きゃっち★The Rainbow!!(原案) 1話目


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●第1話

<カレンダー表示:4月9日(木)>
<背景:透の部屋>
<立ち画:右側・夕華(シリアス)>

【夕華】「・・・なるほど、そういうこと、ね」
【透】「ああ。そういうことだ」
【夕華】「シュゼちゃんが、あなたのフランス時代の親友だってことはよーく分かったわ。あなたにとって、
     かけがえのない存在だってのも、よーくね」
【透】「納得してもらえたなら何よりだ」
【夕華】「でも、ね・・・」

<立ち画:左側・シュゼ(笑顔)、右側・夕華(怒り)>

【夕華】「人前でベタベタいちゃつくのは止めんかぁぁぁぁぁっ!!!!」
【シュゼ】「(トオルちゃん、トオルちゃぁ~ん!えへへぇ~)」

ひとしきり俺たちが再会を喜んだあと、事の顛末を夕華に説明しだしてから約30分。
その間、シュゼは話をしている俺に構わずまとわりついてきて、夕華の目も気にせず、
前から後ろからハグしたり、頬を摺り寄せたりし続けていた。
ああ、そうだった。
こいつはその可憐でおしとやかな見た目とは裏腹に、普段から愛情表現の激しい子犬みたいな奴だったよな。
いや~、懐かしいなぁ。

俺は、目の前で瞳をきらきら輝かせながら笑顔を振りまいているシュゼの頭を、そっと撫でてやる。
するとシュゼは、ちょっと頬を赤らめながら、くしゃくしゃになった顔をさらに綻ばせて俺に抱きついてきた。

【夕華】「ちょっと、シュゼちゃん!その男から離れなさい!あんたも、お触り禁止っっ!!」
【透】「いや、でも十数年ぶりの再会だぜ?少しくらいは喜び合ったっていいじゃん。ただのハグだよ、ハグ」
【シュゼ】「(とっおーるちゃーん!うふふー)」
【透】「(おぉ~、よしよし。シュゼも大きくなったなぁ。尻も胸もでっかくなっちゃって、フヒヒ・・・)」
【シュゼ】「(あっ、ん・・・ト、トオルちゃん・・・そんな、ダメ・・・もっと、優しく・・・んっ)」
【夕華】「あんたたちの抱き合い方は尋常じゃないのよ!こら、さっきから人の話聞いてるの?
     って、何やってんのよアンタは!!はーなーれーなーさぁーーいっ!!」
【透】「ぐぇっ!ゆ・・・夕華・・・く、苦し・・・」

俺は着ていたTシャツの襟元を掴まれ、見事なチョークスリーパーを食らいながら力づくでシュゼと引き剥がされてしまった。
・・・あ、でもこの体勢だと、夕華のたわわに実ったおっぱいの感触が背中越しにはっきりと・・・
・・・えへへ・・・気持ちいいよ・・・・・・母さん・・・・・・

・・・いやいやいや!!気をしっかり持て、俺!!

【透】「げほっ、げはっ!!お、お前、少しは手加減しろよ!!」

<立ち画:右側・夕華(驚き)>

【夕華】「あら、ごめんなさい?少しやりすぎたかしら?」
【透】「少しどころか、逝きかけたぞ!!元あった所に戻るだけとか、そんなチャチなレベルじゃ断じてねえくらいにっ!!」

<立ち画:右側・夕華(怒り)>

【夕華】「なら、二度と同じことされないようにしっかり反省しなさいっ!」
【透】「すっ、すいませんしたっ!!」

・・・ふぅ、マジで危ないところだった。まさかシュゼに続いて母さんにも会えるとは。
だが、確かに俺もちょっと調子に乗りすぎたか。
俺は気を取り直し、シュゼと少し距離を置いてから夕華に向き直った。

<立ち画:左側・シュゼ(泣き)、右側・夕華(ジト目)>

【シュゼ】「(あぁーん、トオルちゃーん・・・)」
【透】「(シュゼ。この日本じゃ、あんまり激しい愛情表現は周りの人たちの反感を買うんだよ。
    俺もお前に会えて嬉しいけど、少しだけ、我慢してくれ。な?)」
【シュゼ】「(うぅ~~・・・はい・・・)」

シュゼはまだ名残惜しそうにこちらを眺めている。
これから、日本語だけじゃなくてこういうマナーも教えてかなきゃならないのか。
夕華の小言もきっと普段の10倍増しくらいになるだろう。色々と気苦労は絶えなさそうだ。
けれど、不思議と俺の胸には、わくわくとした感じが生まれていた。。
欠けていたパズルのピースが埋まったような、ずっと動かせなかった歯車がようやくかみ合いだしたような、そんな充足感。
これから、何か素敵なことが起こってくれそうな予感で、俺の心はいっぱいだった。

<立ち画:左側・シュゼ(通常)、右側・夕華(通常)>

【夕華】「それで、このあとの話なんだけどね」
【透】「はいはい」
【夕華】「さっきも言ったとおり、透にはまず、シュゼちゃんの履修登録やウチの大学のカリキュラムについての説明を
     お願いするわ。ただ、さっきの二人の関係を見ていると激しく不安だから、今後何かするときには
     『めんへる会』の人間も同行させることにする」
【透】「うっ、信用ねえな・・・」

<立ち画:右側・夕華(ジト目)>

【夕華】「当たり前でしょうが。アンタも海外長くてちょっとズレてる所あるし、軽いハグくらいならともかく、
     その、人前で・・・胸揉んだりなんて・・・」

夕華は、小声でそう言うとちょっと顔を赤らめた。
こいつ、下ネタ関係の耐性はあんまりないな。

【透】「あんなこと、所かまわず人前でするような真似はしませんて」
【夕華】「どうだかっ!?ともかく、2人っきりの行動は絶対禁止っ!何か起こったとき、
     責任取らなきゃならないのはウチのサークルなんだからねっ!」
【透】「ふぇーい」

でも、俺もまともな大学生活からヒキって久しいし、もう一人くらいサポーターがいてくれたほうが
リハビリにはちょうどいいのかもしれない。
履修登録だって、これまでのところ実際には夕華が俺の分まで代行してくれてたわけだし。
単位の取り易さとか授業の雰囲気とかも分からないし、肝心要となる科目の選択は夕華たちに任せて、
俺はしばらくの間通訳に徹しているのがよさそうだ。

<立ち画:右側・夕華(通常)>

【透】「じゃあ、さしあたってその2点を進めようか。もうあまり時間ないよな?」
【夕華】「うん。登録期限は明日の午後5時までだからね。今日のうちに出来るだけのことはやっておかないと」
【透】「おいおい、ギリギリじゃねえか!」
【夕華】「だから急いでんのよ。のんびりお茶なんかしてる暇はないわ。あなたたちのサポートをする『めんへる会』の
     メンバーも紹介しなきゃいけないだろうし。ねぇ、今から大学行ける?」
【透】「ああ、大丈夫」
【夕華】「よかった。それじゃあ、急いで支度してね」

