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<dl><dt>765 :<strong><a href="mailto:sage%20%E5%86%AC%E3%81%A3%E3%81%BD%E3%81%84%E3%81%AE%E3%82%92"><font color="#0000FF">名無しが氏んでも代わりはいるもの</font></a></strong>:2007/11/21(水)
17:28:58 ID:???</dt>
<dd>冷たい風がすっかりと葉の落ちた木々のあいだを擦り抜けて私の頬を撫でる。<br />
私はブルっと体をふるわせ、首にかけたマフラーをしっかりと巻き直した。<br />
霜焼けで赤くなった手を見つめる。<br />
お気に入りの手袋がなかったとはいえ…さすがに素手なんかでくるんじゃなかったな…。<br />
そんな事を考えながら、見上げた空は灰色の雲に覆われていた。<br /><br />
サード・インパクトから10年が過ぎ、世界は遅々としてだが復興の兆しを見せ初めていた。<br />
新たな町が建てられ人々は元の生活を取り戻し、常夏の気候も終わりを告げ、この街にも冬が訪れるようになった。<br /><br />
私は廃墟となった旧市街地を歩いている。買物を終え家に帰る時はいつもこの道を通る。<br />
足元の瓦礫の山、崩れた建物には今だ癒える事のないサード・インパクトの傷痕が深く刻まれていた。<br />
全てが元に戻るのにはまだ時間がかかるのだろう。そんな風な感傷に浸っているあいだに、私はいつのまにか家の前まで来ていた。<br /><br /><br /></dd>
<dd>「ただいまー。」<br />
私は家に入ると急いで靴を脱ぎ、部屋へと駆け込む。<br />
「うぅ…寒ぅ…。」<br />
コートとマフラーを壁に掛けて食料品を冷蔵庫にしまう。どこからか笑い声が聞こえた。きっとシンジがテレビでも見てるんだろう。<br />
まったく、私が寒いなか買物に行ってるってゆうのに、アイツはのうのうとテレビなんか見てんのね。<br />
少し苛ついた私は声を上げる。<br />
「ちょっとバカシンジ!テレビなんか見てないで少しは手伝ってよ!」<br />
返事はない。<br />
諦めた私は残りの食料品を冷蔵庫へ押し込むとリビングへと向かった。<br />
やっぱりテレビがついてる。最近人気のお笑い番組だ。<br />
しかしシンジの姿が見えない。「まったく…」<br />
外にでもいったのだろうか。でもシンジのコートは壁にかかったままだ。<br />
「どこいったのよ…アイツ。」<br /><br /><br /></dd>
<dd>苛立ちと寂しさの混ざった憂鬱な感情が私の胸に込み上げて来る。<br />
迷い子のようにオロオロする私。テレビの笑い声はなんだか私をバカにしたようにも聞こえる。<br />
「バカシンジのくせに…」<br />
うなだれた私は腰を下ろしてコタツに足を突っ込む。<br />
「…あれ?」<br />
足の裏に何かが当たった。何だかフニフニしてて柔らかい。<br />
これって…。私は急いでコタツの布団をめくる。<br />
なんの事はない。シンジはコタツで寝てたのだ。頭までスッポリ埋まって。<br />
なんだかほうけたような脱力感と、しかしそれ以上に嬉しい気持ちで心が一杯になる感じがした。そしてシンジの事をこんなにも意識している自分に恥ずかしさを覚え、一人赤面する私。<br />
「バカ。コタツで寝てると風邪ひくわよ。」<br />
そう言って私はシンジの髪を撫でる。女の子のように柔らかい髪と子供のようにあどけない寝顔に私は思わずドキドキしてしまう。<br />
火照った頬に手を当てるとシンジのまぶたがピクリと動いた。<br />
「う…ん…。アスカの手…冷たいよ…。」<br />
目をつぶったままそうゆうとシンジは自分の手で私の手を包む。温もりが伝わる。さっきまでの霜焼けが嘘のように消えていった。<br /><br /><br /></dd>
<dd>ふと窓の外に目をやると、灰色の空の隙間から白い雪がひらひらと落ちていくのが見えた。<br />
「見て見てシンジ!初雪!」<br />
「うん…そうだね…」<br />
「そうだねじゃないわよ!アンタ寝てんじゃないの!」<br />
「………。」<br />
私はふぅと小さく息を吐く。呆れた。やっぱりシンジはいつまでたってもバカシンジね。<br />
…でも別にイライラすることもない。か。<br />
再びシンジの髪を撫でる。<br />
