「ごめんね・・・ シンジ」
そう何度も繰り返し泣き続ける。
「それは違うよ アス・・・」
シンジも弁明しようとするもアスカの唇が止めに入る。
アスカは彼の謝罪を止めると、また、自ら言葉を続けていく。
「アタシ・・・ 家庭の味、作れなかった。 また、余計なプライドのせいで・・・」
「独りよがりの、気持ちの入りきれていない、アタシそのものの味になっちゃった・・・」
シンジは嬉しかった。
結婚前のアスカなら、この様に誰かに弱みを見せることなどは決してしなかったはずである。
それが自分に対して遠回りはしたものの打ち明けてくれる。
頼りにされているのではないかと思うと尚更、嬉しくなってきた。
そして、自らも彼女の意思に答えるべく口を開く。
「でもね、アスカ。家庭の味ならさ・・・僕だけじゃ無理だし、今度からは一緒に作ろう」
「うん・・・ アタシからもお願いするわ・・・」
そう言葉を交わすと、今度は互いの想いを確かめるように静かに抱き続けた。
しばらくして、ふと思い出したかのようにアスカが静寂を打ち破る
「そう言えば、シンジ。 アンタ、アタシに嘘ついたわね?」
「うっ・・・ ゴメン」
「ううん、いいの、アタシもアンタに隠し事してたから、それでお相子にしてあげるわ」
「???」
そう、『肉じゃが』を作ろうとアスカが思った、もう一つの理由・・・
「二ヶ月目だって、この前、病院で調べてもらって判ったわ」
「はぁ!?」
思考が一瞬のうちに止まるシンジ。
「ばぁ~か、・・・本当はね、シンジの誕生日に言って驚かすつもりだったケド・・・」
そして、アスカはいつもの笑顔でこう続けた。
「シンジ! ちゃんとアタシに料理を教えなさいよ! 今のままじゃアタシ、母親の味なんて出せないんだから!」
END
最終更新:2007年04月23日 11:54