<立ち画:なし>

それから俺は、取るものも取りあえず手早く荷物をまとめて、大学へ向かう準備を整えた。
いざ出発しようと玄関先へ出た、その時。シュゼがそっと寄ってきて、俺の袖を引っ張りながら話しかけてきた。

<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>

【シュゼ】「(トオルちゃん)」
【透】「(ん?何だ、シュゼ?ほっぽりっぱなしで悪かったな。後でお前にもちゃんと説明するから)」
【シュゼ】「(あ、うん。それはいいんだけどね。さっき、ユーカと喧嘩してたの?)」
【透】「(はぁ?喧嘩?・・・ああ、違うよ。あれは俺たちのいつもの会話。まあ、じゃれ合ってたみたいなもんかな。
    あいつとも結構付き合い長いから、外からは言い合ってる風に見えても、当人同士は楽しんでるんだぜ)」
【シュゼ】「(そうなんだ・・・)」
【透】「(お前、まさか自分のせいで揉めてるんじゃないかって心配してたのか?)」
【シュゼ】「(うん。それもあるけど、ユーカはいい人だから、トオルちゃんと仲良くしててほしいなって)」
【透】「(ほう・・・?)」
【シュゼ】「(ユーカはね、私が日本の大学に入ることを決めて、最初に説明を受けに行ったとき、
      学生代表としてその場で応対してくれた人なんだ。日本語が全然分からない私を気遣って、
      辞書引きながらの片言だったけどフランス語で話してくれて、すごく親切にしてくれたの。
      それでね、お仕事が全部終わった後に、言ってくれたんだ。『お友達になりましょう。よろしくね』って。
      だからね、ユーカは、私にとって初めての日本のお友達。トオルちゃんはフランスで出来た
      日本人のお友達だけど、ユーカは、日本に来て、日本で出来た、初めての日本人のお友達なんだ)」
【透】「(そうだったのか)」
【シュゼ】「(うん。だから、私もトオルちゃんも、このさきユーカと仲良くやっていけたらいいなって思うの。
      時には喧嘩したりするかもしれないけど、進んで傷付けあうようなことは嫌だから)」
【透】「(それだったら心配いらないぜ。あいつがいい奴だってのは充分承知してるから。
    言い合うことはあっても、いがみ合うことなんか絶対にねーよ)」

<立ち画:右側・シュゼ(通常)>

【シュゼ】「(そう・・・なんだ。なら、よかった)」
【透】「(さ、あんまり長く待たせてたらまた怒られちまうし、とりあえず大学行くぞ)」
【シュゼ】「(あ、うん!・・・ねえトオルちゃん、もう一つだけ聞いてもいい?)」
【透】「(ああ。何?)」
【シュゼ】「(ユーカのこと、好きなの?)」
【透】「ブッ!!!!」

いきなり何を言い出すんだこいつは。
急にそんなことを聞かれると、落ち着かなくなるじゃないか。

<選択肢:①「ああ、好きだよ」/②「あいつはただの幼馴染だよ」>
<(選択肢①):夕華+1>

【透】「(ああ、好きだよ)」

だが俺は、ためらうことなく本音を口にする。

<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>

【シュゼ】「(やっぱり・・・。ふたりとも、すごく分かり合ってそうだもんね。ユーカと、お付き合いしてるの?)」
【透】「(あ、いや、そういう関係じゃなくてだな。何ていうか、あいつとは家族みたいなもんなんだ)」
【シュゼ】「(家族・・・?)」
【透】「(ああ。俺と夕華って、俺がフランスに渡るずっと前、ガキの頃からの知り合いだったんだけどさ。
    ほら、俺の母さん、あんなことになったじゃん?あのあと、父さんも事故で死んじゃってな。
    天涯孤独になって日本に帰ってきた俺の面倒を見てくれたのが、夕華とその家族なんだ」
【シュゼ】「(ユーカが・・・トオルちゃんを、お世話してたの?)」
【透】「(うん。だからな、俺はあいつに恩義を感じっぱなしなの。ここ数年、ずっとな。もっと言えば、
    好きとか愛してるとかって言葉で片付けられるようなレベルじゃなく、俺の人生の中でかけがえのない存在なんだよ)」
【シュゼ】「(そうなんだ・・・)」

それからシュゼは少し考え込むふうにして間をおいたあと、暖かい光を秘めた眼差しを俺に向けながら、こう言った。

<立ち画:右側・シュゼ(通常)>

【シュゼ】「(ねえ、トオルちゃん)」
【透】「どうした?」
【シュゼ】「(ユーカと、これからもずっと一緒にいられるといいね)」
【透】「(ああ、そうだな。あいつだって好きな男の一人や二人はいるだろうし、ずっとってのは無理かもしれねえけど。
    でも、いつまでも仲良くやっていけるといいよな)」
【シュゼ】「(うん、私もそうなってほしい)」

ずっと、一緒に・・・か。
考えたこともなかったけど、夕華とのこの関係にも、いつかまた別れは来るんだよな。
そのとき俺は、どんな顔をしているんだろう?泣いているんだろうか?それとも、笑ってあいつを送り出しているんだろうか?
どっちにしても、俺たちが誰とどこにいて何をしていようと、俺たちの「絆」が変わることなんてないはずだ。
だって、一度別れを迎えてなお、俺たちは再び仲良くなれたんだから。
この先何が起きようと、俺たちは俺たちだ。
心が通じ合った俺たちが、お互いを思いあい、尊重しあい、支えあうことを邪魔するものなんて何もないと、
このときの俺は心から信じていた。
そう、疑いもせず、信じていたんだ。


<(選択肢②):シュゼ+1>

【透】「(あいつはただの幼馴染だよ)」

少し返答に窮したあと、俺はやや申し訳なさそうにそう答えた。

<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>

【シュゼ】「(そうなの?でも、ふたりともすごく分かり合ってる感じだよ)」
【透】「(まあ、お前と同じで、俺にとってはあいつも大切な人だからなあ)」
【シュゼ】「(大切な、人・・・)」
【透】「(そう。大切な人だ。俺の家族、母さんに続いて父さんもすぐ死んじゃったからな。日本に帰ってきてからは
    ずっと夕華とその家族にお世話になりっぱなしなんだけど、今じゃ、あいつが家族みたいなもんなんだ)」
【シュゼ】「(そうなんだ・・・)」
【透】「(言われてみれば確かに、あいつとの間には、普通の幼馴染以上に分かり合える関係があるかもしれない。
    でも、それは家族間にあるような関係であって、恋愛感情とか、そういうのとは別物だよ」
【シュゼ】「(・・・・・・)」

