『
鉄道』は
平井喜久松さんの著書で,
岩波書店から1936年(昭和11年)に第1刷が,1949年(昭和24年)に第7刷が発行されました。
このページには「第三編 運転,信号および保安 第一章 列車運転」を収録。
目次
第三編 運転,信号および保安 (p. 197)
第一章 列車運転 (p. 197)
§1. 機関車牽引力 (p. 197)
機関車およびこれに連結された車輛の抵抗に打勝って列車を運転するに必要な力を牽引力(tractive force)と称する。
牽引力は次の3つの能力のうち何れか小なるものによって定められる。即ち
1. 摩擦能力(adhesive power)(p. 197)
これは機関車の動輪(driven wheel)の上に来る重量の総和と動輪と軌条との間の摩擦係数との相乗積であって次式で示される。
Ta =
fW
茲に
- Ta:摩擦による牽引力
- W:動輪上の重量
- f:動輪と軌条との摩擦係数で,次の値をとる。
- 0.25(夏季)
- 0.2(冬季)
- 0.33(乾きたる軌条上に砂を撒いた場合)
- 0.1(動輪が軌条上で滑り始めた場合)
2. 汽缶能力(boiler capacity)(p. 197)
汽缶が蒸気を発生する能力であって従来実験公式が数多くあるが大体次式の如き値を有する。
Tb = 1,127.5 x H
/V
茲に
- Tb:汽缶力による牽引力(kg)
- H:火床面積(m2)
- V:列車の速度(km/h)
3. 気筒能力(cylinder power) (p. 198)
気筒における蒸気の圧力による能力であって,次式で算出することができる。
Tc =
Pd2L /D
茲に
- Tc:気筒力(kg)
- D:動輪の直径(cm)
- d:気筒の直径(cm)
- L:pistonの行程(cm)
- P:蒸気の平均有効圧力(kg/cm2)
§2. 機関車馬力 (p. 198)
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機関車馬力とはその牽引力で機関車がなす仕事の割合を言うのであって次式によって求められる。
HP = TV / 270
茲に
- HP:機関車の指示馬力(indicated horse power)
- T:機関車の指示牽引力(kg)
- V:運転速度(km/h)
これを図示すれば第223図の如くである。
電気機関車および電車の牽引力および馬力は電動機の特性曲線によって算出するのであるが,ここでは省略する。
§3. 列車抵抗 (p. 199)
列車が軌道上を走っているときには種々の抵抗があるが,これ等の抵抗を総称して
列車抵抗(train resistance)と言っている。
1. 列車抵抗の種類 (p. 199)
列車抵抗には大体次の如きものがある。
- 発車抵抗(starting resistance)
- 走行抵抗(running resistance)
- 勾配抵抗(grade resistance)
- 曲線抵抗(curve resistance)
- 加速度抵抗(acceleration resistance)
2. 発車抵抗 (p. 199)
車輛の発車の際には運転中の摩擦抵抗に比して非常に大きな抵抗がある。これを発車抵抗と称しているが,この抵抗は静止時間が長い時は車輛の軸承と軸頸との間の油膜が切れて,恰(あたか)も金属と金属との摩擦の如き状態となり特に大きくなる。先年著者が石炭車について実験せし結果,第27表の如き値を得た(鉄道省業務研究資料第21巻第37号参照)。
これによって発車抵抗は停車時間に左右されることが大であることが判る。一般に列車の場合における発車抵抗は9〜12kg/トンに考えられているようである。
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3. 走行抵抗 (p. 201)
列車が水平直線線路(level tangent)をある速度で運転せる場合に生じる抵抗を
走行抵抗と言っているが,走行抵抗の原因となるべき主なるものは次の如きものである
- 軸頸の摩擦抵抗
- 車輪と軌条との間の摩擦抵抗
- 車輪の動揺による抵抗
- 大気の抵抗
- 機関車の機械部,電動機および客車の発電機等による抵抗
- その他車輛,線路ならびに天候,気温等の影響
以上の諸因子には列車の速度に関係なきものと,速度に正比例するものと,また速度のn 乗に比例するものとあるが,一般に分割して研究せず,実験に基いて次の如き形の実験式を導いて用いている。
|
Rr =a +bV |
