綺麗な満月の夜

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綺麗な満月の夜 七階のベランダから月を見ているアスカとシンジ。 そっと自分の上着をアスカにかけるシンジ。 「アスカ、月には蟹が住んでいるんだってさ。」と月に指を指しながらいうシンジ。 「私は兎がいるってママから聞いたことがあったな。」なつかしそうに月を見ながらアスカは亡くなった母キョウコのことを回想していた。 ガラス張りの病室で人形(アスカ)を抱き締めていた。 可哀想な人だったとアスカは思う。 発狂し父に捨てられ、死んでいった母が元気だった頃話してくれた話をおもいだしていた。 「むかしね、森の中で行き倒れした旅人がいました。動物たちは可哀想に思い、食べ物や薪を探しにいきました。熊はさかなを、狐はぶどうを、リスは木の実を狸は薪や木の葉を拾いに行きました。でも兎だけ何も見付けることができませんでした。 やがて旅人は気が付き動物たちが集めてきた食べ物を口にしたり、薪や木の葉で火をおこしました。 その時でした。 「私を食べて」と兎は言い火の中に飛込んだのは。 旅人は兎の死を悲しみ、神様にお願いしました。 どうかこの優しい兎が幸せに暮らせる場所を与えて下さいと。 神様は旅人の願いを叶えて自分が住んでいる月の宮殿に沢山の兎の友達と住まわせることにしました。」キョウコは優しくアスカを抱き締めた。 「私はその時のママのこと忘れられないの。優しいママだった。 なんでママ死ななくちゃいけなかったの?」アスカの言葉に胸が締め付けられるシンジだった。 「なんで私を置いていってしまったの? なんで私を殺そうとしなかったの?」その言葉を遮るようにシンジはアスカを強くだきしめた。 アスカはシンジの胸の中で号泣していた。 「シンジごめんなさい。私、あなたの子を流産しようとしたの。怖かったの。私もママみたいに子ども捨てるんじゃないかって愛せないんじゃないかって。」アスカはシンジにそう言うと大きな声で泣き出してしまった。 シンジはアスカを責めることができなかった。 「勝手だよね。わかった時、赤ちゃんいらなかった。 堕ろしたかった。 でも、エコーでこの子見た時、殺せなかった。私を叱ってシンジ」シンジはアスカを黙ってただ抱き締めた。 「アスカ、僕は叱れない。僕も父親になるのが怖いんだ。冷たい父親になるんじゃないかって思ったから」 シンジはそう言うとアスカをしっかり抱き締めた。 シンジの目から涙がこぼれた。 アスカはそっとその涙を手の平でぬぐった。 月が美しい10月のことだった。 この五日後、アスカは女児をアパートの居間で産んだ

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