『
鉄道』は
平井喜久松さんの著書で,
岩波書店から1936年(昭和11年)に第1刷が,1949年(昭和24年)に第7刷が発行されました。
このページには「第二編 停車場 第二章 停車場における設備」を収録。
目次
第二編 停車場 (p. 111)
第二章 停車場における設備 (p. 113)
§1. 停車場内諸線路 (p. 113)
停車場内には列車の発著。
1. 本線 (p. 113)
本線とは列車の運転に常用する線路であって,停車場内における列車の発著線である。
2. 側線 (p. 113)
本線以外の総ての線路は
側線(siding)と呼ばれる。側線はその用途によって次の如き名称を附する。
- 客車留置線:空客車を一時収容する線路
- 洗浄線:洗浄台を設備し,客車を洗浄するにも用うる線路
- 客車庫線:客車を収納するために設けられた客車庫内の線路およびその附属線路
- 客車修繕線(repair track):客車の修繕に専用する線路
- 引上線(lead track):列車の組成分解のため列車を引上げる線路
- 入換線(sorting track):専ら車輛の組成分解等のために用うる線路
- 緩急車線(caboose track):緩急車のみを留置する線路
- 貨物積卸線:貨物の積卸に供する線路
- 中継線(transfer track):貨物の積替に供する線路
- 貨車留置線:貨車を一時留置する線路
- 受渡線(interchange track):連帯運輸の場合あるいは上下仕分線間に車輛を受渡しする線路
- 貨車修繕線(repair track):貨車の修繕に専用する線路
- 検車線:車輛の検査のための線路
- 空車線(empty car track):空車を収容する線路
- 盈車線(loaded car track):盈車を収容する線路
- 計重台線(scale track):貨車に積載させる貨物の重量を計るため設けられた計器を有する線路
- 機関車回線(engine running track):機関車の付替,回送等のため,専ら機関車の運行する線路
- 回送車線:回送車のみを収容する線路
- 機関車庫線:機関車庫内の線路およびこれに出入するに必要なる線路
- 給炭線(coaling track):機関車に石炭を積込むために設けた線路
- 機関車待合線:機関車の取替または増結等をなす場合,機関車が待合する線路
- 避難側線(catch siding):側線より本線に車輛が逸出する虞(おそれ)がある場合,これを防ぐために設けた線路
- 安全側線(safety siding):単線区間の停車場で反対方向の列車が同時に進入する場合,衝突の危険を防止するために設けた線路で,終端に第1種車止を設け車輛の入換と兼用しない場合は乗越分岐器を用う。
- 工場線:工場内における線路
- 工場引込線:工場線と連絡する線路
- 倉庫線:倉庫内の線路
- Y線(Wye):車輛または機関車を転向するための線路(第132図)
側線の種類は以上の如く多数あるが,何れの停車場もその総てを有しているものでなく,停車場の規模および種類によってその大多数の停車場はそれ等の中の一部を有するに過ぎないのである。
3. 配線 (p. 116)
停車場内線路配置即ち配線上考慮すべき要件は大体次の如くである。
- 本線路は入換作業により侵される事を少なくすること
- 本線路に他の側線より進入する装置(分岐器等)を少なくすること
- 本線路上には対向分岐器をなるべく避け背向とすること
- 停車場構内の区域をなるべく短かくすること
- 停車場構内の見透しを良くすること
- 側線をなるべく本線の片側に敷設し,本線を横断する事を避けること
- 通過列車に対して直線線路もしくはこれに近きものを与えること
以上の趣旨により造られた配線を例示すれば第133図の如くである。
側線は車輛の入換操車の場合,本線を支障することなくして迅速に作業を行い得るように配置せねばならない。これは地形,取扱車輛数その他種々の条件によって慎重に考究の上決定する必要がある。
4. 線群 (p. 117)
操車場等において同一用途に使用する並列せる線路の一群を線群と言う。線群には次の如き種類がある。
- 到著線群(receiving tracks):駅,操車場等において列車の到著に専用する線群。
- 大仕分線群(separating tracks):一般に到著線群の次位にあって,貨車を方向別または地方別に大体の仕分を行う線群である。これを方向別線とも言う。