ただし |
Rr:走行抵抗 |
あるいは |
Rr =a +bV2 |
|
a,b,c:係数 |
あるいは |
Rr =a +bV +cV2 |
|
V:列車速度 |
走行抵抗の実験公式はかなり多いが,その主なるものは第28表の如くである。
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なお列車抵抗の一部である車輛抵抗の各実験公式を石炭車に適用した値を著者の実験値と比較すれば第224図の如くなる。図中に太線で示せる No.11 線は著者の実験値である。
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4. 勾配抵抗 (p. 204)
重量W kgの列車が勾配線を上るとき,走行抵抗以外の余分の牽引力が必要である。この勾配に起因する抵抗を勾配抵抗と言う。勾配抵抗 Rg(kg)の値は次の如くである。
Rg = W sinθ
≒ W tanθ
今 W = 1トン = 1000kg,tanθ=i / 1000 とせば
Rg = 1000 x i /
1000 = i ‥‥(kg/トン)
即ち勾配 i ‰なる場合の勾配抵抗は i kg/トンである。
5. 曲線抵抗 (p. 204)
車輛が曲線部分を通過するとき内外軌条長との差と方向の変化とにより,車輪が軌条上を滑動するために直線部分より余分の仕事をせねばならない。これが曲線抵抗である。曲線抵抗はその曲線半径は勿論,軌間,カントおよびスラックの量,車輛の固定軸距,車輛の構造,盈(えい)空の別,大気の温度,軌条の磨耗程度等によってその値を異にするから,一般的に適用し得る公式を見出すことは不可能である。故に走行抵抗と同様に実験によってこれを求める場合が多い。従来の実験公式の中,主なものを石炭車盈(えい)車に適用して曲線を画き,著者の実験値と比較して見れば第227図の如くなる。
曲線抵抗を線路勾配
i に換算したものを
相当勾配(equivalent grade)と言い,実際の線路勾配に加算補正した勾配を
補正勾配(compensated grade)と言い,実際勾配と区別する。このように曲線を勾配に換算補正することを
曲線補正(curve compensation)と言う。
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6. 加速度抵抗 (p. 206)
列車の速度を加速せしむるために必要な力を加速度抵抗と言い,次式によって表される。
Ra = (1 +
ξ)(v22 - v12 ) /
2gl
ただし
- Ra:加速度抵抗(kg/トン)
- g:重力の加速度(m/sec2)
- l:走行距離(m)
- v2:終速度(m/sec)
- v1:初速度(m/sec)
- ξ:回転部分の加速度抵抗と直進加速度抵抗との比 = W'/W x (k /r )2
- W:車輪全体の重量(kg)
- W':車輪車軸の重量(kg)
- r:車輪の半径(m)
- k:車輪および車軸の回転半径(m)
§4. 機関車牽引定数 (p. 207)
機関車の牽引定数(locomotive rating)とは列車種類および線路状態を考慮して,各区間を安全に運転し得るように決定せられた最大列車重量または車輛数を言う。それ故同一機関車でも旅客列車と貨物列車,平坦区間と勾配区間等によって差異を生ずる。
機関車牽引定数は機関車牽引力と列車抵抗とによって定まるものであるから,トン数で示すべきであるが,我国では換算輛数によっている。
1. 有効牽引力 (p. 207)
第一節に述べた牽引力(
指示牽引力)より機関車の走行抵抗を減じたものを
有効牽引力(available tractive force)または
引張棒牽引力(draw bar pull)と言う。ただし単に有効牽引力と言う場合は平坦直線路におけるものを意味する事が通例である。
2. 牽引重量 (p. 207)
平坦直線線路をある速度で運転せる列車において機関車の有効牽引力は牽引せる車輛の総走行抵抗に等しい。即ち
T = RW または,W = T
/ R
ただし
- T:機関車の有効牽引力(kg)
- R:牽引車輛の走行抵抗(kg/トン)
- W:牽引重量(トン)
勾配線路で且つ曲線線路の場合は次式の如くなる。
W = (T -
RgWl) / (R +
Rg )
ただし
- Rg:勾配および曲線抵抗(kg/トン)
- Wl:機関車全体の重量(トン)
以上は走行中の場合であるが,発車の際にはR は発車抵抗を採るべきである。
