新ジャンル「雲女」まとめ @ WiKi
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新ジャンル「雲女」まとめ @ WiKi
ja
2007-07-13T19:25:23+09:00
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「…もう、朝」
目覚めてみると外はよく晴れている。
カーテンの向こう側からは、明るく朝日が部屋へ入り込んできている。
「…良い天気…」
そして頭の上を見上げると、そこには小さな雲が出来始めていた。
「行ってきます」
いつも通りに靴を履いて、家を出る。頭上の雲はすでに影が全身を覆うほど大きくなっていた。
母「傘忘れるんじゃないよー」
「…わかってるよー」
言われた通りに傘を手に取って、玄関を出た。雲はもこもこと鈍い動きで付いて来る。
「…良い天気、なのにな」
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**新ジャンル「雲女」
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- 適当にまとめた。あとよろしこ。 -- 名無しさん (2007-03-22 13:49:44)
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他
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雲「まだグズグズしてんのか さっさと ん!?」
雲「女の友達じゃねえか どうした?」
雲「フン やなこった おれはだれにもしばられねぇ」
雲「だれの命令もきかねぇ!!」
雲「おれは降りたい時に降り やみたい時にやむ!!」
----
雲女「あなたが落としたのは金の太陽?それとも銀の雨雲?」
雷男「僕の心が落ちました」
----
男「女、前から思ってたんだけどさ」
女「何だい?」
男「その曇ってさ、触る事はできるじゃん?」
女「ああ、出来るね」
男「じゃあさ、その上に乗る事って出来るのか?」
女「さあ?考えてみた事もないな、試してみるかい?」
男「おし、じゃあやってみるわ」
男は雲を掴み乗ろうとした。
しかし、雲が急にドーナッツ状になって男は盛大に落ちた。
真下には女がいたが、落ちてくる男を軽く避け、怪我一つ負わなかった。
男「イテテ」
女「どうやら雲は乗られるのが嫌なようだね」
男「何だよ、乗せてくれたっていいじゃんか」
女「まあそう言うな、君だって人に乗られるのは余り気分のいいものではないだろう?」
男「…それもそうか、まあいいや、お蔭でいいものが見れたし」
女「何か見えたのか?」
男「…青の横縞」ボソ
女「~~///く、雲、男に雷を落としてくれ///」
男「わ!ちょ、待て!事故!事故だって!」
女「…まったく///」
----
幼稚園時代?
男「ねえ」
女「…」
男「ねえってば」
女「…わたしに話しかけてるの?」
男「うん、どうして?」
女「みんな、わたしに話しかけないから。
あたまの上のくもがきもちわるいって」
男「ふーん。ぼくはかっこいいと思うけどな」
女「かっこいい?」
男「だってだって、ずーっとくもといっしょなんだよ?
みんなには無いんだよ?すごいじゃん!」
女「すごい…かなあ」
男「うん、そんけーするよ」
女「えへへ。ありがとう」
男「あのさ、なまえ…おしえて?」
女「わたしはおんな。あなたは?」
男「おとこ。よろしくね」
女「うん、よろしく」
嫌われ→かっこいい でしぇいむおんが浮かぶのは仕方ないことだろうか
----
男「あっ雲女じゃん。おーい」
雲「・・・もくもく」
男「昨日は悪かったって。ほら、そんなに乱層雲になるなよ。帰りにパフェおごるからさ」
雲「もくもく!!」
男「ははは、やっぱりお前はそうやって高積雲なほうがかわいいよ」
雲「・・・もくもく///」
男「まあそういう券雲なお前もかわいいんだけどな」
雲「もくもく」
----
女「おはよー」
男「はよー――――雲、なんかちょっとでかくない?」
女「んー? そっかなぁ」
男「ホント、どういう原理なんだろうな、そいつ」
びゅおおおおおおおおおおお――――
女「寒っ! 春先なのに風強すぎ!」
男「……」
女「どしたの?」
男「……いや」
女「??」
男(いま一瞬、雲の中にラピュタがいたような……気のせいだよな?)
----
犬「…………」
女「うわ、あの犬なんか吠えそうな顔してる」
男「つないでるじゃん」
女「そういう問題じゃないって。あー、一本道だここ」
もこもこもこ――
女「おお? おおおおおおおお?」
男(濃霧になって全身すっぽり……確かに雲と霧は同じもんだからなあ)
女「忍法霧隠れの術!?」
男「どーでもいーが」
犬「…………」
犬「ウウウウウウ……ワウワウワウワウッ!!!! ワウゥ!!! ワンワンワンワンワンワンワンッ!!!!!!!!」
女「な、なんで!? 見えてるのっ!?」
男「目の前を行く不審な白いもこもこならな――」
----
【夏の公園/幼少時】
男「なに見てるの?」
女「花が・・・」
男「・・・あぁ、観察用の・・・枯れちゃってるね・・・」
女「・・・・・・」
ゴロゴロゴロ・・・
ザザァーーー・・・
男「もう雨を降らせても・・・・・・そこに立ってると濡れちゃうよ?」
女「・・・・・・」
ザザァーーーー・・・・・・
2007-03-22T13:45:26+09:00
1174538726
-
ID:bn3pcuPPO(短編)
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~DB~
女「男くんっ。見て見てー」
男「ん、何だ」
女「雲をこうして薄く円形にして…」
男「…」
女「気円斬!」
男「おお」
女「丸く球体にして…」
男「ふむふむ」
女「かめはめ波!」
男「へえ」
女「みんなオラに力を分けてk」
男「昨日ドラゴンボール読んで思いついたんだろ、お前」
----
~不可抗力~
――女の家。
男「折角、来てやってるのに」
――女の部屋。
男「呼んだ本人が何で風呂に入ってるかな」
――尿意。
男「ちょ、ちょっとトイレ…」
――うる覚え。
男「トイレってこっちだっけか…」
――オープン。
男「!!」
女「!!」
男「…」
女「…」
男「…あ、いや、そn」
女「きゃー!!」
――クローズ。
女「見たでしょ!今ぜったい見たでしょ!!バカ!死ねー!!」
男「いや…何て言うか…」
女「?」
男「雲で完全に見えなかった…ちくしょう、雲め、こんな時だけっ」
----
~恋する女はせつなくて男を想うとすぐに~
男「ああーやっと昼休みかー。腹減ったなー」
女「男くんっ、お弁当たべよ」
男「おう、屋上行くか」
――屋上。
男「やっぱり女は料理上手いなー最早ハンバーグは神のレベルだぞ」
女「えへへ…そうかな」
男「女は絶対に良い奥さんになるよな」
女「ふぇっ!?」
男「こんなハンバーグ作られたら、世の中の男性みんなメロメロになっちまうよ」
女「やだ…男くん…そんな事言われたら私…」
――蒸発音。
男「お、女!?上、上!!」
女「あわわ、雲が消えちゃうー!!」
----
~クリスマス~