- 小仕分線群(classification tracks):大仕分線群の次位にあって,更に緻に分類する線群である。これを駅別線とも言う。
- 出発線群(departure tracks):駅,操車場等において列車の出発に専用する線群。
- 埠頭線群(wharf tracks):埠頭の近くに船積貨車を収容する線群
- 空車線群(empty car tracks):空車のみを収容する線群。
- 盈車線群(loaded car tracks):盈車のみを収容する線群。
5. 線路有効長 (p. 118)
1つの線路上に列車または車輛を留置した場合,隣の線路上の列車または車輛の運行に支障しない線路長を
線路有効長(effective length of line)と言い,普通
車輛接触限界標間の距離がそれである。列車および車輛を収容する容量は総てこの線路有効長によって決定せらるるものである。
§2. 旅客輸送上必要なる設備 (p. 119)
1. 駅本屋および附属家 (p. 119)
本屋は乗車券の発売,手小荷物の授受,旅客の待合せ,そお他関係事務の取扱をなす所である。乗降人員,地方的状況等によってその設備の種類,規模の大小等に非常に差異がある。
本屋内の設備
本屋内の設備は旅客に対するものと駅従事員に対するものとある。
(1)旅客に対するもの
- 車寄および広間(vestible and entrance hall)
- 待合室(waiting room)
- 貴賓室(special room)
- 出札所(ticket office)
- 改集札口(wicket)
- 手小荷物取扱所(baggage)
- 案内所(inquiry office)
- 便所および化粧室(toilet)
- 駅内郵便局(post office)
- 売店(shop)
- ホテルおよび食堂(hotel and restaurant)
- 手荷物一時預所(cloak room)
- 理髪室(barber)
- 浴室(bath room)
- 靴磨所(shoe polish)
もちろん駅の規模によってこれ等の全部を備えないものは多数ある。
(2)駅従事員に対するもの
- 駅事務室
- 出札室
- 手小荷物掛室
- 電信室
- 駅員休憩室
- 湯呑所
- □置
- ランプ室
など。
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2. 駅前広場 (p. 123)
停車場本屋の前は常に人車交通の最も混雑する場所となるから,人力車,自動車等を駐留せしむる外交通を整理するため相当の広場を必要とする。
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3. ホーム (p. 123)
乗客の乗降,手小荷物の積卸等に便利なように特に高めた床をホーム(platform)と称しているが,その高さは車輛の床の高さと略同一のもの,それよりも少し低いもの及びほとんど地平のものとある。欧米では地平のものが相当あるが,我国では車輛の床の高さと略同一か又は少し低いものが多い。我国有鉄道では建設規定により「ホームの高さは軌条面上760mm,ただし電車専用の場合には1100mm,電車およびその他の列車に共用する場合においては920mmとす」と定められている(第142図)。
ホームの長さおよび幅
ホームの長さおよび幅は各国の事情によって異なるが大体ホームの長さはその線の旅客列車の長さによって定むべきである。我国有鉄道では甲線260m,乙線180mと定めている。幅は主要駅で9〜13mであって,その最小幅は両面使用の場合3m以上,片面使用の場合2m以上と定めている。
ホームの終端から線路中心までの距離
ホームの終端から線路中心までの距離は軌間,建築限界,線路の曲直等によって異なるが,我国有鉄道では直線区間では1.56m(この寸法は現在の車輛では大き過ぎるから暫定的に最小1.40mと定め,将来1.56mに変更し得るため,笠石で加減するか,または軌道中心線を移動し得るように考慮することになっている),線路が曲線の場合には
w = 22500 /
R(ただし,
w(mm),
R:曲線半径(m))だけこの距離を拡大するものである。
ホームの位置
ホームの位置には大体次の6つの形がある。
- 対向式ホーム(第143図 a)separate platform
- 島式ホーム(第143図 b)island platform
- 櫛形ホーム(第143図 c)toothed platform