それからシュゼは少し考え込むふうにして間をおいたあと、真剣な眼差しを俺に向けながらこう尋ねた。

<立ち画:右側・シュゼ(シリアス)>

【シュゼ】「(ねえ、トオルちゃん。さっき、『お前と同じ』って言ったけど・・・
      トオルちゃんにとっては、私との思い出も、大切な一部になってるの?)」
【透】「(ははは、もちろんだっての。母さんが死んだあの時なんて、お前がいなかったら、俺、立ち直れなかっただろうしな!
    シュゼも、俺にとってはかけがえのない存在だよ)」
【シュゼ】「(私が・・・トオルちゃんの、大切な存在に・・・)」
【透】「(ああ。今までだってそうだし、これからもだぜ?いや、せっかくまた出会えたんだ。前よりもずっと
    仲良くなれれば、もっといいな)」

<立ち画:右側・シュゼ(笑顔)>

【シュゼ】「(・・・うん。私も、もっと仲良くなりたい。トオルちゃんのことたくさん知って、前よりもあなたに近付きたい)」

突然、ドキっとするようなことを言うシュゼ。
まるで、告白されたかのようだった。
シュゼがそんなつもりで言ってるんじゃないというのは分かっていても、俺は胸の高鳴りを感じてしまう。
俺はドギマギとしっぱなしだったが、色好い答えが返ってくるのを待ちわびているかのように、シュゼはそれからしばらくの間
俺をまっすぐに見つめ続けていた。
・・・・・・いやいやいや、これじゃ、本当に告白シーンじゃないか。
落ち着け、俺。落ち着け・・・。ふぅ。
それにしてもシュゼってば、本当に可愛くなったよな。
何ていうか、一緒にいられるだけでも、俺の人生は「幸せ」に向かってまっしぐらに突き進んでいるような幸福感に満たされる。
ガキの頃には、そんなの微塵も考えたことなかったのにな。
そんなことを思っていると、先を行く夕華から催促の声がかかった。

<選択分岐終了>

<立ち画:左側・夕華(通常)、右側・シュゼ(通常)>

【夕華】「ちょっとー、ふたりだけで何話し込んでるのー?早くしないと、おいてっちゃうぞー」

俺たちより数メートル前を歩んでいた夕華が、いたずらっぽい顔をしながら振り返り、俺たちを急かす。

【透】「あ、わりぃわりぃ。(シュゼ、行くぞっ!)」
【シュゼ】「(うんっ!)」

俺たちは駆け足で夕華のあとを追う。
その足取りは、独りで大学へ通ういつもよりも、若干軽やかに感じられた。

<背景:透の部屋/場面転換のエフェクト>
<立ち画:なし>
<背景:大学キャンパス>

それから30分ほどして、俺たちは大学に着いた。
春休みの間ずっと引きこもっていた事もあり、大学まで来たのは実に2か月ぶりくらいだ。
大学の中は活気に溢れ、さながらお祭り状態であった。
新歓時期もピークを迎え、そこかしこでサークル勧誘のビラまきやミニイベントが行われている。
これからコンパでもするのだろうか、駄弁りながらたむろしている集団も、一つや二つではない。
かつては俺も同じようなことをやっていたはずだが、長い間人との交流を絶っていると、ちょっと気圧されてしまう。
こういう人ごみ、やっぱり苦手だなぁ・・・。

<立ち画:左側・シュゼ(通常)、右側・夕華(通常)>

【夕華】「ほらほら、ぼーっとしないの。このまま部室へ直行するよ」
【透】「あ、うん。(シュゼ、迷子になるなよ)」
【シュゼ】「(はーい)」

といったそばから、俺たちの間に学生たちの行列が割り込んできて、シュゼが人ごみの向こうへと押しやられていく。

<立ち画:左側・夕華(通常)、右側・シュゼ(驚き)のまま右方向へフェードアウト>

【男子学生】「あ、すんませーん。ちょっとどいてー。おい皆、移動すんぞー!!」
【学生たち】「ウェイ?ウェーーイ!!!!」
【シュゼ】「(きゃっ、きゃああっ!?)」
【透】「あっ、シュゼっ!?」

<選択肢:①急いで助けなきゃ!/②とりあえず行列が過ぎ去るまで、待とう>
<(選択肢①):シュゼ+1、夕華+1>

急いで助けなきゃ!
そう思うと同時に、俺はさっきまで気後れしていた人の海の中へと突っ込んでいた。

<立ち画:右側・シュゼ(驚き)>

【DQN学生】「ワハハハ!センパイ、最近マジパネぇっすね!!実は俺も・・・あっ、って~な、何かぶつかったぞ」
【シュゼ】「(あうっ!?い、痛いっ!!)」
【男子学生】「うわっ、どこ見て歩いてんだよ!しっかりしろ!!」
【シュゼ】「(きゃっ!?ご、ごめんなさいっ!?)」
【女子学生】「わ~、あなた外人さんよね?どこの人?イギリス?それともフランスかな?すっごい肌きれーい!
       ねぇ、どう?私たちと一緒にインカレのテニスサークル入らない?」
【シュゼ】「(あ、あわわわわ・・・・)」

圧倒的なまでの物量に抗うことができず、シュゼはどんどんあさってのほうへ向かってしまう。
俺は必死で人ごみを掻き分けシュゼのいる方へと向かうが、その間にもシュゼは通行人に衝突したかと思えば
サークル勧誘に捕まったりしている。
あっヤバイ、ナンパまでされてるじゃないか!!

【池面学生】「君、すっげカワイくね?何年生?ちょっとその辺でお茶でもしない?」
【シュゼ】「(ひぇっ!?と、トオルちゃん!助けてぇ~~っ!!)」
【透】「ちょ、ちょっと待ったぁっっ!!」
【池面学生】「うぉ!?何すんだ、コイツ!・・・あ、おい、ちょっと待てよ!」
【透】「(シュゼ、こっちだ!)」
【シュゼ】「(は、はいっ!!)」

俺は、執拗に声をかけてくるキムタク風のイケメン学生から何とかシュゼを救い出し、彼女の手を引いてその場を離れた。

<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>

【シュゼ】「(ハァ、ハァ・・・トオルちゃん・・・ありがと・・・)」

突然のことで余程驚いたのか、透き通るように白かったはずのシュゼの顔色は、真っ青になってしまっていた。

【透】「(おい、大丈夫か?もう離れないように、俺の手しっかり握っとけよ)」
【シュゼ】「(う、うんっ!)」

俺はシュゼの手を包み込むようにしっかりと握り、彼女を落ち着かせる。
そうこうしていると、夕華が駆け寄ってきて俺たちの無事を確認してから、両手をパチパチとたたきはじめた。

<立ち画:左側・夕華(笑顔)、右側・シュゼ(困り顔)>

【夕華】「おぉ~!透、あんたなかなかやるじゃない。見直したわ」
【透】「夕華っ、お前、見てたんなら早く助けろよっ!!」
【夕華】「だってあんた、こっちが気付いたときにはもう飛び出してたじゃない。あんな勇気があるとは思わなかったわよ。
     しかもナンパ野郎まで追い払っちゃって!何だかんだいって、やっぱり透も男の子よねぇー。
     シュゼちゃん、よかったね」
【シュゼ】「(び、びっくりした・・・)」

