「透くんも、ヒドイ!!」
【透】「あ、すまんすまん」
俄かには信じがたいが、そういうことならこのぽやっとした感じの女の子がちょっと世間ズレした感じも頷けよう。
よくよく見れば、身につけている洋服からアクセサリーまで、派手でこそないが結構高そうなものばかりだ。
では、もう一人のほうは?
【透】「で、君は・・・」
【莉央】「私は、その山吹財閥の大事な跡取りであるほのか様の教育係として、幼少の頃より山吹家に仕える侍従です」
【ほのか】「それでもって、莉央もこの大学に通う学生で、私の大事な親友なの~」
【莉央】「前者はともかく、後者は何の話ですか?」
【ほのか】「はぅっ!?私の勘違いなの!?」
莉央ちゃんのつれない態度に、涙を目いっぱいに浮かべるほのかちゃん。
【透】「なるほどねぇ・・・説明どうもありがとう」
【莉央】「ご清聴ありがとうございました」
【ほのか】「私たちの関係、すこしは分かってもらえたかな?」
【透】「ああ。驚いたよ。まさかそんなセレブがこの大学に通ってるなんて。全く知らなかった。
俺みたいな俗物にとっちゃ、お近づきになれただけでも光栄、かな?」
【ほのか】「やぁん、照れるぅ~」
今度は顔を赤らめながらしなをつくるほのかちゃん。
表情がコロコロと変わって、見ていて飽きないなぁ、この娘。
一方、莉央ちゃんは冷めた目で主人をねめつけながら呆れている。
【透】「でも・・・なぁ」
確かに、説明を聞いて、二人の関係性は見えてきたし、二人のやっていることが冗談でも何でもなく、
二人にとってはごく自然なことであるというのも理解できた。
だが、それでもまだ、しっくりこない点は残っている。
【莉央】「まだ、何か?」
【透】「でも、お付きのメイドさんならもうちょっとほのかちゃんに優しくしてあげてもいいんじゃあ・・・」
少なくともこれまでに聞いた暴言の数々は、主人に向けるものではないんじゃないのか?
俺のそんな考えを見透かしたのか、莉央ちゃんは急に真剣な顔になり、キッと俺を睨みつけてきた。
【莉央】「透さん、貴方はまだ勘違いしておられます」
【透】「えっ?」
【莉央】「メイドとは、主人の下僕ではありません。主人とは対等の関係にあって、主人を支え、鼓舞するもの。
仕える主人に足りないところがあれば、我が身を挺して補い、育て、伸ばすものです。
一方的に命令を受け、服従し、主人のミスを庇うことも諌めることもないただのロボット。
そんな心のない存在は、メイドとは呼ばない」
【ほのか】「莉央・・・!?」
【莉央】「お嬢様には、まだまだ未熟な部分がたくさんあります。やがて山吹の財閥を背負ってゆくために、
学ばねばならないことが山ほどあるんです。その道は、高く、険しい。それらの困難に共に挑み、
打ち勝つためには、まず私との信頼関係を深め、強い心を養ってもらわなければならないのです」
【ほのか】「莉央・・・私のこと、そんな風に想って・・・」
【莉央】「だから、これはいたぶっているわけでも嫌っているわけでもなく、互いの絆を深めるために
行なっている、私の個人的な趣味なのです。ね、メスブタ様」
【ほのか】「まだ続いてたの!?ていうか趣味なの!?感動が台無しだよ!!!」
再び泣き出しそうになるほのかちゃんに向かって、莉央ちゃんはSっ気たっぷりの顔で
これでもかというくらい「ブタ様」と呼びつけ、いじり倒していた。
結局、この主従が逆転したかのような関係だけは、よく分からない。
まあ、世の中には特殊な性癖をもつ人たちが少なからずいる、ってことにしておくか。
俺がそう結論付けるのと同時に、人数分のティーカップが載ったお盆を持って、夕華が部屋の奥から戻ってきた。
【夕華】「はいはい、自己紹介もそれくらいにして。それじゃあ、他のみんなが戻るまでお茶でも飲んで待ちましょうか」
【透】「え、待つの?」
【夕華】「うん。本人同士の合意が得られたとはいえ、透はまだメンター“候補”の状態だもの。
他のメンバー、特に会長の承認が得られなきゃ、正式に辞令交付できないからね」
【透】「あぁっ!?まだ決定してなかったのかよ?」
【夕華】「だ・か・ら、あくまで“正式”な承認の手続きが済んでないってだけ。私も、透に決まりでいいと思ってるよ。
あなたがあまりに下心丸だしで不安がられるとか、他にめちゃくちゃいい適任者が見つかったっていうなら、話は別だけど」
【透】「何だそりゃ・・・」
【夕華】「まあ、前者はともかく、後者はまずあり得ないから、その点は心配しなくてもいいよ」
それまで大人しくしていたシュゼも、俺の動揺を敏感に感じ取ったのか、心配そうに尋ねてくる。
【シュゼ】「(トオルちゃん、どうしたの?)」
【透】「(いや・・・どうやら俺たち、まだコンビを組めるって決まったわけじゃないみたいだ)」
【シュゼ】「(えっ!?そうなの?私、トオルちゃんと一緒がいいよ!ヤダヤダ、トオルちゃんじゃなきゃ、ヤダ!!)」
【透】「(まあ、落ち着けって。ダメだと決まったわけでもないんだしさ。俺がまともそうにしてれば、まず大丈夫だってさ)」
【シュゼ】「(えぇ~・・・・・・)」
それでも期待していたのが裏切られかけた分、シュゼは不安を拭い切れていないようだった。
【透】「で、他の人たちはいつ戻ってくるんだ?」
【夕華】「うーん、ほのかちゃんの話だと、ちょっと手間取ってるみたいで遅くなりそうなんだけど・・・」
【透】「それだったら、今日は履修科目の選択とかだけ終わらせることにして、俺のことは明日に回してもいいんじゃないか?」
【夕華】「何を悠長なこと言ってんのよ。早いとこやることやって、シュゼちゃんを安心させてあげたいとは思わないの?」
シュゼの様子を確かめると、彼女は捨てられかけた子犬のように、心細そうな眼をしてこちらを見ていた。
【透】「う、そりゃそうだが・・・」
【夕華】「でしょ?さしあたって、カリキュラムの説明でもしながら、みんなを待ちましょ」
【透】「ああ。分かったよ」
それから俺たちは、待ち時間を利用してシュゼに一通りのレクチャーを行ない、受講計画まで組んでやった。
だが、一連の作業を終えてから、1時間経っても2時間経っても、誰一人として帰ってくる気配はない。
その間、ほのかちゃんと莉央ちゃんの不思議な関係を生暖かい目で観察してみたり、夕華やシュゼと思い出話に
華を咲かせてみたりもしたが、時間はただ過ぎるばかり。
シュゼなどはとうとう、うたた寝をし始めてしまった。
そして、更に1時間。
数杯目のコーヒーを飲み干したところで、俺は痺れを切らし、再び夕華の反応をうかがう。
【透】「・・・帰って来ないな」
【夕華】「・・・帰って来ないわねぇ」
【透】「なぁ、やっぱり明日に回しちゃってもいいんじゃね?」
【夕華】「せっかくここまで待ったんだし、それもなぁ・・・。でも、もう外も暗くなってきちゃったね」
【透】「どうするよ?」
【夕華】「うーん、これ以上遅くなるようなら、透はともかくシュゼちゃんには迷惑になっちゃうなぁ。
透の言うとおり、明日にしたほうがいいのかな・・・」
夕華までもが萎えはじめたその時、カランカランと、部室の扉にあったベルノッカーが鳴るのが聞こえた。
【????】「遅くなりました。ごめんなさいね」
【ほのか】「あ、夕華ちゃん!紫さんが戻ってきたよ!」
【夕華】「やった、グッドタイミング!これで今日中にお伺いを立てられるわ!」
そう言うと夕華は勢いよく席を立ち、今しがた部屋に帰ってきたばかりの人のもとへと駆け寄って、話をし始めた。
おそらくは、これまでの流れを掻い摘んで説明しているのだろう。
ここからではその話し相手の姿がよく見えないが、女性であることには間違いない。
夕華の態度がいつもよりすまし気味なところからすると、どうやら上級生のようだ。
【夕華】「透、紹介するからこっち来て」
【透】「あ、ああ」
夕華の求めに応じて、俺もそそくさと席を立つ。
【夕華】「さあ、じゃ遅くなっちゃったけど、会長にもご挨拶」
【透】「え!会長って、もしかしてあの伝説の!?」
【夕華】「そう。この人が、私たち『めんへる会』の誇る名会長、六条紫(ろくじょう・ゆかり)さんよ」
そう言って、夕華は部屋の入り口にその人物に俺を引き合わせた。
そこにいたのは、一見してタダモノでないと分かるオーラを放つ、日本人形のような女性。
彼女は、シュゼとも夕華とも異なる、別次元の美しさを発していた。
いや、もちろんあいつらだって、客観的にみて超S級の美人だ。
そこいらの芸能人やモデルなど足元にも及ばない、トップレベルの美貌を有している。
だが、今俺の目の前にいる女性のそれは、シュゼや夕華と比べても更に上をいく。
まさに、完成された美そのものだ。
すらりと背中まで真っ直ぐに伸びた、艶のある黒髪。
均整のとれた顔立ちに栄える、たおやかな唇。
満ち満ちた強い意志を湛える、切れのある目。
気品に富んだ、穏やかな物腰。
彼女がその身に纏うあらゆる、そのまま彼女の溢れ出る才気を感じさせ、
何者をも寄せ付けない絶対的な存在感を醸し出していた。
【夕華】「会長。彼がシュゼちゃんのメンター候補として推薦したい、明石くんです」
【紫】「はじめまして。六条です」
【透】「・・・・・・」
【紫】「・・・・・・」
【透】「・・・・・・」
【夕華】「・・・ちょっと、透。何バカ面晒してんのよ。挨拶くらいちゃんとなさい」
【透】「え?あっ!あ、明石透です!よ、よろしくお願いしますっ」
【紫】「ふふ、透君ね。こちらこそよろしく」
ただ挨拶をするという、彼女のその所作だけで、俺は完全に圧倒されてしまっていた。
夕華に促されなければ、返事もろくに出来ないような有り様だ。
こんな人が、現実に存在するなんて・・・・・・
【紫】「・・・・・・」
【透】「・・・?」
【夕華】「会長・・・?」
挨拶もそこそこに、何やら俺の顔をじっと見つめる会長。
夕華が声をかけても、会長は全く目を逸らさず、俺を見続けている。
だが、そこには女性がオトコを品定めするときの色気とか、面白そうなものを見つけたときの好奇心とか、
そういった好意や関心のようなものは一切なかった。
これは、それ以前の、もっとシンプルで純粋な観察行為だ。
・・・もしかして、俺ってば今、信頼に足りそうかどうか、この人に吟味されてる!?
会長の意図に気付き、若干身体をこわばらせる俺。
だが会長は、そんな俺の戸惑いも意に介さず、俺の肩に手をかけ、ぐいっと顔を間近に寄せてきた。
その距離は、今にもキスしてしまいそうな程近い。
突然の展開についていけなくなった俺の鼓動は、急速に早鐘を打ち出し、身体からは一気に汗が噴き出した。
【透】「うっ!お、おぉっ!!?」
【夕華】「なっ、会長っ!!?」
【紫】「・・・・・・・・・」
俺たちの声が聞こえているのかいないのか、会長は無言のまま、超至近距離で俺を見据え続ける。
【透】「ちょ、ちょっと!?会長さんっ!!?」
【紫】「・・・ふぅん。貴方、とっても綺麗な眼をしてるのね」
そう言うと、会長は俺の首に手を回し、さらに距離を詰めて俺の瞳の奥をじっと覗き込んできた。
俺の身体にもたれかかる会長の全身から香る甘い匂いと、今にも触れそうな唇から漏れる柔らかな吐息が、
俺の五感を烈しく揺さぶる。
だが、俺は情けないことに、夕華やシュゼとじゃれ合っているときのような余裕を一切持てず、
有無を言わせないその強烈なオーラにただただ焦り、身体を堅くすることしか出来なかった。
<選択肢:①なすがままにされる/②必死に抵抗を試みる>
<(選択肢①):夕華-1>
会長のすべすべとした腕が、柔らかい胸が、俺に密着する。
こんな状況で、なすがままにされる以外何が出来るってんだ!?
【透】「あっ・・・ああっ・・・」
思わず嬌声を上げてしまう俺。
そんな俺たちの姿を見かねて、夕華が口を開いた。
【夕華】「か、会長っ!近寄りすぎですっ!!離れてください!!透、あんたも何変な声出してんのよっ!!」
【紫】「・・・あら、ごめんなさい」
<(選択肢②):紫+1>
会長のすべすべとした腕が、柔らかい胸が、俺に密着する。
マズイっ!!このままやられっぱなしだとどうにかなっちまいそうだ!!
精一杯の理性と冷静さをもって、俺は喉の奥から必死に抗議の声を絞り出した。
【透】「かっ、会長さんっ!?近い!近いですっ!!」
【紫】「・・・あら、ごめんなさい」
<選択分岐終了>
そう言うと会長は何事もなかったかのように部屋の奥の会長席へと戻り、俺を呪縛から解き放ってくれた。
俺はといえば、全ての精気を搾り取られたかのように力を失い、木偶人形のように立ち尽くすばかり。
時間にしてみればほんの数十秒のやりとりだったろう。
だが、それだけでもう俺は目の前にいるこの女性に逆らえなくなってしまった。
こ、この人・・・・・・マジで怖ぇ・・・・・・。
さすがは、曲者ぞろいの『めんへる会』を束ねる、やり手会長といったところか。
だが、いろんな意味で他の連中と格が違いすぎる。
少なくとも俺なんかには、一生かかっても遠く及ばない存在であることは間違いない。
そんなことを考えながら萎縮している俺を尻目に、夕華は果敢にも会長に食ってかかった。
【夕華】「会長っ!!みんなの前でいきなり、何やってるんですかっ!!」
おいおい、やめとけって。
まだ出会ったばかりでよく知らないけど、いくらお前でも敵う相手じゃないよ・・・。
俺がそう口走ろうとしたとき、会長が凛と響く声で俺たちに語りかけた。
【紫】「彼、信用して良さそうね」
【夕華】「へっ?」
【紫】「心を根っこから腐らせてしまっているような人に、あんな澄んだ眼は出来ない。
多くを語らなくても、それだけで充分、透君が信頼に足る人物であることを物語ってるわ。
彼がシュゼちゃんのメンターで、決まりね」
【夕華】「は、はぁ・・・」
俺たちの待ち望んでいた答えを、会長はあっさりと告げた。
まだ話も充分に交わしていない段階で許可がでたことに夕華も拍子抜けし、先程までの怒りも影を潜めてしまっている。
俺の何が気に入られたのかは俺自身にもよくわからないが、ともかく会長さんのお眼鏡に敵ったみたいだ。
これでやっと、シュゼを安心させてやることが出来る。
俺自身も、腹の底からふつふつとエネルギーが沸きあがってくるのを感じていた。
【紫】「さて、この会にはあと3年生が1人と2年生が2人いるのだけれど、今日は先に帰らせてしまったから
紹介は後日ね。でも、きっとその子たちも賛成してくれるわ。まずはこの話、正式に通させてもらって
よろしいかしら?」
【透】「はい、ありがとうございます!俺、頑張りますっ!」
俺の威勢のいい返事に満足したのか、会長は先ほどとは異なる聖母のような優しい笑顔を俺に投げかけてくれた。
【紫】「うん、期待してるわね」
【透】「はいっ!!」
俺は会長に向かって深々と一礼し、部屋の隅で所在なさげに事の顛末を見守っていたシュゼのもとへと駆け寄る。
【透】「(シュゼっ!お前のメンター、俺で決まりでいいって!)」
【シュゼ】「(えっ、本当に!?)」
【透】「(ああ!今、会長さんからも太鼓判押されたよ!)」
【シュゼ】「(わぁい!良かった!じゃあ、これからはトオルちゃんが私の先生だねっ!
