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    <title>羽根あり道化師</title>
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    <description>羽根あり道化師</description>

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    <title>仮想シンデレラ</title>
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    <description>
      ***仮想シンデレラ

　　　　　　　　　　１


「――シンデレラ、これも洗っておいてちょうだい」
「はぁい」
「このドレスの綻びを直しておいて。それから、ブルーのドレス。あれ、もう着ないから処分して。流行遅れだもの」
「はぁい」
「今日は熱いシチューが食べたいわ」
「はぁい」
　洗濯かごを、左右の手にひとつずつ。シンデレラと呼ばれた少女は、洗い物が増えた事、姉のドレスがほつれている事と拝借できるドレスがひとつある事、それから夕飯にシチューを作る事を間延びした返事で記憶した。
　少女はこの家の娘であるにもかかわらず、父の再婚者とその連れ子の二人の姉によって、家政婦のような生活を余議なくされていた。シンデレラ(はいかぶり)と呼ばれ、アレをしろ、コレをしろとありとあらゆる事を要求される。しかし、そんな事はどうでもいい。
少女は料理が好きだった。掃除も洗濯も裁縫も、少女は楽しんでやっていた。埃ひとつない綺麗な部屋に満足し、笑みを浮かべるのは、父が再婚する前から少女の日課だったのだから。母と二人の姉たちの横柄な物言いさえ割り切ることが出来れば、そこそこに充実した日々なのだ。
しかし、ひとつだけ。『シンデレラ』という呼ばれ方だけはどうにも、好きにはなれなかった。確かに、毎日掃除をしているからエプロンは汚れている。洗ってはいるが、もう落ちなくなっている汚れも少なくない。暖炉掃除をした時などは、その文字通りに灰をかぶる。しかし、何の捻りもないその呼び名はどうにも、好きになれなかった。
“薄墨”とか、“ネズミ”とか、“雨雲”とか、“灰”から連想できる名前は他にはなかったのかしら、と少女は三人の語彙の少なさに、はぁ、とひとつ溜め息を吐いた。
　灰色は綺麗な色だし、ネズミも良く見れば可愛い顔をしている。雨雲は重苦しいが、雨が降った後の空気は清々しい。自分を貶めるための呼び名だということは分かっているが、しかしそんな直球では嘆けるものも嘆けない。いやな思いをさせるという目的だけは果たされているが。
毎日は穏やかだ。
良く分からないイベントさえなければ、とても穏やか。

　その日の午後、お城からの使いだというひとりの男性が家を訪れた。招待状を、携えて。
何でも王子様の姫君を決めるパーティーを行うのだとか。ああ面倒くさい、と少女はそれを見て思った。    </description>
    <dc:date>2010-10-13T16:13:00+09:00</dc:date>
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    <title>月夜にワルツを</title>
    <link>http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/227.html</link>
    <description>
      ***月夜にワルツを