俺たちが大変な目にあったというのに、夕華はどことなく満足そうだ。
だがまあ、シュゼを守り通せただけでもよしとするか。
これからも似たようなことは起こるだろうが、そのたびに俺がしっかりこいつをサポートしてやろう。
俺は決意も新たに、シュゼとの学生生活を責任もって送ろうと考えた。

<(選択肢②):シュゼ+1、夕華-1>

とりあえず行列が過ぎ去るまで、待つか。
そう考えて学生たちの行列を前にぼーっと突っ立っていると、後ろから夕華が頭を小突いてきた。

<立ち画:左側・夕華(怒り)>

【夕華】「ちょっと、透っ!シュゼちゃん、どんどん流されてってるじゃないの!早く助けに行ってあげなさいっ!」
【透】「え、でも誰かに攫われてるわけでもないんだし、人の流れがおさまってからでも・・・」
【夕華】「つべこべ言わず、男なら早く行きなさいっ!!」
【透】「は、はいっ!!」

<立ち画:なし>

俺は必死で人ごみを掻き分け、シュゼのいる方へと向かう。
シュゼの元へとたどり着くと、彼女はキムタク風のイケメン学生にナンパされていた。

<立ち画:右側・シュゼ(驚き)>

【池面学生】「おー、君、すっげカワイくね?何年生?ちょっとその辺でお茶でもしない?」
【シュゼ】「(と、トオルちゃん!助けてぇ~~っ!!)」
【透】「ちょ、ちょっと待ったぁっっ!!」
【池面学生】「うぉ!?何すんだ、コイツ!・・・あ、おい、ちょっと待てよ!」
【透】「(シュゼ、こっちだ!)」
【シュゼ】「(は、はいっ!!)」

俺は、執拗に声をかけてくる学生から何とかシュゼを救い出し、シュゼの手を引いてその場を離れた。

<立ち画:右側・シュゼ(困り顔)>

【シュゼ】「(ハァ、ハァ・・・トオルちゃん・・・ありがと・・・)」

突然のことで余程驚いたのか、透き通るように白かったはずのシュゼの顔色は、真っ青になってしまっていた。

【透】「(おい、大丈夫か?もう離れないように、俺の手しっかり握っとけよ)」
【シュゼ】「(う、うんっ!)」

俺はシュゼの手を包み込むようにしっかりと握り、彼女を落ち着かせる。

<立ち画:左側・夕華(怒り)、右側・シュゼ(困り顔)>

そうこうしていると、夕華も駆け寄ってきた。夕華は、俺たちの無事を確認してから、俺に批難の言葉を浴びせかける。

【夕華】「透、もうちょっと早く助けに行ってあげなさいよ。あんたがぼさっとしてたから、ほら、
     シュゼちゃん真っ青になっちゃってるじゃない。大丈夫?シュゼちゃん」
【シュゼ】「(び、びっくりした・・・)」
【透】「いや、だってさ、大学内はいつも人多いし、こういうのも少し慣れとかなきゃマズイだろ・・・」
【夕華】「あれこれ言い訳しないの!シュゼちゃんはまだ右も左も分かんないんだから、あんたがしっかり守ってあげなさい!
     ・・・でもまあ、ちゃんとナンパ野郎を追い払ったし、今回はこのくらいで見逃してあげるわ」

男らしくない態度をとってしまったせいか、夕華は機嫌を損ねてしまった。
確かに、ちょっと無責任だったかもしれない。俺は反省し、シュゼに謝った。

【透】「(ごめんな。お前がこっちの生活に慣れるまで、俺がちゃんと守ってやらなきゃいけなかったのに)」
【シュゼ】「(いいよ。私が前見てなかったのがいけないんだもん。それに、トオルちゃん来てくれて嬉しかったから)」

これからも似たようなことは起こるだろうが、今度からは俺がしっかりこいつをサポートしてやろう。
俺は決意も新たに、シュゼとの学生生活を責任もって送ろうと考えた。

<選択分岐終了>

そして、一呼吸おいてシュゼが落ち着いたのを確認してから、俺たち一行は『めんへる会』へと向かった。

<背景/場面転換のエフェクト>
<背景:めんへる会部室>

めんへる会の部室は、大学の敷地のほぼど真ん中に建てられた、豪奢なサークル棟の一画にあった。
このサークル棟、かつては礼拝堂として利用していたそうだが、10年ほど前に学内の施設を一斉に
改修した際リフォームされたらしい。
講義棟や学食、購買部にほど近く、中央広場にも面しているため、学内でも特に利便性が高い。
こんな条件のいい建物、普通は講堂や記念館などに使いそうなものだが、そこは自由主義を掲げる我が大学。
太っ腹というか大胆というか、改修と同時に学生たちに開放してしまい、今やリア充たちのすくつとなっていた。
各サークルの入り口にはカラフルなPOPや手作りのビラが飾られ、あちこちから楽しそうな談笑が漏れ聞こえてくる。

だが、サークル棟の最奥に鎮座するめんへる会の部室は、それらとは明らかに異質な存在感を放っていた。
無機質なステンレスの扉が据え付けられた他のサークルの部室とは違い、マホガニーか何かの高そうな木材で出来た、
観音開きの扉が大仰に俺たちを迎えている。
間口の広さからすると、中も他の部屋の倍くらいは余裕でありそうだ。
他のサークルが身廊や翼廊を改修したものだとすれば、ここは至聖所のあった場所なのだろうか。
『めんへる会』の部室は、それ自身が神聖なものであるかのように他の部室を睥睨しており、
周辺の備品にも以前の荘厳な面影が残されていた。

【透】「この扉、ライオンが取っ手を咥えてるぞ・・・」
【シュゼ】「(わ~、ここの窓、ステンドグラスになってるよ!)」
【透】「ここだけ天井が吹き抜けでシャンデリア付きとか、やりすぎだろ・・・」
【シュゼ】「(あ、そっちには彫刻も飾ってある!すごーい、美術館にいるみたい!)」

場違いなほどにファンタジックな装飾品を目の前に、しばし呆気にとられる俺達。
夕華はしばらくの間、俺たちが物見し終えるのを待ってから、俺たちを扉の前へと促した。

【夕華】「ほら、そんな調度品に見惚れてないで、こっち来て。みんなに挨拶するんだから」
【透】「あ、ああ・・・」
【夕華】「くす。そんな緊張しなくていいよ。みんな個性的だけど、悪い人たちじゃないから」

いやいや、俺、部員に会う前からもう気圧されてしまってるんですが。
だがそんな俺の気も知らず、夕華は勢いよく扉を開く。
すると、カランカラン、とライオンから鈴の音が鳴り響いた。
あのライオン、取っ手だけじゃなくてベルの役割も果たしてたのか。

【夕華】「こんにちはー。って、あれ?」

部室に入ると、中はとても閑散としていた。
壁際にはこれまた高そうなキャビネットが置かれていたり、パイプオルガンが据え付けられていたりと、
所々で豪華なインテリアたちが主張していたし、部屋も想像以上に広い。それ自体は、期待を裏切ってはいなかった。
だが、そこには不釣り合いなほど人の気配がなかったのだ。

【透】「何だ、誰もいないじゃん」
【夕華】「あれー、おかしいなあ。今日はみんな出てきてるはずなんだけど・・・」

首をかしげる夕華。
案内されなければ何もできない俺とシュゼは、どうしていいのか分からず、ただ棒立ち状態。
一方、こんな事態は想定していなかったのだろう。夕華もまた、どうしたらいいのか思案しあぐねているようだった。

【夕華】「うーん、困ったなあ・・・」

部室の入口で立ち尽くしていると、背後から女性の声が響いてきた。

【????】「あら、夕華さん。シュゼちゃんも。いま来られたんですか?」

振り返ると、そこにはメイド服を着た可憐な女性が立っていた。
その異様な姿に、しばし思考が停止する。
な、何だこの娘は?近くにコスプレ喫茶でもあるのか?それともデリヘル嬢か?
状況的にはどちらもありえないが、かといってうまく説明がつかない。
何故、大学にメイドがいる!?

