SSみさと3

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「追いかけたいのは山々なんですけど…」 主夫根性の悲しさ、手にした容器をきちんとゴミ箱に放り込んでから、 「いま追っても、即時殲滅されるのがオチですから…。 もう少しだけ、アスカが疲れるのを待たせてください」 幽玄めいた生気の無さ。 「疲れてるわねえ」 「疲れてます…」 「いっそ、少しの間でもアスカと離れて暮らす事、考えた方がいいんじゃない? 距離を置いてお互いの事を見つめなおすっての、何も結婚後にやっちゃいけないって 法は無いと思うけど?」 「それだと、アスカの方が先に参っちゃいますから。難しいけど、頑張ります」 夫婦の機微って奴にも色々あるのよねえ。 未婚のミサトには想像の域を出ないものだが、シンジのそれが、アスカに境界線を 踏み越えさせないための、苦汁の策だということくらいはわかる。 と、そこでミサトのデスクの電話が鳴った。 「もしもしぃ?」 「ミサト?いまアスカを追い返したわ。ああなるとまるで子供ね。 すっかりしょげかえって、半べそだったわよ」 あっちゃあ、薬が効き過ぎた! シンジの走り出す気配に、 「大回りになるけど、ルートはO-37を使いなさい。電算区域で携帯電話は通じず、 ここともリツコの部屋とも離れてるわ。AOジャンクションで接敵できるでしょ」 ありがとうございます! 遠ざかっていく声と後ろ姿にひらひら手を振りながらミサト。 「あんなんでも夫婦ってんだから、なんなんだかねえ」 苦笑を禁じ得ないが、かといってアスカの面倒見られる他の人間ってのも、 そう簡単には思いつかない。 「ま、結婚が人生の墓場ってわけでなし。アンタたちみたいなのは、 墓場を花畑にすることでも考えながら、毎日過ごしてりゃいいのよ」 椅子の上でぬーっと伸びをしてミサト。 カップ麺くさいげっぷを漏らして、そう思った。

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