-眩しい・・・


樹々の狭間から彼を照らす光源に真っ白だった彼の意識は急速に覚醒する。
「ここは・・・?」
彼は視界の上半分が暗闇のまま辺りを見回す。
そこはいつも自分が寝起きしていた自宅の部屋ではなかったのだ。
「・・・」
だが、寝ぼけている頭は正常に働かずに『これは“夢”』と判断した。

(しかし、眠いな・・・)
彼は大きく口を開けて欠伸をする。
出てきた涙で視界が歪む。
両手で瞳を擦り視界を取り戻す。

そして改めて前を見据える。
そこは、辺りには巨大な樹、地面には岩や蛇のようにうねっている樹の根、樹の新芽であろう植物。
そして、それ以外には緑色の絨毯――延々と苔が地面を覆っていた。

地面に接している部分がひんやりと感じる。

その感覚により彼の頭が正常に動き始める。

 そして、改めてでた答えは――ここは、『どこだ?』と言う疑問だった。
夢にしてもこんな夢は始めてである。
それに、こんな大森林など見たこともなかった。
恐らく現代の日本――いや、世界中探したとしてもこんな大森林は残っては居ないのではないか?

そう思えてくるほどの場所だったのだ。

そして、次に脳裏に浮かんだのは――『なぜ、こんな所にいるのだ?』と言うことだった。

こんな――世界中探したとしても見つかりそうもない大森林に朝目覚めたら居たのだ。
『なぜ、ここにいるのか?』『なぜ、ここなのか?』『なぜ、・・・』
疑問は次々と浮かんでくるが彼の頭が答えきれるはずもなかった。

「あぁ!分かんないぜ!」
そのまま大の字に後ろに寝転ぶ。
だが、濡れた感覚を感じたため直ぐに起きあがり手頃な樹の根に座る。

「・・・」
しばらくそのままの姿勢で考え事をするがまず、どうすればいいのか?その疑問が出てくる。

―ここにいれば助けが来るのか?
―下手に歩き回ってもっと迷い込んだら・・・

リスクが浮かぶがじっとしていても助かる可能性はない。
いや、それにこれほどの大森林なら猛獣がいてもおかしくないであろう。

「俺なんか一瞬で・・・」
彼の脳裏に猛獣に引き裂かれる映像が浮かぶ。
「!・・・、ごめんだぜ・・・」

そして、彼は息を軽く吐き立ち上がった。

「このままじっとしていても助かる可能性はない。だったら・・・」
(俺はこの大森林を脱出する。)
誰にも聞かれることのない決意表明をすると、彼は大きく背伸びをして腰の関節をならす。
「つっ~・・・、さっ。行くか」
彼はその場を離れ歩き始めた。

ずっと後方には、彼を見ている全身を漆黒の毛に覆われた『狼のような』生き物が居るとは気づかずに・・・。
最終更新:2007年03月26日 17:56