【夕華】「あっ、莉央ちゃん!みんないないけど、どうしちゃったの?」
【莉央】「すみません。サークル同士のいざこざが同時に何件か起きてしまって、みんな仲裁のために出払ってたんです。
     どうやら、他の方はまだ帰ってないみたいですね」
【夕華】「そうだったんだ。ごめんね、手伝えなくって。・・・ところで、ほのかは?」
【莉央】「ああ、お嬢様ならそこにいますよ。ほらお嬢様、しっかりしてください」
【ほのか】「ひ、ひぃ~・・・。重いよぅ・・・莉央、ちょっと、助けてぇ~」
【莉央】「何を言ってるんです。手が汚れるじゃないですか。私は嫌です」
【ほのか】「ひ、ひどぉ~い!!」

ほのかと呼ばれた育ちの良さそうな女の子は、半泣きになりながら身の丈ほどもある大きな看板を背負っていた。
その傍らには、ほのか嬢をお嬢様と語りかける、莉央と呼ばれるメイドさん。
何だこの状況は。まったく意味が分からない。
だが、慌てふためく俺を除け者にして、話はどんどん進む。

【夕華】「何その重そうな立て看板。テニスサークルのやつじゃない」
【ほのか】「さっき中庭で新入生を無理やり勧誘してたサークルがあってね~。なかなか言うこと聞いてくれないから、
      強権発動させて、当分活動できないようにサークルの看板取り上げてきちゃった」
【夕華】「だからって、本当に看板持ち帰ることはなかったんじゃ・・・」
【莉央】「バカなんです。残念ながら」
【ほのか】「バカじゃないよ~!!だって、注意するだけじゃ安心できないんだもんっ!!」
【夕華】「その注意だけで済ませるために、各部の活動許可も私たちが執り仕切ってるんじゃない。
     もう、そんなの置いときなさいよ」

そう言うと夕華は、ほのか嬢の背中から重そうな看板をひょいと取り上げ、近くの壁に立て掛けた。

【ほのか】「あ~ん、夕華ちゃんも優しくしてくれないよ~。もうこうなったら、シュゼちゃんに慰めてもらうもん!」
【シュゼ】「(きゃっ!!ホノカ、くすぐったいよぅ~)」
【ほのか】「おっ?おっ?見た目の割に、結構発育がいいですなぁ~。さすがは外人さん!この、この!!」
【シュゼ】「(あっ、や、やぁ~ん!)」

ほのか嬢はシュゼに抱きつくと、その全身を余すところなくまさぐり始めた。
その様子は、姉妹がじゃれ合っているみたいでいやらしい感じは微塵もなく、微笑ましくさえある。
だが、エロ耐性の低い夕華にはやっぱり目の毒だったらしく、すぐにストップがかかってしまった。

【夕華】「ちょっ、ちょっと!ほのか!人目もあるんだから、いい加減にしなさいよ!」
【ほのか】「へ?人目?・・・あっ」

そこでほのか嬢はようやく手を止め、初めて俺の存在に気付いたようだった。
・・・もしかして存在感ないのか、俺?

【ほのか】「ほぇ。もしかしてこのカレ、例の幼馴染クン?」
【夕華】「うん。そうよ」
【ほのか】「へ~、ちょっと頼りなさそうだけど、見た感じいい人っぽいね~。ねぇねぇ、紹介してよぉ」
【夕華】「はいはい。透、紹介するね。この娘が、めんへる会に4人いる3年生メンバーのひとり、山吹ほのかちゃん」
【ほのか】「山吹ほのかです!よろしく~」
【透】「明石透っす。よろしく」
【夕華】「それでこっちが、同じく3年生の藍染莉央ちゃん」
【莉央】「はじめまして」
【透】「はじめまして。明石です。よろしく」

簡単に挨拶を終えて一息つこうとしたが、ほのかちゃんはそれを許さなかった。

【ほのか】「えー、それだけでオシマイ?もっと他に、いろいろ聞くことないの?」
【透】「色々って・・・例えば?」
【ほのか】「色々あるじゃん!趣味とか、特技とか、好きな異性のタイプとか!」
【莉央】「具体的には、SとМのどっちかとか、言葉責めは得意かとか、お嬢様属性に
     萌えを感じるか、とかを聞かれているのです」
【ほのか】「全部おかしいよ!?私、そんなんじゃないからね!!?」

何なんだ、この娘たちは。
俺の同級生ということは分かったが、どうにもキャラクターがつかめない。
そもそもお嬢様とかメイドとか、彼女たちはどういう関係なんだろう?
莉央ちゃんは恥ずかしがる様子もなく、さも当然のようにメイド服を着ているし・・・まさか言葉通りでもあるまい。
考えていても埒はあかないので、俺は思い切って直接疑問をぶつけてみる。

【透】「えーと、山吹さん?」
【ほのか】「んー?なーに?てゆーか同級生なんだし、名前で呼んでくれていいよぉ。
      私も透くんって呼ばせてもらうから、ね?」
【莉央】「どうぞ、お嬢様のことは『ゴミクズ』でも『メスブタ』でも好きなようにお呼びください」
【ほのか】「私、そこまで言ってないよ!?」
【透】「いや、えーと・・・」
【莉央】「ほらほら。透さんが何か仰られてますよ、メスブタ様」
【ほのか】「透くんじゃなくて莉央が呼ぶの!?」
【透】「オイ、頼むから話を聞いてくれ」

彼女たちのペースに合わせていては、一向に話が進まない。
俺は2人の夫婦漫才を無理やり遮って、話を続けた。

【透】「さっきからいまいち理解できないんだけど、君たちってどういう間柄なんだ?」
【莉央】「見たまんまですが?」
【ほのか】「見たまんまだよぉ?」
【透】「いや、分かんねーよ」