トオルちゃん、よろしくお願いしますっ!)」
【透】「(おぅっ!改めてよろしくな、シュゼ!)」
そう言って、また熱い抱擁を交わす俺たち。
お互い寸止め状態で待たされていたこともあり、勢いあまって、軽いキスまで交わしてしまった。
直後、背中に鋭い視線が突き刺さり、俺の身体からは冷たい汗がとめどなく溢れてくる。
あ・・・しまった、またやっちまったか?
【ほのか】「うわぁ~、人前でキスするなんて、だーいたーんっ!!あっ、こりゃたまらん、ヨダレズビッ!!」
【莉央】「お嬢様、キスに憧れる前に、その締りのない口をどうにかしてください」
【紫】「あら、仲がいいのね。うらやましいわ」
・・・あ、あれ?一部を除いて、意外と普通だぞ?
と、いうことは・・・この痛い視線の発信源はやはり・・・
【夕華】「・・・とーおーるクーン、何、やってるのかな~??」
【透】「はっ、はいっ!スイマセンっ!!」
慌ててシュゼと距離をとり、夕華へ向けて直立敬礼する俺。だが、時既に遅し。
【夕華】「そういうことは控えろって、言ったでしょうがあぁぁっっっっ!!!!」
【透】「ぐはぁぁっっっ!!!!」
【シュゼ】「(きゃああっ!!とっ、トオルちゃんの穴という穴から、変な液が出たっ!!トオルちゃん、しっかり~っ!!)」
【夕華】「ふんっ!もう、知らないっ!!」
夕華の放ったボディーブローは的確に俺の鳩尾を捉え、俺はなす術もなくその場に崩れ落ちた・・・。
2009-08-25T20:29:42+09:00
1251199782
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ほのか・莉央 1-1
https://w.atwiki.jp/daiseieroge/pages/16.html
<p><br />
; 場所分岐で学食を選択したところから。<br /><br />
【透】「・・・思ったんだが」<br /><br />
【莉央・ほのか】「?」<br /><br />
【透】「俺がお前等と昼飯を一緒に食う理由がない」<br /><br />
【ほのか】「いまさら!?」<br /><br />
何故か学食に来たらコイツらが居たのだ。俺は目立ちたくない(メイドと一緒に飯食ってたら否が応にも目立つだろう)ので、見付からない様にパンでも買って学食を出ようとしたのだが、ダメだった。見た目(抜けてそう)より予想以上にめざといお嬢様に、「あ!透くん!」とか叫ばれてしまい、集めなくても良い周囲の注目を集めまくって、結局メシをご一緒する事になってしまった。ちなみに、今も好奇の視線を浴びまくっている。<br /><br />
【莉央】「めんどくさい人ですね、ご飯を一緒に食べるのに理由がいるんですか?」<br /><br />
【透】「ああ、必要だ。少なくとも今の俺の心情をごまかせる程度の理由が」<br /><br />
出来れば一人静かに空き教室とかで食いたい。っていうか仲間だと思われたくない。今の俺たちは、良くてコスプレサークルの集まり、悪けりゃ個人的趣味でメイドを侍らせている変態といったところだ。<br /><br />
【ほのか】「仲良くなりたいから、じゃだめかなぁ・・・?」<br /><br />
【透】「仲良くするなら人の居ないところにしようぜ」<br /><br />
【ほのか】「え、それって・・・///」<br /><br />
そういう意味じゃない。本意は、「お前らと一緒にいると恥ずかしいから、話しかけるなら人の居ないところを選んでくれ」てな感じだ。このまま言ったら辛辣に過ぎるから、冗談めかして言ってみたんだが、この子はやっぱり見た目(抜けてそう)どおりだった。<br /><br />
【莉央】「私たちと一緒に居るのが恥ずかしいということですか」<br /><br />
【透】「ナイス解釈!!!それでこそ日本人だ!」<br /><br />
だが、"たち"じゃなくて主にお前だ。メイド。<br /><br />
【ほのか】「がーーん」<br /><br />
【透】「古っ」<br /><br />
郷愁すら感じさせるリアクションだ。<br /><br />
【ほのか】「やっぱり莉央ちゃんがメイドの恰好してるのがいけないんだよぉ!ね、ね、今すぐやめよ!莉央ちゃんは普通の恰好のが似合ってるよ!大学にまでメイドの恰好で来ることないよぉ!」<br /><br />
【莉央】「お嬢様が嫌がるからこの恰好をやめられないんです。察して下さい」<br /><br />
嫌がらせでその恰好してるのかよ。気に入ってるとか、メイドとしてのけじめとか、そーゆーのじゃないんだ。<br /><br />
【透】「俺は呆れた」<br /><br />
思わず心情がそのまま吐露された。<br /><br />
【ほのか】「呆れられてるよう」<br /><br />
【莉央】「甘んじて呆れられましょう。ですが、何人たりともこの私の意志を覆すことは出来ません」<br /><br />
【ほのか】「わたしが莉央ちゃんはメイド服でいて欲しいって言ったら・・・?」<br /><br />
【莉央】「お嬢様がそう言うならしょうがないですね、この恰好でいてあげましょう」<br /><br />
【ほのか】「うわーん!!」<br /><br />
【透】「お前は何でコイツをいじめるんだ?」<br /><br />
【莉央】「いじめるとは心外ですね、遊ぶといって下さい」<br /><br />
【ほのか】「・・・いじめだよ」<br /><br />
【透】「ほのかちゃんはこいつに何かしたの?」<br /><br />
【ほのか】「全然こころあたりがないよ?それに、あったとしてもずっと昔のことじゃないかな・・・もう、十数年はこんな感じだもん」<br /><br />
十数年・・・結構長い付き合いなんだな。っていうか、そんな長い間嫌がらせを続けてきて、よくクビにならないなこのメイド。<br /><br />
【莉央】「お嬢様の顔を見ていると何かこう嗜虐心が刺激されますよね」<br /><br />
【透】「同意を求めるな」<br /><br />
【ほのか】「理由も無しに色々嫌がらせを受ける方はたまんないよぉ!」<br /><br />
【透】「例えば、どんな嫌がらせをされるんだ?」<br /><br />
【ほのか】「お嬢様って呼ばれる」<br /><br />
【透】「それはまぁ、事実だから・・・」<br /><br />
【ほのか】「お気に入りに入れておいたページが、同じタイトルのエッチなサイトになってる」<br /><br />
【透】「友達と一緒に見てるときに開くと気まずいな」<br /><br />
【ほのか】「デスクトップの壁紙が、男の人同士がつながっている画像固定になってる」<br /><br />
【透】「起動した時点で既に気まずいな」<br /><br />
【ほのか】「ブラウザのホームページが、女の人の顔がアップで出てきて悲鳴が響き渡るサイトに変えられてる」<br /><br />
【透】「友達の心臓が止まるな。・・・っていうかPC系多いな!」<br /><br />
【莉央】「お嬢様はネットオタクなんです。自室に回線を引いてからは、部屋に引きこもりがちになってしまいまして。ですから私は、お嬢様がパソコン離れするお手伝いを」<br /><br />
【ほのか】「最終的には、マウスカーソルをアイコンに合わせようとすると、アイコンが逃げる様になってました」<br /><br />
ウィルスだそれは。<br /><br />
【透】「引きこもる原因の一端は確実にお前だと思うが」<br /><br />
【莉央】「お嬢様の為です」<br /><br />
【ほのか】「他にも、おでかけ用の服や靴が隠されていたり、外出しようとすると掃除用のバケツごと水をかけられたり、十代からの引きこもりマニュアルとかいう本が朝起きると枕元に置いてあったり・・・」<br /><br />
【透】「むしろ引きこもるように仕向けてるじゃねぇか!」<br /><br />
【莉央】「バレましたか」<br /><br />
【透】「ほくそ笑むな」<br /><br />
【ほのか】「透くん・・・わたしが引きこもったら後は任せたよ・・・」<br /><br />
何を?<br /><br />
【透】「何でこんな話になったんだっけ?」<br /><br />
【ほのか】「透くんが私たちと一緒に居るのが恥ずかしいっていう話からだよ」<br /><br />
そうだった。いつの間にかこいつらとの会話に馴染んでいる自分が怖い。<br /><br />
【莉央】「いっそのこと開き直って私と一緒に執事の恰好でもしてみませんか?」<br /><br />
【透】「開き直る意味がわからない」<br /><br />
【莉央】「お嬢様はそれちょっといいかもとか思ってますよ」<br /><br />
【ほのか】「!?思ってないよ?思ってないからね?」<br /><br />
【莉央】「それでお嬢様が派手目のドレスを着て、髪型を縦ロールにしたら完璧ですね」<br /><br />
何が?<br /><br />
【透】「俺を勝手に嫌がらせの計画に組み込まないでくれ」<br /><br />
【ほのか】「わたし、縦ロールなんかにしないよぉ」<br /><br />
【莉央】「口調も変えなければダメですね。語尾にはですわを付けて下さい」<br /><br />
【透】「何故、テンプレなお嬢様キャラに近付けたがる」<br /><br />
【莉央】「お嬢様には山吹家次期当主に相応しい人間になって頂きたいんです」<br /><br />
【透】「それなら外面より内面を磨かなきゃダメだろ」<br /><br />
【ほのか】「透くんはイイコト言うね~」<br /><br />
【莉央】「中身はもう無理です」<br /><br />
【ほのか】「ひどっ!?」<br /><br />
【透】「・・・諦めるなよ」<br /><br />
【莉央】「お嬢様の教育を任されてきた数年の経験を踏まえて言います。無理です。お嬢様が使用人をアゴで使っている姿を想像出来ますか?」<br /><br />
【透】「・・・アゴで使われている姿ならば想像出来るけども」<br /><br />
【ほのか】「もういいよ透くん・・・わたし明日から派手目のドレス着て縦ロールぶら下げて語尾にですわ付けるキャラになるから・・・」<br /><br />
ほのかはいじけた!<br /><br />
【透】「いやでも、当主としては失格でも、俺はお嬢様然としてない方が話しやすいよ」<br /><br />
【ほのか】「えへへ、それならいいかなぁ」<br /><br />
ほのかの機嫌が直った!<br /><br />
【透】「扱いやすいなオイ!」<br /><br />
【莉央】「もしお嬢様が恋愛シミュレーションゲームの登場キャラなら、確実に初回プレイで落とせる難易度ですよね」<br /><br />
【ほのか】「よくわからないけど、ひどいことを言われている気がするよ?」<br /><br />
【透】「もう少し人を疑う事を覚えた方がいいぞ」<br /><br />
【ほのか】「うん」<br /><br />
【莉央】「そうですね、特に透さんの言うことは疑ってかかった方がいいです」<br /><br />
【透】「何でだよ」<br /><br />
【莉央】「エロゲーの主人公みたいな軽薄そうな面してますから」<br /><br />
【透】「何それ。そういうメタな批判はやめてくんない。っていうか言いがかりだし」<br /><br />
【莉央】「これは失礼。ですが、これだけは覚えておいて下さい。お嬢様を泣かせたら消します」<br /><br />
【透】「何を」<br /><br />
【莉央】「セーブデータを」<br /><br />
【透】「だからそういうメタな発言はやめ・・・っていうか何のセーブデータ?」<br /><br />
【莉央】「透さんがプレイしているゲームのですよ」<br /><br />
【透】「ああ、そっちか。随分地味な嫌がらせだな」<br /><br />
【ほのか】「やられると意外とこたえるよ・・・」<br /><br />
やられたんかい。<br /><br />
【莉央】「お嬢様を泣かせていいのは私だけです」<br /><br />
【透】「お嬢様を泣かせたらのくだりで終わっとけばいい話だったものを・・・」<br /><br />
【ほのか】「オチがついたね!」<br /><br />
明るく言うな。明るく。<br /><br />
<<終>></p>
2009-08-20T23:35:17+09:00
1250778917
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きゃっち★The Rainbow!!(原案)
https://w.atwiki.jp/daiseieroge/pages/14.html
289 名前: ◆50qY7IFXzQ [] 投稿日:2009/08/13(木) 00:34:23 ID:IAQrvjCI0
えー、途中ですが納期が来たのでアップしました
パスはdainama
ttp://ux.getuploader.com/daiseieroge/download/1/%E7%84%A1%E9%A1%8C.txt
324 : ◆50qY7IFXzQ :2009/08/13(木) 15:42:42 ID:IAQrvjCI0
未完部分差し替えました(pass:dainama)
ttp://ux.getuploader.com/daiseieroge/download/4/Prologue+0.1.txt
*******************************************************************
●プロローグ
<背景:暗闇>
僕らは、昼なお暗い森の中にいた。
【透】「ハァ・・・」
【????】「トオルちゃん、もうすぐだからちゃんと歩いてよ~」
郊外にある丘へと続く、森の中の小さな遊歩道。
普段は犬の散歩に使われるような何の変哲もないハイキングコースだが、雨上がりの後で
道はべしょべしょになっており、僕にはそれだけで次の一歩を進めるのが躊躇われた。
【透】「なあ、もう帰ろうよ・・・もうすぐ日が暮れちゃうよ」
【????】「じゃあ迷わないようにちゃんと手を掴んで!ほらほら!」
【透】「どこまで行くんだよ・・・僕、今日は遊んでいたくないんだ」