3. 均衡抵抗 (p. 208)
機関車の指示牽引力と全列車抵抗(機関車を含む)と全く同一となり,列車が等速度運転をなす状態となったときの速度を
均衡速度(balancing speed)と言う(第228図参照)。
4. 制限勾配 (p. 209)
機関車の牽引重量を制限する勾配を
制限勾配(ruling grade)と言う。これは相当延長を有し制限せられた牽引重量に対する均衡速度をもってその運転を継続し得る勾配であって,必ずしも線路中の最急勾配と一致するとは限らない。即ち仮令(たとえ)急勾配でもその延長が短かい時にはその麓における高速度による惰力を利用してその勾配の牽引重量より大なる重量を牽引し得るが如き場合がある。斯くの如き勾配はこれを
惰力勾配(momentum grade)と言う。
5. 制限勾配の決定法 (p. 209)
制限勾配を決するに必要なる条件は勾配の麓における速度,勾配線上における均衡速度および上り勾配の大きさ及びその長さであるが,
速度曲線(speed curve)を画き決定するものである。
勾配の麓における速度は牽引重量によって異なり,牽引重量は勾配の大きさに支配せられ,勾配線上における均衡速度は我国現行規定では貨物列車の場合17km/hである。。
6. 上り勾配における牽引定数 (p. 209)
牽引定数は機関車の牽引力,列車抵抗,運転区間の制限勾配および列車種別による均衡速度とにより,その牽引し得べき重量を
2. にて述べた方法によって算出査定するのである。
7. 下り勾配における牽引定数 (p. 209)
これは
前項の牽引定数と異なる意味において,運転の安全を期するために適当の制限を存せしむる必要がある。従来の経験および最近の空気制動機の実績から見て大体次の如き程度が適当と思われる。
- 10‰以下の勾配:同一上り勾配に対する牽引定数の1.3倍
- 10‰を超ゆる勾配:同一上り勾配に対する牽引定数の1.5倍
§5. 列車制動 (p. 210)
1. 制動力 (p. 210)
進行しつつある列車を
制動するには通常制輪子を車輪に圧し付け,両者間に生ずる摩擦力によって車輪の回転を妨ぐるものである。この制輪子との間の摩擦力を
制動力(brake pressure)と言い,制動圧力と車輛の制動軸上の重量との割合を
制動率(brake ratio)と言う。また制動圧力は制動機の構造によりその原動力を倍加し得らるるもので,この倍加の割合を
制動倍率と言う。
一般に制動圧力,制動率,原動力および制動倍率は次の如き値である。
- 制動圧力:F =kw(ただし,w は制動軸上の重量)
- 制動率:k = 0.6(機関車),k = 0.8(客車)
- 原動力:
- p = 0.8kg/cm2 真空制動機のポンプ面上に加わる圧力
- p = 3.5kg/cm2 空気制動機のポンプ面上に加わる圧力
- p = 30〜50kg 手用制動機の把手に与える力
- 制動倍率:6〜9
2. 摩擦係数 (p. 210)
制動力は制動圧力F に制輪子と車輪の間における摩擦係数f を乗じたもので,f は次の条件によって変化する。
- 制輪子と車輪との材質により異なる。
- 速度が大なればf は減じ,速度が小になれば増大する(第229図)。
- 制動圧力が大なればf は減少する。
- 温度低きときはf が大となる。
- 制輪子が大なればf は大となる。
- 制輪子の摩擦面が粗なるものはf の値小である。
3. 制動距離 (p. 211)
制動してより停車するまでの距離を制動距離と言い,大体次式によって求めることができる。
S = v2 /
2g'(R + B )
ただし
- S:制動距離(m)
- v:列車速度(m/sec)
- g':回転部分の影響を考慮せる重力の加速度(m/sec2)
- R:平均列車抵抗(kg/トン)
- B:平均制動力(kg/トン)
§6. 運転速度 (p. 212)
運転速度では前述の均衡速度の外に考えねばならぬのは勾配における制限速度および曲線における制限速度である。
一般に列車が均衡速度に達するまでは加速し,急勾配の麓でその勾配の均衡速度より大なる速度であった場合は,急勾配のために均衡速度まで減速する。これ等の運転速度の状態を示すには速度距離曲線(speed distance curve)を見るのが最もよろしい。
1. 速度距離曲線 (p. 212)
距離を横軸に,速度を縦軸に取って画いたダイアグラムを速度距離曲線と言う。
今第230図においてΔsの距離を走行する時間をΔtとすれば
Vm = Δs
/ Δt
ただし
Vm:平均速度 =