特にメイド、お前だお前。何者なんだアンタは。

【莉央】「だから、お嬢様と、お付きのメイドです」
【ほのか】「そうなのですっ」
【透】「何で偉そうなんだよ。しかもメイドのほうが」
【ほのか】「あうぅ~・・・」
【莉央】「それはお嬢様に主体性が無いからです。まったく、いつになったら成長してくれるのでしょうか」
【ほのか】「・・・すいません」

ほのかちゃんはシュンとなって縮こまってしまった。
お嬢様と、メイドだと?さっき否定したはずの答えが正解だったというのか!?
いや待てよ、その割にはメイドが主人っぽいじゃないか。

【透】「ははーん、これは罰ゲームか何かなんだな?」
【莉央】「はぁ・・・理解力の無い方ですね。では詳しくご説明さし上げましょう」

さらりと毒を吐き、莉央ちゃんが哀れみの目を向けながら俺に語りかける。

【莉央】「ほのか様は、国内外のグループ傘下に2000余社をもつ日本有数のコングロマリット、山吹財閥の一人娘なのです」
【透】「えっ!あの、山吹グループの、一人娘!?」
【莉央】「はい。そしてお嬢様は、いずれ山吹を背負って立つ、将来の総帥候補なのです」
【透】「なっ!?」

山吹グループ。俺のようなダメ学生でも知っている、日本屈指の超有名財閥。
その業態は金融から情報産業、医療まであらゆる分野に及び、新卒大学生の1割は山吹と関係のある仕事に就くと
いわれるほどの規模を誇る、大企業連合体だ。
テレビでその社名を見ない日はないし、就職志望先としても毎年ランキングの上位を占めるほどの優良企業らしい。
グループ全体の年間売上高は日本の国家予算を上回るとか、絶対的な資本力を生かしてT‐ウィルスを開発しているとか、
ユダヤ財閥や華僑と並んで世界を陰から操る3大組織のひとつだとかいう怪しげな噂まである。
まさか、そんな世界に住む本物の「お嬢様」なるモノが目の前に現れるとは!!

【透】「しかし、そんなすげーお嬢様が何でこんな私立大学に・・・?」
【莉央】「疑問はもっともですが、それにも理由があります。
     本来ならば、お嬢様のような方はオックスブリッジなどの一流大学で帝王学を学び、国際舞台に
     躍り出る基盤を固められるべきところでした。ですが、お嬢様のお父上、つまり山吹財閥の現理事長が、
     これからの企業経営者は市井の感覚を身をもって学ぶべきと考えられて、まず学部のうちは
     日本の私立大学で学生生活を謳歌せよとのことで、この大学に通われることになったのです」
【ほのか】「いやぁ、ほんとそんな大した理由じゃないんだよぉ。私、留学できるほど頭良くないし」
【莉央】「それに、外国語以前に日本語も満足に使えないとか、社交界デビューするにはガキンチョ過ぎるとか、
     いろいろ問題ありますもんね」
【ほのか】「・・・ヒドイ」
【透】「はー、こんなチンチクリンが、あの山吹の跡取りねぇ・・・」
【ほのか】「透くんも、ヒドイ!!」
【透】「あ、すまんすまん」

俄かには信じがたいが、そういうことならこのぽやっとした感じの女の子がちょっと世間ズレした感じも頷けよう。
よくよく見れば、身につけている洋服からアクセサリーまで、派手でこそないが結構高そうなものばかりだ。
では、もう一人のほうは?

【透】「で、君は・・・」
【莉央】「私は、その山吹財閥の大事な跡取りであるほのか様の教育係として、幼少の頃より山吹家に仕える侍従です」
【ほのか】「それでもって、莉央もこの大学に通う学生で、私の大事な親友なの~」
【莉央】「前者はともかく、後者は何の話ですか?」
【ほのか】「はぅっ!?私の勘違いなの!?」

莉央ちゃんのつれない態度に、涙を目いっぱいに浮かべるほのかちゃん。

【透】「なるほどねぇ・・・説明どうもありがとう」
【莉央】「ご清聴ありがとうございました」
【ほのか】「私たちの関係、すこしは分かってもらえたかな?」
【透】「ああ。驚いたよ。まさかそんなセレブがこの大学に通ってるなんて。全く知らなかった。
    俺みたいな俗物にとっちゃ、お近づきになれただけでも光栄、かな?」
【ほのか】「やぁん、照れるぅ~」

今度は顔を赤らめながらしなをつくるほのかちゃん。
表情がコロコロと変わって、見ていて飽きないなぁ、この娘。
一方、莉央ちゃんは冷めた目で主人をねめつけながら呆れている。

【透】「でも・・・なぁ」

確かに、説明を聞いて、二人の関係性は見えてきたし、二人のやっていることが冗談でも何でもなく、
二人にとってはごく自然なことであるというのも理解できた。
だが、それでもまだ、しっくりこない点は残っている。

【莉央】「まだ、何か?」
【透】「でも、お付きのメイドさんならもうちょっとほのかちゃんに優しくしてあげてもいいんじゃあ・・・」

少なくともこれまでに聞いた暴言の数々は、主人に向けるものではないんじゃないのか?
俺のそんな考えを見透かしたのか、莉央ちゃんは急に真剣な顔になり、キッと俺を睨みつけてきた。

【莉央】「透さん、貴方はまだ勘違いしておられます」
【透】「えっ?」
【莉央】「メイドとは、主人の下僕ではありません。主人とは対等の関係にあって、主人を支え、鼓舞するもの。
     仕える主人に足りないところがあれば、我が身を挺して補い、育て、伸ばすものです。
     一方的に命令を受け、服従し、主人のミスを庇うことも諌めることもないただのロボット。
     そんな心のない存在は、メイドとは呼ばない」
【ほのか】「莉央・・・!?」
【莉央】「お嬢様には、まだまだ未熟な部分がたくさんあります。やがて山吹の財閥を背負ってゆくために、
     学ばねばならないことが山ほどあるんです。その道は、高く、険しい。それらの困難に共に挑み、
     打ち勝つためには、まず私との信頼関係を深め、強い心を養ってもらわなければならないのです」
【ほのか】「莉央・・・私のこと、そんな風に想って・・・」
【莉央】「だから、これはいたぶっているわけでも嫌っているわけでもなく、互いの絆を深めるために
     行なっている、私の個人的な趣味なのです。ね、メスブタ様」
【ほのか】「まだ続いてたの!?ていうか趣味なの!?感動が台無しだよ!!!」

再び泣き出しそうになるほのかちゃんに向かって、莉央ちゃんはSっ気たっぷりの顔で
これでもかというくらい「ブタ様」と呼びつけ、いじり倒していた。
結局、この主従が逆転したかのような関係だけは、よく分からない。
まあ、世の中には特殊な性癖をもつ人たちが少なからずいる、ってことにしておくか。

