僕は召使い?

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「バカシンジの癖に、アタシの料理にケチつけるんじゃないわよ!」 「だって、この味は酷いじゃないか!僕が教えた時、ちゃんと聞いてなかったの!?」 「うるさいうるさい!もういいわ。今日こそ、実家に帰れ!」 そう言ってアスカに追い出されたのが一時間前。 財布も持たせてもらえなかった僕は、アスカの言う通りにするのは悔しかったけど、 結婚するまで住んでいた実家に帰った。 「ただいま~」 久しぶりに帰った実家は、懐かしく、恥かしい気持ちになる。 今では僕の倉庫兼追い出された時の避難場所となっている僕の部屋へと向かう途中、 居間に座っている母さんの背中が見えた。 僕は、つい愚痴を言いたくなった。 「母さん、聞いてよ、アスカってば・・・」 「シンジ、ちょっとそこに座りなさい」 「え・・・なんで?」 「いいから、座りなさい」 言われるままに、その場に座る。 振り向いた母さんは、眉間にシワを寄せて僕を睨む。 「シンジ、アスカちゃんを泣かせたんですって?」 僕は自分の耳を疑った。 「はぁ!?むしろ泣かされたのは僕だよ。味付け間違ってる料理たべさせられて、  無一文で外に放り出されて…」 「へぇ~…そう。アスカちゃん、出ていらっしゃい」 隣の部屋から、シクシクと泣いている(演技をしているに決まってる)アスカが出てきた。 そして、僕は全てを悟った。見事に、はめられた・・・。 「アスカちゃん、泣いて飛び込んで来たのよ。味付け間違えて、怒鳴られたって…」 「そんな事してないよ!ちょっと、調味料が違うね、って言っただけで…」 「嘘!嘘ですおばさま!シンジ、私を怒鳴って、頬を思いっきり引っぱたいたんですよ!」 「えぇ~!?」愕然とするシンジ。 「シンジ!女の子に手を上げるなんて、そんな子に育てた覚えはありません!」 「ちょ、ちょっと待ってよ母さん!何でそんなにアスカの言う事ばかり信じるのさ!?」 「アスカちゃんがそんな酷い子なわけないじゃない」 そう、母さんは未だにアスカの本性に気付いていない。 「幼稚園、小学校、中学高校と、ずっとアスカちゃんにお世話になったのは、あなたでしょ?  こんなに世話好きで良い子のアスカちゃんがあなたのお嫁さんになってくれたんだから、  もっと大事になさい」 「だから母さん、騙されてるんだってば!」 「酷い!私、大好きなシンジの為に一生懸命に頑張ってるのに!」 「謝りなさい、シンジ!」 「…ご、ごめんなさい」 なんで僕が謝ってるんだろう…そう思ったが、もう癖になっていた。 母さんの後ろで、アスカが邪悪な笑みを浮かべている。 でも、もう反抗する気力が起きない。もう、どうでもいいや…。 僕は時々思う。 アスカが僕と結婚してくれたのは、僕を召使いのように出来るからなんだ、と…。 妻と母が仲悪いのは困るけど、やたら仲が良いのは、それはそれで辛いものだと、僕は思う。 閉幕

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