　　　　　０

彼女はまるで、妖精のようだ。
蝋燭の炎と淡く差し込む月の光で明かりを取る、仄かに暗い部屋。広い室内には、二人しかいない住人で使うには大きすぎるテーブルと、幾つもの椅子。食卓に並ぶのは紅い薔薇。
その空間の中で、僕は愛しい女性を見つめる。そしてほぅとひとつ、感嘆の溜め息を吐いた。
透き通った、今にも消えてしまいそうなほど白くすべらかな肌に、触れれば壊れてしまいそうなほど細く、華奢な身体。絹糸のように光る銀色の髪に、アメジストか何か、宝石を嵌め込んだかのような深い紫の瞳……。
もっとも、とても幻想的な彼女の事を表すには、こんな言葉じゃちっとも足りないのだけど。絹糸も宝石も、彼女を表すには不相応。そんな陳腐な言葉じゃ表し切れないほど、本当であれば何かに例える事など出来ないくらい、彼女に見合う何かなど考えもつかないくらい、美しい。
僕は毎日、彼女の家にある温室から真っ赤な薔薇の花を摘みに行く。一輪一輪、丁寧に。ひとつひとつ棘を取って、彼女に捧げる。紅い薔薇の持つ言葉にわずかに期待し、想いを込めて捧げるのだ。
彼女は毎日その薔薇を見つめ、そして口に運んで行く。僕の想い人は今日も大きな月を見上げ、紅い薔薇を食べる。細く長い指先で一輪一輪摘まみ上げ、口に入れ、飲み下し、そして「足りない、足りない」とまた手を伸ばす。
「……僕の血を吸っても良いんだよ」
　自分の首筋をとんとんと指先でたたきながら、僕は彼女に言った。
彼女は吸血鬼だ。
そして僕は、その僕(しもべ)。
僕は彼女の僕として、食料として、この広い屋敷に暮らす事を選んだ。しかし麗しき主はただ静かに首を振るばかりで、自ら望んだ役目を果たさせてはくれない。ネクタイを緩め、シャツのボタンを二つはずし、肌を晒す。そして再び自分の首筋を指先でたたきながら、「どうぞ？」と彼女の前に跪いた。
僕は出来る限り、彼女の傍にあり続けたいと願っている。だから、勧める。聞くところによると、吸血鬼に首筋から血を吸われると、その血を吸われた者も吸血鬼になるのだという。千年の命を持つ、吸血鬼に。
千年の命を持ち、彼女の傍で、永遠とも思えるような長い日々を過ごせたら。嗚呼、そうすることが出来たら一体どれだけ幸せだろう。
けれど、幾ら勧めても彼女はいつも左右に    </description>
    <dc:date>2010-05-30T23:11:07+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/226.html">
    <title>『例えば』の話①</title>
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    <description>
      ***『例えば』の話