俺がそう結論付けるのと同時に、人数分のティーカップが載ったお盆を持って、夕華が部屋の奥から戻ってきた。

【夕華】「はいはい、自己紹介もそれくらいにして。それじゃあ、他のみんなが戻るまでお茶でも飲んで待ちましょうか」
【透】「え、待つの?」
【夕華】「うん。本人同士の合意が得られたとはいえ、透はまだメンター“候補”の状態だもの。
     他のメンバー、特に会長の承認が得られなきゃ、正式に辞令交付できないからね」
【透】「あぁっ!?まだ決定してなかったのかよ?」
【夕華】「だ・か・ら、あくまで“正式”な承認の手続きが済んでないってだけ。私も、透に決まりでいいと思ってるよ。
     あなたがあまりに下心丸だしで不安がられるとか、他にめちゃくちゃいい適任者が見つかったっていうなら、話は別だけど」
【透】「何だそりゃ・・・」
【夕華】「まあ、前者はともかく、後者はまずあり得ないから、その点は心配しなくてもいいよ」

それまで大人しくしていたシュゼも、俺の動揺を敏感に感じ取ったのか、心配そうに尋ねてくる。

【シュゼ】「(トオルちゃん、どうしたの?)」
【透】「(いや・・・どうやら俺たち、まだコンビを組めるって決まったわけじゃないみたいだ)」
【シュゼ】「(えっ!?そうなの?私、トオルちゃんと一緒がいいよ!ヤダヤダ、トオルちゃんじゃなきゃ、ヤダ!!)」
【透】「(まあ、落ち着けって。ダメだと決まったわけでもないんだしさ。俺がまともそうにしてれば、まず大丈夫だってさ)」
【シュゼ】「(えぇ~・・・・・・)」

それでも期待していたのが裏切られかけた分、シュゼは不安を拭い切れていないようだった。

【透】「で、他の人たちはいつ戻ってくるんだ?」
【夕華】「うーん、ほのかちゃんの話だと、ちょっと手間取ってるみたいで遅くなりそうなんだけど・・・」
【透】「それだったら、今日は履修科目の選択とかだけ終わらせることにして、俺のことは明日に回してもいいんじゃないか?」
【夕華】「何を悠長なこと言ってんのよ。早いとこやることやって、シュゼちゃんを安心させてあげたいとは思わないの?」

シュゼの様子を確かめると、彼女は捨てられかけた子犬のように、心細そうな眼をしてこちらを見ていた。

【透】「う、そりゃそうだが・・・」
【夕華】「でしょ?さしあたって、カリキュラムの説明でもしながら、みんなを待ちましょ」
【透】「ああ。分かったよ」

それから俺たちは、待ち時間を利用してシュゼに一通りのレクチャーを行ない、受講計画まで組んでやった。
だが、一連の作業を終えてから、1時間経っても2時間経っても、誰一人として帰ってくる気配はない。
その間、ほのかちゃんと莉央ちゃんの不思議な関係を生暖かい目で観察してみたり、夕華やシュゼと思い出話に
華を咲かせてみたりもしたが、時間はただ過ぎるばかり。
シュゼなどはとうとう、うたた寝をし始めてしまった。

そして、更に1時間。
数杯目のコーヒーを飲み干したところで、俺は痺れを切らし、再び夕華の反応をうかがう。

【透】「・・・帰って来ないな」
【夕華】「・・・帰って来ないわねぇ」
【透】「なぁ、やっぱり明日に回しちゃってもいいんじゃね?」
【夕華】「せっかくここまで待ったんだし、それもなぁ・・・。でも、もう外も暗くなってきちゃったね」
【透】「どうするよ?」
【夕華】「うーん、これ以上遅くなるようなら、透はともかくシュゼちゃんには迷惑になっちゃうなぁ。
     透の言うとおり、明日にしたほうがいいのかな・・・」

夕華までもが萎えはじめたその時、カランカランと、部室の扉にあったベルノッカーが鳴るのが聞こえた。

【????】「遅くなりました。ごめんなさいね」
【ほのか】「あ、夕華ちゃん!紫さんが戻ってきたよ!」
【夕華】「やった、グッドタイミング!これで今日中にお伺いを立てられるわ!」

そう言うと夕華は勢いよく席を立ち、今しがた部屋に帰ってきたばかりの人のもとへと駆け寄って、話をし始めた。
おそらくは、これまでの流れを掻い摘んで説明しているのだろう。
ここからではその話し相手の姿がよく見えないが、女性であることには間違いない。
夕華の態度がいつもよりすまし気味なところからすると、どうやら上級生のようだ。

【夕華】「透、紹介するからこっち来て」
【透】「あ、ああ」

夕華の求めに応じて、俺もそそくさと席を立つ。

【夕華】「さあ、じゃ遅くなっちゃったけど、会長にもご挨拶」
【透】「え!会長って、もしかしてあの伝説の!?」
【夕華】「そう。この人が、私たち『めんへる会』の誇る名会長、六条紫(ろくじょう・ゆかり)さんよ」

そう言って、夕華は部屋の入り口にその人物に俺を引き合わせた。

そこにいたのは、一見してタダモノでないと分かるオーラを放つ、日本人形のような女性。
彼女は、シュゼとも夕華とも異なる、別次元の美しさを発していた。

いや、もちろんあいつらだって、客観的にみて超S級の美人だ。
そこいらの芸能人やモデルなど足元にも及ばない、トップレベルの美貌を有している。
だが、今俺の目の前にいる女性のそれは、シュゼや夕華と比べても更に上をいく。
まさに、完成された美そのものだ。
すらりと背中まで真っ直ぐに伸びた、艶のある黒髪。
均整のとれた顔立ちに栄える、たおやかな唇。
満ち満ちた強い意志を湛える、切れのある目。
気品に富んだ、穏やかな物腰。

彼女がその身に纏うあらゆる、そのまま彼女の溢れ出る才気を感じさせ、
何者をも寄せ付けない絶対的な存在感を醸し出していた。

【夕華】「会長。彼がシュゼちゃんのメンター候補として推薦したい、明石くんです」
【紫】「はじめまして。六条です」
【透】「・・・・・・」
【紫】「・・・・・・」
【透】「・・・・・・」
【夕華】「・・・ちょっと、透。何バカ面晒してんのよ。挨拶くらいちゃんとなさい」
【透】「え?あっ!あ、明石透です!よ、よろしくお願いしますっ」
【紫】「ふふ、透君ね。こちらこそよろしく」

ただ挨拶をするという、彼女のその所作だけで、俺は完全に圧倒されてしまっていた。
夕華に促されなければ、返事もろくに出来ないような有り様だ。
こんな人が、現実に存在するなんて・・・・・・

【紫】「・・・・・・」
【透】「・・・?」
【夕華】「会長・・・?」

挨拶もそこそこに、何やら俺の顔をじっと見つめる会長。
夕華が声をかけても、会長は全く目を逸らさず、俺を見続けている。
だが、そこには女性がオトコを品定めするときの色気とか、面白そうなものを見つけたときの好奇心とか、
そういった好意や関心のようなものは一切なかった。
これは、それ以前の、もっとシンプルで純粋な観察行為だ。

・・・もしかして、俺ってば今、信頼に足りそうかどうか、この人に吟味されてる!?