男「今年は降らなかったな、雪」
女「うん、そうだね」
男「一緒に見たかったな」
女「見たかったね」
――上空。ちいさなちいさな雪。
男「あ。頭の雲が雪降らしてる」
女「ほんとだ…ちいさくて、でもキレイ」
男「これでホワイトクリスマスだな」
女「…うん。メリークリスマス」
男「メリークリスマス」
----
~いろんな雲~
男「さっきwikipediaで見たんだけど」
女「うん」
男「金星の雲は硫酸で出来てるらしいぞ」
女「…何か怖いね」
男「しかもさ、木星と土星はアンモニアだぜ」
女「ぜったいに雨は降って欲しくないね」
――視点が上に。
男「…」
女「…」
――異臭。
男「くっさ!お前の雲はアンモニアか!!」
女「知らないよ!もぉー、男くんが言わなきゃこんな事ならなかったのにー!!」
----
~マジック~
女「ではでは、これからマジックをお見せしましょー」
男「ほう」
女「まずはそこのアナタ、手袋を貸して頂けますかな?」
男「はいよ」
女「この何の変哲も無い手袋を、上に放り投げます」
男「ふむ」
女「すると何とビックリ!手袋がカチコチになってしまいましたー!!」
男「…どうすんだ、これ」
女「うっ…」
----
~ご機嫌ななめ~
女「男くん、おはよう」
男「おはよう。あ、今日は雨か」
女「朝からずっとこうなの。みんなは晴れなのに…」
男「まあ、コイツにも機嫌が悪い時だってあるさ」
女「うん…」
男「…」
女「…隣だと雨がかかっちゃうでしょう?先に行っていいよ」
男「…」
――男、傘の中に入る。
女「男くんっ!?」
男「これなら濡れないだろ」
女「…うんっ」
――二人のために降る雨。
----
~いでよ~
女「むぅー」
男「どうした、もう滑り止めしか残ってない受験生みたいな顔して」
女「いや、雲から何か出ないかなぁーと思って」
男「…出したいのか?」
女「だって、こんな近くに雲があるんだもん、何か新しい事発見したらノーベル賞もらえるかもよ!ね、男くんも手伝って!!」
男「…いや、」
女「?」
男「多分、お前自体が大発見だと思うぞ」
女「はっ」
----
~除湿~
女「さぁー、今日もやって来ました雲の実験コーナー!!」
男「お前、雲好きだな」
女「今日は除湿器ー!!この雲はどこまで耐えられるのか!?」
男「テンション上がってるのお前だけだぞ」
女「それじゃ行くよ。よーい、スタート!」
男「…」
女「…ん」
男「…」
女「うぅ…く、苦しい…っ」
男「…」
女「だが…し、かし…負けるわ…は」
男「何か楽しそうだな、お前」
----
~恐怖~
――河原、芝生、青空、爽やかな風。
男「…」
女「…」
雲「…」
男「…わたあめ、食べたいな…」
雲「!」スゥー…
男「…おい、お前の事じゃないぞ。逃げるな」
女「…」スゥー…
男「…お前は関係ないだろ。ついでに逃げるな」
2007-03-22T13:45:03+09:00
1174538703
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ID:r0IvWB4J0(ID:Ot9bs1TG0)
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今更だがわかりにくい人いるだろうし俺の書く雲についての補足設定
・常に女の頭上に位置し続ける
・女の意思とはまた別の意思を持っている
・伸縮自在。軽い物なら簡単に持てる
・晴れ以外の天気を生み出す。基本曇りだが女の心情により天候変化(ここだけ意思疎通)
まあ簡単に言うと空に浮いてる雲とは別として考えてくれってこっちゃ
----
「…もう、朝」
目覚めてみると外はよく晴れている。
カーテンの向こう側からは、明るく朝日が部屋へ入り込んできている。
「…良い天気…」
そして頭の上を見上げると、そこには小さな雲が出来始めていた。
「行ってきます」
いつも通りに靴を履いて、家を出る。頭上の雲はすでに影が全身を覆うほど大きくなっていた。
母「傘忘れるんじゃないよー」
「…わかってるよー」
言われた通りに傘を手に取って、玄関を出た。雲はもこもこと鈍い動きで付いて来る。
「…良い天気、なのにな」
----
女「今日は良い子だね」
そんな風に雲を見上げて微笑む。
なんせ昨日は突然帰り道でにわか雨を降らせてくれたから。傘は例によって忘れていた…
晴れの日に外に出ると雲は元気が良くなるようなのだが、曇りの日は不安定になってしまう。
「おはよー」「はよ~」
周りでは笑顔で挨拶を交わす人々、けれど誰もが自分の頭上をちらちらと見上げている。
女「…照れなくてもいいよ、いつもの事じゃない」
雲が幾分しぼんだように見えて、何だか可笑しかった。
----
女「…今日は男君、いないのかな」
誰からも挨拶されないのに気づき、女は辺りを見回す。
雲はもこもこと形を変え、少し長細い形状となる。その体を伸ばし、何かを探すような仕草をとった。
女「あ、いいよ別に」
そう言ってすぐに、雲は女の後ろの曲がり角へ先端を伸ばして行く。
すると間もなく「おわぁ」という間の抜けた声が聞こえてきた。
女「あわわ…ごめんね男君…」
慌てて曲がり角へと引き返した。
----
男「あぁびっくりした…お前なぁ、前見えなかったし、息苦しかったぞ」
女「ご、ごめんねホントに…この子も悪気は無いんだけど」
男「まあ良いよ、いつもの事だし。おはよ、女」
女「あ…うん、おはよ」
男。幼馴染み。
雲の存在を特別何とも思わない、女の理解者の一人。
幼い頃から慣れ親しんでいる為か、雲さえも幼馴染みのように思っている。
男「今日は雨降ってないのな」
女「ん、なんか機嫌良いみたい」
男「何よりだな…さ、行くか」
女「うん!」
雲の下に並んで歩き出す。
気を利かせるようなそよ風が頭の上から吹いてきた。
----
学校に着いても雲は消えない。
室内だと少し小さくはなり、天気も安定するものの相変わらず頭の上をもこもこと付いてくる。
男「しかしなぁ…なんで外だと雨やら降るのに、中だと普通なんだ?」
女「わかんないけど…でも、何回か家の中でも雨とか降ったことあるよ」
男「…そう言えば昔喧嘩した時、二人で部屋でずぶ濡れになったよな…」
女「あはは、あの時男君風邪引いちゃって大変だったんだよね」
雑談を交わしながら教室へ入る。
初めはクラスメート達の雲に対する反応は様々だった。
が、慣れとは不思議なものでもう誰も驚くようなことはない。
まあ何人かは未だにヒソヒソと話している者もいることはいるのだが、女も特別気にはしていなかった。
----
女友「よっ、今日も二人仲良く登校だね」
女「へへ…」
男「なんか引っかかるセリフだな…」
女友「ちゃんと相合い傘代わりになったか?このw」
言いながら下敷きでペシペシと雲の端を叩く。
男「おいおいんなことしたらまた…」
雲は叩かれた部分を女友の顔まで伸ばす。
女友「うひゃひゃ、くすぐったいっての!はは、毎朝これやんないと気が済まないのよねー」
男「…よくわからんが毎朝楽しそうだな」
女「友ちゃんにはよく懐いてるのよね、この子…」
----
女と雲は産まれた時から一緒だった。
女が寝ている間以外はいつでも雲が頭上にいた。
それが何故なのかはわからない、だが…
女「…もうやだ」
母「どうしたの?」
女「何でこの雲は消えないの?ずっと私の上にいるの?