【????】「昨日もそんなこと言ってたよ。一昨日も、その前も。トオルちゃんの言うこと聞いてたら
いつまでたってもお出かけできないもん。さあ、歩こ!」
腕をグイグイと引っ張られ、僕は丘の頂上へと続く小路を無理やり登らされる。
【????】「トオルちゃん、重いよぉ。私、腕が抜けちゃう~」
【透】「僕、もう外で遊んだりしたくないんだよ。僕だけ笑ったり、喜んだり、していたくないんだ。
母さんが居なくなった、こんな世界で・・・・」
【????】「ひゃあ、雨で道の途中に池が出来てる~!トオルちゃん、ちゃんと歩かないと転んで
どろんこになっちゃうからね!」
僕の手を掴んで離さないその女の子は、僕の不平には一切耳を貸さず、ただ歩みを進めさせようとする。
かれこれ数十分もそんなことを続けた頃だろうか、女の子は正規のルートから少し脇にそれて、
獣道のような隘路の先にある藪を掻き分けだした。
【透】「え・・・?そこ、入るの・・・?」
【????】「わ~ん、しばらく来なかったら藪が茂っちゃってる~」
【透】「こんなとこ入ってどうするんだよ・・・道がないじゃんか・・・・」
【????】「あっ、あっ!毛虫!やーん、服に入った!トオルちゃん、とってぇ!!」
【透】「ハァ・・・取れたよ。なあ、もういいだろ・・・早く帰ろうよ」
【????】「あ、ありがとぉ~。んしょ・・・んしょ・・・さぁ、着いたよっ!」
<背景:暗闇(中央に光)>
それまで僕らを覆っていた薄暗い闇が、すっと開ける。
次の瞬間、目の前に一面の草原が広がり、僕らは市街地を一望する小高い丘の上に立っていた。
<背景:丘から見下ろした街並み(ぼかし)>
【透】「・・・・・わぁ!!」
眼下に広がる、ミニチュアのような街並みと、そこから郊外へと伸びる雑木林。
さっきまで僕らがいたところだ。
その真上に、七色の虹がはっきりと輝いている。
だが、それは通常の虹ではなかった。
煌めくアーチの向こうにもう一つ別のアーチが重なり、さらにその奥にもぼんやりと次のアーチが見える。
虹が幾重にも連なって、まるで街全体を虹のアーケードが包んでいるかのようだった。
ずっと奥のほう、北の空にはまだ暗い雷雲が轟いていたけれど、街の上の雲は既に薄らぎはじめていて、
所々から漏れた陽の光が、虹の輝きをより鮮やかに際立たせていた。
街の中心でお城のように佇んでいる市庁舎。街を割って流れる運河の水面。高くそびえ立つ教会の鐘楼。
僕らの住む住宅街や、いつも通っている学校、毎日みんなと遊んでいる公園も見えた。
僕の母さんが入院していた、病院も・・・。
それらの全てが虹色に煌めき、次の瞬間には暗がりとなり、やがて陽の光を浴びて
いつもの明るさを取り戻してゆく。
光と闇が、喜びと悲しみが、希望と絶望が等しく溢れているこの世界を、そのまま一枚の絵に
表したかのようなとても幻想的な風景。
僕はその圧倒的な存在感に、さっきまでの沈んだ気持ちも忘れ、たまらず叫びだしていた。
【透】「すごい!すごいよ!こんなの見たこと無い!」
【????】「えへへ・・・よかった。トオルちゃんが気に入ってくれて。無理やりでも連れてきてよかったぁ」
【透】「ありがとう!本当にすごいよ!とっても綺麗だ!」
【????】「ここね、私の一番お気に入りの場所なんだ」
【????】「雨が上がったすぐ後にね、ここからだけいつも虹が見えるの」
【透】「そうなんだ・・・。こんな場所があるなんて知らなかった」
【????】「トオルちゃんと私だけの秘密だからね!誰にも言っちゃダメだよ!」
【透】「ああ!」
それから僕らは、まだ湿り気の残る草原に腰を落として、虹がゆらめいて消えてゆく様をずっと眺めていた。
互いの手は、ずっと繋がったままで。
けれど、さっきまでのように渋々ではなくて、しっかりと彼女の温もりを感じられる強さで。
その温もりは、僕の壊れかけた心を、優しく包み込んでくれた。
<背景:暗闇>
僕の母は、つい2か月ほど前に死んだ。
僕を生んで8年、常に体調の優れなかった母は、医師をしている父の勧めに従い、治療環境の整った
この街へ僕ら家族と共にやってきた。
父や病院関係者の弛まぬ努力によって、母はそれから2年あまりの間、比較的小康状態を保っていた。
調子の良い時には一時帰宅を許され、少し悪化するとしばらく入院生活の繰り返し。
落ち着かない日々ではあったが、僕らは幸せだった。
共に過ごせるこの時間が、少しでも長く続けばいいと思っていた。
少なくとも、僕は終わりが来るなんて考えもしなかった。
だが、2か月前のあの日。
一時帰宅していた母は夜中に突然激しい発作を起こし、そのまま病院へと運ばれ、日が明けるのを待たず
あっさりと逝ってしまった。
治療の難しい難病だった、と後に聞かされたけれど、僕には何の病気だったのかよく分からないし、
聞いたところで何が変わるわけでもなかった。
僕にとっての事実は、お母さんがいなくなってしまったという、ただその一点のみだ。
大人たちは口々に「かわいそうに」「頑張ったね」と慰めの言葉をくれたが、そんなものは
何の気休めにもならない。
「母さんを、返して!」
大人たちに話しかけられる度に何度もそう叫びかけたが、それを言ってしまえば母の死を認めたも同然になる。
嫌だ。嫌だ。こんなのでお終いだなんて、絶対に嫌だ。
誰に話しかけられても口をつぐみ、ただこの辛い時間が過ぎ去ることだけを望んだ。
やがて、言葉を飲み込むのも億劫になり、次第に誰とも顔を合わせようとしなくなった。
それまで仲良くしていた友だちにも、そっけない態度で接するようになり、みんなも気分を害したのか、
程なくして一人二人と離れていった。
愛する妻を突然失って気落ちしていた父も、気丈に僕の事を励まそうとしたが、僕にはそれすら面倒に感じられた。
そして一月が過ぎ、二月が過ぎ、自分の部屋に篭って一日臥せるだけしかしなくなった僕に
話しかけてくる者は、誰もいなくなった。
息子の心の平穏だけでも守ろうと懸命に努力を続ける父と、いま僕の隣に座っている、この女の子を除いて。
彼女は、この街で最初に仲良しになった、一番の友だちだった。
そして、彼女もまた、幼くして父親を失っていた。
だからこそ、僕は彼女だけは邪険に扱えなかった。どれほど世界に絶望して、人との関わりを絶とうとしても、
同じ境遇にあってなお気丈に生きる彼女にだけは、わがままを通しきれなかった。
母の死後、彼女は2日に1度は僕の部屋を訪れ、他愛もない話を一方的に語っては帰るようになった。
僕もそれに抗えず、一言、二言と彼女と会話を続けるようになり、ここまで話が出来るくらいに盛り返したのだった。
最も、僕の話す事といえば、大事な人の欠けたこの世界に対する怨嗟と泣き言ばかりだったけれども。
それでも、彼女は諦めなかった。
そして、今日。
僕の心を映したかのように数日降り続いていた雨が止んだ夕方、僕の部屋を尋ねてきた彼女は
突然力づくで僕を外に押し出し、ここまで連行してきたのだった。
<背景:丘から見下ろした街並み(ぼかし)>
【????】「ねえ、トオルちゃん。虹の端っことてっぺんてどこに繋がってるのか知ってる?」
【透】「え?端っこと端っこじゃなくって?」
【????】「うん。端っことてっぺん」
【透】「う~ん、てっぺんかあ。ここから見てると、端っこから登っていけそうな高さだけど・・・」
【????】「前にお婆ちゃんから聞いたんだけどね、虹はお空の上の世界と繋がっているんだって」
【透】「お空の上?それって、天国ってこと?」
【????】「うん。それでね、お空の上に行っちゃった人たちがね、私たちのことを想って涙を流すと、
神様がかわいそうに思って、その涙を使ってちょっとの間だけお空と地面を繋げてくれるの」
【透】「天国の人たちの涙が、雨や虹になるの?」
【????】「そう。だからね、トオルちゃんのおばさんも、私のお父さんも、ずっと私たちのこと
見てくれてるんだよ。虹が出るときはね、私たちのお父さんやおばさんが、虹を伝って
私たちに会いに来てくれてるんだよ」
【透】「母さんが、僕に会いに・・・」
【????】「ただ会うだけじゃないよ。『トオル、元気を出して。負けないで』って、応援しに来てくれるんだよ」
【透】「でも僕には、母さんの声は聞こえないよ。僕も母さんと話がしたいよ」
【????】「うん。私にもお父さんの声は聞こえない。でもね、絶対来てくれてるの。私には分かるの」
【透】「どうして?どうしてそんなこと分かるんだよ!」
【????】「だって、私もトオルちゃんも、あの虹を見たときに、元気出たじゃない。
この世界が綺麗だなって、そんなに悪いものじゃないって、思えたじゃない」
【透】「あ・・・」
【????】「だからね、きっとお父さんたちが私たちの耳元で『強く生きて、幸せになりなさい』って
言ってくれてるんだよ。声は私たちに聞こえないけど、想いは私たちに伝わってるんだよ」
【透】「・・・」
【????】「だからね、トオルちゃん。泣いちゃダメ。私たちがいつまでも泣いてたら、おばさんたちが、
お空から励ましに来てくれた意味がなくなっちゃうもん。」
【透】「でも、でも僕は・・・」
【????】「大丈夫。私たちはひとりぼっちなんかじゃないんだよ。おばさんたちは、いつでも
お空の上から私たちのこと見守っててくれるし、私にはお母さん、トオルちゃんには
お父さんだっているんだから。私たちが悲しい時は、そばにいてくれるんだから。
トオルちゃんがそんなふうに落ち込んでたら、天国のおばさんもずっと悲しいままだよ」
【透】「・・・僕、母さんにひどい事してたのかな」
【????】「おばさんは、トオルちゃんのこと責めてなんかいないよ。だって、トオルちゃんのこと愛してるもん。
ただ、トオルちゃんの幸せを望んでいるだけ。今も、きっとそう」
【透】「・・・そうだよね。僕、母さんがいなくなってからずっとわがままを言ってたのかもしれない。
父さんだって、みんなだって、辛いなかで僕を気遣ってくれてたのに、僕は自分のことだけを
かわいそうに思って、その自分のこともどうでもいいやなんて思ってた。母さんは、『元気な透が大好きよ』
っていつも言ってくれてたのに。僕は、母さんが好きだった僕を自分で捨てちゃうところだったんだ」
そして、僕は涙を拭い、消えはじめた虹に向かって語りかけた。
【透】「僕、もう大丈夫だよ。母さんがいなくても、ちゃんと幸せになれる。強くなってみせるよ。
だから、僕の事、いつも空から見守っていてね。母さん」
このとき初めて、僕は母の死を正面から受け止めることが出来たのだと思う。
突然いなくなってしまった母さん。二度と会えなくなってしまった、僕の大好きな人。
その全てを納得する事も理解する事も出来なかったが、僕は最後まで僕を愛してくれた母さんのためにも、
強く生きていく覚悟を決めた。
そして、僕の決意を見届けて満足したかのように、合奏していた虹は空に散っていった。
それから僕らは、日が落ち、星と街の灯りが瞬きだす頃になってから、ようやく家路に着いた。
暗い小路を登ってきた時と変わらず、二人で手と手を取り合って。
<背景:暗闇>
【????】「ねえ、トオルちゃん」
【透】「ん?何?」
【????】「また雨が降ったら、二人であそこに行きたいな」
【透】「うん!また行こう!」
【????】「えへへ・・・あ、でもその時はちゃんと自分で歩いてってね?」
【透】「あ・・・ごめん。」
【????】「ううん、いいの。それより、約束だよ。またあの場所で虹を見るって」
【透】「うん。約束するよ。」
【????】「約束だよ・・・」
<10秒ほど停止>
<カレンダー表示:4月9日(木)>
【PC】「ニコニーコー動ー画ー」
【透】「・・・ん、あぁ・・・?」
<背景:透の部屋(ぼかし)>
スピーカーから、耳慣れた時報の音声が流れ、俺は目を覚ました。
だが、どうしたことだろう。体がまともに動かない。
このまま押し潰されてしまいそうなほどの圧迫感。一切働かない頭。
そしてなにより・・・
【透】「・・・あ~、首痛ぇ・・・」
<背景:透の部屋>
そこで俺は、自分が机の上に突っ伏しているのを自覚した。
どうやら昨日の夜、ニコ動で過去の名作アニメを見ながらそのまま眠りについてしまっていたらしい。
道理で寝てるのに疲れるはずだ。
目が醒えてくるにつれて、枕代わりにしていた腕の痺れを感じるようになり、しばらくして肩や腰の痛みも伝わってきた。
身体中の軋みが、ただでさえ気だるい起き抜けの時間をいっそう憂鬱なものにする。
なんとか頭を起こしてパソコンの脇にあった置き時計に目をやると、針はちょうど正午を指していた。
【透】「げっ、もうこんな時間かよ」
【透】「・・・・・まあいいか、今日は講義があるわけじゃないし。とりあえず飯でも食おう」
のそのそと動き出し、買い置きしていたカップラーメンに注ぐためのお湯を沸かす。
昼夜反転して食事もインスタントで済ますなんて、自堕落な生活だ。
最も、一人暮らしの学生生活なら皆こんなものかも知れないが。
俺の名は明石透(あかし・とおる)。都内の私立大学に通う大学生だ。
とはいっても、ほとんど講義には出ていないし、ゼミにもサークルにも所属していない。
大学に親しい友達もいなければ、もちろん彼女なんていやしない。
趣味はパソコン、2ch、深夜アニメ。勉強も中の下くらいにしか出来ない。
いわゆるヒキオタ、非リアの典型だ。
<背景:大学キャンパス(ぼかし)>
だがこんな俺も、入学当初はもう少しやる気に溢れていた。
というのも、俺の通う私立「法慶大学」はキャンパスのオシャレさと自由度の高い校風をウリとする、
都内でも有数の超人気大学なのだ。現役の芸能人やスポーツ選手も多く通い、毎年キー局のアナウンサーも
幾人か輩出している。財界には出身者が多く、合コン相手の人気ランキングでは確実に3本の指に入るような有名校。
高校は男子校で、青春真っ盛りの頃に一切女っ気がなかった俺にしてみれば、
こんな環境で華々しい大学生活を送れることに期待しないわけはなかった。
しかし、その夢は入学数ヶ月にしてもろくも崩れ去った。
一言で言えば、大学デビュー失敗である。俺は、最初に入るべきサークルの選択を思いっきり誤ってしまったのだった。
まあ詳しい話はおいおいするとして、俺は宗教団体主催のサークルにまんまと騙されてしまい、何のご利益があるのかわからない
黄金のエル・○ンターレ像と引き換えに、大学デビューの機会と人付き合いに対する積極性、それに数十万円を失ってしまった。
それ以来、俺は大学生活に過剰な期待をしなくなり、せっかく入った有名大学のブランドも環境も生かせず終いである。
・・・え?そもそも、何で勉強も出来ない非リアがそんな有名校に入れたのかって?
