夜の7時

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夜の七時。 妊娠8ヶ月のアスカ。 アスカはおなかの赤ん坊に話かけている。 医師からは、性別を聞いてないし教えてもらってないけれど、ずっと前から名前を付けて呼んでいた。 「未来ちゃん、いい子ね。まだパパは帰ってこないのよ。さっき電話があって九時まで仕事だって。だから、ママと早く寝ましょうね」 アスカは軽くお腹をなでた。 アスカは昨日、シンジと自宅で出産することを決めたのだった。 アスカ自身、分娩台にのるのが不安でたまらなかったことや、内科の医師として働いているシンジ自身、アスカを仰向にさせ足を開く体位をとらされ足首を固定させられる産院のやりかたに疑問があったからだった。 というか、このため力が入らないこと会陰切開の可能性が高いことから自宅で産むことがベストだろうと思い自宅で産ませることにしたのだった。 シンジの部屋にはいると何冊もの命名の本がつんであった。 アスカは折り目のついたところに目を通す。シンジの癖だった。 シンジが考えていた名前はいくつかあった。 女の子 咲良(さくら)、映菜(はな)、日暖(ひなた)、悠(はるか)笑生(えみ)仁子(にこ) 男の子 心、怜、櫂、陸、未來 どちらでも 未来、未來、悠希、千尋、千種 アスカはシンジなりに考えていてくれたことがうれしかった。 そんなそぶりも見せないシンジに少し痛いことを言ってしまったことに少し反省した。 「あんたバカぁ、男の子に未来なんてつけないわよ」と言ってしまったからだった。 シンジは苦笑していたけれど。 「未来ちゃん、パパは沢山あなたの名前考えてくれてたのね。元気に産まれてこようね。おまえのためなら、ママは命を引き替えてもまもるからね」 アスカはお腹の中にいる赤ん坊にそっと話しかけた。 赤ん坊はそれに応えるかのようにアスカのお腹のなかで力強くうごいた。 やがて月満ちて赤ん坊がうまれた。 森山未來と同じ字を書いて未來と戸籍にかいた。 でも、わかりやすいように赤ん坊の名前は未来という漢字にしてある。 未来の意味は、アスカの漢字名明日香からとってつけた名前だった。 そして未来に幸せがたくさんあるようにとねがいをこめてつけた名前だった。 どうか無事に元気に育ってねと思うアスカだった。

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