- 楔形ホーム(第143図 d)wedged platform
- 階段形ホーム(第143図 e)stepped platform
- 手小荷物および郵便物積卸ホーム(第143図 f)
4. ホーム上家 (p. 125)
ホームには旅客,従事員,手小荷物および郵便物等が風雨霜雪に曝露せらるる事を防ぐ上家が必要である。ホーム上家の型式には第144図に示す如く種々のものがる。
5. 旅客の通路 (p. 126)
旅客が本屋より線路を横断して向ホームに行く場合,列車回数および旅客人員数多く危険の虞(おそれ)ある時は跨線橋または地下道を造る。
6. 手小荷物取扱設備 (p. 126)
(イ)
渡線車
ホームと同高の台の上に手押車を乗せて線路に直角な軌道上を移動する装置(第147図)。
(ロ)
テルファー(telpher)
手押車を一旦電動機で吊上げ線路を横断して高く架けたレールに懸垂して向側に渡す装置(第148図)。
(ハ)
手小荷物専用地下道およびエレベーター
(ニ)
手小荷物専用跨線橋およびエレベーター
(ホ)
電動車(motor truck)
ホーム上で荷物を運搬する電動車。
(ヘ)
トラクター(tractor)
ホーム上で多くの車を牽引して運搬する電動車(第149図)。
§3. 貨物輸送上必要なる設備 (p. 127)
1. 貨物の扱種別 (p. 128)
貨物の扱方には宅扱,小口扱,トン扱および貸切扱の4種別がある。
- 宅扱は小口扱と同様であるが,荷送人から発駅まで及び著駅(() 原文ママ)から荷受人までの小運搬を鉄道が行うものである。
- 小口扱とは少量の貨物で他の託送者のもと共に緩急車,代用車に積込み,あるいは積合車として運搬し,鉄道の責任をもって積卸まで引受けるものである。
- トン扱とは小口扱と同様であるが,数量が2トン以上の場合に有利な扱種別である。
- 貸切扱とは1車分纏(まと)った大口のもので,託送者自身が積込み,荷受人自身が取卸を行い,鉄道は1車分の運賃を収受して貨車を輸送するものである。
設備はこの扱種別によって多少の差異がある。
2. 貨物ホーム(goods platform)(p. 128)
貨物を貨車に積卸すために設けた場所で,その高さは貨車の床面と同一にすべきである。我国では普通軌条面上960mm,小口当扱貨物専用の場合には1,020mmとする。ホーム終端から軌道中心までの距離は旅客ホームと同様1.56m(最小1.40m)であって,曲線の場合にこれを拡大する事も変わりない。その床面舗装は相当重量品を取扱うから堅固にする必要がある。
貨物ホームの形式には第150図の如き種類があり,各々一長一短があるが,取扱数量,地形等によって適当のものを選択すべきである。一般に年間300,000トン以上の場合は階段形,鋸歯形がよろしい。
一方線路,他方繋船(けいせん)岸壁であるような貨物ホームでは上面に勾配を附する事は止むを得ないが,この勾配は1/15〜1/10を極限とし,幅は18m以内とする。
貨物ホームの長さ及び幅
貨物ホームの長さ及び幅は取扱数量によって定むべきであるが,大体の標準は次の如くである。
- 長さ
- 長方形:180m以内
- 階段形:75m以内
- 鋸歯形:75m以内
- 櫛形:60m以内
- 幅
- 9m(発著一般貨物 30,000トン未満)
- 9〜10.8m(発著一般貨物 30,000〜100,000トン)
- 10.8〜12m(発著一般貨物 100,000トン以上)
貨物ホームの長さの計算法:
所要ホーム長 = 8m x 1日発著貨車数 / 3.5
ただし貨車平均長8mとし,貨車入換回数1日3.5回とす。
貨物ホーム面積計算法:
所要有効面積(m2)= 1日平均取扱貨物トン数 /
1m2当たり取扱トン数
ただし1m2当たり取扱トン数は実績により次の如くである。
小口扱発送到著(([[)]]
「到著」の読みは〔トウチャク〕。意味は「到着」と同じで「目的地に行き着く」--【到】/【到着・到著】『[[福武漢和辞典>#福武
1990]]』p136)):0.15トン
貸切扱発送到著(([[)]]
「到著」の読みは〔トウチャク〕。意味は「到着」と同じで「目的地に行き着く」--【到】/【到着・到著】『[[福武漢和辞典>#福武
1990]]』p136)):0.30トン
この有効面積は実際積置し得る面積であるから通路その他に必要な面積を加算するを要する。
3. 小口扱貨物整理場 (p. 130)
