赤鬼嫁日記

「アスカもミライも寝てるよね…」
そう言って僕は寝室を覗く。
僕達はミライが産まれてから寝室を別にした。
と言うよりも、別にされたと言った方が適切かもしれない。
妊娠するまでは毎晩のように求めてきたアスカだが、今となっては月に1、2回。しかもアスカに決定権がある。
アスカがその気になれば、僕の体調なんてお構いなし。
この前なんか、予算案の作成で3日連続の徹夜明けだったし、大臣の随行でヨーロッパ中を巡った出張帰りだったこともある。
未だ現役ではあるのだが、過去の実例のせいで複雑な気持ちだ。
しかしながら、寝室が別になったお陰で、夫婦生活を犠牲にしてもお釣りが来るような精神安定剤を手に入れた。
その名も
『赤鬼嫁日記』


内容はネルフの裏金帳簿や、ネルフ高官とその家族の犯罪揉み消し資料よりも、隠匿すべきモノである。
もともと手帳や不必要な資料の余白にアスカへの不満を書いていたのだが、寝室が別になったことでエスカレートした。

隠匿方法は巧妙だ。
日記と言っても、書いているのはルーズリーフ。
そして収納先は、アスカが決して手を伸ばさない、嫌いな漢字だらけの資料ファイルなのだ。
また、処分も簡単だ。単純にその資料が不必要になれば、そのまま日記も共に葬り去れば良い。
日記を書くときも、資料を広げておく。
臆病者と呼びたいなら、好きにすればいい。確かに僕には普通の日記帳に書く勇気も、アスカに反抗する勇気もないのだから。
いつかバレるかもしれない。
だけど……だけど、アスカの圧政から、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメなんだ!
だから、見つかるリスクを冒してでも、書かずにはいられないんだ!


さて、今日も行き場のない思いを紙面にぶつけるとしよう…
最終更新:2007年05月07日 12:09
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