これの所為で私、仲間外れにされて、みんなにからかわれるの。
もうやだよ…」
母「…」
それを受け入れられない時期も、もちろんあった。
この時はまだ、奇異の目で見られることに大きな抵抗を感じていた。
----
-遠足-
先生「じゃあみんな、しっかり列を乱さないで行きましょう。
…こら、そこ間が空いてますよ」
子供A「だってー前に雲がいるんだもん」
子供B「そうだよ。せっかく良い天気なのに、コイツといるとじめじめするんだよなー」
女「…」
先生「どうしてそんなこと言うの!女ちゃんを傷付けるようなこと言わない!!」
子供A「えーでもさぁ」
男「女、俺と一緒に行こう」
女「え…でも…」
男「いいから、ほら早く行こうぜ」
女「…うん」
----
男「ああいう時はな、黙ってちゃ駄目なんだぞ。
ガツーンと言ってやんなきゃ」
女「でも、ホントのことだし…
男「バカだな、お前は何にも悪くないだろ。そんなんだとまた何か言われるぞ」
女「…男君は嫌じゃないの?」
男「何がだよ」
女「私といるとからかわれるし…それに、私の周りだけ曇ってるし」
男「んなの気にしなくても良いじゃん。曇ってる方が涼しくて良いしな」
からかう方がおかしい。そう言って側にいてくれる幼馴染みの存在は、正直救いになった。
けれど、平気で自分に接してくる男も不思議な人だと思う気持ちも感じていた。
女「…変なの、男君って」
男「何だよそれ…置いてくぞ?」
女「あ、待ってよー」
----
-山の天気は不安定-
ポツ、ポツ、サァァァァ…
女「あっ、あっ…」
男「降って来ちゃったな」
女「…うっ、ぐす…ひっく、何で…何で今日、雨なんか、降らすの…?」
男「お、おい泣くなよ…ほら、傘差して」
子供A「見ろよ雲のヤツ雨降らしてやんのー!」
子供B「あーあ最悪だなー、あいつの所為で遠足台無しだ」
先生「いい加減にしなさい!!」
男「あいつら…絶対後でぶっ飛ばしてやる」
女「うっく、ごめんね、ごめんね男君。濡らしちゃって…」
男「いいよそんなの、気にすんな。さ、もうすぐ頂上着くから行こう」
女「ん…でも、傘一つしか…」
男「…まあ良いじゃん////」
----
女「なかなか止まなくて、ごめんね」
男「もう謝んなって…」
女「うん…男君、ありがと」
男「え?」
女「いっつも、私なんかと仲良くしてくれて…ぃたっ」
突然でこピンを喰らわされ、女は額を押さえる。
男は少し顔を強張らせてジッと見つめてきた。
女「お、男君…?」
男「そういうこと言うな」
女「え…」
男「私なんかとか言うな。仲良いのは当たり前だろ、友達だから。
俺だってその雲だって…お前の友達なんだからな」
女は頭上を見上げた。雨はいつの間にか止んでいて、雲はどことなく輝いているように見えた。
雲が友達だなんて、考えたことも無かった。ただ鬱陶しいだけの存在だと思っていたのに。
----
男「その雲だってきっと生きてんだから、あんまり嫌っちゃ可哀想だろ?
お前だって悪口言われたら嫌じゃん」
女「う…ん」
男「みんなで仲良くした方が楽しいしな」
そう言われればその通りだ。
女は手を伸ばしてそっと雲に触れてみた。頼りない手応えだが、確かに少し暖かかった。
女「…触ったことあったのに、何でだろ…暖かいの、初めてわかった」
男「やっぱ生きてるんだな…なぁ、腹減ったし弁当食べよう」
女「うん!…男君、ホントにありがとね」
男「私なんかは無しだぞ」
女「へへ、これからもよろしくね」
男「…あぁ」
少しだけ、雲と仲良くなれたような、男君に友達とは違う気持ちを抱いたような。
この遠足を、多分私はずっと忘れないと思う。
女「男君も、喧嘩しないでね」
男「…わ、わかった」
----
女「もう5年も前か…今思えば、あの時の男君のおかげなんだよね。私がこの子とちゃんと向き合えるようになったの」
男「そうだなぁ…お前雲のことめちゃくちゃ嫌がってたっけな」
女「うん…」
女はそっと手を伸ばして、雲を優しく撫でる。雲はもこもこと小さく揺れて喜んでいるようだ。
女「ごめんね、ひどいことばっか言ってたね。よしよし」
男「…何て言うか、やっぱり明るくなったよな、女」
女「そうかな?」
男「あぁ。昔は泣いてばっかだったけど…今の方が俺は好きだな」
女「…ふふ////」
もこもこもこもこもこもこ
男「おわっ!何で覆い被さるんだよ!?」
女「あれ、友ちゃんに影響受けちゃったのかな…」
男「の、のんきな解釈はいいから助けてくれ!」
----
-乗る-
男「その雲って乗れるのか?」
女「わかんない、自分じゃ出来ないし」
男「ちょっと試してみて良いか?」
女「んー、どうする?」
もここここ
女「乗ってみても良いって」
男「よっしゃ、じゃあちょっと失礼」
女「気、気をつけてね」
男「大丈夫だって、お、意外と安定して…」
もっこーん
男「え、あ、足が抜け、うわああぁあぁ!」
女「きゃああぁぁあ!?」
----
-乗る②-
男「痛てて…お、女、大丈夫か?」
女「ん、だ、大丈夫だけど…」
むぎゅ
女「お、重いよ男君…////」
男「わわわわ!す、すまん!!」
女「うん…?なんかこの子、楽しそう…」
もこもこもこ
男「楽し…ま、まさかワザとかお前!く、くそぉ…」
女「ま、まあ良いじゃない。やっぱり乗っちゃ駄目なんだよ、ね?」
男「はぁ、仕方ないか…悪かったな二人とも。まぁ女の上に乗れたから良いや」
女「////」
もこもこもこ
男「だーから覆い被さってくるなー!」
----
-食べる-
女「うぅ…勉強疲れるなぁ、甘い物でも食べたい…」
机に突っ伏して伸びをしながら呟く。
すると目の前に白い物が降りてきて、ふよふよと漂い始めた。
女「え…?これ…」
もこもこもこ
女「くれるの?…ふふ、ありがと」
試しに手の平に収まるほどのその綿状の雲を頬張ってみる。
驚くことに口の中にほのかな甘みが広がってきた。
女「!…甘い、何で?」
もこもこもこ
女「それ飴玉の包み?…そっか、それを食べて…ふふ、ありがと」
たまに見せてくれる、不思議な力。
----
-隠れんぼ-(小学生ネタ)
女「負けー男君がオニーw」
男「わかったよー、じゃあ100数えるぞー」
女(でもこの辺隠れるとこ少ないんだよね…)
男「いーち、にーい、さーん…」
女(どうしよ…よし、こうなったら)
30分後…
男「ふぅ…いないなぁ。もうだいぶ経つし…降参するか。
でもあいつ見つけやすそうなんだけどな、目印あるし。
おーい女ー!降参するよー出て来てくれー!」
もこっ
男「おわぁ!う、上から…あーっ雲にまぎれて木の上に隠れてたのか!ずるいぞー!」
女「お、男君…はぁ、はぁ」
男「え、ど、どうしたんだよ真っ青だぞ!?」
女「…ずっと雲の中にいたから、息…苦し…かった…」
男「…馬鹿だなってちょ、ま、俺まで取り込むなーーー!!」
男(せ、せまい…てか近…////)
女(嬉しいけど、無茶しないでぇ…)
----
女「…」
キョロキョロ
女「…誰も、いない」
女「きんとうーーーーーーーーーん!!」
もこもこもこもこもこ
女「よーし、良い子だぞきんとう…」
男「…何やってんだ?」
女「!!!」
女「あ…えと…////」
もこもこもこもこもこ
男「わっ!?な、何で被さって来るうあsじゃhであgdhだbkっjか」
女(だって…1回やってみたかったんだもん…)
----
-天候-
男「泣いてる時は?」
女「雨かな」
男「怒ってる時」
女「雷…小さいけどね」
男「じゃあ笑ってる時」
女「…曇り?」
男「それも何か違う気がするが…じゃあ」
ちゅっ
女「!」
男「…照れてる時は?」
女「…えっと…////」
もこもこもこもこもこ
男「ぶふぉお!?」
女「…雄大積雲、かな////」
2007-03-22T13:44:29+09:00
1174538669
-
短編
https://w.atwiki.jp/cloudgirl/pages/14.html
[[ID:r0IvWB4J0(ID:Ot9bs1TG0)]]