それは俺のたったひとつの特技、フランス語を利用したAO入試が用意されていたからだ。
芸は身を助く、というやつである。
【透】「フランスか・・・そういえば今朝、久しぶりにあの頃の夢を見たな・・・」
俺は、小学校3年生からコレージュ(中学)を卒業するまでの約6年間をフランスで過ごした。
俺の唯一にして最大の特技は、その時習得したものである。
フランス滞留の間、俺たち家族はいくつかの都市を転々とした。
その多くはあまりいい思い出のあるものではなかったが、母さんの亡くなったあの街の事だけは、今も時々思い出す。
今朝見たあの夢。
俺が、生きる勇気をもらった、大切な時間。
【透】「あの女の子、元気かな・・・」
だが、小学生とはいえまだ幼かった時の話であり、忘れ難い思い出ではあるものの、あの時は俺も気が動転していた。
そう短くもない時間を共に過ごした筈なのに、あの女の子については、もう顔はおろか名前もよく思い出せない。
結局、俺はあの女の子との約束を果たすことなく、離れ離れとなってしまったのだった。
そう、ちょうど今朝見た夢の直後、父さんは別の街の大学病院で勤務することになり、俺達はあの街を離れたのだ。
父さんにしてみれば、愛する妻との思い出に溢れ、医師としての自らの無力さを嫌というほど感じさせられたあの街では、
男手ひとつで俺と新しい生活を送るにあたって、色々と耐え難いものがあったのだろう。
あの虹を見て俺が立ち直ったのを見届けるとすぐ、父さんは前々から進めていたのであろう引越しの準備を終え、
次の週には別の街で新生活をはじめようとしていた。
俺もまた、俺のことを第一に考え、励まし続けてくれた父さんをこれ以上困らせるような事はしたくなかったし、
特に異存も無かったので着いていくことを承諾した。
俺を勇気付けてくれたあの女の子に「さよなら」と言えない事だけが心残りだったが、それも詮無いことだ。
その後、俺達の辿った軌跡は消して平坦なものではなかった。
父さんは母さんを救えなかった心残りからか、寝食も忘れてそれまで以上に研究に没頭し、
俺のコレージュ卒業と同時にこの世を去った。
俺はといえば、母さんの代わりに家事全般をこなすようになり、コレージュ卒業後は身寄りのなくなった
異国での生活を諦め、帰国して一人暮らしをしながら、今、こうして大学生になっている。
それでも、自分の置かれた境遇そのものを不幸に思って、周りに当り散らすような腐った真似だけはしてこなかった。
我ながら、少しは強くなったものだと思う。
ただし、あの日母さんに誓った2つの約束のもう一方は、情けないことに全く果たせていない。
<背景:徹の部屋>
【透】「『強くなること』と『幸せになること』か・・・」
友人も彼女もおらず、昼間からパソコンのモニターの前でラーメンをすすっているようじゃ、
お世辞にも「幸せ」とは言えないだろう。
【透】「どうしてこんな風になっちゃったかな・・・」
ひとりごちたところで、慰めてくれるような相手はいない。
だが、俺自身も大して気にしているわけではない。
【透】「ま、考えてもなるようにしかならねーか。さて、今日は何をしよう」
どうせ一日中パソコンを見るか、せいぜい飯を買いにコンビニへ出かけるくらいしかしないのだけれども。
特に当てもなくだらだらとしていると、どこからかヴーヴーという振動音が聞こえてきた。
【透】「あれ・・・?携帯鳴ってる?」
家族もいなければ友人もほとんどいない俺の携帯が鳴るのは、何か月ぶりのことだろう。
それも、メールじゃなくて電話なんて。
ワン切りでもなさそうだし、一体誰が・・・?
不思議に思って携帯の画面を覗き込むと、そこに表示されていたのはある女の子の名前だった。
「赤嶺夕華(あかみね・ゆうか)」
【透】「夕華・・・?あいつが、わざわざ電話寄越してくるなんて珍しいな・・・。何だろ?」
赤嶺夕華。俺の幼馴染にして、俺と同じ法慶大学の同級生。
ついでに言えば、俺のアドレス帳に登録がある唯一の異性にして、日常的に付き合いのあるただ一人の親友だ。
彼女との関係は、単なる幼馴染というよりはもう少しだけドラマチックだ。
以前、家が隣同士だった俺たちは、フランス留学のはるか前、幼稚園の頃から家族ぐるみでお付き合いをさせてもらっていた。
だが、母さんの治療のために我が家がドタバタとフランス移住を決めたため、これまたまともに別れを告げる事も出来ず、
小学校3年生を最後に一切の交流が絶たれてしまった。
留学中と帰国後の数年間はお互いどこに行ったのか分からないままの状態が続いていたが、大学の入学式で俺と夕華は
運命的な再会を果たし、また昔のようにとてもいい関係を築くまでになった。
ともすれば恋愛感情の一つも芽生えそうなものだが、どっこい男女関係に発展する気配は微塵もなく、
気さくに付き合える親しい間柄として、これまでごくフツーの友人関係を保っている。
ま、昔から知りすぎているのもあって、お互いそういう対象として意識できてないってことなんだろう。
人生には、こういう異性関係があっても悪くはない。
しかし、そんな関係であっても、俺に直接電話してくるのはそうあることではなかった。
現在俺が住んでいるのは、かつて自宅があった場所から5分ほど離れた距離にある、ちっぽけなアパート。
つまり、夕華の家からも殆ど距離の無い、ご近所である。
それ故、何か用事があればメールで済ますか、そうでない急ぎの事なら直接うちまで来てしまうのが通常であった。
それがわざわざ電話とは・・・?何か言いにくいことでもあるのだろうか。
夕華の思惑を訝しがりつつも、俺は電話を受けた。
【透】「おーす」
【夕華】「あ、よかった。起きてたのね」
【透】「どうしたんだ、いきなり電話なんて」
【夕華】「ん、ちょっとね。それより、春休みの間はちゃんと生活してたの?」
【透】「うん、まあボチボチ。特に出かける予定も無かったし、メシだってラーメンとかカレー買い置きしてあったし」
【夕華】「え、まさかずっとインスタントで過ごしてたわけ?何やってんのよアンタ!料理できないわけでもないんでしょ?
食生活くらい、ちゃんとしなさい!」
【透】「いやぁ、そっちのほうが身体にもいいのは分かってるんだけどさ・・・」
【夕華】「分かってない!もう、そんな風なら休み中に様子見に行っとくんだったわ」
【透】「だってわざわざ通い妻させるのも悪いしさ・・・それにラーメン、美味しいし」
【夕華】「私がいいって言ってんだからいいの!とにかく、インスタントで済ませるぐらいなら私に連絡しなさいよ!
いつでもご飯持ってってあげるから」
【透】「はぁーい、とぅいまとぇーん。ドゥクドゥーン」
【夕華】「・・・こ、この野郎・・・」
電話の向こうでピキピキと青筋を立てる夕華の姿が目に浮かぶ。
だがこんなバカな掛け合いも、俺達の大事なコミュニケーションのひとつだ。お互い、悪意がないのは分かっている。
それよりも、いつもはもっとはあけすけなのに、今日に限ってもったいぶっている夕華の態度が気になった。
【透】「で、本題は?」
【夕華】「あ、えーとね。ちょっと透にお願い事があったんだけど・・・。でも、いきなりだしなぁ」
【透】「何だよ、もったいぶって。話さなきゃ俺に迷惑かどうかも分かんないじゃん」
【夕華】「うーん、でも、なぁ・・・。透の負担にもなることだし」
【透】「いや、お前には普段から色々助けてもらってるしさ。俺で力になれることがあるなら、何だって喜んでやるよ」
【夕華】「な、いきなり何言っちゃってんのよ。・・・照れるじゃない」
お、口下手な俺にしてはちょっといいこと言ったかもしれん。
反応から推し量る限り、夕華も感謝されてまんざらではない様子だ。
こいつ、こういう風にデレてれば可愛いところあるんだよな。
そんなことを考えながら、俺は調子に乗って少し甘い言葉を囁いてみる。
【透】「いや、本当だって。お前には心から感謝してるんだぜ。俺、こんなヘタレだし、お前がいなかったら3年まで
進級できたかどうかもわからない。入学当初のサークルの件だって、お前すげー親身になって励ましてくれたじゃん。
お前がいたから何とか大学生を続けて来れたんだよ。その恩はちょっとやそっとで返せるもんじゃない。
なあ、俺で助けられることがあるなら何でも言ってくれ。夕華の力になりたいんだよ」
我ながら臭いセリフだとは思ったが、夕華に恩返ししたいという気持ちは嘘じゃない。
この2年間ですっかりコミュニケーション不全に陥ってしまった俺だが、そんな俺でも見捨てずに助けてくれる人たちへの
恩まで忘れてしまうほど愚図になったつもりもなかった。
特に夕華は、誰に頼まれるでもなく俺の世話を買って出てくれ、ときたま一人暮らしで自堕落な生活を満喫している俺の部屋に
訪れては、掃除をしたり料理を作ってくれたりする。大学生活でも、不登校気味な俺に発破をかけて、進級に必要な
最低限の履修計画を組んでくれたり、俺の分の講義ノートを持って出張補講にも来てくれたりもしている。
それでいて自分から恩を着せるような嫌らしい真似はしないし、俺に何かを強要する事もない。
俺が一念発起したときに生活や勉強をすぐ軌道に乗せられるようにと、あくまでサポートに徹してくれているのである。
そんな夕華に、俺は感謝しても仕切れないほどの恩義を感じていた。
こいつは、口は悪いけど、人情味に溢れたとてもいい奴なんだ。口は悪いけど。
【夕華】「っっ、バカ!ハズいこと言わないでよ!・・・そんなこと言われたら・・・私・・・」
おお、これがツンデレの真骨頂というやつか。
気の置けない幼馴染とはいえ、現実にやられると胸が甘酸っぱい気持ちで一杯になる。
くそ、俺としたことが夕華にときめいてしまうなんて。いや待てよ、この流れならときめいてるのは夕華のほうか?
ここで恥じらいながら「これから、透の部屋に行ってもいい?」なーんてセリフのひとつも出れば、
俺に惚れてるフラグが立っていようものなんだけど。
だがまあ、現実はそんなイージーでもないだろう。
【夕華】「あ、あのさ、これから透の部屋にお邪魔しても・・・いいかな?」
【透】「マ、マジでフラグキタァーーーーーー!!?フヒィッ!」
ああっ!いかんっ!!
興奮しすぎて声が上擦ってしまった。というか声に出てしまった。
落ち着け、俺。落ち着いて、素数を数えるんだ・・・1、3、5・・・7、11・・・よし。
これは、期待していると考えていいんだよな?俺も期待していいんだよな?それ以外解釈できないよな?
特に意識している相手ではないはずなのに、男としての本能がムラムラと沸き上がってくる。
よし、ここは甘い言葉で一気に畳みかけを・・・
【夕華】「・・・ハァ?フラグ?あんた何言ってんの?ちょっとキモイんですけど」
あっ!俺としたことが何たる凡ミス!!時間切れ、いや選択肢ミスか!?
どっちにしても、素数を数えている間に夕華さんのデレモードが消えてしまった!!
・・・くそう、こうなったら少しでも好感度を回復すべく、平謝りする以外方法はあるまい。
【透】「ご、ごめんなさい・・・」
【夕華】「・・・やっぱり透にお願いするのはやめようかな」
【透】「ホントすいません。自重します・・・」
【夕華】「しっかりしてよね。次暴走したらもう頼むの止めにするから」
【透】「ハイ・・・。で、一体、私めに何をなさるおつもりなのでしょうか」
【夕華】「それは、そっち着いてからその場で話すわ。あなたに頼んで本当にいいのかどうかも、その場の流れで私が決める」
あ、そうだ。部屋は綺麗に片付けといてよね?」
【透】「はあ・・・よく分からないけど承知しました」
【夕華】「それじゃ、また後で」
【透】「あ、ああ・・・」
何だか要領を得ない会話だった。
結局、あいつは俺に何を求めてるんだ?
