新婚旅行の行き先は

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「ええぇ~~~!!  新婚旅行に行っちゃダメェ!? 聞いてないわよ!」 ネルフの作戦部室に悲鳴じみた声が木霊する。作戦部室内はおろかネルフ中に響き渡るような 大声だ。その声の主はつい先日、式を挙げたばかりで幸せの絶頂にいたアスカである。 そしてその非難の矛先にいるのが『元』同居人のミサトであった。 「今、言ったでしょ?」 カエルの面に小便(失礼)とでも言うべきか悪びれる様子もなく、さらりとかわす。 「大体ねぇ・・・ あなた達ドコ行こうとしてたの?」 「目的地なんか決めてないわよ! そうね、強いて言えば世界一周ってとこかしら」 「論外! 大体あなた達、自分の立場分かってんの!?」 ミサトが叫ぶ。 「もっちろん!世界の救世主!人類の至宝!セカンドチルドレンとサードチルドレン!」 アスカも負けずに叫ぶ。 「それだけ分かっていれば十分ね」 先程まで喧嘩口調であったが明るかったミサトは急に暗い口調になっていった。 それを感じ取ったアスカは 「ちょっと冗談よ!今更チルドレンの称号やEVAに頼る程アタシは落ちちゃいないわよ!」 と返した。 使徒戦役時はチルドレンの座やEVAのパイロットとしての自分に驕り高ぶっていた。 そのせいで多くの人を傷つけ、そして自分も深く傷ついていった。 一方のミサトはもちろん行き先に関しては二人から大まかな話は聞いている。 正直なところ笑顔で二人を見送ってあげたかった。しかし偽りであったかもしれないが 家族であった二人のためにどうしても無粋な真似をしてでも止めなければならなかった。 「私が言っているのはそう言うことじゃないの・・・ 自分達がそれで良くっても回りは そう見てはくれないのよ、考えた事ある?自分達がどれだけ利用価値が高いかってコト?」 テロリストや宗教的な背景もあり営利目的、政治的目的の何れでもあれ使徒戦役の第一の立役者であるチルドレンの価値は高い。 その二人がそろって世界を回ろうとするのだから、必然的に誘拐やテロの標的になる 可能性が飛躍的に高まってしまう。 「そりゃあ分かっているけど・・・それを言ったらアタシ達をまだ利用しいてるネルフも 一緒じゃない!」 「否定はしないわ・・・ そのせいであなた達に肩身の狭い思いをさせているのも事実、 本当にごめんなさい・・・」 「ミサト・・・」 いつもぎゃあぎゃあと言い争うことしかしなかったミサトが自分の前で深々と頭を下げて きたので少々ばつが悪いくなったアスカ。こうなったら無闇に攻め立てることも出来ない。 「今の私たちが出来る事といえばあなた達を守ることしか出来ないの・・・それもネルフ 本部がある日本国内が限界、精一杯なのよ」 「分かったわ」 「アスカ、ありがとう!」 ふぅ、と息をもらし肩の力を抜くアスカに許しを得たと思ったのだろうか弾けんばかりの 笑顔を復活させて頭を上げるミサト。 しかしアスカは甘くはなかった。 「ちょっと待った!  誰も新婚旅行に行かないとは言ってないわよ?」 「えっ!?」 今度は鳩が豆鉄砲を喰らったかのような表情を見せるミサト。 「ミサトはさっき言ったわよねぇ?」 「『日本国内が精一杯』って!」 にぃ、とアスカの口角が持ち上がる。 「げぇっ!」  三十路をとうの昔に越えた女性が「げぇ」はないだろうに・・・ 「今更、言い逃れは出来ないわよ!  さぁてっとドコに行こうかなぁ~っと」 まるで足に羽が生えたかのように軽やかにステップを踏んで作戦部室を退室するアスカ。 それを只、呆然とミサトは見送るしかなかった。

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