[[ID:bn3pcuPPO(短編)]]
[[他]]
2007-03-22T13:40:28+09:00
1174538428
-
ID:Ot9bs1TG0
https://w.atwiki.jp/cloudgirl/pages/13.html
<dl>
<dd id="res0_254body"><font color="#FF0000">-前兆-<br></font><br>
男「おはよう」<br>
女「あ、おはよ…ケホッケホッ」<br>
男「どうした、風邪か?」<br>
女「んー…ちょっと調子悪い…けど、大丈夫だよ。今日昼までだし」<br>
男「そうか…でも無理するなよ」<br>
女「うん…実はこの子も少し、調子悪いみたいなんだけど」<br>
<br>
もこもこ…<br>
雲を見上げてみると、言われた通り何となくしぼんでいて、動きもいつもより鈍い気がした。<br>
<br>
男「こいつも病気かな…」<br>
女「…心配だけど、何にも出来ないから…ケホ」<br>
男「…大丈夫だよ、女の風邪が治ったらこいつもきっと元気になる」<br>
女「そうだよね…」<br>
<br>
男(しかし…今日天気悪いな)</dd>
<dd>学校に着いてからはいつも通りだった。<br>
けれど女はいつもよりボーッとした表情が多く、雲もたまに両端がだらんと垂れてきたりしている。<br>
不調なのは目に見えているが、昼までだから何とかなるだろう、そう考えて男は気にしないようにしていた。<br>
<br>
友女「女ーなんか元気無いね。どしたん?」<br>
女「あ…友ちゃん。うん、ちょっと風邪気味なの」<br>
友女「そりゃお大事にー。なんか雲もダラーとしちゃってるし」<br>
<br>
友女に下敷きで撫でられても、雲は力無さ気にもこもこと友女の頭を撫で返してくるだけだった。<br>
<br>
友女「あらら…重症だねこりゃ。今日台風来るらしいから帰り際とか気をつけてね」<br>
女「え…そうなの?今日みんないないから、夜一人なのに…」<br>
<br>
男(台風…か、そういや天気予報見てなかったな)<br>
<br>
窓の外を見てみると、どんよりと薄暗い雲が空全体を不気味に覆っていた。<br>
<br>
<br>
<a id="id_tag256" name="tag256"></a></dd>
<dt id="res0_256"></dt>
<dd id="res0_256body">
やっと授業が終わり、放課が近付く頃には風が強くなり始めていた。<br>
<br>
男「女…帰ろうか、送ってくよ」<br>
女「うん…ありがと…」<br>
男「調子悪そうだな。熱上がってるんじゃないか?」<br>
女「…かもしんない。でも今日誰もいないし、自分で帰んないと…」<br>
<br>
帰り道、どうもフラフラ頼り無い足取りの女の手を取りながら一緒に歩く。<br>
女「か、風邪うつっちゃうよ…?」<br>
男「手繋いだくらいでうつりゃしないって。何ならおぶっても良いんだぞ?」<br>
女「…大丈夫だよ////」<br>
<br>
雲は風に流されることもなく、頑張って二人の上を付いて来ている。<br>
男「お前も頑張れよ」<br>
見上げて励ますと、雲がわずかに頷き返したように見えた。</dd>
<dd><br>
<br>
<a id="id_tag257" name="tag257"></a></dd>
<dt id="res0_257"></dt>
<dd id="res0_257body"><font color=
"#FF0000">-付きっきり-<br></font><br>
女の家の前まで来た所で、不意に女が男の肩に頭を預けた。<br>
男「!お、女、大丈夫か!?」<br>
女「ん…ごめん、男君…ちょっと、きついかも」<br>
男「大丈夫だ、すぐ中まで運んでやるからな」<br>
鍵を預かると、うなだれる女をそっと抱き上げて玄関のドアを開けた。<br>
<br>
部屋まで運んだ女をベッドに寝かせてやる。<br>
女「ありがとう、男君…」<br>
熱のため赤らんだ顔をこちらに向け、潤んだ目で礼を言った。<br>
男は優しく微笑みながら、女に毛布を掛けてやる。<br>
男「良いんだよ、気にすんな。ちゃんと付いててやるから」<br>
女「え、でも…」<br>
男「お袋にはちゃんと電話しとく。お前ら放っておけないからな」<br>
女「…ん、本当にありがと…」<br>
<br>
ふよふよと漂う雲を撫でながら、男は窓の外を見る。<br>
いつの間に降り出したのか、強い風の中で雨粒が舞っていた。<br>
<br>
男(…荒れそうだな…)</dd>
<dt id="res0_258"></dt>
<dd id="res0_258body">
絞った手ぬぐいを額に乗せてやると、女は照れくさそうに笑った。<br>
<br>
男「…何で笑ってんだ」<br>
女「だって、男君に看病して貰うなんて、初めてだから…へへ」<br>
男「確かにそうだけど…笑うようなことか?」<br>
女「ん、結構嬉しいから」<br>
男「…馬鹿、寝てろ////」<br>
女「はーい」<br>
<br>
素直に目を瞑った女の額に軽くキスを落とし、男は何か温かい物でも作ってやろうかと台所へ向かう。<br>
<br>
男「…そうだ、雲にも何かやるかな」<br>
<br>
以前、雲が飴を食べたと女から聞かされていた。<br>
調子が悪い雲に何をやれば良いかは謎だが、とりあえず台所で探すことにした。<br>
<br>
男「…梅干しは…さすがに食わねぇか」<br>
<br>
<a id="id_tag259" name="tag259"></a></dd>
<dd id="res0_260body">
とりあえずホットミルクとはちみつを持って部屋へ戻る。<br>
<br>
女「わー、ホットミルクだ…ありがと、ケホッケホッ」<br>
男「ん、冷めないうちに飲めよ…お前もはちみつ、どうだ?」<br>
<br>
降りてきた雲にはちみつをやっていると、窓の外で轟々と風の音が鳴り響き始めた。<br>
凄まじい勢いで降り注ぐ雨と、横殴りの暴風はまるで嵐のように止む気配は無い。<br>
<br>
男「…すげぇな…」<br>
女「何か、怖い…あ、雨戸閉めた方がいいかな。窓の」<br>
男「ああ俺がやるからいいよ、寝てな」<br>
<br>
男が窓に手をかけた、その時。<br>
窓の外が一瞬眩しく光り、それと同時に、<br>
<br>
ガラガラガラガラッドオオオォォォォォォン!!!!!<br>
男「うわっ」<br>
女「きゃあぁっ!」<br>
<br>
家のすぐ近くに雷が落ちたらしく、轟音と共に部屋の電気が消えた。<br>
女「てっ停電!?」<br>
男「ち、近かったな今のは…」<br>
<br>
突然の雷、そして停電に慌てた女は、布団から飛び出て男に抱き付いた。<br>
女「お、男君…」<br>
男「だ、大丈夫だよ、すぐに電気が…」<br>
<br>
その時だった。</dd>
<dd><br>
<br>
<a id="id_tag261" name="tag261"></a></dd>
</dl>
<p id="res0_261"></p>
<dl>
<dd id="res0_261body"><font color=
"#FF0000">-笑顔が消えた-<br></font><br>
ガシャァアンっパリイイィイン!!<br>
<br>
暴風に飛ばされてきた看板のような物が、窓ガラスを破り部屋へと突っ込んできた。<br>
<br>
男「!うあぁっ!!」<br>
女「いっ…が、はっ…!」<br>
飛び散った窓ガラスの破片が二人を襲い、更に鋭い看板の破片が女の腰に突き刺さった。<br>
<br>
男「な…お、女っ!!!」<br>