ただ、ちょっと急いでるみたいだったし、それほど時間はなさそうだ。
とりあえず部屋の体裁だけでも繕っておくか。
シンクに詰まれた空の食器を片付けて、ゴミ袋も外に出して。
あ、あと万一の場合に備えてコンドームの準備も・・・フヒヒ。
邪な考えを胸に抱きながら、俺は部屋の掃除を始めることにした。
<背景:透の部屋/場面転換のエフェクト>
そして、2時間後。
夕華は、俺の家にやってきた。
<立ち画:右側・夕華(通常)>
【夕華】「久しぶり」
【透】「おー、よく来たな。まあ上がって一息つけよ」
【夕華】「あ、上がる前にちょっとだけいい?」
【透】「何だ、いきなり」
【夕華】「うん・・・透、私の所属してるボランティアサークルの活動内容は理解してくれてるかしら?」
【透】「『めんへる会』の?そりゃあ、ウチの大学の看板サークルの事だし、一応は」
【夕華】「そう。なら手間が省けるわ」
『めんへる会』。正式名称は、Menter's Help Mediation Circle。
生活アドバイザー斡旋会とでも言ったところか。
法慶大学に数多あるサークルの中でも、生徒会的立場にある代表的存在だ。
ガチガチの校則に縛られていた義務教育課程の頃と違って、各人が自由な環境で「選択」の機会を得、
自己責任において決断を下していく事が当たり前な大学生活では、進路選択や友人関係などで
様々な悩みやトラブルを抱える場面が少なくない。
特にこの時期ともなると、授業の履修からサークル選び、奨学金申請や一人暮らしのノウハウにいたるまで、
新入生を中心として多くの「どうしていいのか分からず困ってしまった大学生」が生まれることになる。
通常は、大学側が教務課や医務課に専門の相談センターなどを設け、そうした相談者の対応にあたるものだが、
そこは自主性を重んじる我が大学のこと。学生に関するトラブル解決は全て学生でこなしてしまおう、
ということで立ち上げられた互助組織が、『めんへる会』だ。
『めんへる会』の活動は、主に次の2点に集約される。
1つは、メンター制度の運営。
メンター制度とは、「メンター」と呼ばれる上級生の生活アドバイザーと、下級生の相談希望者「プロテジェ」の間で
結ばれる無償のアドバイザリー契約のことだ。契約は基本的に1期単位で更新され、プロテジェは大学生活のあらゆることに
対するサポートやアドバイスを担当のメンターに求める事が出来る。
それもただ相談に乗るわけではなく、お悩み相談の内容にあわせて専門知識を持ったメンターを『めんへる会』が選抜、斡旋
してくれるというのだから、相談者にとっては至れり尽くせりだ。
もちろん、メンターとプロテジェとの間で揉め事が起きる場合もあるが、その場合の調停も全て会が行なってくれるらしい。
ちなみにこの制度、学年を問わず利用することが出来る。前期にメンターの紹介を求めてくるプロテジェの大半は新入生だが、
就活時期と重なる後期には、3年生が4年生にアドバイスを求めるというような風景もみられるようになる。
このように、メンターボランティアの登録や選抜、紹介、アフターフォローといった一連の生活サポートを一手に担うのが、
夕華たち『めんへる会』運営部の仕事なのである。
そしてもう1点が、学内の様々なイベントに関する運営補佐の仕事。
常に多くのボランティアを抱え、学生間のトラブル調停にも乗り出すといったサークル活動の性格上、
いつの頃からか『めんへる会』は法慶大学のまとめ役としてのお墨付きを与えられ、大学祭や体育祭といった
各種イベントまでも仕切るようになった。
実際、声をかければすぐ人材が集まるような状況なので、会とは別に実行委員会などを設けるよりは、
生徒にとっても大学にとっても合理的なのだろう。
だが、そのために『めんへる会』の主要メンバーは自然とリーダーシップやコミュニケーション力に優れた
傑物が集まるようになり、今では『めんへる会』運営部に所属することは一種のステータスとなっている。
夕華もまたその一人で、贔屓目に見ても美人でしっかり者、面倒見も良い彼女は、優しくも厳しい「お姉さま」として
男女問わず学内でトップクラスの人気を誇っているそうだ。
異性の幼馴染としては何とも嬉しく、むずがゆい話である。
【夕華】「でね、今年もなんとかメンターとプロテジェの振り分けを終えて、一息つこうとしていたところなんだけど・・・」
【透】「ふむ」
<立ち画:右側・夕華(困り顔)>
【夕華】「どうしても1人、最後まで適当なメンターを紹介してあげられない新入生が残っちゃって」
【透】「え、でもメンター希望者って結構いるんだろ?例年、メンターのほうが多くて人数余るって聞いてたけど」
そうなのだ。世の中にはお人好しというか物好きというか、支えたり支えられたりという人付き合いの好きな奴が結構多い。
ましてやウチの大学はミッション系ということもあって、隣人愛とやらに溢れた若者が少なくなく、結果、毎年のように
メンターだけが溢れている状況が続いていた。
加えて、2年前に2年生という若さで就任した会長がかなりのやり手らしく、ここ数年の『めんへる会』の評判は鰻上りだ。
プロテジェに対する契約締結率は100%を保ち、中途解約率も0.01%以下を誇っているとか何とか。
まるでゴルゴ13のパーフェクトな仕事ぶりを見ているかのような、華々しい業績である。
【夕華】「普段ならそうなんだけどね。今回に限っては、ちょっと特殊なのよ」
【透】「特殊?とんでもなく素行の悪い問題児とか?」
【夕華】「ううん、そういうのじゃないの。本人は、礼儀正しくてすごく良さそうな子なのよ」
【透】「だったら、何が問題なんだ」
【夕華】「その子はね、フランスからの留学生なの」
【透】「留学生・・・?外人か。でも、外人への指導だって、そう珍しい話じゃないだろ?ウチの大学、留学生も多いし」
<立ち画:右側・夕華(シリアス)>
【夕華】「その子が、フランス語しか話せないとしても?」
【透】「えっ、日本語ダメなの?」
【夕華】「ええ。その子はつい1週間ほど前に親の仕事の都合で日本に来たばかりで、日本語もままならない。
しかも、こっちの生活習慣についての知識はゼロ」
【透】「そりゃまた随分急な事で。よく大学側も受け入れたな?」
【夕華】「私も詳しい話は知らないんだけど。何でも彼女の家族がウチの大学の創始者の血縁らしくて。
断りきれなかったみたいなのよね。それに、大学側にも、これから本格的に国際化を進めるにあたっての
試金石として受け入れてみたいっていう意図があったみたい」
【透】「彼女?あ、女の子なんだ」
【夕華】「そうよ。・・・言っとくけど、変な事したらタダじゃ置かないからね」
【透】「はい、重々承知してます・・・」
下心が芽生える間もなく、真っ先に釘を刺されてしまった。
こういうときの夕華は恐い。従順な態度を見せておいたほうがよさそうだ。
<立ち画:右側・夕華(通常)>
【夕華】「と、いうわけで、あなたにはそのフランスからの留学生のメンターや、日常生活での通訳を頼みたいのよ」
【透】「頼みごとってのは、そういう話だったか・・・」
その女の子への下心はともかく、どうやら俺が先刻まで夕華に抱いていたピンク色の妄想劇もまた、
お目見えすることがないようだ。ちぇっ。
【夕華】「本当は、私達だけで何とかすべき事柄なんだけど、『めんへる会』のメンバーやメンバー登録者に
フランス語を理解できる人なんていなくって。そりゃみんな第二外国語で履修して片言くらいは話せるけど、
他人にカリキュラムの仕組みとか授業内容とか教えられるほど勉強したわけじゃないし」
【透】「まあ、そうだろうなあ」
それは俺自身、身を持って感じた事があるからよく分かる。
日本語の精通者を自負していたエコル・プリメール(小学校)の語学講師でさえ、留学当初フランス語を一切解せなかった俺に
フランスの学校制度や授業の詳細を日本語で伝えるのには、相当難儀していた。
異国語で特殊なシステムや専門科目のことを語るというのは、1年、2年間座学で勉強した程度の人間にこなせる作業ではない。
【夕華】「それでね、透ならフランス語ぺらぺらだし、海外経験も長いじゃない。下手に私達がメンターに付くより、
あなたに頼んだ方が確実かなって」
【透】「なるほど」
【夕華】「でもね、これを頼むと、あなたの日常生活もかなり制限されちゃうと思うのよ。
特に今回みたいに留学生を担当する人の場合、異文化理解の促進っていうか、日常生活のサポートにも
踏み込んでいかなきゃならないことが多いし。だからこそ、私達の運営する『めんへる会』が、
それに耐えられるようなメンターを選抜して、斡旋してるわけだしね」
ああ・・・だからさっき電話をしたとき、話を切り出すの躊躇ってたのかこいつは。
そんなの気にしなきゃいいのに。
【透】「俺は別にいいぜ?」
<立ち画:右側・夕華(驚き)>
【夕華】「え、即答!?」
【透】「何驚いてんだよ」
【夕華】「いや・・・こんなあっさり受けてくれるなんて思わなくて」
まったく、妙なところで気を回す奴だ。
俺達の関係は、その程度の頼みごとで迷惑になっただの重荷をかけただのという話になるような、
昨日今日の浅いものではない。
【夕華】「でも、メンターの仕事ってみんなが考えるより結構大変なのよ。組む相手にもよるけど、会長の就任する前までは
年度途中でしんどくなって辞退しちゃう人も少なくなかったみたいだし。
・・・それにさ、透。あなたに必要以上にフランスでの事をあれこれ思い出させちゃうのも、良くないなって思って」
・・・こいつ、そんなことまで気にしてたのか。確かに父さんや母さんのこともあるし、いい思い出ばかりではない。
けれど、今更そんなことで気分が沈むようなことは絶対にない。
だって、俺はもう何年も前にその事実を受け止めて、乗り越えることが出来てるんだから。
【透】「くくく・・・」
【夕華】「な、何よ?」
【透】「はっはっは!夕華、お前ば~っかじゃねえの?」
【夕華】「ハルパゴス!?」
【透】「おい夕華、さっき俺は言っただろ。俺はお前に感謝してるって。返しきれないほどの恩があるってさ。
俺がお前に感じてる恩は、そんな薄っぺらいもんじゃねえんだよ」
【夕華】「と、透・・・」
【透】「だから、お前はそんなこと気にせず、いつもの調子で俺に言ってくれればいいの。
『あんたのためにもなるから、やってみなさいよ』ってな。俺は、お前の頼みを断るなんてしないから」
<立ち画:右側・夕華(恥じらい)>
【夕華】「こういうときばっかり男っぽいんだから、バカ・・・」
【透】「でもまあ、気遣ってくれてありがとう。嬉しかったよ」
【夕華】「透・・・」
【透】「こんな事でもないと、お前に恩返しできる機会なんてそうそうないからな。その話、無条件に受けるよ」
【夕華】「・・・ありがとう。それじゃ、お願いするわ」
【透】「よし、じゃあ夕華の審査には合格だな!で、俺はどんな子を担当すりゃいいの?
まあ俺も落第寸前だから、大した指導できないと思うけど」
<立ち画:右側・夕華(通常)>
【夕華】「え、ああ、そうね。いつまでも玄関先で待たせたら悪かったわ。実は今日ね、その子を連れてきてるの」
【透】「何っ!いきなりか!」
【夕華】「ええ、こればっかりは当人同士の相性もあるし、まず直接会ってみるのが一番だからね。
それに、前期の履修登録の期限ももうすぐだし。カリキュラムの説明だけでも、早いとこ理解させないと」
【透】「まあ確かにな。急ぎの理由は、それだったか」
【夕華】「うん。そこにいるから、今連れて来るわ」
そう言うと、夕華は扉の向こうで、陰に隠れているであろう新入生にちょいちょいと手招きをした。
【夕華】「じゃ、紹介するわね」
【透】「ゴクリ・・・」
【夕華】「さ、シュゼットちゃん。こっちに来て。紹介するわ。彼があなたのメンター候補よ」
名前を呼ばれて、夕華の影から、ぴょこん、と小さな影が飛び出した。
<背景:シュゼ1枚画>
そこにいたのは、長い銀髪をなびかせた、透きとおるような白い肌の女の子。
フランス人形がそのまま大きくなったような、小柄で華奢な可愛い女の子だった。
いや、可愛いというより・・・こりゃ・・・すげえ美少女だ。
【透】「この子が・・・俺の、プロテジェ・・・」
【夕華】「そう、この子があなたに通訳とメンターを頼む新入生。シュゼット・ノワリエルさん」
<背景:透の部屋>
<立ち画:左側・シュゼ(恥じらい)、右側・夕華(通常)>
【シュゼ】「(こんにちは)」
【透】「(こ、こんにちは。俺、明石透です。)」
<立ち画:左側・シュゼ(通常)>
【シュゼ】「(トオル・・・?あなたが、私のメンターになってくれる先輩ですか?私、シュゼット・ノワリエルといいます。
よろしくお願いします)」
【透】「(あ、ああ。よろしく・・・)」
【シュゼ】「(トオル・・・あの人と、同じ名前・・・)」
何と言うか、触れれば壊れてしまいそうなその雰囲気に、俺は圧倒されっぱなしだった。
初対面の緊張だけではない。彼女の美貌や、全身から出ているオーラのようなものが、俺の口を瞑らせた。
それに、何だ・・・この感覚?
妙にほっとするというか、懐かしいというか。
この娘・・・以前・・・どこかで・・・?
<立ち画:右側・夕華(ジト目)>
【夕華】「ちょっと透、なにジロジロ見てんのよ。このスケベ」
【透】「いや、何か・・・どこかで、会ったような・・・」
【夕華】「何それ。まさか運命とか言い出すんじゃないでしょうね?あんた、会って早々ナンパでもするつもりなの?
鼻の下伸ばしちゃって。シュゼちゃんも怯えてるじゃない」
【透】「シュゼ?」
<立ち画:夕華(通常)>
【夕華】「そう。シュゼットだからシュゼちゃん。フルネームじゃ、フランス慣れしてるあんたはともかく
私達には呼びにくいでしょ?」
【透】「シュゼット・・・フランス・・・・銀髪の、シュゼ・・・」
<背景:暗闇/立ち画:なし>
【????】「約束だよ。またあの場所で虹を見るって」
【透】「うん。約束するよ。」
【????】「約束だよ・・・」
今朝見た夢の最後の一幕が、フラッシュバックのように思い出される。
<背景:透の部屋>
【透】「あっ、あっ、あ~~~~~~~~~~~~っ!!!」
<立ち画:左側・シュゼ(驚き)、右側・夕華(驚き)>
【シュゼ】「!!?」
【夕華】「なっ、何よいきなり!?」
素っ頓狂な声を上げた俺に、夕華も、シュゼットと呼ばれた女の子も目を丸くして身体を硬直させた。
だが、天啓とも呼べるタイミングで肝心なことを思い出した俺は、そんなことも構わずシュゼットのほうに近寄って肩を掴む。
【夕華】「ちょっと!いきなり変な声出さないでよ!ってこら、何勝手に触ってんの!セクハラで訴えるわよ!」
【透】「(お前・・・まさか、シュゼットなのか?あの時の、シュゼなのか!?)」
【シュゼ】「(え・・・あなた・・・トオル・・・?)」
【夕華】「え?え?」
間違いない!この娘、あの時の女の子だ!
確信を得た俺に呼応するように、シュゼットもつぶらな目を大きく見開き、ひとつの答えを紡ぎ出したようだ。
エメラルドのような淡いグリーンの煌きを放つその瞳の奥には、驚きと、ほんのちょっとの戸惑いと、
そしてずっと失っていた宝物を見つけたかのような喜びがみてとれた。
【透】「(シュゼ!俺だよ!ほら、モンマルトルで一緒に虹を見た、あのトオルだ!)」
【シュゼ】「(まさか、本当にトオルちゃんなの!?私とあの街の丘を登った、あのトオルちゃんなの!?)」
【透】「(ああ、そのトオルだ!シュゼ、お前本人なんだな!?)」
【シュゼ】「(うそ、信じられない!こんなに早く、トオルちゃんに会えるなんて!しかも私の先輩だなんて!)」
【透】「(俺も信じられないよ!シュゼ!久しぶり!!)」
<立ち画:左側・シュゼ(笑顔)>
【シュゼ】「(わぁい!トオルちゃんだ!トオルちゃんが、帰ってきた!!)」
シュゼット・ノワリエル。そう、確かにモンマルトルの2年半を共に過ごしたあの女の子の名だ。
まさか、あの子に日本で会うことが出来るなんて!本当に、これは運命じゃないのか!?
