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「題名不明(21氏連絡ください)」(2007/09/26 (水) 11:22:30) の最新版変更点
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<p>あれほどしたかった同棲生活。<br>
正直言えばアタシはアイツに幻想を抱いていたのかもしれない。</p>
<p>同棲から数ヵ月。<br>
シンジと登校。<br>
シンジと食事。<br>
シンジと買い物。<br>
そのどれもが楽しく、満たされた生活。<br>
だけど、アタシの中には。ある感情が芽生えていた。</p>
<p>あまりにシンジは料理や家事をしなかった。<br>
家庭科の実技は良かったのに。アタシは本気で、『シンジは筋がいい!』と思った。だけど……。<br>
朝もそう。<br>
自分ではけして起きない。</p>
<p>その総てがアタシに頼りきった生活。</p>
<p>そしてアタシは、ある決断を下した。</p>
<p> </p>
<p>「だぁ~!どうしてアンタはそうトロイのよぉー!」<br>
「そんな事言ったってしょうがないだろ!」</p>
<p>アタシとシンジの同棲部屋に響く怒号。<br>
休みの日にこんなに騒いだら迷惑じゃないかと頭を霞めるけど、怒鳴らずにはいられなかった。</p>
<p>「だからなんでアンタは包丁の使い方がド下手なのよ!」<br>
「しかたないだろ!あまりやったことないんだから!」</p>
<p>そう、とにかくコイツは包丁の使い方がまるでなっていない。<br>
“猫の手”は知らないし、切ったら切ったでネギの数珠繋ぎだし……。<br>
本当にもうどうしようもない。<br>
味付けとか鍋の煮込み加減とかは完璧なんだけど。</p>
<p>「だから指先は猫の手にしろって言ってんでしょぉー!」</p>
<p>シンジはブスッとして答える。</p>
<p>「いいじゃないか……切れるんだから……。」</p>
<p>アタシはシンジの切ったネギの数珠をかざして言い放つ。</p>
<p>「アンタバカぁ~?これのどこが切れてるって言うのよ!」<br>
「食べれば同じじゃないか……。」</p>
<p>その言葉に、アタシは溜め息を吐きながら椅子に崩れた。</p>
<p>「サイッテー……。」</p>
<p>沈黙が部屋を支配する。</p>
<p>何か……少しおかしい……。<br>
いつもなら言い返してくる筈の、シンジの声が聞こえない。<br>
そう思った矢先に、急にシンジの声が部屋に響いた。</p>
<p>「じゃあ出ていけばいいだろ?」</p>
<p>この言葉に、冷め始めていたアタシの頭は再び沸騰する。</p>
<p>「なによ!アタシが全部悪いってワケぇ?」</p>
<p>バッと俯いていた顔を上げてヤツの眸を睨みつける。<br>
アイツは『しまった』って顔をしていたけど、たとえ間違いでも、アタシは許せない。</p>
<p>「なによ!アンタ一人じゃ家事の一つも出来ない癖に!」</p>
<p>あとは売り言葉に買い言葉。</p>
<p>それでアタシは公園でぶらぶらしてる。</p>
<p>シンジへの憤りと後悔のジレンマ。</p>
<p>歩き疲れて、アタシはベンチに座った。</p>
<p>時間はもう昼過ぎ。<br>
休みの日だと言うのに会社員が多い。<br>
休日出勤なのだろう。</p>
<p>持参の弁当を食べる者、買ったパンやおにぎりを頬張る者と様々だ。</p>
<p>ボンヤリとその光景を見つめていると、ふと太陽光が遮られ、暗く陰を落とす。</p>
<p>ハッと見上げる。<br>
そこにいたのは……。</p>
<p>「なにをしている。」<br>
