鉄道 (平井喜久松,岩波書店,1936年 第1刷,1949年 第7刷) > 第一編 鉄道線路 第二章 軌道 節7. 緩和曲線,縦曲線,節8. 軌道敷設

鉄道』は平井喜久松さんの著書で,岩波書店から1936年(昭和11年)に第1刷が,1949年(昭和24年)に第7刷が発行されました。
このページには「第一編 鉄道線路 第二章 軌道 §7. 緩和曲線,縦曲線,§8. 軌道敷設」を収録。

目次


第一編 鉄道線路 (p. 4)

第二章 軌道 (p. 21)

§7. 緩和曲線,縦曲線 (p. 64)

1. 緩和曲線 (p. 64)

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列車が直線より曲線に進入する時半径が急激に変化するので著しく動揺し,また曲線部において必要とするカントおよびスラックを直線部と曲線部の接続点で一時に補正する事はできないので,円曲線と直線との間に一種の曲線を挿入してこの欠点を補う必要がある(第76図)。この曲線を緩和曲線(transition curve or easement curve)と言う。普通カントの変化が直線的であるような曲線,即ち次式の如き3次放物線を用いている。
y = ax 3
緩和曲線を簡単に敷設するに第77図および第78図の如き2つの方法がある*1

これらはカントの直線的逓減(ていげん)に立脚し接線よりの縦距によって緩和曲線を敷設するものであるが,この外カントの円滑逓減(ていげん)に立脚し円弧を基線としてこれからの縦距による敷設方法(G. Schlumm,立花次郎,稲田隆の諸氏の方法)があるが省略する(土木学会誌第18巻第3号および第11号参照)*2

緩和曲線敷設法(第1法)
本法により緩和曲線を敷設せんとするときは,予め円曲線の両接線を曲線の内方にf だけ移し,これに切する同半径の円曲線と原接線との間に緩和曲線を挿入するものとす。
緩和曲線の長さは次式による*3
L = CN / 1000
式中
  • L:緩和曲線の長さ(m)。ただし,Lは 5mの整数倍(5m未満の端数は切上げ)
  • C:カント(mm)
  • N
    • 甲線:600以上(特別の線路 700以上)
    • 乙線:450以上
    • 丙線:300以上
    • 簡易線:300以上

第77図に示す各部の寸法(m)は次式により求むるものとす*4
f = L2 / 24R
K = f tan(I /2)
y4 = L2 / 6R
y3 = 27/64 x y4
y2 = 1/8 x y4
y1 = 1/64 x y4
式中
  • R:曲線半径
  • I:曲線交角
  • L/2 + K:緩和曲線始点と円曲線始点間の距離
なおL を n等分して緩和曲線の始点より m番目の点の縦距ymを求むるには次式による*5
ym = (m / n)3 x y4

緩和曲線敷設法(第2法)
本法により緩和曲線を敷設せんとするときは,原円曲線より半径小なる円曲線を挿入して,これと原接線との間に第1法と同じ方法により緩和曲線を挿入するものとする。
この場合の挿入すべき円曲線の半径は次式によるものとす*6
r = R - 1/20 x (R - 1 0)
式中
  • r:小曲線半径(m)。ただし 5mの整数倍とす。
  • R:原曲線半径(m)

これによりてr を定め得るにより第78図に示すLfy1y2y3y4 等は第1法における算式中Rr に置換えて求むることを得*7

角αその他は次式によるものとす*8
α = cos-1(1 - f / (R-r))
T = 1/2 x L - (R-r)sin α
E = 1/2 x L + rsin α
d = R (1 - cos α)
式中
  • L:緩和曲線長(m)
  • T:緩和曲線始点より原円曲線始点までの距離(m)

2. 縦曲線 (p. 67)

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勾配の変わり目,特に勾配の峯になる所および谷になる所では(第79図),両勾配の間に曲線を入れて,その変化を緩和しないと列車および車輛の運行を円滑にする事ができない。この目的のために入れる縦の曲線を縦曲線(vertical curve)と言う*9