分岐駅または中継駅では小口扱貨物の積替整理を行わねばならない。このために普通長方形または櫛形のホームを造り,両側に積卸線を設くる。このホームを普通中継貨物ホームと言う。この幅員は9m〜12mを適当とする。長さは長方形120m以内,櫛形は60m以内を適当とし,床面はコンクリート舗装を施す。高さは1,020mmとし,上家を設ける(第151図)。
4. 貨物上家(goods shed)(p. 130)
貨物積卸の際,雨雪の害を防ぎ,また貨物を一時留置するために設くるものである。貨物上家は木,鉄,古軌条,鉄筋コンクリート等で造られ,第151図の如く種々の形式がある。石炭,コークス,砂利,鉱石,蔬菜(そさい),石材,煉瓦,牛馬,鉄材等は上家に収容する必要はないが,穀物,豆粕,雑貨等は濡損を厭(いと)うから上家を要する。上家の面積は斯(か)くの如き濡損を厭(いと)う貨物の数量によって定める。上家に接近して貨物保管庫を設け,鼠害,盗難等に備える。
5. 貨物通路 (p. 131)
貨物通路の幅員は大体取扱トン数から次の如き標準を定めている。
|
片側積卸場 |
両側積卸場 |
200,000トン以上 |
12m以上 |
18m以上 |
200,000トン以下 |
9m以上 |
12m以上 |
貨物通路の舗装は往時砂利を撒布した程度であったが,近来は自動車の利用増加の結果,敷石を用うる。これは砂利または割栗石を基礎とし,その上に厚さ76mm,長さ90〜30cm,幅30cmの花崗岩を列べたものである。その外もっと小形の花崗岩を弧形に列べたもの,アスファルト乳剤舗装,鉄製補強材使用コンクリート舗装がある。第152図の如きものは相当用いらるるようになった。
6. 貨物取扱機械設備 (p. 131)
貨物取扱数量の少ない場合は人力によって取扱うが,数量が多くなった場合には数量に応じて適当の機械設備を使用する方が混雑もなく,経済にもなるので,近時その使用が増してきた。
最も多く用いらるる機械設備は次の如きものである
- 手押車(hand truck)
- 電動車(motor truck)
- トラクター(tractor)(第149図)
- 附随車(trailer)(第149図)
- ジブ・クレーン(jib crane)(第153図 1)
- ガントリー・クレーン(gantry crane)(第153図 2)
- テルファー(telpher)(第148図,第153図 6)
- ベルト・コンベヤー(belt conveyor)(第153図 3)
- チェーン・コンベヤー(chain conveyor)(第153図 4)
- ホーム・コンベヤー(platform conveyor)
- &aname(elevator,option=nolink}{エレベーター}(elevator)(第153図 5)
- ホイスト(hoist)
以上のものは機械設備の主なるものであるが,この外高所より荷物を滑り落すために
- 搬送機(chute)
- 螺樋(spiral chute)(第153図 7)
- 斜樋(inclined chute)
などを用うる場合がある。
7. その他の設備 (p. 132)
取扱数量の多い駅で貨車に積載した貨物の重量を貨車共に測定する必要のある場合には
計重台(track scale or weigh bridge)を設備する。この計量台に単線式と複線式との2種がある。また手動計量と自動計量とがある。何れも計量を要しない貨車がその上を通過するときは,衡器に影響しないような構造になっている。
狭い場所で貨車の入換を行うには分岐器の代わりに
貨車転車台(turn table)または
遷車台(traverser)を設ける。
転車台は直径5m以上のもので,軌道の交差点を中心として回転し,何れの線路にも接続できる構造となっている(第154図)
遷車台は平行せる軌道を横断して軌条を敷き,その上を移動し得る低い台車を設け,貨車をその上に載せて移動し隣接線に移すものである(第155図)。
§4. 機関車および車輛の運転上必要なる設備 (p. 135)
1. 機関車庫(engine shed)(p. 135)
機関車の収容,検査,掃除,洗鑵および小修繕を行う場所で,その構造は仕事の性質上コンクリートの如き不燃質のものとするがよろしい。
機関車庫の形としては次の3種がある(第156図)
(イ)矩形機関車庫(rectangular engine shed)
(ロ)扇形機関車庫(annular engine shed or round house)
(ハ)円形機関車庫(cicular engine shed or round house)
