綺麗な満月の夜2

アスカが無事女の子を出産したころ、リツコがシンジに伝えた。
「司令の机の上にね、姓名判断の本が何冊もあったのよ。フフフ」

中学生の頃だったら、そんなことを聞いても受け流しているだけだけだったが、さすがに人の親になる年になれば、
父親に気を遣わねばいけない、とういうくらいの気は回るようになっている。
いやだいやだ、父さんと何をどう喋れって言うんだよ、と思いつつ、シンジはゲンドウに電話をかけた。

「どうした、何のようだ」
「あ、あの、と、父さんが…ぼ、ぼくの子供の名前を考えているって、リツコさんから聞いて…」
「くだらんことで電話をするな!自分の子供の名前くらい自分で決めろ!ユイとレイでなければ何だろうと構いはしない!」
そういうとゲンドウは電話を叩き切った。

「…あいかわらずレイにこだわるな、碇」
「別にそのようなことはありませんよ。ただ…」
チラシの裏に「来い」と書きなぐってシンジを呼び寄せて十余年。相変わらず頼りないところもあるが、
子供を作るまで成長した。シンジの気弱な所は、アスカがフォローして、何かとうまくやっている。
「もう、私達を隠居させてくれる所にまで、来てくれているのかもしれませんよ、あの子達も」



さて、ゲンドウに電話を叩き切られたシンジとアスカ、それならと、自分たちで考えた名前を持って市役所に出生届を出しに来た。
そして、実は最近退屈なゲンドウ、リツコに市役所の端末をハッキングさせて、どんな名前にするのかを見物することにした。

「ねえ、アスカ、本当にこんな名前にするの…」
「なに言ってんの!このアタシの娘に相応しい名前じゃない!」

「…『馬子』って」
「飛鳥寺の創建者だからな」
「赤木博士、不受理だ」


「やっぱり、変な名前だから受け付けてもらえないよ」
「『やっぱり』とはなによ!これなら文句ないでしょ!」

「…なによ、『押勝』って」
「『恵美』にしておけば誰も文句を言わないのに、無茶をしよる」
「…冬月先生、あとを頼みます」

ゲンドウは市役所の窓口に行くと、シンジとアスカにチラシを叩き付けた。
「お前らの娘に相応しい名前だ。読め。」

『未ダ来タラズ』
最終更新:2007年05月16日 07:30
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