普通この曲線としては円曲線を用うるが,放物線による場合もある*10

国有鉄道では建設規定第16条に「線路の勾配変化する箇所には勾配の変化が 10/1000以上の場合において次の大きさ以上の半径を有する縦曲線を挿入する事を要す。
  • 半径 800m以下の曲線の場合:4,000m
  • その他の場合:3,000m
と規定している*11

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縦曲線敷設法は第80図に示す如くmn の2勾配線が T において交わる時,先ず横距離 TB =l を算出して B点を定め,Bよりx の距離における縦距y の値を求めて縦曲線上の点を決定するのである*12

l の算出法:両隣接勾配線の交点 T から縦曲線の始点 Bに至る距離l(m)は次式により求められる。
l = R / 2 x (m / 100 ± n / 1000) = R / 2000 x (m ± n)
ただし
  • R:縦曲線半径(m)
即ち
  • R = 4000 の場合:l = 2 (m ±n)
  • R = 3000 の場合:l = 1.5 (m ±n)
ただし(+)は両勾配が異方向に変ずる場合,(-)は両勾配が同方向に変ずる場合である。
このl の値はm 以下の端数を切り上げるものである*13

   上式のl は接線長を表すものであるが,実用上水平距離を表すものと考えて差支えない(例:35/1000において誤差はわずかに 6/10,000)*14

y の算出法:勾配と縦曲線との間に挟まれた縦距y(mm)は次式により算出する*15
y = x2 / 2R
ただし
  • R:縦曲線半径(m)
   縦曲線は円弧であるが,物線と仮定して実用上差支えない。
l およびy の値は第17表および第18表によるを便とする。
第17表   l の値(m)
m ± n l (m) m ± n l (m)
R=4,000 R=3,000 R=4,000 R=3,000
10 20 15 41 82 62
11 22 17 42 84 63
12 24 18 43 86 65
13 26 20 44 88 66
14 28 21 45 80 68
15 30 23 46 82 69
16 32 24 47 84 71
17 34 26 48 86 72
18 36 27 49 88 74
19 38 29 40 80 75
20 40 30 41 82 77
21 42 32 42 84 78
22 44 33 43 86 80
23 46 35 44 88 81
24 48 36 45 80 83
25 50 38 46 82 84
26 52 39 47 84 86
27 54 41 48 86 87
28 56 42 49 88 89
29 58 44 40 80 90
30 60 45 41 82 92
31 62 47 42 84 94
32 64 48 43 86 95
33 66 50 44 88 96
34 68 51 45 80 98
35 70 53 46 82 99
36 72 54 47 84 101
37 74 55 48 86 102
38 76 57 49 88 104
39 78 59 41 80 105
40 80 60