女「…ぁ…お、男、く…うっゲホッゲホッ!!」<br>
<br>
全てが突然の出来事だった。<br>
停電の所為で薄暗い部屋の床に、ポタポタと赤い雫が滴り始める。<br>
男「しっかりしろ!…女、女ぁっ!!」<br>
<br>
女の細い腰に突き刺さった木片。それ自体の傷は浅かった。<br>
しかしガラスの破片による腕、肩口、太ももの傷も重なり、出血量が半端ではなかった。<br>
男も腕などに傷を負っていたが、今は自分のことは気にしていられなかった。<br>
<br>
男「待ってろ…すぐ、救急車呼んでやるから!!」<br>
力無くうなだれた女をそっと横たえ、男は携帯を取り出した。<br>
手が震えて、まともにボタンを押すことが出来なかった。<br>
</dd>
<dd><br>
<br>
<a id="id_tag262" name="tag262"></a></dd>
<dd id="res0_263body">男「…すぐには、来れない…?」<br>
<br>
電話口から聞かされた重い言葉に、男は血の気が引いた。<br>
この台風により、病院から最も近い道で土砂崩れが起こっていた。<br>
更に各所で事故などにより道が塞がれ、家に着くまでには最低でも一時間以上はかかると言う。<br>
だが、女の出血はひどく、そんな悠長なことをしていたら、最悪失血死の可能性がある。<br>
<br>
男「…女…」<br>
<br>
男は女を玄関先まで運んできていた。<br>
病院側からの指示に従い、何とか止血作業はしたものの相変わらず女はぐったりとしたまま動かない。<br>
また、出血も完全に収まったわけではない。<br>
元々風邪で弱っていた身体、一刻の猶予も許されない状況なのに。<br>
<br>
男「…このままじゃ…女が…」<br>
<br>
そっとドアを空けた。<br>
嵐は止む気配も無く、轟音は残酷に男を嘲笑うかのように見える。<br>
病院まではほんの一、二キロなのに、その距離があまりにも遠く思えた。<br>
救急車の音は全く聞こえてはこない。<br>
<br>
雲はただ、二人を見下ろしながら漂っているだけだった。</dd>
<dt id="res0_264"></dt>
<dd id="res0_264body">…どうする?<br>
…どうすれば良い?<br>
…俺は、何も出来ないのか?<br>
<br>
この状況では女を担いで病院へ向かうことも出来ない。<br>
かと言って救急車の到着を待っていたら女の命が危ない。<br>
焦りと不安に駆り立てられ、一筋の涙が頬を伝った。<br>
<br>
『男君に看病して貰うなんて、初めてだから…へへ』<br>
<br>
何でこんなことになってしまったんだろう。<br>
昨日も、今朝も、ほんの数十分前も、彼女は笑っていた。笑顔だった。<br>
なのに今は…どうしてこんな、青い顔で…<br>
<br>
男「女…」<br>
<br>
無力。<br>
今の自分を言い表すのに、最も相応しい言葉だった。<br>
<br>
風邪なんて引いていなければ。<br>
台風なんてやって来なければ。<br>
停電になんてなっていなければ。<br>
窓から何も入り込んでこなければ。<br>
身を挺して守ってやれれば。<br>
<br>
それならば、良かったのに。<br>
悔やんでも、全てが遅かった。</dd>
<dd><br>
<br>
<a id="id_tag265" name="tag265"></a></dd>
</dl>
<p id="res0_265"></p>
<dl>
<dd id="res0_265body"><font color="#FF0000">-促されて-</font><br>
<br>
もう、どうしようも無いんだろうか…そんな絶望感が頭によぎった。<br>
けれど。<br>
<br>
もこもこもこ<br>
男「…お前」<br>
もこもこもこもこ<br>
<br>
突然降りてきた雲は男に語りかけるような仕草をとった。<br>
それが何を意味するかはよくわからないが、何故だか雲の考えていることは伝わったような気がした。<br>
<br>
男「…行けって?」<br>
もこもこもこ<br>
男「…無理だ、外はこんな嵐だぞ?」<br>
もこもこもこもこ<br>
男「…ただでさえ弱ってんだ。こんな中病院まで耐えられるわけ…」<br>
もこもこもこもこもこ<br>
男「…俺だってな!!!こんなとこでじっとしてたくねぇよ!!!!<br>
出来るなら女のこと助けてやりたいに決まってんだろ!!!<br>
…でも…でも、どうしろってんだよ!!!?」<br>
<br>
怒鳴り散らされても、雲は引き下がろうとせずに見据えてきた。<br>
…見据えてきたと、男にはそう見えた。<br>
<br>
<a id="id_tag266" name="tag266"></a></dd>
<dd id="res0_267body">
突然雲は体を伸ばし、男の頭に触れた。<br>
男「何すん…」<br>
振り払おうとした男の手が止まった。<br>
<br>
男「…え…お前…」<br>
<br>
信じられないことに、雲の意思が男に流れ込んで来た。<br>
言葉として、ではないが雲の考えていることが何故か明確に伝わった。<br>
女は雲と意思疎通が出来るようになっていたが、雲が男に意思を伝えるのは初めてのことだった。<br>
そして、その意思を理解した男は、雲に向かって静かに口を開いた。<br>
<br>
男「…本気か?」<br>
もこもこ<br>
男「…お前自身が、危ないんだろ?」<br>
もこもこもこ<br>
男「…そうまでしてでも、女を…助けたいんだな?後悔も…無いんだな?」<br>
もこもこもこもこ<br>
男「…わかった、俺も気持ちは一緒だ。お前の覚悟、絶対に無駄にはしない」<br>
もこもこもこもこもこ<br>
男「でもな…お前も無事でいるって約束しろ。女を悲しませるな」<br>
……………<br>
男「…約束、出来るか?」<br>
…もこもこもこ<br>
男「…よし、じゃあ…行こう!!」<br>
<br>
男はレインコートを羽織り、女にもそれを着せる。<br>
ぐったりした女を抱きかかえ、雲に向かって頷いた。<br>
雲は大きく体を伸ばすと、二人を包み込むようにして取り囲み、ゆっくりと浮上を始める。<br>
しかし人二人を持ち上げるのはさすがに辛いらしい、なかなか満足のいく高さには上がらない。</dd>
<dd><br>
<br>
<a id="id_tag268" name="tag268"></a></dd>
<dd id="res0_281body"><font color="#FF0000">-二人の思い-</font><br>
<br>
男「頑張れ…女の命はお前にかかってるんだ!」<br>
<br>
男の励ましに応えるように、雲は少しずつだが確実に上昇し始めた。<br>
<br>
男「っし、行くぞ!」<br>
<br>
玄関のドアを出て、雲は荒れた空へと上っていく。<br>
思った以上に凄まじい勢いの風雨は、雲の進路を妨げようとする。<br>
それでも雲は確実に、病院への道を目指して進んでいった。<br>
<br>
男は雲の意思を読み取った。<br>
自分の体に二人が入れば、嵐の影響を最小限にして病院まで行ける。<br>
女の体に負担をかけない方法はこれしか無い。<br>
少なくとも救急車を待ち続けるよりはよほど効率が良い。<br>
もちろん、嵐の中飛び続ける自分自身はどうなるかわからない。<br>
けれど、男と同じで、女を守りたいから、ずっと一緒だった女を守りたいから。<br>
自分の力を使って欲しい。女を助けて欲しい。<br>
<br>
男「…女を一緒に守ろう。頑張れ!」<br>
<br>