「ゲンドウ叔父様……。」</p>
<p>左手に可愛いい熊の包みをぶら下げたシンジのお父さんだった。</p>
<p><br>
今、アタシの隣には熊の包みから取り出した弁当を食べる叔父様がいる。<br>
アタシの独白を聞きながら。</p>
<p>全て話した。<br>
普段のシンジ。<br>
家事が駄目なシンジ。<br>
アタシに出ていけばいいと言ったシンジ。</p>
<p>その話しが終わる頃には、叔父様の食事は終わっていた。</p>
<p>「そうか……まったく、バカなヤツだ。」</p>
<p>アタシは黙っていた。<br>
いつもなら誰かれ構わず、シンジにそんな事を言えばつっかかって行っていたアタシが、沈黙していた。<br>
叔父様の口がゆっくりと開く。</p>
<p>「君の言い分ももっともだ、しかしな……。」</p>
<p>叔父様は傍らの弁当箱を一撫ですると鼻でフンッと笑った。</p>
<p>「こんな弁当だが、私の様なヤツにとっては堪らなく嬉しい物だ。」</p>
<p>アタシはその時、弁当を撫でる叔父様の目が優しさに満ちている事に気が付いた。</p>
<p>叔父様はすくっと立ち上がる。</p>
<p>「どうだ?今日は煩い冬月もいない。研究所によっていくか?」</p>
<p> </p>
<p> </p>
<p>あれほどしたかった同棲生活。<br>
正直言えばアタシはアイツに幻想を抱いていたのかもしれない。</p>
<p>同棲から数ヵ月。<br>
シンジと登校。<br>
シンジと食事。<br>
シンジと買い物。<br>
そのどれもが楽しく、満たされた生活。<br>
だけど、アタシの中には。ある感情が芽生えていた。</p>
<p>あまりにシンジは料理や家事をしなかった。<br>
家庭科の実技は良かったのに。アタシは本気で、『シンジは筋がいい!』と思った。だけど……。<br>
朝もそう。<br>
自分ではけして起きない。</p>
<p>その総てがアタシに頼りきった生活。</p>
<p>そしてアタシは、ある決断を下した。</p>
<p> </p>
<p>「だぁ~!どうしてアンタはそうトロイのよぉー!」<br>
「そんな事言ったってしょうがないだろ!」</p>
<p>アタシとシンジの同棲部屋に響く怒号。<br>
休みの日にこんなに騒いだら迷惑じゃないかと頭を霞めるけど、怒鳴らずにはいられなかった。</p>
<p>「だからなんでアンタは包丁の使い方がド下手なのよ!」<br>
「しかたないだろ!あまりやったことないんだから!」</p>
<p>そう、とにかくコイツは包丁の使い方がまるでなっていない。<br>
“猫の手”は知らないし、切ったら切ったでネギの数珠繋ぎだし……。<br>
本当にもうどうしようもない。<br>
味付けとか鍋の煮込み加減とかは完璧なんだけど。</p>
<p>「だから指先は猫の手にしろって言ってんでしょぉー!」</p>
<p>シンジはブスッとして答える。</p>
<p>「いいじゃないか……切れるんだから……。」</p>
<p>アタシはシンジの切ったネギの数珠をかざして言い放つ。</p>
<p>「アンタバカぁ~?これのどこが切れてるって言うのよ!」<br>
「食べれば同じじゃないか……。」</p>
<p>その言葉に、アタシは溜め息を吐きながら椅子に崩れた。</p>
<p>「サイッテー……。」</p>
<p>沈黙が部屋を支配する。</p>
<p>何か……少しおかしい……。<br>
いつもなら言い返してくる筈の、シンジの声が聞こえない。<br>
そう思った矢先に、急にシンジの声が部屋に響いた。</p>
<p>「じゃあ出ていけばいいだろ?」</p>
<p>この言葉に、冷め始めていたアタシの頭は再び沸騰する。</p>
<p>「なによ!アタシが全部悪いってワケぇ?」</p>