矩形は1線に2,3輛収容するから出入不便である。従って配属機関車の少ない場合に用いらる。扇形および円形は1線1輛であるから中央の転車台によって自由に出入する事ができる。従って多数を収容する場合に用いられるが,転車台附近に事故があった場合は全機関車の出庫が不能となる不利がある。
機関車庫内の設備
機関車庫内の設備には検査,修繕,洗鑵等のために次の如きものが必要である
(イ)
灰抗(ash pit)
(ロ)天井移動クレーン(overhead crane)
(ハ)扛重器(beam jack)
(ニ)ドロップ・ピット(drop pit)
(ホ)洗鑵用給水管
(ヘ)修繕用器具置場
庫内床面はコンクリートとする。機関車は2,000〜2,500km走行したる場合,汽罐を洗浄する必要がある。
2. 給炭設備 (p. 136)
機関庫所在駅,機関車折返駅,入換機関車配置駅等では,機関車に給炭する設備を必要とする。
給炭設備には種々の方法があるが石炭台が普通である。
石炭台
石炭台(第157図)は木,煉瓦,コンクリート等の柱に桁を架渡し板を張った高さ約1.8mの台であって,一端に昇掛を設けてこの上に人力にて石炭を運び(時には石炭を揚げるに crane を用うる),石炭台上に貯炭し,機関車に給炭する。石炭台の大きさは給炭する機関車数によって定まる。所属機関車30輛以上の場合は人力では到底給炭し切れないから,次の如き種々の機械設備を設ける。
(イ)炭車を貯炭槽(coal bin)の上に導き貯炭し,下の樋(chute)によって給炭する。
(ロ)ガントリー・クレーンで高所にある貯炭槽に石炭を供給する(第158図)。
(ハ)ロコモティブ・クレーンで高所にある貯炭槽に石炭を供給する。
(ニ)バケット・クレーンで高所にある貯炭槽に石炭を供給する。
機関車1日平均石炭使用量は2.5トンである。
貯炭槽は2日分の石炭量を貯炭し得れば充分である。
貯炭場は石炭の供給地との距離,交通機関の便否によって異なるが,5〜7日分の石炭を貯蔵し得れば充分であろう。
3. 給水設備 (p. 138)
給水は給炭と同時になすものが多い。井戸水,河川,水道を水源として駅構内に設けられた高い
貯水槽(water tank)に自然流下またはポンプによって貯水する。
貯水槽は機関車に給水するに充分な水頭を必要とする。而(しか)してその下部にホースを取付けて直接炭水車に給水することもあるが,普通は鉄管で駅構内の便宜の所に導き給水柱によって給水する。
貯水槽の容量は1日平均給水量によって定まる。機関車が運転中消費する水量は
大体消費石炭量1トンに対して6m
3であるから,各区間上下列車別石炭消費量によって給水量を算出する事ができる。また機関車はそのタンクの水量が1/3以下に減ぜざる内に補給するを通例とするから,
機関車タンクの容量の2/3の使用水量毎に給水設備を設ける必要がある。各機関車のタンクの容量は第24表の如くである。
また貯水槽の容量および大きさは大体第25表の如くである。
第24表 機関車タンクの容量 |
機関車形式 |
容量 (m3) |
C10 |
7.0 |
9600 |
12.9 |
C51 |
17.0 |
D50 |
20.0 |
第25表 貯水槽の容量および大きさ |
1日平均給水量 |
貯水槽容量 |
円形貯水槽の大きさ |
(m3) |
(gl) |
m3 |
(gl) |
直径 (m) |
高さ (m) |
50 |
以下 |
11,000 |
25 |
5,500 |
|
|
100 |
|
22,000 |
40 |
8,800 |
3.7 |
3.7 |
150 |
|
33,000 |
50 |
11,000 |
4.0 |
4.0 |
200 |
|
44,000 |
55 |
12,100 |
4.2 |
4.2 |
300 |
|
66,000 |
70 |
15,400 |
4.5 |
4.5 |
400 |
|
88,000 |
85 |
18,700 |
4.8 |
4.8 |
500 |
|
110,000 |
100 |
22,000 |
5.1 |
5.1 |
1,000 |
|
220,100 |
155 |
34,100 |
5.9 |
5.9 |
1,500 |
|
330,100 |
175 |
38,500 |
6.1 |
6.1 |