暴風は雲に容赦無く襲いかかる。<br>
雲は負けじと荒れた空を進み続ける。<br>
<br>
内部では女の傷の止血も同時に行われていた。<br>
雲が患部を包み込み、血を止める。染み込んだ血液で雲は赤く染まるが、確かに効果はあった。</dd>
<dt id="res0_282"></dt>
<dd id="res0_282body">男(まだか…まだか…!!)<br>
<br>
いくら効率の良い方法と言っても、やはり女の体力は少しずつ奪われていく。<br>
時間との戦いの中、男はただ雲を励ますことしか出来なかった。<br>
<br>
男「…そういや、お前も調子、悪かったんだよな…」<br>
<br>
そっと雲の内側を撫でながら、男は呟いた。<br>
男「…大丈夫か?もう少しだから…頑張ってくれ。ごめんな、俺、役立たずで」<br>
<br>
-『そんなことない』<br>
男「!」<br>
-『男は役立たずじゃない。女を助けられるから』<br>
男「…お前…」<br>
-『僕じゃ出来ないことを、男は出来るから…女を、幸せにすること』<br>
男「…馬鹿、俺一人じゃ駄目だ。お前も必要だからな」<br>
-『はは…あと少し、頑張る』<br>
<br>
男(…女、お前も聞こえるか?)<br>
<br>
男は腕に抱えた女を、優しく抱き締めた。<br>
<br>
男(俺達が…守ってやるからな)<br>
<br>
<a id="id_tag283" name="tag283"></a></dd>
</dl>
<p id="res0_283"></p>
<br>
<dl>
<dd id="res0_283body"><font color=
"#FF0000">-一つの命、一人の覚悟-</font><br>
<br>
男「…見えた!」<br>
雲の隙間から確かに、目指す病院が見えた。<br>
少しずつ少しずつ、二人を包み込んだまま今度は下降し始める。<br>
<br>
男「あと少し…頑張ってくれ!」<br>
-『任せといて』<br>
<br>
しかし、雲の体には徐々に異変が起きつつあった。<br>
包み込む面積は次第に小さくなり始めた。雲自体が収縮し始めているのだ。<br>
-『まだ…頑張れる。女の為…また、笑顔、見たいから…』<br>
<br>
遂に雲は地面に降り立った。そこは病院の正面玄関の真ん前だった。<br>
雲は二人から離れ、男は女を抱えて走り出した。<br>
<br>
男「ありがとう、お前のおかげだ!」<br>
-『喜ぶのはまだ早い。早く女を』<br>
男「…あぁ、そうだな」<br>
<br>
…男は気が付かなかった。<br>
もう雲が、女の頭上に位置していないことを。<br>
雲の大きさが、家を出る時に比べ若干縮んでいることを。<br>
女が寝ていても、雲は自らの意思で存在し、動いていることを。<br>
<br>
それは、雲が女の体から「孤立」したことを意味していた。<br>
<br>
-『…もう、駄目かもしんない』<br>
その呟きは、男にも聞こえていた。</dd>
<dt id="res0_284"></dt>
<dd id="res0_284body">
衰弱した女は、すぐに集中治療室へ運ばれることになった。<br>
必ず一命は取り留める。医師の言葉を信じて、男は病室の外の廊下で待つことになった。<br>
雲は男に悟られまいと、女の体の上に付いて行くことにした。<br>
<br>
男「女のこと、見守っててくれ」<br>
-『うん…あと、もしもの時は』<br>
男「…あぁ、わかってる。アレを女に渡すよ。でもそれは出来れば無しの方向で、な?」<br>
-『はは…よろしく』<br>
<br>
男「…またな」<br>
<br>
<br>
治療室の中…薄れゆく意識の中で、不思議な声が聞こえた気がした。<br>
-『女。僕はもうここには…君の「雲」でいるのは無理だ』<br>
-『だけど、いなくなるワケじゃない。いつでも君と一緒にいるから』<br>
-『…もう一人の僕は、僕じゃないけど…また、君なら受け入れてくれるって、信じてる』<br>
-『だから、今までずっと、ありがとう。すごく楽しかった』<br>
<br>
-『男と幸せにね』<br>
<br>
女(…雲…)<br>
<br>
女の頭上を漂っていた雲は、いつの間にかいなくなっていた。<br>
<br>
<a id="id_tag285" name="tag285"></a></dd>
</dl>
<p id="res0_285"></p>
<br>
<dl>
<dd id="res0_285body"><font color="#FF0000">-残されたもの-</font><br>
<br>
女「…そう、だったんだ…」<br>
<br>
翌日、無事意識を取り戻した女は一部始終を男から聞かされた。<br>
雲が女を守るために、自身を犠牲にしたこと。その覚悟、その意思、全てを。<br>
<br>
男「…立派だったぜ?あいつ…俺よりも、ずっと」<br>
女「…」<br>
<br>
何故だろう。<br>
今までずっと側にいたのに、一心同体と言っても良かったのに。<br>
<br>
女「…薄情かな、私」<br>
男「…何で?」<br>
女「あの子がいなくなったのに…お別れみたいなこと言ったのに…全然、涙が出ないの」<br>
男「…」<br>
女「あの子が…まだ、側にいてくれるような…一緒にいてくれるような、そんな気がして」<br>
<br>
男「そりゃそうだよ、だってまだ側にいるんだから」<br>
女「…へ?」<br>
<br>
女は目を丸くして男を見た。<br>
男は何やら手荷物をゴソゴソと探っている。<br>
<br>
男「まあ正確に言うと、あいつはいないけど」<br>
女「…どういう事?」<br>
男「…お、あったあった」<br>
<br>
男が取り出した物は、蓋が閉められた小さなビンだった。<br>
<br>
<a id="id_tag286" name="tag286"></a></dd>
<dd id="res0_287body">女「…?これ…」<br>
男「閉めたまま中をよーく見てみなさい」<br>
女「中?」<br>
<br>
女がビンを覗き込むと…そこには、親指ほどの小さな雲が漂っていた。<br>
女「!え…」<br>
男「…あいつがさ、家出る前に伝えたんだ。自分は消えるかもって…だから、自分の体を少し残しておいてくれって。<br>
それはあの「雲」とはまた別の意思を持った…まあ簡単に言えばあいつの子供かな?」<br>
<br>
男はビンを女の手から取ると、蓋を開けた。<br>
すると雲がふわりと出て来て、女の側へと漂ってきた。<br>
男「…でも、女のことだけは、伝えたらしいな。子供にも」<br>
女「…」<br>
女は小さな小さな雲をそっと指で撫でてみた。<br>
その頬には涙が伝っていた。<br>
<br>
男「…涙が出ないんじゃなかったのか?」<br>
女「へへ…これはまた別」<br>
男「またでかくなるらしいぞ、時間が経てば」<br>
女「うん…良かった、ホントに…この子がいないと、寂しいもんね」<br>
<br>
女は目に溜まった涙を拭い、雲ににっこりと笑いかけた。<br>
女「これからも…よろしくね」<br>
<br>
雲が、小さく頷き返したような気がした。<br>
<br>
男「…じゃ、俺はあいつとの約束通り、女を幸せにしようかね」<br>
女「////うん…男君も、ずっと、よろしく」<br>
男「…あぁ」</dd>
<dd><br>
<br>
<a id="id_tag288" name="tag288"></a></dd>
<dt id="res0_288"></dt>
<dd id="res0_288body">君が残してくれた、贈り物。<br>
<br>