シュゼは、あの頃と変わらない屈託のない笑顔で、俺にじゃれ付いてくる。
俺は、あの頃とすっかり変わってしまった力強い腕で、シュゼを思い切り抱きしめる。
【シュゼ】「(トオルちゃん!トオルちゃん!わぁ~いっ!!)」
【透】「(シュゼ~~~~っっ!!)」
【夕華】「ちょ、ちょっと、状況が全くつかめないんですけど?私一人置いてけぼりにしないで~!!」
はるか昔、あの虹とともに止まっていたはずの俺達の時間は、今この瞬間から、再び動き出した・・・。
<タイトル/OP:『きゃっち☆The Rainbow!!』>
2009-08-14T15:06:07+09:00
1250229967
-
きゃっち・ざ・Rainbow!!(原案)
https://w.atwiki.jp/daiseieroge/pages/13.html
289 名前: ◆50qY7IFXzQ [] 投稿日:2009/08/13(木) 00:34:23 ID:IAQrvjCI0
えー、途中ですが納期が来たのでアップしました
パスはdainama
ttp://ux.getuploader.com/daiseieroge/download/1/%E7%84%A1%E9%A1%8C.txt
324 : ◆50qY7IFXzQ :2009/08/13(木) 15:42:42 ID:IAQrvjCI0
未完部分差し替えました(pass:dainama)
ttp://ux.getuploader.com/daiseieroge/download/4/Prologue+0.1.txt
*******************************************************************
●プロローグ
<背景:暗闇>
僕らは、昼なお暗い森の中にいた。
【透】「ハァ・・・」
【????】「トオルちゃん、もうすぐだからちゃんと歩いてよ~」
郊外にある丘へと続く、森の中の小さな遊歩道。
普段は犬の散歩に使われるような何の変哲もないハイキングコースだが、雨上がりの後で
道はべしょべしょになっており、僕にはそれだけで次の一歩を進めるのが躊躇われた。
【透】「なあ、もう帰ろうよ・・・もうすぐ日が暮れちゃうよ」
【????】「じゃあ迷わないようにちゃんと手を掴んで!ほらほら!」
【透】「どこまで行くんだよ・・・僕、今日は遊んでいたくないんだ」
【????】「昨日もそんなこと言ってたよ。一昨日も、その前も。トオルちゃんの言うこと聞いてたら
いつまでたってもお出かけできないもん。さあ、歩こ!」
腕をグイグイと引っ張られ、僕は丘の頂上へと続く小路を無理やり登らされる。
【????】「トオルちゃん、重いよぉ。私、腕が抜けちゃう~」
【透】「僕、もう外で遊んだりしたくないんだよ。僕だけ笑ったり、喜んだり、していたくないんだ。
母さんが居なくなった、こんな世界で・・・・」
【????】「ひゃあ、雨で道の途中に池が出来てる~!トオルちゃん、ちゃんと歩かないと転んで
どろんこになっちゃうからね!」
僕の手を掴んで離さないその女の子は、僕の不平には一切耳を貸さず、ただ歩みを進めさせようとする。
かれこれ数十分もそんなことを続けた頃だろうか、女の子は正規のルートから少し脇にそれて、
獣道のような隘路の先にある藪を掻き分けだした。
【透】「え・・・?そこ、入るの・・・?」
【????】「わ~ん、しばらく来なかったら藪が茂っちゃってる~」
【透】「こんなとこ入ってどうするんだよ・・・道がないじゃんか・・・・」
【????】「あっ、あっ!毛虫!やーん、服に入った!トオルちゃん、とってぇ!!」
【透】「ハァ・・・取れたよ。なあ、もういいだろ・・・早く帰ろうよ」
【????】「あ、ありがとぉ~。んしょ・・・んしょ・・・さぁ、着いたよっ!」
<背景:暗闇(中央に光)>
それまで僕らを覆っていた薄暗い闇が、すっと開ける。
次の瞬間、目の前に一面の草原が広がり、僕らは市街地を一望する小高い丘の上に立っていた。
<背景:丘から見下ろした街並み(ぼかし)>
【透】「・・・・・わぁ!!」
眼下に広がる、ミニチュアのような街並みと、そこから郊外へと伸びる雑木林。
さっきまで僕らがいたところだ。
その真上に、七色の虹がはっきりと輝いている。
だが、それは通常の虹ではなかった。
煌めくアーチの向こうにもう一つ別のアーチが重なり、さらにその奥にもぼんやりと次のアーチが見える。
虹が幾重にも連なって、まるで街全体を虹のアーケードが包んでいるかのようだった。
ずっと奥のほう、北の空にはまだ暗い雷雲が轟いていたけれど、街の上の雲は既に薄らぎはじめていて、
所々から漏れた陽の光が、虹の輝きをより鮮やかに際立たせていた。
街の中心でお城のように佇んでいる市庁舎。街を割って流れる運河の水面。高くそびえ立つ教会の鐘楼。
僕らの住む住宅街や、いつも通っている学校、毎日みんなと遊んでいる公園も見えた。
僕の母さんが入院していた、病院も・・・。
それらの全てが虹色に煌めき、次の瞬間には暗がりとなり、やがて陽の光を浴びて
いつもの明るさを取り戻してゆく。
光と闇が、喜びと悲しみが、希望と絶望が等しく溢れているこの世界を、そのまま一枚の絵に
表したかのようなとても幻想的な風景。
僕はその圧倒的な存在感に、さっきまでの沈んだ気持ちも忘れ、たまらず叫びだしていた。
【透】「すごい!すごいよ!こんなの見たこと無い!」
【????】「えへへ・・・よかった。トオルちゃんが気に入ってくれて。無理やりでも連れてきてよかったぁ」
【透】「ありがとう!本当にすごいよ!とっても綺麗だ!」
【????】「ここね、私の一番お気に入りの場所なんだ」
【????】「雨が上がったすぐ後にね、ここからだけいつも虹が見えるの」
【透】「そうなんだ・・・。こんな場所があるなんて知らなかった」
【????】「トオルちゃんと私だけの秘密だからね!誰にも言っちゃダメだよ!」
【透】「ああ!」
それから僕らは、まだ湿り気の残る草原に腰を落として、虹がゆらめいて消えてゆく様をずっと眺めていた。
互いの手は、ずっと繋がったままで。
けれど、さっきまでのように渋々ではなくて、しっかりと彼女の温もりを感じられる強さで。
その温もりは、僕の壊れかけた心を、優しく包み込んでくれた。
<背景:暗闇>
僕の母は、つい2か月ほど前に死んだ。
僕を生んで8年、常に体調の優れなかった母は、医師をしている父の勧めに従い、治療環境の整った
この街へ僕ら家族と共にやってきた。
父や病院関係者の弛まぬ努力によって、母はそれから2年あまりの間、比較的小康状態を保っていた。
調子の良い時には一時帰宅を許され、少し悪化するとしばらく入院生活の繰り返し。
落ち着かない日々ではあったが、僕らは幸せだった。
共に過ごせるこの時間が、少しでも長く続けばいいと思っていた。
少なくとも、僕は終わりが来るなんて考えもしなかった。
だが、2か月前のあの日。
一時帰宅していた母は夜中に突然激しい発作を起こし、そのまま病院へと運ばれ、日が明けるのを待たず
あっさりと逝ってしまった。
治療の難しい難病だった、と後に聞かされたけれど、僕には何の病気だったのかよく分からないし、
聞いたところで何が変わるわけでもなかった。
僕にとっての事実は、お母さんがいなくなってしまったという、ただその一点のみだ。
大人たちは口々に「かわいそうに」「頑張ったね」と慰めの言葉をくれたが、そんなものは
何の気休めにもならない。
「母さんを、返して!」
大人たちに話しかけられる度に何度もそう叫びかけたが、それを言ってしまえば母の死を認めたも同然になる。
嫌だ。嫌だ。こんなのでお終いだなんて、絶対に嫌だ。
誰に話しかけられても口をつぐみ、ただこの辛い時間が過ぎ去ることだけを望んだ。
やがて、言葉を飲み込むのも億劫になり、次第に誰とも顔を合わせようとしなくなった。
それまで仲良くしていた友だちにも、そっけない態度で接するようになり、みんなも気分を害したのか、
程なくして一人二人と離れていった。
愛する妻を突然失って気落ちしていた父も、気丈に僕の事を励まそうとしたが、僕にはそれすら面倒に感じられた。
そして一月が過ぎ、二月が過ぎ、自分の部屋に篭って一日臥せるだけしかしなくなった僕に
話しかけてくる者は、誰もいなくなった。
息子の心の平穏だけでも守ろうと懸命に努力を続ける父と、いま僕の隣に座っている、この女の子を除いて。
彼女は、この街で最初に仲良しになった、一番の友だちだった。
そして、彼女もまた、幼くして父親を失っていた。
だからこそ、僕は彼女だけは邪険に扱えなかった。どれほど世界に絶望して、人との関わりを絶とうとしても、
同じ境遇にあってなお気丈に生きる彼女にだけは、わがままを通しきれなかった。
母の死後、彼女は2日に1度は僕の部屋を訪れ、他愛もない話を一方的に語っては帰るようになった。
僕もそれに抗えず、一言、二言と彼女と会話を続けるようになり、ここまで話が出来るくらいに盛り返したのだった。
最も、僕の話す事といえば、大事な人の欠けたこの世界に対する怨嗟と泣き言ばかりだったけれども。
それでも、彼女は諦めなかった。
そして、今日。
僕の心を映したかのように数日降り続いていた雨が止んだ夕方、僕の部屋を尋ねてきた彼女は
突然力づくで僕を外に押し出し、ここまで連行してきたのだった。
<背景:丘から見下ろした街並み(ぼかし)>
【????】「ねえ、トオルちゃん。虹の端っことてっぺんてどこに繋がってるのか知ってる?」
【透】「え?端っこと端っこじゃなくって?」
【????】「うん。端っことてっぺん」
【透】「う~ん、てっぺんかあ。ここから見てると、端っこから登っていけそうな高さだけど・・・」
【????】「前にお婆ちゃんから聞いたんだけどね、虹はお空の上の世界と繋がっているんだって」
【透】「お空の上?それって、天国ってこと?」
【????】「うん。それでね、お空の上に行っちゃった人たちがね、私たちのことを想って涙を流すと、
神様がかわいそうに思って、その涙を使ってちょっとの間だけお空と地面を繋げてくれるの」
【透】「天国の人たちの涙が、雨や虹になるの?」
【????】「そう。だからね、トオルちゃんのおばさんも、私のお父さんも、ずっと私たちのこと
見てくれてるんだよ。虹が出るときはね、私たちのお父さんやおばさんが、虹を伝って
私たちに会いに来てくれてるんだよ」
【透】「母さんが、僕に会いに・・・」
【????】「ただ会うだけじゃないよ。『トオル、元気を出して。負けないで』って、応援しに来てくれるんだよ」
【透】「でも僕には、母さんの声は聞こえないよ。僕も母さんと話がしたいよ」
【????】「うん。私にもお父さんの声は聞こえない。でもね、絶対来てくれてるの。私には分かるの」
【透】「どうして?どうしてそんなこと分かるんだよ!」
【????】「だって、私もトオルちゃんも、あの虹を見たときに、元気出たじゃない。
この世界が綺麗だなって、そんなに悪いものじゃないって、思えたじゃない」
【透】「あ・・・」
【????】「だからね、きっとお父さんたちが私たちの耳元で『強く生きて、幸せになりなさい』って
言ってくれてるんだよ。声は私たちに聞こえないけど、想いは私たちに伝わってるんだよ」
【透】「・・・」
【????】「だからね、トオルちゃん。泣いちゃダメ。私たちがいつまでも泣いてたら、おばさんたちが、
お空から励ましに来てくれた意味がなくなっちゃうもん。」
【透】「でも、でも僕は・・・」
【????】「大丈夫。私たちはひとりぼっちなんかじゃないんだよ。おばさんたちは、いつでも
お空の上から私たちのこと見守っててくれるし、私にはお母さん、トオルちゃんには
お父さんだっているんだから。私たちが悲しい時は、そばにいてくれるんだから。
トオルちゃんがそんなふうに落ち込んでたら、天国のおばさんもずっと悲しいままだよ」
【透】「・・・僕、母さんにひどい事してたのかな」
【????】「おばさんは、トオルちゃんのこと責めてなんかいないよ。だって、トオルちゃんのこと愛してるもん。
ただ、トオルちゃんの幸せを望んでいるだけ。今も、きっとそう」
【透】「・・・そうだよね。僕、母さんがいなくなってからずっとわがままを言ってたのかもしれない。
父さんだって、みんなだって、辛いなかで僕を気遣ってくれてたのに、僕は自分のことだけを
かわいそうに思って、その自分のこともどうでもいいやなんて思ってた。母さんは、『元気な透が大好きよ』
っていつも言ってくれてたのに。僕は、母さんが好きだった僕を自分で捨てちゃうところだったんだ」
そして、僕は涙を拭い、消えはじめた虹に向かって語りかけた。
【透】「僕、もう大丈夫だよ。母さんがいなくても、ちゃんと幸せになれる。強くなってみせるよ。
だから、僕の事、いつも空から見守っていてね。母さん」
このとき初めて、僕は母の死を正面から受け止めることが出来たのだと思う。
突然いなくなってしまった母さん。二度と会えなくなってしまった、僕の大好きな人。
その全てを納得する事も理解する事も出来なかったが、僕は最後まで僕を愛してくれた母さんのためにも、
強く生きていく覚悟を決めた。
そして、僕の決意を見届けて満足したかのように、合奏していた虹は空に散っていった。
それから僕らは、日が落ち、星と街の灯りが瞬きだす頃になってから、ようやく家路に着いた。
暗い小路を登ってきた時と変わらず、二人で手と手を取り合って。
<背景:暗闇>
【????】「ねえ、トオルちゃん」
【透】「ん?何?」
【????】「また雨が降ったら、二人であそこに行きたいな」
【透】「うん!また行こう!」
【????】「えへへ・・・あ、でもその時はちゃんと自分で歩いてってね?」
【透】「あ・・・ごめん。」
【????】「ううん、いいの。それより、約束だよ。またあの場所で虹を見るって」
【透】「うん。約束するよ。」
【????】「約束だよ・・・」
<10秒ほど停止>
<カレンダー表示:4月9日(木)>
【PC】「ニコニーコー動ー画ー」
【透】「・・・ん、あぁ・・・?」
<背景:透の部屋(ぼかし)>
スピーカーから、耳慣れた時報の音声が流れ、俺は目を覚ました。
だが、どうしたことだろう。体がまともに動かない。
このまま押し潰されてしまいそうなほどの圧迫感。一切働かない頭。
そしてなにより・・・
【透】「・・・あ~、首痛ぇ・・・」
<背景:透の部屋>
そこで俺は、自分が机の上に突っ伏しているのを自覚した。
どうやら昨日の夜、ニコ動で過去の名作アニメを見ながらそのまま眠りについてしまっていたらしい。
道理で寝てるのに疲れるはずだ。
目が醒えてくるにつれて、枕代わりにしていた腕の痺れを感じるようになり、しばらくして肩や腰の痛みも伝わってきた。
身体中の軋みが、ただでさえ気だるい起き抜けの時間をいっそう憂鬱なものにする。
なんとか頭を起こしてパソコンの脇にあった置き時計に目をやると、針はちょうど正午を指していた。
【透】「げっ、もうこんな時間かよ」
【透】「・・・・・まあいいか、今日は講義があるわけじゃないし。とりあえず飯でも食おう」
のそのそと動き出し、買い置きしていたカップラーメンに注ぐためのお湯を沸かす。
昼夜反転して食事もインスタントで済ますなんて、自堕落な生活だ。
最も、一人暮らしの学生生活なら皆こんなものかも知れないが。
俺の名は明石透(あかし・とおる)。都内の私立大学に通う大学生だ。
とはいっても、ほとんど講義には出ていないし、ゼミにもサークルにも所属していない。
大学に親しい友達もいなければ、もちろん彼女なんていやしない。
趣味はパソコン、2ch、深夜アニメ。勉強も中の下くらいにしか出来ない。
いわゆるヒキオタ、非リアの典型だ。
<背景:大学キャンパス(ぼかし)>
だがこんな俺も、入学当初はもう少しやる気に溢れていた。
というのも、俺の通う私立「法慶大学」はキャンパスのオシャレさと自由度の高い校風をウリとする、
都内でも有数の超人気大学なのだ。現役の芸能人やスポーツ選手も多く通い、毎年キー局のアナウンサーも
幾人か輩出している。財界には出身者が多く、合コン相手の人気ランキングでは確実に3本の指に入るような有名校。
高校は男子校で、青春真っ盛りの頃に一切女っ気がなかった俺にしてみれば、
こんな環境で華々しい大学生活を送れることに期待しないわけはなかった。
しかし、その夢は入学数ヶ月にしてもろくも崩れ去った。
一言で言えば、大学デビュー失敗である。俺は、最初に入るべきサークルの選択を思いっきり誤ってしまったのだった。
まあ詳しい話はおいおいするとして、俺は宗教団体主催のサークルにまんまと騙されてしまい、何のご利益があるのかわからない
黄金のエル・○ンターレ像と引き換えに、大学デビューの機会と人付き合いに対する積極性、それに数十万円を失ってしまった。
それ以来、俺は大学生活に過剰な期待をしなくなり、せっかく入った有名大学のブランドも環境も生かせず終いである。
・・・え?そもそも、何で勉強も出来ない非リアがそんな有名校に入れたのかって?