心なしか私の顔には笑みが漏れていた。<br />
シンジの寝顔を見ながら、私はさっきまで歩いていたあの廃墟を思い出す。<br /><br />
…全てが戻るにはまだ時間がかかるだろう。<br />
でも今は、この雪が傷痕をそっと覆い隠してくれる。<br />
なんだかそれでもいいような気がした。例え少しの間でも。<br /><br />
雪が静かにおちてゆく。<br />
時間がゆっくりと流れる。シンジの寝息とテレビの音が響く。<br />
ヌクヌクした部屋が私を睡魔に誘う。<br />
体を横たえて目を閉じる。<br /><br />
そうだ、もう少ししたらお風呂の準備をしよう。<br />
ご飯の準備もしなきゃ。<br />
でも<br />
今は…。<br />
もうちょっと……。<br />
もうちよっとだけ……。<br />
このまま…で。<br /><br /><br />
....to be continue.<br /><br /></dd>
<dd>ふと窓の外に目をやると、灰色の空の隙間から白い雪がひらひらと落ちていくのが見えた。<br />
「見て見てシンジ!初雪!」<br />
「うん…そうだね…」<br />
「そうだねじゃないわよ!アンタ寝てんじゃないの!」<br />
「………。」<br />
私はふぅと小さく息をつく。呆れた。やっぱりシンジはいつまでたってもバカシンジね。<br />
…でも別にイライラすることもない。か。<br />
再びシンジの髪を撫でる。<br />
心なしか私の顔には笑みが漏れていた。<br />
シンジの寝顔を見ながら、私はさっきまで歩いていたあの廃墟を思い出す。<br /><br />
…全てが戻るにはまだ時間がかかるだろう。<br />
でも今は、この雪が傷痕をそっと覆い隠してくれる。<br />
なんだかそれでもいいような気がした。例え少しの間でも。<br /><br />
雪が静かにおちてゆく。<br />
時間がゆっくりと流れる。シンジの寝息とテレビの音が響く。<br />
ヌクヌクした部屋が私を睡魔に誘う。<br />
私は体を横たえて目を閉じた。<br /><br />
そうだ、もう少ししたらお風呂の準備をしよう。<br />
ご飯の準備もしなきゃ。<br />
でも<br />
今は…。<br />
もうちょっと……。<br />
もうちよっとだけ……。<br />
このまま…で。<br /><br /><br />
....to be continue.<br /></dd>
</dl>
<dl><dd>冷たい風がすっかりと葉の落ちた木々のあいだを擦り抜けて私の頬を撫でる。<br />
私はブルっと体をふるわせ、首にかけたマフラーをしっかりと巻き直した。<br />
霜焼けで赤くなった手を見つめる。<br />
お気に入りの手袋がなかったとはいえ…さすがに素手なんかでくるんじゃなかったな…。<br />
そんな事を考えながら、見上げた空は灰色の雲に覆われていた。<br /><br />
サード・インパクトから10年が過ぎ、世界は遅々としてだが復興の兆しを見せ初めていた。<br />
新たな町が建てられ人々は元の生活を取り戻し、常夏の気候も終わりを告げ、この街にも冬が訪れるようになった。<br /><br />
私は廃墟となった旧市街地を歩いている。買物を終え家に帰る時はいつもこの道を通る。<br />
足元の瓦礫の山、崩れた建物には今だ癒える事のないサード・インパクトの傷痕が深く刻まれていた。<br />
全てが元に戻るのにはまだ時間がかかるのだろう。そんな風な感傷に浸っているあいだに、私はいつのまにか家の前まで来ていた。<br /><br /><br /></dd>
<dd>「ただいまー。」<br />
私は家に入ると急いで靴を脱ぎ、部屋へと駆け込む。<br />
「うぅ…寒ぅ…。」<br />
コートとマフラーを壁に掛けて食料品を冷蔵庫にしまう。どこからか笑い声が聞こえた。きっとシンジがテレビでも見てるんだろう。<br />
まったく、私が寒いなか買物に行ってるってゆうのに、アイツはのうのうとテレビなんか見てんのね。<br />
少し苛ついた私は声を上げる。<br />
「ちょっとバカシンジ!テレビなんか見てないで少しは手伝ってよ!」<br />
返事はない。<br />
諦めた私は残りの食料品を冷蔵庫へ押し込むとリビングへと向かった。<br />
やっぱりテレビがついてる。最近人気のお笑い番組だ。<br />
しかしシンジの姿が見えない。「まったく…」<br />
外にでもいったのだろうか。でもシンジのコートは壁にかかったままだ。<br />