第18表   y の値(mm)y =x / 2R   (70ページ)
x (m) y (mm) x (m) y (mm) x (m) y (mm) x (m) y (mm)
R=4,000 R=3,000 R=4,000 R=3,000 R=4,000 R=3,000 R=4,000 R=3,000
1 0 0 36 162 216 71 630 840 106 1,405 1,872
2 1 1 37 171 228 72 648 884 107 1,431 1,908
3 1 2 38 181 241 73 666 888 108 1,458 1,944
4 2 3 39 190 254 74 685 913 109 1,485 1,980
5 3 4 40 200 267 75 703 938 110 1,513 2,018
6 5 5 41 210 280 76 722 963 111 1,540 2,053
7 6 8 42 221 294 77 741 988 112 1,568 2,090
8 8 11 43 231 308 78 761 1,014 113 1,596 2,128
9 10 14 44 242 328 79 780 1,040 114 1,625 2,166
10 13 17 45 253 338 80 800 1,067 115 1,653 2,204
11 15 20 46 265 353 81 820 1,091 116 1,682 2,242
12 18 24 47 276 368 82 841 1,121 117 1,711 2,281
13 21 28 48 288 384 83 861 1,148 118 1,741 2,321
14 25 33 49 300 400 84 882 1,176 119 1,770 2,360
15 28 38 50 313 417 85 903 1,204 120 1,800 2,400
16 32 43 51 325 434 86 925 1,233 121 1,830 2,440
17 36 48 52 338 451 87 946 1,262 122 1,861 2,481
18 40 54 53 351 468 88 968 1,291 123 1,891 2,521
19 45 60 54 365 486 89 990 1,320 124 1,922 2,562
20 50 67 55 378 504 90 1,013 1,350 125 1,953 2,604
21 55 74 56 392 523 91 1,035 1,380 126 1,985 2,646
22 61 81 57 406 542 92 1,058 1,411 127 2,016 2,688
23 66 88 58 421 561 93 1,081 1,442 128 2,048 2,730
24 72 96 59 435 580 94 1,105 1,473 129 2,080 2,773
25 78 104 60 450 600 95 1,128 1,504 130 2,110 2,813
26 85 113 61 465 620 96 1,152 1,536 131 2,145 2,860
27 91 122 62 481 641 97 1,176 1,568 132 2,179 2,905
28 98 131 63 496 662 98 1,201 1,601 133 2,211 2,948
29 105 140 64 512 683 99 1,225 1,634 134 2,245 2,993
30 113 150 65 528 704 100 1,250 1,667 135 2,278 3,037
31 120 160 66 545 726 101 1,275 1,700 136 2,312 3,094
32 123 171 67 561 748 102 1,301 1,734 137 2,346 3,128
33 136 182 68 578 771 103 1,326 1,768 138 2,381 3,173
34 145 193 69 595 794 104 1,352 1,803 139 2,415 3,220
35 153 204 70 613 817 105 1,378 1,888 140 2,450 3,266

§8. 軌道敷設 (p. 71)

軌道を敷設する作業には人力による場合と,軌道敷設機(track laying machine)を用うる場合とがある(第81図)*16


軌道を敷設するには枕木,軌条等を施工基面に敷設した後に道床を撒布する方法と,道床を撒布してから軌条を敷設する方法とあるが,一般に前者によっている*17

1. 軌道用器具 (p. 71)

次の種類がある(第82図)*18
  • a,b:スパイキングモール(ハンマー)
  • c:ダンピングピック(ビーター,ビタ)
  • d:スレッヂ
  • e:チゼル(コールト セット,チス)
  • f:バラストハンマー
  • g:トラックレベル(水準器,レベル)
  • h:トラックゲージ(ゲージ)
  • i:タンピングバットル
  • j:スパイキプラー(スパイキ抜)
  • k:レールベンダー(ジムクロー)
  • l:トラックドリル(穿孔器ハッドボール,ラチェットブレース)
  • m:レンチ(スパナ)
  • n:レールトング(レール釣,チンチョウ,レールトン)
  • o:スパイクプラー(スパイキ抜)
  • p:クロウバー(バール)
  • q:タンピングバー
  • r:ライニングバー
  • s:ピンチバー
  • t:ショベル
  • u:トラックリーバー

2. 軌道敷設所要材料および工費(1km当たり)(p. 72)

第19表
所要材料 材料費および工費
軌条 2,000m 30kg軌条の場合 約1,2500円
接目鈑(軌条長 12m) 332m 37kg軌条の場合 約14,100円
同上用ボルト 700本 50kg軌条の場合 約19,900円
ロックナットワッシャー 300個
タイ・プレート 3,000枚
犬釘または螺釘 6,300本
枕木 1,500挺
道床 1,200m3

参考文献

(著者・編者の五十音順)

書籍
  • 平井喜久松『鉄道』岩波書店,1936年5月15日 第1刷発行,1949年7月15日 第7刷発行

辞典
  • 岩波書店『広辞苑』〈シャープ電子辞書 PW-9600 収録〉岩波書店,1998-2001年,第5版

(書名の五十音順)



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更新日:2010年12月02日

最終更新:2010年12月02日 15:22
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*1 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 64

*2 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 64

*3 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 64,65

*4 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 65

*5 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 66

*6 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 66

*7 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 66

*8 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 67

*9 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 67

*10 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 67

*11 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp.67,68

*12 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 68

*13 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 68

*14 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 68

*15 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 69,71

*16 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 71

*17 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 71

*18 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 71,72