(V2 + V1 ) / 2
然(しか)るに第231図の加速力曲線にいおいて速度Vmの時の加速力をf とすれば
f = mα, α = ΔV /
Δt (ただし,m:質量,α:加速度)
m = 1 とせばf = α,f = ΔV / Δt
Δt = ΔV / f ∴
Δs = Vm ΔV / f
∴ Δs / ΔV =
Vm / f
即ち速度距離曲線のある点における切線は,加速力曲線のVmに相当する点と原点O とを結ぶ直線と平行である。
以上の事柄によって速度距離曲線を画くことができる。即ち水平直線線路を走るときはab(第230図)はOA(第231図)に平行であるが,2‰の勾配を走る時はO'Aに平行となりab は下向となる。加速力曲線は機関車の指示牽引力より水平直線線路における列車抵抗を減じて作ったものである。
2. 下り勾配における速度制限 (p. 213)
我国有鉄道では運転取扱心得に第29表の如く定めている。
第29表 勾配における速度制限 |
下り勾配 |
速度 (km/h) |
摘要 |
A |
B |
2/1000 |
以下 |
95 |
65 |
A は旅客列車および1時間65kmを超える速度をもって運転するその他の列車を言う。
|
6/1000 |
|
90 |
60 |
10/1000 |
|
85 |
55 |
14/1000 |
|
80 |
50 |
18/1000 |
|
78 |
45 |
20/1000 |
|
70 |
40 |
25/1000 |
|
65 |
35 |
30/1000 |
|
50 |
30 |
35/1000 |
|
45 |
25 |
ただし勾配が本表に掲ぐるものの中間の場合は急なる勾配の速度による。
3. 曲線における制限速度 (p. 213)
我国有鉄道では第30表の如く定めている。
第30表 曲線における速度制限 |
曲線半径 (m) |
速度 (km/h) |
摘要 |
A |
B |
600 |
|
85 |
65 |
A
は線路の分岐に附帯せざる曲線の場合,B は線路の分岐に附帯する曲線の場合。
|
500 |
|
90 |
60 |
450 |
|
75 |
55 |
400 |
|
70 |
55 |
350 |
|
65 |
50 |
300 |
|
70 |
40 |
250 |
|
55 |
45 |
200 |
|
50 |
45 |
175 |
|
45 |
40 |
150 |
|
40 |
35 |
125 |
|
35 |
30 |
100 |
以下 |
30 |
25 |
ただし曲線半径が本表に掲ぐるものの中間の場合,速度は半径の小なるものによる。
4. 分岐器通過の場合における速度制限 (p. 213)
我国有鉄道では第31表の如く定めている。
第31表 分岐器における制限速度 |
フログ 番号 |
分岐器片開の場合 |
分岐器両開の場合 |
曲線半径 (m) |
速度 (km/h) |
曲線半径 (m) |
速度 (km/h) |
8 |
107.1 |
25 |
220.8 |
45 |
10 |
162.6 |
35 |
335.4 |
50 |
12 |
243.2 |
45 |
501.9 |
60 |
16 |
526.6 |
60 |
— |
— |
§7. 運転方式 (p. 215)
1線路上に同一方向の列車を運転する場合,2つの列車に相当の間隔を維持せしむる事が必要である。これに次の2つの方法がある。
(a)時間間隔運転(train working on the time interval
system)
(b)距離間隔運転(train working on the space interval system)
(a)は列車を連続して運転する場合に相互列車の間隔を一定限の時間的に分離する運転方法であって,(b)は一定限の距離を分離する方法である。
一般に列車の運転は距離間隔法で所謂(いわゆる)閉塞式(block system)によるを原則とする。単線区間においては通例停車場間を1閉塞区間とし,その間に1列車以上進入し得ない設備を施すのである。
単線および複線区間における閉塞設備および列車の運転方法に次の如き種類がある。
(1)単線区間
(a)指導法(pilot system)
(b)票券式(train staff system)
(c)通票閉塞器式(tablet system)
(d)自動閉塞式(automatic block system)
(2)複線区間
(a)双信閉塞式
(b)連動閉塞器式
(c)自動閉塞式
1. 指導法 (p. 216)