「どこいったのよ…アイツ。」<br /><br /><br /></dd>
<dd>苛立ちと寂しさの混ざった憂鬱な感情が私の胸に込み上げて来る。<br />
迷い子のようにオロオロする私。テレビの笑い声はなんだか私をバカにしたようにも聞こえる。<br />
「バカシンジのくせに…」<br />
うなだれた私は腰を下ろしてコタツに足を突っ込む。<br />
「…あれ?」<br />
足の裏に何かが当たった。何だかフニフニしてて柔らかい。<br />
これって…。私は急いでコタツの布団をめくる。<br />
なんの事はない。シンジはコタツで寝てたのだ。頭までスッポリ埋まって。<br />
なんだかほうけたような脱力感と、しかしそれ以上に嬉しい気持ちで心が一杯になる感じがした。そしてシンジの事をこんなにも意識している自分に恥ずかしさを覚え、一人赤面する私。<br />
「バカ。コタツで寝てると風邪ひくわよ。」<br />
そう言って私はシンジの髪を撫でる。女の子のように柔らかい髪と子供のようにあどけない寝顔に私は思わずドキドキしてしまう。<br />
火照った頬に手を当てるとシンジのまぶたがピクリと動いた。<br />
「う…ん…。アスカの手…冷たいよ…。」<br />
目をつぶったままそうゆうとシンジは自分の手で私の手を包む。温もりが伝わる。さっきまでの霜焼けが嘘のように消えていった。<br /><br /><br /></dd>
<dd>ふと窓の外に目をやると、灰色の空の隙間から白い雪がひらひらと落ちていくのが見えた。<br />
「見て見てシンジ!初雪!」<br />
「うん…そうだね…」<br />
「そうだねじゃないわよ!アンタ寝てんじゃないの!」<br />
「………。」<br />
私はふぅと小さく息を吐く。呆れた。やっぱりシンジはいつまでたってもバカシンジね。<br />
…でも別にイライラすることもない。か。<br />
再びシンジの髪を撫でる。<br />
心なしか私の顔には笑みが漏れていた。<br />
シンジの寝顔を見ながら、私はさっきまで歩いていたあの廃墟を思い出す。<br /><br />
…全てが戻るにはまだ時間がかかるだろう。<br />
でも今は、この雪が傷痕をそっと覆い隠してくれる。<br />
なんだかそれでもいいような気がした。例え少しの間でも。<br /><br />
雪が静かにおちてゆく。<br />
時間がゆっくりと流れる。シンジの寝息とテレビの音が響く。<br />
ヌクヌクした部屋が私を睡魔に誘う。<br />
体を横たえて目を閉じる。<br /><br />
そうだ、もう少ししたらお風呂の準備をしよう。<br />
ご飯の準備もしなきゃ。<br />
でも<br />
今は…。<br />
もうちょっと……。<br />
もうちよっとだけ……。<br />
このまま…で。<br /><br /><br />
....to be continue.<br /><br /></dd>
<dd>ふと窓の外に目をやると、灰色の空の隙間から白い雪がひらひらと落ちていくのが見えた。<br />
「見て見てシンジ!初雪!」<br />
「うん…そうだね…」<br />
「そうだねじゃないわよ!アンタ寝てんじゃないの!」<br />
「………。」<br />
私はふぅと小さく息をつく。呆れた。やっぱりシンジはいつまでたってもバカシンジね。<br />
…でも別にイライラすることもない。か。<br />
再びシンジの髪を撫でる。<br />
心なしか私の顔には笑みが漏れていた。<br />
シンジの寝顔を見ながら、私はさっきまで歩いていたあの廃墟を思い出す。<br /><br />
…全てが戻るにはまだ時間がかかるだろう。<br />
でも今は、この雪が傷痕をそっと覆い隠してくれる。<br />
なんだかそれでもいいような気がした。例え少しの間でも。<br /><br />
雪が静かにおちてゆく。<br />
時間がゆっくりと流れる。シンジの寝息とテレビの音が響く。<br />
ヌクヌクした部屋が私を睡魔に誘う。<br />
私は体を横たえて目を閉じた。<br /><br />
そうだ、もう少ししたらお風呂の準備をしよう。<br />
ご飯の準備もしなきゃ。<br />
でも<br />
今は…。<br />
もうちょっと……。<br />
もうちよっとだけ……。<br />
このまま…で。<br /><br /><br />
....to be continue.<br /></dd>
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