それはとても素敵なものでした。<br>
<br>
この贈り物も、君との思い出も、全て。<br>
<br>
私はずっと、大事にしていきます。<br>
<br>
もちろん、一生、ね。<br>
<br>
<br>
<br>
ありがとう…<br>
<br>
<br>
<br>
-完-<br>
<br></dd>
</dl>
2007-03-22T13:27:40+09:00
1174537660
-
長編
https://w.atwiki.jp/cloudgirl/pages/11.html
[[ID:bn3pcuPPO]]
[[ID:Ot9bs1TG0]]
2007-03-22T13:15:44+09:00
1174536944
-
ID:bn3pcuPPO
https://w.atwiki.jp/cloudgirl/pages/12.html
<p><font color=
"#FF0000">~cloud(9%)~<br></font>女「何とあたしに新能力が」<br>
男「へえ、どんな」<br>
女「まあ、見てなって」<br>
――女、右手を上げる。そしてその手で男の頬を勢い良く叩く…正に平手打ち。<br>
男「っ!!」<br>
――反射的に、顔を背ける。しかし、男の頬には風だけが当たった。男は閉じた目を開けてみる。<br>
男「お前…その腕、」<br>
――女は笑っている。右腕の肘から先が雲になっている。<br>
男「…雲?」<br>
女「そう。何かね、手とか足とか体の一部を雲に出来るようになったの」<br>
男「雲でビンタされたから痛くないって事か」<br>
女「うん。この子があたしに力を貸してるような気がするんだよねー」<br>
――女は不可解を示す表情を見せながら、雲を指の先でつついている。女の体が雲になるのに対し、雲はその分小さくなっているようだった。<br>
男「でもさ、」<br>
女「ん?」<br>
男「もっと良い活用法を見つけような」<br>
女「ほーい」</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~cloud(13%)~<br></font>女「この能力を何と呼ぶか。これが唯一にして最大の問題だ」<br>
男「問題にするなよ。その能力は『その能力』で良いだろ」<br>
女「それじゃあこの能力がかわいそう!」<br>
男「お前、変な所に拘わる癖がまだ治ってないのな」<br>
女「イタクナーイとか」<br>
男「ビンタ以外の用途は無いんですか」<br>
女「バニシュとか」<br>
男「FF6か、懐かしいな」<br>
女「バニシュ、デス!みたいなね」<br>
男「それだと死ぬのはお前だぞ」<br>
女「はうっ」<br>
男「馬鹿め」<br>
女「バニシュ、デス!デス!デス!男に死を!」<br>
男「お前、名前はどうしたんだよ」</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~cloud(56%)~<br></font>――女が雲化をする部位は日に日に広がり、増えていった。左腕、左足、恐らく制服で見えない体もそうなのだろう。<br>
女「まあ、体が使えない訳じゃないし、時間が経てばちゃんと戻るから。大丈夫だよ」<br>
――俺は後で知る事となる。その時間が次第に長くなっていく事。女が手袋を外さなくなる事。<br>
女「大丈夫だって。しかもさ、実は雲でいる時にだっての良い事はあるんだよ?体は軽いし、タンスの角に小指をぶつけても雲だから痛くないし。べんりだよー」<br>
――雲は何も言わずに、ただ女の頭上を漂っていた。</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~cloud(87%)~<br></font>――女が学校を休んだ。周りに何を言われようと、誰よりも学校を楽しみにしていた女が。俺は「来ないで」という女のメールを無視しつつ、女の家に向かった。<br>
女の母の了承を得て、部屋へと歩を進める。<br>
男「女、俺だ。入っても良いか?」<br>
女「ダメ!帰って!!」<br>
男「具合でも悪いのか?何か俺に、」<br>
女「いいから!早く帰って!!男くんの顔、見たくないの!!」<br>
男「…すまん、入るぞ」<br>
――扉を開く。閉めきったカーテン、暗い部屋、ベッド。俺は椅子をベッドの側に寄せ、座る。<br>
男「女…」<br>
――毛布で全身を覆う部屋の主。<br>
女「話しかけないで、触らないで、見ないで…お願い」<br>
――いつも笑っていた女は、一体何処へ消えてしまったんだ。</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~cloud(88%)~<br></font>――女を隠した毛布が、話し始めた。<br>
女「体が、戻らないの。どうしても」<br>
男「…」<br>
女「最初は雲でいる方が少なかったのに、段々戻らなくなって…もう、どうしたらいいか」<br>
男「…やっぱり周りの目が気になるか」<br>
女「また子供の頃みたいに言われちゃう…『人間じゃない、化物』って。それだけは嫌」<br>
男「俺が付いてる。絶対に守ってやる。誰にもそんな事は言わせない」<br>
女「…本当に?あたしの事、好き?」<br>
男「もちろん。大好きだよ」<br>
女「じゃあ、こんな体になっても?」<br>
――毛布の中から、少女が現れた。<br>
首から下が全て、暗い灰色の雲で出来た少女が。</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~cloud(95%)~<br></font>――驚愕した。雲と女は別の物のようだった。意思は別々のようだった。<br>
それが何故一つに?<br>
頭上の雲は注視しなければ分からない程小さくなり、少女は灰色になっている。<br>
女「…化物、っていうんだよね。やっぱり、こういうの」<br>
――言葉が出ない。この状況に適した言葉を知らない。<br>
ただ、男の口からはこんな言葉が溢れた。<br>
男「…好きだ」<br>
女「…え」<br>
男「さっき言ったろう?俺は女の事が大好きだ。<br>
俺は女の外見とか体とか、そういう所だけが好きなんじゃない。君の強さとか、優しさとか、純粋さとか、そんな所が一番好きなんだ。<br>
姿が変わっても、女は女。俺の大好きな女に変わりはないよ」<br>
女「男、く…」<br>
――唯一残った女の顔。その双眸から涙が降った。<br>
女「良かった…男くんは私を嫌っていなかった。味方がいてくれた。男くんが嫌いって言ったら、あたし…もう…」<br>
――女が顔に手を当てる。その手から零れ落ちるように、涙がベッドを濡らす。<br>
男は、女を抱き締めた。脆く柔らかい雲の体は、暖かかった。<br>
男「行こう、外へ。夕日でも見れば気分が晴れるかも知れない」<br>
女「…うん」</p>
<br>
<p><font color="#FF0000">~cloud(the
end:1)~<br></font>――二人は、自転車に乗った。夕日を見つけに。女は首から足の爪先まで、全てを衣類で隠した。しかし、彼女の白皙の顔は笑っていた。綺麗だった。<br>
――夕日の中を、自転車で駆け抜ける。<br>
男「もう泣くなよな」<br>
女「うん」<br>
男「いつもみたいに無視だ、無視」<br>
女「うん」<br>
男「それでも駄目なら、俺がそいつにガッツリお仕置きするからな」<br>
女「それはダメ」<br>
男「へーい」<br>
女「…」<br>
男「…」<br>
女「…ねえ、男くん」<br>
男「ん?」<br>
――日没が近い。<br>
女「ありがとう。いつも私を助けてくれて」<br>