この方法は列車がある区間を運転する場合指導者を添乗せしむる方法であって,指導者は各区間1名であるから同時に2箇列車を運転する虞(おそれ)がない。而(しか)して次の如き場合に適用せらる。
- 複線において1線が閉鎖せられた場合
- 単線または複線において事故のため1閉塞区間を1時2区間以上に分つた場合
- 閉塞装置が破損または喪失せる時
2. 票券式 (p. 216)
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これは指導法に代わるべきもので,指導者を置く代りに1区間に1つの通票を備え,その区間を運転する列車は必ずこれを携帯する事を原則とする(第232図)。
3. 通票閉塞器式 (p. 217)
これは通票即ちタブレットと称する厚さ9.57mm,直径約101.6mmの真鍮製の円形板が通票閉塞器の中に収められ,1閉塞区間では隣接駅相互に電気的鎖錠を行い同時に1箇以上の通票をとりだし得ないようにしたものである。而(しか)して通票を何れかの閉塞器に納入するときには何れにおいても通票を取出し得るようになるもので(この場合にも一方で取出せば他は鎖錠される),反対方向列車なり,あるいは続行列車を運転することができるようになる。通票閉塞器は2箇を1組とする(第233図)。
4. 双信閉塞式 (p. 217)
複線区間における閉塞器として広く用いらるるもので,第234図の如く甲乙丙駅に双信閉塞器を備え電線をもって接続させる。この閉塞器の中央円形窓に左右2箇の小形の椀を有す。この椀は表示器で普通下向45°の位置を定位とし,椀が水平の位置にある時は「線路に列車あり」と言う信号を表示するのである。
5. 連動閉塞式 (p. 218)
これは閉塞器と信号機とを連動せしめるもので閉塞区間に列車のない事を閉塞器によって確かめた後でなければ信号機の取扱ができないようにした装置である。
6. 自動閉塞式 (p. 218)
列車運転が頻繁となるときは通信閉塞式または双信閉塞式等では完全を期し難いので軌道回路により列車自身にて自動的に信号を動作せしむる方法を用うる。この方法を自動閉塞式と言う。東京附近省線電車線に用いらるるものはこれである。
7. 列車運転指令法 (p. 218)
以上運転諸方式の外に
列車運転指令法(train despatching system)と言うのがある。これは普通160km内外を1区とし1線区毎に despatcher と称する掛員を置き,その区内の列車運行に関する諸種の指令をなさしめ,列車運転の円滑を計るもので自動閉塞式と併用して用いられる。
8. 4線軌道における運転方式 (p. 218)
輸送量が増加して複線では満足な輸送を行う事ができず,4線軌道とした場合,その線路の使用方法を如何(いか)にするかによって,能率または経済上大なる差異を生ずる。従来行われている運転方式は次の2つである。
- 方向別運転(Richungbetrieb)
- 線路別運転(Linienbetrieb)
方向別運転は第235図の如く相並んだ1組の線路に同一方向の列車を通ずるのである。同一方向の2線が相並んでいるから両線間の関係は密接であり,従って運転および運輸上便利な点が多い。
線路別運転は第236図に示す如く4線のうち1組を旅客線,他を貨物線の如く劃然(かくぜん)と分けるのである。従って同一方向線間の列車の転線,乗客の乗換,貨物の積換に不便であるが,片側に貨物設備がある場合多数の線を横断して入換をなす不利がなく,また線路を増設する場合現存の建造物を動かす事少なく,従って容易に且つ安価に浩二をなし得る利点がある。
9. 3線軌道における運転方式 (p. 219)
3線軌道における運転方式は次の2つの場合が考えられる。
- 旅客輸送量の多き場合2線を旅客専用の複線とし,残り1線を貨物列車用とする。また貨物輸送量の多き場合はこの逆とする(第237図)。
- 2線を普通複線区間の如く旅客貨物両用として,残りの1線を輸送の流れに応じて旅客,貨物の何れかに供する(第237図)。
参考文献
(著者・編者の五十音順)
書籍
- 平井喜久松『鉄道』岩波書店,1936年5月15日 第1刷発行,1949年7月15日 第7刷発行
辞典
- 岩波書店『広辞苑』〈シャープ電子辞書 PW-9600 収録〉岩波書店,1998-2001年,第5版
(書名の五十音順)
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更新日:2010年12月07日
最終更新:2010年12月07日 18:16