<p>バッと俯いていた顔を上げてヤツの眸を睨みつける。<br>
アイツは『しまった』って顔をしていたけど、たとえ間違いでも、アタシは許せない。</p>
<p>「なによ!アンタ一人じゃ家事の一つも出来ない癖に!」</p>
<p>あとは売り言葉に買い言葉。</p>
<p>それでアタシは公園でぶらぶらしてる。</p>
<p>シンジへの憤りと後悔のジレンマ。</p>
<p>歩き疲れて、アタシはベンチに座った。</p>
<p>時間はもう昼過ぎ。<br>
休みの日だと言うのに会社員が多い。<br>
休日出勤なのだろう。</p>
<p>持参の弁当を食べる者、買ったパンやおにぎりを頬張る者と様々だ。</p>
<p>ボンヤリとその光景を見つめていると、ふと太陽光が遮られ、暗く陰を落とす。</p>
<p>ハッと見上げる。<br>
そこにいたのは……。</p>
<p>「なにをしている。」<br>
「ゲンドウ叔父様……。」</p>
<p>左手に可愛いい熊の包みをぶら下げたシンジのお父さんだった。</p>
<p><br>
今、アタシの隣には熊の包みから取り出した弁当を食べる叔父様がいる。<br>
アタシの独白を聞きながら。</p>
<p>全て話した。<br>
普段のシンジ。<br>
家事が駄目なシンジ。<br>
アタシに出ていけばいいと言ったシンジ。</p>
<p>その話しが終わる頃には、叔父様の食事は終わっていた。</p>
<p>「そうか……まったく、バカなヤツだ。」</p>
<p>アタシは黙っていた。<br>
いつもなら誰かれ構わず、シンジにそんな事を言えばつっかかって行っていたアタシが、沈黙していた。<br>
叔父様の口がゆっくりと開く。</p>
<p>「君の言い分ももっともだ、しかしな……。」</p>
<p>叔父様は傍らの弁当箱を一撫ですると鼻でフンッと笑った。</p>
<p>「こんな弁当だが、私の様なヤツにとっては堪らなく嬉しい物だ。」</p>
<p>アタシはその時、弁当を撫でる叔父様の目が優しさに満ちている事に気が付いた。</p>
<p>叔父様はすくっと立ち上がる。</p>
<p>「どうだ?今日は煩い冬月もいない。研究所によっていくか?」</p>
<p> </p>
<p> アタシは無言で立ち上がると、叔父様について歩き出した。</p>
<p><br>
ネルフの研究所は地下にある。<br>
地下の天然洞窟を利用して作られたらしい。<br>
その空洞の真ん中に有るのはピラミッド型の研究棟だ。</p>
<p>叔父様に連れてこられたのはオフィスのような部屋。<br>
表には名前が書いてあったから恐らく叔父様のだろう。</p>
<p>連れてこられてから、ゆうに30分は経っている。<br>
唐突に扉が開く。</p>
<p>長身の叔父様がノッソリと現れて少し驚く。<br>
だけど、アタシの目はその後ろに向いていた。</p>
<p>「誰よそれ?」</p>
<p>思わず素の口調で喋ってしまう。<br>
だけどそうせずにはいられなかった。<br>
後ろにいたのは、叔父様にはちっとも似合わない少女だったからだ。<br>
青い髪で白い肌。赤い瞳でムスッとしている。<br>
笑えばさぞ可愛いいだろうが、無表情ではその顔の魅力も半減している。</p>
<p> </p>
<p>その少女は叔父様に促されてやっと挨拶をした。</p>
<p>「綾波レイ……。」</p>
<p>呟くような自己紹介に気分が少し悪くなる。</p>
<p>叔父様も溜め息を吐いているようだ。</p>
<p>そして、声が聞こえる。</p>
<p>「しばらくレイと同居してみんか?」</p>
<p>沈黙が降りる。</p>
<p>「えぇぇえぇぇええ!?」</p>
<p>アタシの悲鳴がオフィス内に木霊した。</p>