男「どういたしまして」<br>
女「一つ約束します」<br>
男「何でしょう」<br>
女「もし男くんが危険な状況に陥ったり、困った事があった時」<br>
男「…」<br>
女「あたしが男くんを守るから。今度はあたしが守る番」<br>
男「女…」<br>
女「わかった?」<br>
男「分かったよ」<br>
女「よし」<br>
男「…」</p>
<br>
<p><font color="#FF0000">~cloud(the
end:2)~<br></font>――夕日が地平線へと消えてゆかんとしたその瞬間。<br>
女「好きだよ、男くん」<br>
――女はペダルを漕ぐ恋人にキスをした。それは、耳でも、首でも、頬でもない、非常に曖昧な場所へのキスだった。<br>
男「女…?」<br>
――ブレーキをかけ、後ろを振り返ると、少女は消え去っていた。<br>
座っていた荷台の、僅かな体温を残して。</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~雲が産まれた日~<br></font>――これは、後に女の両親から聞いた話になる。<br>
女は実の子ではない。<br>
不妊症であった女の母が病院の帰りに、ゴミ捨て場で泣いている赤ん坊を見つけた。頭上の雲はどうしても取れなかったが、神からの啓示だと思い彼女を育てたと。<br>
母「突然手に入れた命だもの、突然失う事は分かっていたけれど…まさかこんなにも早く…」<br>
――男は、葬式を上げる事に反対した。女は死んだのではない、居なくなったのだ。<br>
女の両親は、一年後に葬式をするという事で同意した。</p>
<br>
<p><font color="#FF0000">~雲の無い空~<br></font>男「女…」<br>
――消失から三ヶ月。女のいない生活は、世間一般的には『日常』と呼ばれる物と何ら変化は無かった。<br>
俺とごく少数を除いて。<br>
何も変わらない朝。何も変わらない昼。何も変わらない夜。眠ればまた朝になる。<br>
俺が過ごしていたのは、こんなにも暗く淀んだ世界だったのか?まるで、針の無い時計のようだ。<br>
昼休みは、学校の屋上で空を眺めるようになった。今日は快晴。雲一つ無い青だ。<br>
俺は毎日こうやって、雲を探している。<br>
強くて、優しくて、純粋な雲を。</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~赤い炎、黒い雲~<br></font>――もうすぐ、女が居なくなって一年が経つ。今日は曇り。厚い雲が空を遮っている。<br>
俺の生活は何も変わらない。変えてくれる人がいないから。針の無い時計は、進んでいるのか止まっているのか、戻っているのかさえ分からない。<br>
今日も屋上で空を眺めている。漆黒の雲は、あの日の女の体に似ている。<br>
――突然、耳を突き刺すようなベルの音が鳴り、俺は現実へと引き戻された。このベルは人生で何度も聞かないであろう、火災報知器の物だ。<br>
心臓の鼓動が急に加速する。危機。絶命。そんな言葉が視界に映る。<br>
柵から身を乗り出し、校舎の側面を見る。<br>
火は真下。窓を割って煙を吐く。<br>
「くそっ、家庭科室」<br>
――雨は降りそうにはなかった。</p>
<br>
<p><font color="#FF0000">~dark
cloud:1~<br></font>――ベルの音の隙間から、人の悲鳴が聞こえてくる。<br>
屋上は一人。非常階段の扉を開ける。<br>
男「うおっ!?」<br>
途端、熱波が体を突き抜ける。<br>
男「出口は無し、か…」<br>
心臓の鼓動はなおペースアップを要求してくる。<br>
男は非常階段から一番遠い場所に移る。しかし熱は十分に肌で感じる。<br>
再び、柵から外を窺った。地上の生還者と目が合った。悲鳴。どうやら俺に向けられた物らしい。<br>
「さすがにやばいだろ、これは」<br>
吐き気がする。肌が痛い。俺、どうなるんだろう。女。俺はどうなるんだろう。<br>
空を見上げる。<br>
雲が、笑った気がした。</p>
<br>
<p><font color="#FF0000">~dark
cloud:2~<br></font>「俺もお前の所に行けるのかな、女」<br>
男は空に手を差し出した。<br>
――雲が動いた気がした。しかし、それは錯覚…では無かった。<br>
雲が動いている。<br>
厚く空を遮っていた黒雲が、まるで雫が滴り落ちるように、伸びてきた。<br>
(生きて)<br>
――落ちてきた雲の先端に、見覚えのある白い顔があった。<br>
男「女…?」<br>
(今度は私が助ける番)<br>
――笑っていた。<br>
男「そっか…お前、雲になってたのか。心配かけやがって」<br>
――非常階段の扉が爆発で吹き飛んだ所で、俺の記憶は無くなった。</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~白い雲の見える丘~<br></font>「で、お前は一体何者な訳?」<br>
――男は助かった。報道的には原因不明な超常現象・謎の黒雲のお陰で。<br>
「だから、実はあたしは空が地球人類観察用に作った有機体とか何とからしいよ!キャー!こわーい!!」<br>
――事実的には、一人の少女によって。<br>
「…じゃあ何で消えたんだよ」<br>
――少女は俺を助けた後、引き連れた黒雲から暴風雨を発生。<br>
「それは有機体としての機能が暴走しちゃって、空で修理してきたの。ウイーンガチャーンギギギギって」<br>
――学校を消火。被害は家庭科室の一画で収まった。<br>
「そもそも何で戻って来たんだよ」<br>
――俺の両親とそいつの両親は大喜び。<br>
「修理が終わったから、復帰第一号の任務として消火を任された…ってこれ、前も話したじゃん」<br>
――俺が入院をしている間に宴会をしたらしい。</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~雲と駆ける少女:1~<br></font>「意識を取り戻した十秒後の病人に向かって、こんな事話すやつが一番悪い」<br>
――まあ、何はともあれ、日常が戻って来た訳だ。<br>
「はい、お弁当」<br>
「おう」<br>
――女は以前と同じく女の両親が面倒みてくれるし。<br>
「ハンバーグが上手すぎる!最早、現世のレベルではないぞ、これは!!」<br>
「ふふっ、良かったー」<br>
――今、自分の周りにいる人・周りにある物は、どうでもいい物じゃない。全て大事な物なんだ。みんないるから、全てあるから、今の自分がいる。全ては相互に影響し合ってるんだから。</p>
<br>
<p><font color=
"#FF0000">~雲と駆ける少女:2~<br></font>――あるところに<br>
「ねえ、男くん」<br>
「ん?」<br>
――雲を持った少女がいました<br>
「あたしは男くんを守ったよね」<br>
「うん、ありがとう」<br>
――憎まれ疎まれる事もあったけど<br>
「チュウもしたよね、あたしから」<br>
「うん、ありがとう」<br>
――今はみんなを愛し、みんなから愛されています<br>
「じゃあ、はい、あたしにもチュウ」<br>
「はあ!?」<br>
――あなたの周りには<br>
「…」<br>
「…好きだよ、女」<br>
――大切な人はいますか?<br>
「…えへへ、ありがと男くんっ」<br>
<br>
<br></p>
2007-03-22T13:14:56+09:00
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