　　　　　　　　　０

　強きを挫き弱きを助ける？　馬鹿馬鹿しい。強い者が『悪』で弱い者が『善』だなんて、一体どこの誰が決めたんだ？

　　　　　　　　　　１

例えば、満員電車の中の耐え難い香水の臭い。
そんな感じの世界で、俺は生きている。自分でも変な例えだとは思う。だけどきっと、俺にはこれ以上にしっくりとくる表現は見つけられないだろう。匂いは、強すぎると臭いに変わる。それに四方を囲まれたらと考えて欲しい。移動の為の手段であるそれが、苦痛の小箱となる。
そこは耐え難いけれどあからさまに嫌な顔をすることもできず、面と向かって文句を言うこともできず、ただじっと耐えるしかないという苦行さながらの狭い空間。
ここは、そんな世界だ。
「おはよ、ガル。なあ、お前、もうすぐ任務だよな？」
「お早う」
　軽い調子で聞いてきた同僚、アスカ・バルザックは俺の顔を覗き込み、わずかに口角を上げた。一言だけそっけなく返し、俺は書類の整理を続ける。
「その任務なんだけど、僕も行くことになったから。お知らせ」
「……了解」
アスカは整った顔立ちの、女顔の男だ。
もうすぐ三十路だというのに女装をして街に行き、声を掛けてきた男をからかって遊ぶのが楽しいのだという、性格と根性と趣味の悪い奴である。どうでも良いから早く落ち着けと説教したくなる。この男は浮足立つどころかふわふわと浮きっぱなしで、苛々するくらい落ち着きがない。
『このつぶらな瞳にたくさんの男が騙されるんだ。むさ苦しい男たちの落胆した顔を見るのはとても快感だよ』などと嘯いていたこともあったか。
一七〇センチにも満たない彼は細身で、まるで東洋人のように童顔だ。その所為か、まだ二十歳くらいにも見える。下手をしたら、まだ十代と間違われることすらあるかもしれない。
彼から時折聞かされる、『化粧をしてにっこり微笑んでみたりとかしたら、その辺の女の子なんか目じゃないよ』という言葉も、きっと嘘ではないのだろう。幸いなことに、俺はまだその女装姿を見たことはない。不可思議な思考の持ち主ばかりが集まるこの職場に居るアスカが、仕事場に女装で来ないだけの分別を持っていることに俺はひそかに感謝する。男にしてはかなり長い、セミロングの髪を二つに結んでいたり編んでいたりすることも稀(まれ)にあるが    </description>
    <dc:date>2010-04-24T23:16:27+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/225.html">
    <title>出会い②</title>
    <link>http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/225.html</link>
    <description>
      　あたしとヘザーの、奇妙な共同生活が始まった。
　別段、何が変わったというわけではない。ただガレットがヘザーになったというだけ。それはとても大きな変化のようにも見えるけれど、実際、その生活に大した違いは出て来なかった。
リトル・レディに尻尾で鼻先をくすぐられて体を起こすと、ヘザーは「お早う」と言って目を細めて笑い、コーヒーを淹れてくれた。
湯気の立つコーヒーの芳ばしい香りは、あたしの頭と視界をすっきりと覚醒させてくれる。香り高いこのコーヒーはとっても美味しいのに、ヘザーはあんな苦いものなんか飲めないと言ってココアを飲んでいた。
…いや、飲もうとしていた、という方が正確だろうか。ヘザーはまだ、ココアにふうふうと息を吹きかけている。そして時折口を付け、すぐにカップを離してまた息を吹きかける。そう言えば、あたしもこのくらいの歳のときはまだコーヒーが飲めなかった。こういうところは子供らしくて可愛いのに、とあたしは思う。
あたしは二人分の朝食を作り、ヘザーの向かいに座って頂きますと手を合わせた。ヘザーは身長が足りないらしく、椅子にクッションを置き、その上にちょこんと正座をしている。メニューはベーコンエッグとトースト、昨日の夜の残りのスープに、サラダ。リトル・レディにはキャット・フードと水をあげた。
　朝食を終えてシャワーを浴び、キャミソールとボクサーパンツだけというだらしない恰好で室内をうろつくあたしに、ヘザーはなんて恰好してんだ、と少し顔を赤らめてバスタオルを投げつけてきた。どうやら早く服を着ろということらしい。
そういえば、こういうことをすると、ガレットも早く服を着ろと顔を真っ赤にしながら喚いていたっけ。あたしの裸くらい見慣れているだろうに、彼はそう言うところだけは妙に初々しい反応をするのだ。なんだか懐かしいな。
あたしははいはい、とヘザーに適当な返事をし、柔らかな猫っ毛を撫で回してからジーンズとＴシャツを身に着けた。肩に掛かる髪をドライヤーで乾かして、梳かしながら手早く首の後ろで一つにまとめる。いつも通りの薄い化粧をし、以前ガレットに買ってもらったビーズ飾りのついたピンで前髪を止めた。このピンはあたしのお気に入りだ。
そして、オードランジュヴェルトをハンカチに振りかけた。肌が弱くて、直接は付けられないから。
　何一つ、変わらない。
　ただ、ガレット    </description>
    <dc:date>2010-04-24T23:17:15+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/224.html">
    <title>出会い①</title>
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    <description>
      　　　　　　　　　　０

