未確認の愛情

シンジと一緒に住み始めて。
スペースはあるはずなのに、眠るのは何時も同じ布団の中。
飽きもせず毎晩のように抱き合って、そして抱きしめるようにして眠りにつく。
その日もそんな感じで、シンジの腕の中に抱かれていた。
いつも傍にいるのに。近くにいるのに遠くに感じてしまう存在。
身体をいくら重ねても伝えられない。分かり合えることはない。そう思っていた。
満たされない心。いたたまれない程の不安感。
でも。そんな時。
「愛してるよ、アスカ。」
かすれるような小さな声で、抱きしめながら呟くシンジ。
聞きたくて聞きたくて聞きたくて。
でも聞くことを諦めていた一言を、そんな不意打ちで聞かせるなんて。
大きく見開いたアタシの目から、涙が一気に溢れ出て。
泣きじゃくるアタシの髪を梳きながら、シンジは笑っていた。
泣きながらアタシも笑っていた。

夜明けまではまだ遠く、月は欠けたままで浮かんでいる。
今は少しも悲しくはない。初めて幸せすぎて泣いた夜。

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最終更新:2007年08月12日 00:25
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