給水柱(stand pipe, water crane)は機関車の水槽に給水するもので,古く設備されたものは径150mm〜200mmの鉄製直立管で,その放水口の高さを3m以上とし,これに川またはズック製のホースを取付け把手(とって)を手で回して徐々に仕切弁(sluice valve)を開閉するものであったが,労力と時間を空費するので,その後主要機関庫および駅に設置された給水柱は上部が回転する水平管よりなり俗に自動式と称し,強い水衡(water hammer)を防ぐために弁の開閉および給水管に特別の装置を施したものである(第158,160図)。
給水柱を建植するには建築限界に抵触しないよう注意を要する。我国有鉄道では給水能力4,000リットル/分〜5,000リットル/分を目標とし,第1号型(径150mm),第2号型(径200mm),第3号型(径200mm)の3種があるが,第3号型(第160図)が最も結果良好である。
この外我国では未だ採用されていないが長距離無停車運転の場合,走行中に機関車に給水するために軌道内に数百メートルの鉄製の
矩形溝(track tank,第161図参照)を作り,これに水を溜めて機関車より water scoop を下げて水を吸揚げるものが英国および米国にある。track tank は深さ約150mm,幅約600mm,長さ約600mである。
4. 灰抗 (p. 141)
機関車の灰を落とし,あるいは下部点検等のために軌道下にコンクリート,煉瓦等で造った深さ約800mmの抗を灰抗(ash pit)と言う。その長さは機関車の大きさ及び輛数によって異なり,幾分長くする。普通給炭水線および機関車庫内に設けるが,本線においても給水柱を設ける場合はその位置に灰抗を造るのが普通である。
一つの駅で給炭水する機関車輛数が多い場合は
集灰抗と称する大型の灰抗を設け,この中に取落した石炭焚殻を取纏めて,クレーンによって掴揚げ,取捨つる場合がある。灰抗の軌道には並枕木を用い得ないから,縦枕木または短い横枕木を左右別々にコンクリートに埋込むか,あるいは側壁コンクリート上にタイ・プレートをボルトで取付け,その上に軌条を敷設する(第157図参照)。
5. 転車台 (p. 141)
機関車または車輛の方向を転換し,あるいは1線より他線に転線するために円形抗の中を機関車を乗せた鉄桁が回転し得る装置としたものを転車台(turn table)と言う(第162図)。転車台の桁は中央支点の特殊形状のもので,上路形と下路形との2種あり,普通上路形であるが抗の排水不良な箇所では下路形を用う。転車台を回転するに人力のものと電力のものとある。転車台の直径は12m〜20mであるが,20mのものが段々多くなってきた。
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6. 洗浄設備 (p. 142)
客車は煤煙降雨その他のために汚穢せらるるから,およそ500km位運行した後は駅構内洗浄線で車輛内外の大掃除を行うものである。
洗浄線の軌道はコンクリート道床とし,水の流れを良くし,両側に作業足場として台を設ける。この台を
洗浄台と言い,構造は木造,コンクリート造,古軌条造等である(第163図参照)。幅は1,000mm位,長さは収容する編成客車の長さにより定め,高さは軌条面上900〜1,200mm位とする。多量の水を使用するから所々に給水栓を設け,台上に小さな水槽を設ける。冬季は水を温むる設備を必要とする。
我国では用いていないが線路の両側に上下に動くブラシと縦軸の周りに回転するブラシを設け,水を噴出させて客車が2.4〜3.2km/hの速度で通過する間に洗う方法がある(
第164図参照)。
その他車掌車,有蓋緩急車,冷蔵車,家畜車,豚積車等は時々大掃除をすることになっているから,必要な箇所にはそれ等の作業に対する設備をしなければならない。
7. 客貨車修繕設備 (p. 144)
主要な駅では客貨車を検査するが,車輛中修繕を必要とするものあるを発見した時には,これを修繕線に入れ,修繕を行う。修繕線は普通上家を造り,コンクリート舗装とし,ジャッキその他の修繕用具を備うる。
参考文献
(著者・編者の五十音順)
書籍
- 平井喜久松『鉄道』岩波書店,1936年5月15日 第1刷発行,1949年7月15日 第7刷発行
辞典
- 石井忠久,他『福武漢和辞典』福武書店,1991年11月1日 発行,初版
- 岩波書店『広辞苑』〈シャープ電子辞書 PW-9600 収録〉岩波書店,1998-2001年,第5版
(書名の五十音順)
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更新日:2010年12月10日
最終更新:2010年12月10日 07:29