冬月コウゾウ補完計画4

「…副司令、かなり進行しています。やはり入院するべきかと…」

「ハハハ、入院などしてみろ。誰が碇の暴走を止められる?」

「しかし…」

「心配はいらん、自分のことは自分が一番わかっている」

医師との会話、この医師は必死に入院を進めているが私は入院する気はない
病院で死を待つ生活などまっぴら御免だ

「…入院考えておいてくださいね」

「ああ、わかったよ」

…ふぅ、…最近は痛みが増してきた。痛み止めが効いている間はいいんだが、副作用で吐き気や頭痛を催す。他人に知られないよう苦痛を抑えるのは至難の業だ

「あっ、副司令!どうです?うちのバカシンジの働きは」

「あぁアスカ君か、良くやってくれているよ、…!…グッ…」

病院から出された書類が落ちる、…私の状態を記した書類が、彼女の目に触れてしまった

「…副司令!これは!」

「…すまない、少し話がある」

アスカ君を中庭に連れ出し、座らせる。私は…真実を語り始めた
「…アスカ君、私の体はその書類の通り限界なんだ」

「…そんなはずは…だってシンジはなにも…」

「…私が、言っていないだけだ。…碇にすら言っていない」

「何故…!副司令…!」

「…言えば入院を薦められるだろう。
そうなったら、ミズキ君の卒業式にでられないじゃないか」

「…副…司令…!」

「…すまない、このことは黙っていて欲しい。
…ヴッ……頼む…」

…意識が遠のいて行く、…そろそろ……か…


「副司令のご老体も限界…というわけですか」

「…!?加持さん…!」

「アスカ、ちょっと手伝ってくれ。副司令を運ばなきゃな」

次に私が目を覚ましたのは、自分の家だった。



「やれやれ、あの時より随分軽くなられましたな。冬月副司令」

加持君か…彼はネルフを止めたと聞いていたが…。

「副司令、少しばかり調べさせてもらいましたが…もう戻れる状態じゃないようです」

「ハハハ、…わかっているよ。…あと10日持ってくれれば…」

「…ミズキ君の卒業式ですか?」

「…フッ…入学式にも行きたかったんだがね…入学式のあと…京都を案内したかった…」

「……副司令、…あなたはミズキを自分の孫のように…」

「…ハハッ、…せめて卒業式だけは…見届けたいんだ…」

「………副司令」


…あと10日、…許されるならば、…私に少しの命を与えてくれ…



「はいっ、中華がゆ出来たわよ!」

「おぉアスカ、待ってました!」

中華…がゆ?

「俺がアスカに頼んで作ってもらったんですよ、米と卵は勝手に使わせてもらいましたがね」

「熱いから気をつけてくださいね、副司令」

「ああ…ありがとう、アスカ君」

…そういえば、以前風邪を引いたときユイ君がお粥を作ってくれたことがあったな…。
一通り胃にかっ込むとやんわり体が暖まってきた。痛みもなく心地いい…

「……さて、副司令…覚悟は、出来ていますか?」

「…当然だよ、セカンドインパクトを生き残り、サードインパクトをも生き残った。…もう充分だ」

「ならなにも言いませんし漏らしません、アスカもそれで良いかい?」

「…加持さんがそういうなら」

「…ありがとう、アスカ君。加持君」


……残る命、見事散らすにはもはや萎びすぎたが…
私は……最後まで…生きて…。
最終更新:2007年03月25日 13:30
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