　どこからか、羽音がした。

　　　　　　　　　　１

彼の帰りを待っていた。
いつもと同じように、彼との家の、彼との部屋で。あたしの足元を、チャコールグレーの猫がうろうろと歩きまわっている。我が家の小さな飼い猫――リトル・レディは退屈そうにうにゃあと鳴いた。
ソファーに座ってテーブルの上のリモコンを手に取り、なんとなくテレビを付ける。面白い番組なんて何にもやってなくて、あたしは次々とボタンを押し、チャンネルを変えていく。そして最後に、ニュース番組にチャンネルを合わせてリモコンをテーブルに戻し、ソファーの背もたれにくたりともたれ掛かった。
明日の天気や、どこか遠く離れたところで起きた事件なんかを何度も繰り返し、怠惰に流し続けている退屈なニュースを見るともなしにぼんやりと眺めながら、あたしは二人掛けのソファーにだらしなく座っていた。
「レディ、くすぐったいわ」
　長い尻尾であたしの足をふわふわと撫でながら歩き回るリトル・レディを抱き上げ、膝の上に乗せた。リトル・レディは嬉しそうに、あたしの頬をひとつぺろりと舐めた。この子はもともと、捨て猫だった。彼と二人で出掛けた時になぜだか着いて来てしまい、そのまま家で飼うことになったのだ。
しばらくの間は彼から離れようとしなかったのだけど、最近ではあたしにも懐いてくれるようになってきた。この子の種類は分からないけど、毛足が長くて人懐っこいところとかは、少しソマリに似ているかもしれない。
リトル・レディの背を二、三度撫でて、もう一度テレビに視線を向ける。見慣れたアナウンサーのお兄さんが、どこそこでこんな事件が起きましたと至極真面目な顔をして言う。ニュースというのは、何故こんなにも同じ内容ばかりを流すのだろうか。今朝にも見たはずのニュースを、どういう訳かあたしはまた眺めている。
「…？」
　ふわりと、香る。……香水？
「――君の恋人、亡くなったよ」
　無防備だった。
柔らかなソファーに身を委ねていたせいで、その声に反応するのが少し遅れてしまった。だぁれ？　とあたしはワンテンポ遅れた返事をして、振り返る。そこに居たのは青い瞳の少年だった。
……この香りは、オードランジュヴェルト？
シトラスやミントの甘さを秘めた、清涼感のある爽やかな香りがかすかに鼻腔をくすぐる。リトル・レ    </description>
    <dc:date>2010-03-24T17:20:12+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/223.html">
    <title>どこからか、羽音　序章</title>
    <link>http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/223.html</link>
    <description>
      序章



「――例えばさ、」
　情事のあと、眠りの中に居たあたしは彼の声にうっすらと目を開いた。
背中に、彼の体温を感じた。カーテン越しに部屋を照らす白い光に、あたしはわずかに目を細める。目覚まし時計で時間を確認すると、短針はまだ四を指していた。
こんなに早い時間から体を起こすつもりなどない。そう思って、あたしは無言のままもぞもぞと体を動かした。外気に晒していた腕を布団に中に隠すと、彼はそれを横目で確認して微笑み、静かに目を閉じて続けた。
薄闇の中の、優しく囁くような声。頬を撫でるような吐息。安心する。なんて心地よい声だろう。
「例えば、俺が死んだらどうする？」
　なんて質問をするのだろう、とあたしは寝返りを打って彼の方を向いた。そして彼の頬にそっと触れ、どうするだろうねと淡白に答える。
幼いころからの、少し低い抑揚のない声。
いつも可愛げがないと言われていた単調なあたしの口調を、彼だけは落ち着いた良い声だと言ってくれた。穏やかで聞いていて心地がいいと。
あたしは生まれて初めて、自分の声を、口調を褒められた。
「……あなたが死んだら、か。そんなの考えたこともなかったわ。あなたが死んだら、あたしはどうなるのかしら」
　少し考えて、あたしはまた口を開く。
「…きっとね、どうもしないと思う。普通にお葬式に出て、涙も見せないなんて随分と薄情な彼女だなって誰かに陰口叩かれて、それから、いつも通りの生活に戻るんだと思う。……多分ね」
　今までだって他人(ひと)のお葬式で泣いたことなんて一度もないもの、とあたしは続けた。友人との別れも、大切にしていたものが壊れても、ごく身近な人が亡くなったときでさえ、あたしは決して涙を見せることはなかった。
幼いころから、あたしは本当に泣かない子だった。
怒られても叩かれても、何をされても泣かないものだから、あんたの目には涙腺がないんじゃないの、などと言われたこともある。それも、嫌悪に満ちた口調で。けれど彼だけは、そんなあたしのことを気丈だねと言ってくれた。それは心の強い証拠だと。
あたしは生まれて初めて、この淡白な性格を褒められた。
「……あたしが死んだら？」
　ぽつりと、あたしは言った。
「もしあたしが死んだら、そしたら、あなたはどうする？」
彼はあたしと同じように、どうするだろうねと言って笑    </description>
    <dc:date>2010-02-21T23:47:44+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/222.html">
    <title>どこからか、羽音</title>
    <link>http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/222.html</link>
    <description>
      ***どこからか、羽音