それは俺のたったひとつの特技、フランス語を利用したAO入試が用意されていたからだ。
芸は身を助く、というやつである。
【透】「フランスか・・・そういえば今朝、久しぶりにあの頃の夢を見たな・・・」
俺は、小学校3年生からコレージュ(中学)を卒業するまでの約6年間をフランスで過ごした。
俺の唯一にして最大の特技は、その時習得したものである。
フランス滞留の間、俺たち家族はいくつかの都市を転々とした。
その多くはあまりいい思い出のあるものではなかったが、母さんの亡くなったあの街の事だけは、今も時々思い出す。
今朝見たあの夢。
俺が、生きる勇気をもらった、大切な時間。
【透】「あの女の子、元気かな・・・」
だが、小学生とはいえまだ幼かった時の話であり、忘れ難い思い出ではあるものの、あの時は俺も気が動転していた。
そう短くもない時間を共に過ごした筈なのに、あの女の子については、もう顔はおろか名前もよく思い出せない。
結局、俺はあの女の子との約束を果たすことなく、離れ離れとなってしまったのだった。
そう、ちょうど今朝見た夢の直後、父さんは別の街の大学病院で勤務することになり、俺達はあの街を離れたのだ。
父さんにしてみれば、愛する妻との思い出に溢れ、医師としての自らの無力さを嫌というほど感じさせられたあの街では、
男手ひとつで俺と新しい生活を送るにあたって、色々と耐え難いものがあったのだろう。
あの虹を見て俺が立ち直ったのを見届けるとすぐ、父さんは取るものも取りあえず引越しの準備を進め、
次の週には別の街で新生活をはじめようとしていた。
俺もまた、俺のことを第一に考え、励まし続けてくれた父さんをこれ以上困らせるような事はしたくなかったし、
特に異存も無かったので着いていくことを承諾した。
俺を勇気付けてくれたあの女の子に「さよなら」と言えない事だけが心残りだったが、それも詮無いことだ。
その後、俺達の辿った軌跡は消して平坦なものではなかった。
父さんは母さんを救えなかった心残りからか、寝食も忘れてそれまで以上に研究に没頭し、
俺のコレージュ卒業と同時にこの世を去った。
俺はといえば、母さんの代わりに家事全般をこなすようになり、コレージュ卒業後は身寄りのなくなった
異国での生活を諦め、帰国して一人暮らしをしながら、今、こうして大学生になっている。
それでも、自分の置かれた境遇そのものを不幸に思って、周りに当り散らすような腐った真似だけはしてこなかった。
我ながら、少しは強くなったものだと思う。
ただし、あの日母さんに誓った2つの約束のもう一方は、情けないことに全く果たせていない。
<背景:徹の部屋>
【透】「『強くなること』と『幸せになること』か・・・」
友人も彼女もおらず、昼間からパソコンのモニターの前でラーメンをすすっているようじゃ、
お世辞にも「幸せ」とは言えないだろう。
【透】「どうしてこんな風になっちゃったかな・・・」
ひとりごちたところで、慰めてくれるような相手はいない。
だが、俺自身も大して気にしているわけではない。
【透】「ま、考えてもなるようにしかならねーか。さて、今日は何をしよう」
どうせ一日中パソコンを見るか、せいぜい飯を買いにコンビニへ出かけるくらいしかしないのだけれども。
特に当てもなくだらだらとしていると、どこからかヴーヴーという振動音が聞こえてきた。
【透】「あれ・・・?携帯鳴ってる?」
家族もいなければ友人もほとんどいない俺の携帯が鳴るのは、何か月ぶりのことだろう。
それも、メールじゃなくて電話なんて。
ワン切りでもなさそうだし、一体誰が・・・?
不思議に思って携帯の画面を覗き込むと、そこに表示されていたのはある女の子の名前だった。
「赤嶺夕華(あかみね・ゆうか)」
【透】「夕華・・・?あいつが、わざわざ電話寄越してくるなんて珍しいな・・・。何だろ?」
赤嶺夕華。俺の幼馴染にして、俺と同じ法慶大学の同級生。
ついでに言えば、俺のアドレス帳に登録がある唯一の異性にして、日常的に親友だ。
彼女との関係は、単なる幼馴染というよりはもう少しだけドラマチックだ。
以前、家が隣同士だった俺たちは、フランス留学のはるか前、幼稚園の頃から家族ぐるみでお付き合いをさせてもらっていた。
だが、母さんの治療のために我が家がドタバタとフランス移住を決めた事もあって、これまたまともに別れを告げる事も出来ず、
小学校3年生を最後に彼女とは一切の交流を絶ってしまった。
留学中と帰国後の数年間はお互いどこに行ったのか分からないままの状態が続いていたが、大学の入学式で俺と夕華は
運命的な再会を果たし、また昔のようにとてもいい関係を築くまでになった。
ともすれば恋愛感情の一つも芽生えそうなものだが、実際には男女関係に発展する事はなく、気さくに付き合える
親しい間柄として、これまでごくフツーの友人関係を保っている。
ま、昔から知りすぎているのもあって、お互いそういう対象として意識できてないってことなんだろう。
人生には、こういう異性関係があっても悪くはない。
しかし、そんな関係であっても俺に直接電話してくるのはそうあることではなかった。
現在俺が住んでいるのは、かつて自宅があった場所から5分ほど離れた距離にある、ちっぽけなアパート。
つまり、夕華の家からも殆ど距離の無い、ご近所である。
それ故、何か用事があればメールで済ますか、そうでない急ぎの事なら直接うちまで来てしまうのが通常であった。
それがわざわざ電話とは・・・?何か言いにくいことでもあるのだろうか。
夕華の思惑を訝しがりつつも、俺は電話を受けた。
【透】「おーす」
【夕華】「あ、よかった。起きてたのね」
【透】「どうしたんだ、いきなり電話なんて」
【夕華】「ん、ちょっとね。それより、春休みの間はちゃんと生活してたの?」
【透】「うん、まあボチボチ。特に出かける予定も無かったし、メシだってラーメンとかカレー買い置きしてあったし」
【夕華】「え、まさかずっとインスタントで過ごしてたわけ?何やってんのよアンタ!料理できないわけでもないんでしょ?
食生活くらい、ちゃんとしなさい!」
【透】「いやぁ、そっちのほうが身体にもいいのは分かってるんだけどさ・・・」
【夕華】「分かってない!もう、そんな風なら休み中に様子見に行っとくんだったわ」
【透】「だってわざわざ通い妻させるのも悪いしさ・・・それにラーメン、美味しいし」
【夕華】「私がいいって言ってんだからいいの!とにかく、インスタントで済ませるぐらいなら私に連絡しなさいよ!
いつでもご飯持ってってあげるから」
【透】「はぁーい、とぅいまとぇーん。ドゥクドゥーン」
【夕華】「・・・こ、この野郎・・・」
電話の向こうでピキピキと青筋を立てる夕華の姿が目に浮かぶ。
だがこんなバカな掛け合いも、俺達の大事なコミュニケーションの一環だ。
それよりも、いつもはもっとはあけすけなのに、今日に限ってもったいぶっている夕華の態度が気になった。
【透】「で、本題は?」
【夕華】「あ、えーとね。ちょっと透にお願い事があったんだけど・・・。でも、いきなりだしなぁ」
【透】「何だよ、もったいぶって。話さなきゃ俺に迷惑かどうかも分かんないじゃん」
【夕華】「うーん、でも、なぁ・・・。透の負担にもなることだし」
【透】「いや、お前には普段から色々助けてもらってるしさ。俺で力になれることがあるなら、何だって喜んでやるよ」
【夕華】「な、いきなり何言っちゃってんのよ。・・・照れるじゃない」
お、口下手な俺にしてはちょっといいこと言ったかもしれん。
反応から推し量る限り、夕華も感謝されてまんざらではない様子だ。
こいつ、こういう風にデレてれば可愛いところあるんだよな。
そんなことを考えながら、俺は調子に乗って少し甘い言葉を囁いてみる。
【透】「いや、本当だって。お前には心から感謝してるんだぜ。俺、こんなヘタレだし、お前がいなかったら3年まで
進級できたかどうかもわからない。入学当初のサークルの件だって、お前すげー親身になって励ましてくれたじゃん。
お前がいたから何とか大学生を続けて来れたんだよ。その恩はちょっとやそっとで返せるもんじゃない。
なあ、俺で助けられることがあるなら何でも言ってくれ。夕華の力になりたいんだよ」
我ながら臭いセリフだとは思ったが、夕華に恩返ししたいという気持ちは嘘じゃない。
この2年間ですっかりコミュニケーション不全に陥ってしまった俺だが、そんな俺でも見捨てずに助けてくれる人たちへの
恩まで忘れてしまうほど愚図になったつもりもなかった。
特に夕華は、誰に頼まれるでもなく俺の世話を買って出てくれ、ときたま一人暮らしで自堕落な生活を満喫している俺の部屋に
訪れては、掃除をしたり料理を作ってくれたりする。大学生活でも、不登校気味な俺に発破をかけて、進級に必要な
最低限の履修計画を組んでくれたり、俺の分の講義ノートを持って出張補講にも来てくれたりもしている。
それでいて自分から恩を着せるような嫌らしい真似はしないし、俺に何かを強要する事もない。
俺が一念発起したときに生活や勉強をすぐ軌道に乗せられるようにと、あくまでサポートに徹してくれているのである。
そんな夕華に、俺は感謝しても仕切れないほどの恩義を感じていた。
こいつは、口は悪いけど、人情味に溢れたとてもいい奴なんだ。口は悪いけど。
【夕華】「っっ、バカ!ハズいこと言わないでよ!・・・そんなこと言われたら・・・私・・・」
おお、これがツンデレの真骨頂というやつか。
気の置けない幼馴染とはいえ、現実にやられると胸が甘酸っぱい気持ちで一杯になる。
くそ、俺としたことが夕華にときめいてしまうなんて。いや待てよ、この流れならときめいてるのは夕華のほうか?
ここで恥じらいながら「これから、透の部屋に行ってもいい?」なーんてセリフのひとつも出れば、
俺に惚れてるフラグが立っていようものなんだけど。
だがまあ、現実はそんなイージーでもないだろう。
【夕華】「あ、あのさ、これから透の部屋にお邪魔しても・・・いいかな?」
【透】「マ、マジでフラグキタァーーーーーー!!?フヒィッ!」
ああっ!いかんっ!!
興奮しすぎて声が上擦ってしまった。というか声に出てしまった。
落ち着け、俺。落ち着いて、素数を数えるんだ・・・1、3、5・・・7、11・・・よし。
これは、期待していると考えていいんだよな?俺も期待していいんだよな?それ以外解釈できないよな?
特に意識している相手ではないはずなのに、男としての本能がムラムラと起き上がってくる。
よし、ここは一気に甘い言葉で畳みかけを・・・
【夕華】「・・・ハァ?フラグ?あんた何言ってんの?ちょっとキモイんですけど」
あっ!俺としたことが何たる凡ミス!!時間切れ、いや選択肢ミスか!?
どっちにしても素数を数えている間に夕華さんのデレモードが一気に消えてしまった!!
・・・くそう、こうなったら少しでも好感度を回復すべく平謝りする以外方法はあるまい。
【透】「ご、ごめんなさい・・・」
【夕華】「・・・やっぱり透にお願いするのはやめようかな」
【透】「ホントすいません。自重します・・・」
【夕華】「しっかりしてよね。次暴走したらもう頼むの止めにするから」
【透】「ハイ・・・。で、一体、私めに何をなさるおつもりなのでしょうか」
【夕華】「それは、そっち着いてからその場で話すわ。あなたに頼んで本当にいいのかどうかも、その場の流れで私が決める」
あ、そうだ。部屋は綺麗に片付けといてよね?」
【透】「はあ・・・よく分からないけど承知しました」
【夕華】「それじゃ、また後で」
【透】「あ、ああ・・・」
何だか要領を得ない会話だった。
結局、あいつは俺に何を求めてるんだ?
