アスカの料理奮闘記~思い出の肉じゃが~2

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事の始まりは以前、シンジが作ったジャーマンポテトにあった。 彼が作ったそれは非常に美味しかった。 カリカリに焼けたベーコン、ピリッと黒コショウの効いたジャガイモ、 そして口の中に広がる爽やかなレモンの風味。 確かに今まで本場ドイツでこれよりも美味しいジャーマンポテトは何回も食べた事がある。 しかし明らかに自分の為に作られたそれは格別であった。 そしてアスカは思った、自分もシンジの為に料理を作ってあげたいと。 悩んだ結果決めたのが『肉じゃが』。 以前親友の洞木ヒカリが恋人の鈴原トウジに『肉じゃが』を作った時の鈴原のセリフが浮かんだ。 「かぁ~! やっぱ肉じゃがはええなぁ、家庭の味、オカンの味や!」 「これで落ちへん野郎はおれへんで!」 と勝手に惚気られ失笑したものだが、今になって考えを改める事にした。 そしてシンジがたまに作る『肉じゃが』を思い浮かべ材料や調味料を調達、調理。 結果、惨敗である。 さらに許せなかったのがシンジの態度、夫婦になって初めてつかれた嘘。 自分の性格を分かってくれていれば正直に言われたほうが、まだマシであった。 それなのに「美味しい」と言い、食べ続けた。その行為が彼女のプライドを深く傷つけた。 一方のシンジも自分の行った行為に自己嫌悪に陥り、しばらく食卓から動けなかった。 嬉しそうな顔を目の前にして「不味い」とは言えず、 その結果、彼女を深く傷つける形となった。 もう二度と傷つけまいとあの赤い海で誓ったのに・・・ 咄嗟についた嘘、それ自体許されるものではなかった。 自分たちが夫婦になるにあたり決めていた事の一つ・・・ それが『お互いに嘘をつかない事、隠し事をしない事』であった。 お互いの全てをぶつけ合い、もう嘘をつく必要も、隠し事もなくなった。 新たにそれらを作り出すことなく、一緒に生きようと誓い合ったのだ。 シンジはある不安に襲われた。 嘘を言ったことにより自分たちの関係が危ういものになるのではないかと言う事に。 その不安を解消すべく重々しい足取りではあるが一歩一歩、寝室へと歩みを進めていった。 「違う」 枕を抱きしめながらアスカをポツリと漏らした。 「シンジは悪くない・・・」 そう言うとアスカは今までの思いを振り返ってみた。 シンジと結ばれるにあたり「もう自分の無駄なプライドは捨てる」と心に決めたはずなのに、 「教えて」や「一緒に作ろう」の一言も言い出せなかった。 そして、自分の失敗に対しても「分かってくれれば」などと思い込みをしてしまった。 そんな自分に対して腹立たしくもあり、悲しかった。 ・・・コンコンッ・・・ 弱々しく叩かれるドア。 「アスカ・・・ 入るよ」 彼の声を聞くとベッドから飛び起き、声の聞こえる方へ駆け寄っていった。 ドアが開けられると、その瞬間に彼に抱きつき、泣いた。 彼の胸の中に頭を埋め、ただ、ひたすらに泣き続けた。 その思いを分かったのかシンジは優しく受け止め、その朝焼け色の髪を撫で続けた。
事の始まりは以前、シンジが作ったジャーマンポテトにあった。 彼が作ったそれは非常に美味しかった。 カリカリに焼けたベーコン、ピリッと黒コショウの効いたジャガイモ、 そして口の中に広がる爽やかなレモンの風味。 確かに今まで本場ドイツでこれよりも美味しいジャーマンポテトは何回も食べた事がある。 しかし明らかに自分の為に作られたそれは格別であった。 そしてアスカは思った、自分もシンジの為に料理を作ってあげたいと。 悩んだ結果決めたのが『肉じゃが』。 以前親友の洞木ヒカリが恋人の鈴原トウジに『肉じゃが』を作った時の鈴原のセリフが浮かんだ。 「かぁ~! やっぱ肉じゃがはええなぁ、家庭の味、オカンの味や!」 「これで落ちへん野郎はおれへんで!」 と勝手に惚気られ失笑したものだが、今になって考えを改める事にした。 そしてシンジがたまに作る『肉じゃが』を思い浮かべ材料や調味料を調達、調理。 結果、惨敗である。 さらに許せなかったのがシンジの態度、夫婦になって初めてつかれた嘘。 自分の性格を分かってくれていれば正直に言われたほうが、まだマシであった。 それなのに「美味しい」と言い、食べ続けた。その行為が彼女のプライドを深く傷つけた。 一方のシンジも自分の行った行為に自己嫌悪に陥り、しばらく食卓から動けなかった。 嬉しそうな顔を目の前にして「不味い」とは言えず、 その結果、彼女を深く傷つける形となった。 もう二度と傷つけまいとあの赤い海で誓ったのに・・・ 咄嗟についた嘘、それ自体許されるものではなかった。 自分たちが夫婦になるにあたり決めていた事の一つ・・・ それが『お互いに嘘をつかない事、隠し事をしない事』であった。 お互いの全てをぶつけ合い、もう嘘をつく必要も、隠し事もなくなった。 新たにそれらを作り出すことなく、一緒に生きようと誓い合ったのだ。 シンジはある不安に襲われた。 嘘を言ったことにより自分たちの関係が危ういものになるのではないかと言う事に。 その不安を解消すべく重々しい足取りではあるが一歩一歩、寝室へと歩みを進めていった。 「違う」 枕を抱きしめながらアスカをポツリと漏らした。 「シンジは悪くない・・・」 そう言うとアスカは今までの思いを振り返ってみた。 シンジと結ばれるにあたり「もう自分の無駄なプライドは捨てる」と心に決めたはずなのに、 「教えて」や「一緒に作ろう」の一言も言い出せなかった。 そして、自分の失敗に対しても「分かってくれれば」などと思い込みをしてしまった。 そんな自分に対して腹立たしくもあり、悲しかった。   ・・ ・コンコンッ・・・ 弱々しく叩かれるドア。 「アスカ・・・ 入るよ」 彼の声を聞くとベッドから飛び起き、声の聞こえる方へ駆け寄っていった。 ドアが開けられると、その瞬間に彼に抱きつき、泣いた。 彼の胸の中に頭を埋め、ただ、ひたすらに泣き続けた。 その思いを分かったのかシンジは優しく受け止め、その朝焼け色の髪を撫で続けた。

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