会長の意図に気付き、若干身体をこわばらせる俺。
だが会長は、そんな俺の戸惑いも意に介さず、俺の肩に手をかけ、ぐいっと顔を間近に寄せてきた。
その距離は、今にもキスしてしまいそうな程近い。
突然の展開についていけなくなった俺の鼓動は、急速に早鐘を打ち出し、身体からは一気に汗が噴き出した。

【透】「うっ!お、おぉっ!!?」
【夕華】「なっ、会長っ!!?」
【紫】「・・・・・・・・・」

俺たちの声が聞こえているのかいないのか、会長は無言のまま、超至近距離で俺を見据え続ける。

【透】「ちょ、ちょっと!?会長さんっ!!?」
【紫】「・・・ふぅん。貴方、とっても綺麗な眼をしてるのね」

そう言うと、会長は俺の首に手を回し、さらに距離を詰めて俺の瞳の奥をじっと覗き込んできた。
俺の身体にもたれかかる会長の全身から香る甘い匂いと、今にも触れそうな唇から漏れる柔らかな吐息が、
俺の五感を烈しく揺さぶる。
だが、俺は情けないことに、夕華やシュゼとじゃれ合っているときのような余裕を一切持てず、
有無を言わせないその強烈なオーラにただただ焦り、身体を堅くすることしか出来なかった。


<選択肢:①なすがままにされる/②必死に抵抗を試みる>
<(選択肢①):夕華-1>

会長のすべすべとした腕が、柔らかい胸が、俺に密着する。
こんな状況で、なすがままにされる以外何が出来るってんだ!?

【透】「あっ・・・ああっ・・・」
思わず嬌声を上げてしまう俺。
そんな俺たちの姿を見かねて、夕華が口を開いた。

【夕華】「か、会長っ!近寄りすぎですっ!!離れてください!!透、あんたも何変な声出してんのよっ!!」
【紫】「・・・あら、ごめんなさい」

<(選択肢②):紫+1>

会長のすべすべとした腕が、柔らかい胸が、俺に密着する。
マズイっ!!このままやられっぱなしだとどうにかなっちまいそうだ!!
精一杯の理性と冷静さをもって、俺は喉の奥から必死に抗議の声を絞り出した。

【透】「かっ、会長さんっ!?近い!近いですっ!!」
【紫】「・・・あら、ごめんなさい」

<選択分岐終了>

そう言うと会長は何事もなかったかのように部屋の奥の会長席へと戻り、俺を呪縛から解き放ってくれた。
俺はといえば、全ての精気を搾り取られたかのように力を失い、木偶人形のように立ち尽くすばかり。
時間にしてみればほんの数十秒のやりとりだったろう。
だが、それだけでもう俺は目の前にいるこの女性に逆らえなくなってしまった。

こ、この人・・・・・・マジで怖ぇ・・・・・・。

さすがは、曲者ぞろいの『めんへる会』を束ねる、やり手会長といったところか。
だが、いろんな意味で他の連中と格が違いすぎる。
少なくとも俺なんかには、一生かかっても遠く及ばない存在であることは間違いない。
そんなことを考えながら萎縮している俺を尻目に、夕華は果敢にも会長に食ってかかった。

【夕華】「会長っ!!みんなの前でいきなり、何やってるんですかっ!!」

おいおい、やめとけって。
まだ出会ったばかりでよく知らないけど、いくらお前でも敵う相手じゃないよ・・・。
俺がそう口走ろうとしたとき、会長が凛と響く声で俺たちに語りかけた。

【紫】「彼、信用して良さそうね」
【夕華】「へっ?」
【紫】「心を根っこから腐らせてしまっているような人に、あんな澄んだ眼は出来ない。
    多くを語らなくても、それだけで充分、透君が信頼に足る人物であることを物語ってるわ。
    彼がシュゼちゃんのメンターで、決まりね」
【夕華】「は、はぁ・・・」

俺たちの待ち望んでいた答えを、会長はあっさりと告げた。
まだ話も充分に交わしていない段階で許可がでたことに夕華も拍子抜けし、先程までの怒りも影を潜めてしまっている。
俺の何が気に入られたのかは俺自身にもよくわからないが、ともかく会長さんのお眼鏡に敵ったみたいだ。
これでやっと、シュゼを安心させてやることが出来る。
俺自身も、腹の底からふつふつとエネルギーが沸きあがってくるのを感じていた。

【紫】「さて、この会にはあと3年生が1人と2年生が2人いるのだけれど、今日は先に帰らせてしまったから
    紹介は後日ね。でも、きっとその子たちも賛成してくれるわ。まずはこの話、正式に通させてもらって
    よろしいかしら?」
【透】「はい、ありがとうございます!俺、頑張りますっ!」

俺の威勢のいい返事に満足したのか、会長は先ほどとは異なる聖母のような優しい笑顔を俺に投げかけてくれた。

【紫】「うん、期待してるわね」
【透】「はいっ!!」

俺は会長に向かって深々と一礼し、部屋の隅で所在なさげに事の顛末を見守っていたシュゼのもとへと駆け寄る。

【透】「(シュゼっ!お前のメンター、俺で決まりでいいって!)」
【シュゼ】「(えっ、本当に!?)」
【透】「(ああ!今、会長さんからも太鼓判押されたよ!)」
【シュゼ】「(わぁい!良かった!じゃあ、これからはトオルちゃんが私の先生だねっ!
      トオルちゃん、よろしくお願いしますっ!)」
【透】「(おぅっ!改めてよろしくな、シュゼ!)」

そう言って、また熱い抱擁を交わす俺たち。
お互い寸止め状態で待たされていたこともあり、勢いあまって、軽いキスまで交わしてしまった。
直後、背中に鋭い視線が突き刺さり、俺の身体からは冷たい汗がとめどなく溢れてくる。
あ・・・しまった、またやっちまったか?

【ほのか】「うわぁ~、人前でキスするなんて、だーいたーんっ!!あっ、こりゃたまらん、ヨダレズビッ!!」
【莉央】「お嬢様、キスに憧れる前に、その締りのない口をどうにかしてください」
【紫】「あら、仲がいいのね。うらやましいわ」

・・・あ、あれ?一部を除いて、意外と普通だぞ?
と、いうことは・・・この痛い視線の発信源はやはり・・・

【夕華】「・・・とーおーるクーン、何、やってるのかな~??」
【透】「はっ、はいっ!スイマセンっ!!」

慌ててシュゼと距離をとり、夕華へ向けて直立敬礼する俺。だが、時既に遅し。

【夕華】「そういうことは控えろって、言ったでしょうがあぁぁっっっっ!!!!」
【透】「ぐはぁぁっっっ!!!!」
【シュゼ】「(きゃああっ!!とっ、トオルちゃんの穴という穴から、変な液が出たっ!!トオルちゃん、しっかり~っ!!)」
【夕華】「ふんっ!もう、知らないっ!!」

夕華の放ったボディーブローは的確に俺の鳩尾を捉え、俺はなす術もなくその場に崩れ落ちた・・・。