ただ、ちょっと急いでるみたいだったし、それほど時間はなさそうだ。
とりあえず部屋の体裁だけでも繕っておくか。
シンクに詰まれた空の食器を片付けて、ゴミ袋も外に出して。
あ、あと万一の場合に備えてコンドームの準備も・・・フヒヒ。
邪な考えを胸に抱きながら、俺は部屋の掃除を始めることにした。
<背景:透の部屋/場面転換のエフェクト>
そして、2時間後。
夕華は、俺の家にやってきた。
<立ち画:右側・夕華(通常)>
【夕華】「久しぶり」
【透】「おー、よく来たな。まあ上がって一息つけよ」
【夕華】「あ、上がる前にちょっとだけいい?」
【透】「何だ、いきなり」
【夕華】「うん・・・透、私の所属してるボランティアサークルの活動内容は理解してくれてるかしら?」
【透】「『めんへる会』の?そりゃあ、ウチの大学の看板サークルの事だし、一応は」
【夕華】「そう。なら手間が省けるわ」
『めんへる会』。正式名称は、Menter's Help Mediation Circle。
生活アドバイザー斡旋会とでも言ったところか。
法慶大学に数多あるサークルの中でも、生徒会的立場にある代表的存在だ。
ガチガチの校則に縛られていた義務教育課程の頃と違って、各人が自由な環境で「選択」の機会を得、
自己責任において決断を下していく事が当たり前な大学生活では、進路選択や友人関係などで
様々な悩みやトラブルを抱える場面が少なくない。
特にこの時期ともなると、授業の履修からサークル選び、奨学金申請や一人暮らしのノウハウにいたるまで、
新入生を中心として多くの「どうしていいのか分からず困ってしまった大学生」が生まれることになる。
通常は、大学側が教務課や医務課に専門の相談センターなどを設け、そうした相談者の対応にあたるものだが、
そこは自主性を重んじる我が大学のこと。学生に関するトラブル解決は全て学生でこなしてしまおう、
ということで立ち上げられた互助組織が、『めんへる会』だ。
『めんへる会』の活動は、主に次の2点に集約される。
1つは、メンター制度の運営。
メンター制度とは、「メンター」と呼ばれる上級生の生活アドバイザーと、下級生の相談希望者「プロテジェ」の間で
結ばれる無償のアドバイザリー契約のことだ。契約は基本的に1期単位で更新され、プロテジェは大学生活のあらゆることに
対するサポートやアドバイスを担当のメンターに求める事が出来る。
それもただ相談に乗るわけではなく、お悩み相談の内容にあわせて専門知識を持ったメンターを『めんへる会』が選抜、斡旋
してくれるというのだから、相談者にとっては至れり尽くせりだ。
もちろん、メンターとプロテジェとの間で揉め事が起きる場合もあるが、その場合の調停も全て会が行なってくれるらしい。
ちなみにこの制度、学年を問わず利用することが出来る。前期にメンターの紹介を求めてくるプロテジェの大半は新入生だが、
就活時期と重なる後期には、3年生が4年生にアドバイスを求めるというような風景もみられるようになる。
このように、メンターボランティアの登録や選抜、紹介、アフターフォローといった一連の生活サポートを一手に担うのが、
夕華たち『めんへる会』運営部の仕事なのである。
そしてもう1点が、学内の様々なイベントに関する運営補佐の仕事。
常に多くのボランティアを抱え、学生間のトラブル調停にも乗り出すといったサークル活動の性格上、
いつの頃からか『めんへる会』は法慶大学のまとめ役としてのお墨付きを与えられ、大学祭や体育祭といった
各種イベントまでも仕切るようになった。
実際、声をかければすぐ人材が集まるような状況なので、会とは別に実行委員会などを設けるよりは、
生徒にとっても大学にとっても合理的なのだろう。
だが、そのために『めんへる会』の主要メンバーは自然とリーダーシップやコミュニケーション力に優れた
傑物が集まるようになり、今では『めんへる会』運営部に所属することは一種のステータスとなっている。
夕華もまたその一人で、贔屓目に見ても美人でしっかり者、面倒見も良い彼女は、優しくも厳しい「お姉さま」として
男女問わず学内でトップクラスの人気を誇っているそうだ。
異性の幼馴染としては何とも嬉しく、むずがゆい話である。
【夕華】「でね、今年もなんとかメンターとプロテジェの振り分けを終えて、一息つこうとしていたところなんだけど・・・」
【透】「ふむ」
<立ち画:右側・夕華(困り顔)>
【夕華】「どうしても1人、最後まで適当なメンターを紹介してあげられない新入生が残っちゃって」
【透】「え、でもメンター希望者って結構いるんだろ?例年、メンターのほうが多くて人数余るって聞いてたけど」
そうなのだ。世の中にはお人好しというか物好きというか、支えたり支えられたりという人付き合いの好きな奴が結構多い。
ましてやウチの大学はミッション系ということもあって、隣人愛とやらに溢れた若者が少なくなく、結果、毎年のように
メンターだけが溢れている状況が続いていた。
加えて、2年前に2年生という若さで就任した会長がかなりのやり手らしく、ここ数年の『めんへる会』の評判は鰻上りだ。
プロテジェに対する契約締結率は100%を保ち、中途解約率も0.01%以下を誇っているとか何とか。
まるでゴルゴ13のパーフェクトな仕事ぶりを見ているかのような、華々しい業績である。
【夕華】「普段ならそうなんだけどね。今回に限っては、ちょっと特殊なのよ」
【透】「特殊?とんでもなく素行の悪い問題児とか?」
【夕華】「ううん、そういうのじゃないの。本人は、礼儀正しくてすごく良さそうな子なのよ」
【透】「だったら、何が問題なんだ」
【夕華】「その子はね、フランスからの留学生なの」
【透】「留学生・・・?外人か。でも、外人への指導だって、そう珍しい話じゃないだろ?ウチの大学、留学生も多いし」
<立ち画:右側・夕華(シリアス)>
【夕華】「その子が、フランス語しか話せないとしても?」
【透】「えっ、日本語ダメなの?」
【夕華】「ええ。その子はつい1週間ほど前に親の仕事の都合で日本に来たばかりで、日本語もままならない。
しかも、こっちの生活習慣についての知識はゼロ」
【透】「そりゃまた随分急な事で。よく大学側も受け入れたな?」
【夕華】「私も詳しい話は知らないんだけど。何でも彼女の家族がウチの大学の創始者の血縁らしくて。
断りきれなかったみたいなのよね。それに、大学側にも、これから本格的に国際化を進めるにあたっての
試金石として、受け入れてみたいっていう意図があったみたい」
【透】「彼女?あ、女の子なんだ」
【夕華】「そうよ。・・・言っとくけど、変な事したらタダじゃ置かないからね」
【透】「はい、重々承知してます・・・」
下心が芽生える間もなく、真っ先に釘を刺されてしまった。
こういうときの夕華は恐い。従順な態度を見せておいたほうがよさそうだ。
<立ち画:右側・夕華(通常)>
【夕華】「と、いうわけで、あなたにはそのフランスからの留学生のメンターや、日常生活での通訳を頼みたいのよ」
【透】「頼みごとってのは、そういう話だったか・・・」
その女の子への下心はともかく、どうやら俺が先刻まで夕華に抱いていたピンク色の妄想劇もまた、
お目見えすることがないようだ。ちぇっ。
【夕華】「本当は、私達だけで何とかすべき事柄なんだけど、『めんへる会』のメンバーやメンバー登録者に
フランス語を理解できる人なんていなくって。そりゃみんな第二外国語で履修して片言くらいは話せるけど、
他人にカリキュラムの仕組みとか授業内容とか教えられるほど勉強したわけじゃないし」
【透】「まあ、そうだろうなあ」
それは俺自身、身を持って感じた事があるからよく分かる。
日本語の精通者を自負していたエコル・プリメール(小学校)の語学講師でさえ、留学当初フランス語を一切解せなかった俺に
フランスの学校制度や授業の詳細を日本語で伝えるのには、相当難儀していた。
異国語で特殊なシステムや専門科目のことを語るというのは、1年、2年間座学で勉強した程度の人間にこなせる作業ではない。
【夕華】「それでね、透ならフランス語ぺらぺらだし、海外経験も長いじゃない。下手に私達がメンターに付くより、
あなたに頼んだ方が確実かなって」
【透】「なるほど」
【夕華】「でもね、これを頼むと、あなたの日常生活もかなり制限されちゃうと思うのよ。
特に今回みたいに留学生を担当する人の場合、異文化理解の促進っていうか、日常生活のサポートにも
踏み込んでいかなきゃならないことが多いし。だからこそ、私達の運営する『めんへる会』が、
それに耐えられるようなメンターを選抜して、斡旋してるわけだしね」
ああ・・・だからさっき電話をしたとき、話を切り出すの躊躇ってたのかこいつは。
そんなの気にしなきゃいいのに。
【透】「俺は別にいいぜ?」
<立ち画:右側・夕華(驚き)>
【夕華】「え、即答!?」
【透】「何驚いてんだよ」
【夕華】「いや・・・こんなあっさり受けてくれるなんて思わなくて」
まったく、妙なところで気を回す奴だ。
俺達の関係は、その程度の頼みごとで迷惑になっただの重荷をかけただのという話になるような、
昨日今日の浅いものではない。
【夕華】「でも、メンターの仕事ってみんなが考えるより結構大変なのよ。組む相手にもよるけど、会長の就任する前までは
年度途中でしんどくなって辞退しちゃう人も少なくなかったみたいだし。
・・・それにさ、透、あなたに不必要にフランスでの事をあれこれ思い出させちゃうのも、良くないなって思って」
・・・こいつ、そんなことまで気にしてたのか。確かに父さんや母さんのこともあるし、いい思い出ばかりではない。
けれど、今更そんなことで気分が沈むようなことは絶対にない。
だって、俺はもう何年も前にその事実を受け止めて、乗り越えることが出来てるんだから。
【透】「くくく・・・」
【夕華】「な、何よ?」
【透】「はっはっは!夕華、お前ば~っかじゃねえの?」
【夕華】「ハルパゴス!?」
【透】「おい夕華、さっき俺は言っただろ。俺はお前に感謝してるって。返しきれないほどの恩があるってさ。
俺がお前に感じてる恩は、そんな薄っぺらいもんじゃねえんだよ」
【夕華】「と、透・・・」
【透】「だから、お前はそんなこと気にせず、いつもの調子で俺に言ってくれればいいの。
『あんたのためにもなるから、やってみなさいよ』ってな。俺は、お前の頼みを断るなんてしないから」
<立ち画:右側・夕華(恥じらい)>
【夕華】「こういうときばっかり男っぽいんだから、バカ・・・」
【透】「でもまあ、気遣ってくれてありがとう。嬉しかったよ」
【夕華】「透・・・」
【透】「こんな事でもないと、お前に恩返しできる機会なんてそうそうないからな。その話、無条件に受けるよ」
【夕華】「・・・ありがとう。それじゃ、お願いするわ」
【透】「よし、じゃあ夕華の審査には合格だな!で、俺はどんな子を担当すりゃいいの?
まあ俺も落第寸前だから、大した指導できないと思うけど」
<立ち画:右側・夕華(通常)>
【夕華】「え、ああ、そうね。いつまでも玄関先で待たせたら悪かったわ。実は今日ね、その子を連れてきてるの」
【透】「何っ!いきなりか!」
【夕華】「ええ、こればっかりは当人同士の相性もあるし、まず直接会ってみるのが一番だからね。
それに、前期の履修登録の期限ももうすぐだし。カリキュラムの説明だけでも、早いとこ理解させないと」
【透】「まあ確かにな。急ぎの理由は、それだったか」
【夕華】「うん。そこにいるから、今連れて来るわ」
そう言うと、夕華は扉の向こうで、夕華の陰に隠れているであろう新入生にちょいちょいと手招きをした。
【夕華】「じゃ、紹介するわね」
【透】「ゴクリ・・・」
【夕華】「さ、シュゼットちゃん。こっちに来て。紹介するわ。彼があなたのメンター候補よ」
名前を呼ばれて、夕華の影から、ぴょこん、と小さな影が飛び出した。
<背景:シュゼ1枚画>
そこにいたのは、長い銀髪をなびかせた、透きとおるような白い肌の女の子。
フランス人形がそのまま大きくなったような、小柄で華奢な可愛い女の子だった。
いや、可愛いというより・・・こりゃ・・・すげえ美少女だ。
【透】「この子が・・・俺の、プロテジェ・・・」
【夕華】「そう、この子があなたに通訳とメンターを頼む新入生。シュゼット・ノワリエルさん」
<背景:透の部屋>
<立ち画:左側・シュゼ(恥じらい)、右側・夕華(通常)>
【シュゼ】「(こんにちは)」
【透】「(こ、こんにちは。俺、明石透です。)」
<立ち画:左側・シュゼ(通常)>
【シュゼ】「(トオル・・・?あなたが、私のメンターになってくれる先輩ですか?私、シュゼット・ノワリエルといいます。
よろしくお願いします)」
【透】「(あ、ああ。よろしく・・・)」
【シュゼ】「(トオル・・・あの人と、同じ名前・・・)」
何と言うか、触れれば壊れてしまいそうなその雰囲気に、俺は圧倒されっぱなしだった。
初対面の緊張だけではない。彼女の美貌や、全身から出ているオーラのようなものが、俺の口を瞑らせた。
それに、何だ・・・この感覚?
妙にほっとするというか、懐かしいというか。
この娘・・・以前・・・どこかで・・・?
<立ち画:右側・夕華(ジト目)>
【夕華】「ちょっと透、なにジロジロ見てんのよ。このスケベ」
【透】「いや、何か・・・どこかで、会ったような・・・」
【夕華】「何それ。まさか運命とか言い出すんじゃないでしょうね?あんた、会って早々ナンパでもするつもりなの?
鼻の下伸ばしちゃって。シュゼちゃんも怯えてるじゃない」
【透】「シュゼ?」
<立ち画:夕華(通常)>
【夕華】「そう。シュゼットだからシュゼちゃん。フルネームじゃ、フランス慣れしてるあんたはともかく
私達には呼びにくいでしょ?」
【透】「シュゼット・・・フランス・・・・銀髪の、シュゼ・・・」
<背景:暗闇/立ち画:なし>
【????】「約束だよ。またあの場所で虹を見るって」
【透】「うん。約束するよ。」
【????】「約束だよ・・・」
今朝見た夢の最後の一幕が、フラッシュバックのように思い出される。
<背景:透の部屋>
【透】「あっ、あっ、あ~~~~~~~~~~~~っ!!!」
<立ち画:左側・シュゼ(驚き)、右側・夕華(驚き)>
【シュゼ】「!!?」
【夕華】「なっ、何よいきなり!?」
素っ頓狂な声を上げた俺に、夕華も、シュゼットと呼ばれた女の子も目を丸くして身体を硬直させた。
だが、天啓とも呼べるタイミングで肝心なことを思い出した俺は、そんなことも構わずシュゼットのほうに近寄って肩を掴む。
【夕華】「ちょっと!いきなり変な声出さないでよ!ってこら、何勝手に触ってんの!セクハラで訴えるわよ!」
【透】「(お前・・・まさか、シュゼットなのか?あの時の、シュゼなのか!?)」
【シュゼ】「(え・・・あなた・・・トオル・・・?)」
【夕華】「え?え?」
間違いない!この娘、あの時の女の子だ!
確信を得た俺に呼応するように、シュゼットもつぶらな目を大きく見開き、ひとつの答えを紡ぎ出したようだ。
エメラルドのような淡いグリーンの煌きを放つその瞳の奥には、驚きと、ほんのちょっとの戸惑いと、
そしてずっと失っていた宝物を見つけたかのような喜びを湛えていた。
【透】「(シュゼ!俺だよ!ほら、モンマルトルで一緒に虹を見た、あのトオルだ!)」
【シュゼ】「(まさか、本当にトオルちゃんなの!?私とあの丘を登った、あのトオルちゃんなの!?)」
【透】「(ああ、そのトオルだ!シュゼ、お前本人なんだな!?)」
【シュゼ】「(うそ、信じられない!こんなに早く、トオルちゃんに会えるなんて!しかも私の先輩だなんて!)」
【透】「(俺も信じられないよ!シュゼ!久しぶり!!)」
<立ち画:左側・シュゼ(笑顔)>
【シュゼ】「(わぁい!トオルちゃんだ!トオルちゃんが、帰ってきた!!)」
シュゼット・ノワリエル。そう、確かにモンマルトルの2年半を共に過ごしたあの女の子の名だ。
まさか、あの子に日本で会うことが出来るなんて!本当に、これは運命じゃないのか!?
シュゼは、あの頃と変わらない屈託のない笑顔で、俺にじゃれ付いてくる。
俺は、あの頃とすっかり変わってしまった力強い腕で、シュゼを思い切り抱きしめる。
【シュゼ】「(トオルちゃん!トオルちゃん!わぁ~いっ!!)」
【透】「(シュゼ~~~~っっ!!)」
【夕華】「ちょ、ちょっと、状況が全くつかめないんですけど?私一人置いてけぼりにしないで~!!」
はるか昔、あの虹とともに止まっていたはずの俺達の時間は、今この瞬間から、再び動き出した・・・。
<タイトル/OP:『きゃっち☆The Rainbow!!』>
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