[[序章&gt;どこからか、羽音　序章]]

[[第一章　出会い＜①＞&gt;出会い①]]　[[＜②＞&gt;出会い②]]

[[第二章　『例えば』の話＜①＞&gt;『例えば』の話①]]





----    </description>
    <dc:date>2010-04-24T23:18:24+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/221.html">
    <title>Mad Hatter</title>
    <link>http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/221.html</link>
    <description>
      ***Ｍａｄ Ｈａｔｔｅｒ.


　

――大変だ、大変だ！
　白うさぎは懐中時計を片手に、お城へ向かって走っていた。
――急がなきゃ、急がなきゃ！　女王さまに伝えなきゃ！
白うさぎはぴょこんと跳ねる。
――妖精たちが逃げちゃった！　女王さまに伝えなきゃ！
　誕生日じゃないパーティーをしていたいかれ帽子屋は、走り去る白うさぎを見てにやりと笑った。
　ああこれで、いかれた世界から飛び出せる。

　＋　＋　＋　＋

　カツン、コツン。
　普段は人が通ることの滅多にない小さな通りを、僕は一人で歩いていた。僕の名前はオリバー。年は十七になるのだけど、平均よりちょっと小柄。
僕は帽子屋。洒落た帽子を小粋にかぶり、黒い皮靴をカツンと鳴らす。着ている物は三つ揃え。
　僕は空を見上げ、空を舞う恋人にほんの少しだけ微笑んだ。愛しい恋人の名は、クロエという。小さな恋人の背中には半透明のさらに小さな、小さな翼。銀色の髪は日に透けて、きらきらと眩しく輝いていた。
「クロエ、そろそろ降りておいで」
　そう言って空に向けて右手を伸ばした。
「イヤよ、もう少し楽しませてちょうだい」
「そろそろ戻らないと、誰かに見られてしまうよ」
　言うと、クロエはうっと言葉に詰まり、仕方ないわねとでも言うようにひらりと舞い降りた。
「…もっと自由になれば良いのに」
「無理だろうねえ、妖精は貴重だから。見つかったら、幾ら積んでも欲しいって人が後を絶たないだろうさ」
　つんと唇を尖らせてつまらないわ、とぼやくクロエの姿が妙に可愛くて、僕はくすりと声を漏らした。
「もうすぐ街につくからね。人のいない所ならいいけれど、それ以外はだめ」
　僕は自分の人差し指にちょこんと座る恋人に口付けの真似をして、帽子を取った。洒落た山高帽子はクロエのお部屋。中には、ふかふかと手触りのよい布が綺麗に敷き詰められている。
「さ、早く入って。誰かに見られてしまう前に」
「はぁい。あ、ちゃんと明るくして！　暗いのは嫌よ！」
　はいはいと呟いて帽子の中にロウソクとマッチを放り込んだ。これでよし。ロウソクをこすってマッチに付ければ、帽子の中には小さな明かり。
　ちょっとだけ、おかしな帽子。
　僕は不思議でおかしな、小洒落た帽子を売り歩く。
　妖精を飼う、高慢な金持ち達に。
　今    </description>
    <dc:date>2009-10-18T14:01:52+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/220.html">
    <title>（ほぼ自分用）登場人物背景</title>
    <link>http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/220.html</link>
    <description>
      いつから彼はそこに存在したのか、また何が彼を存在させたのか？

彼の誕生そのものこそが世界の誕生であり、
世界の誕生こそが彼の誕生といっても過言ではなかったのである。

それが当然であるのだろう、彼は何を思う訳でもなくただ決められた行動を開始した。

黒いシルクハット、黒いスーツ。

無から突如現れた現代的なオフィスと、それに似つかわしくない格好の中年の男はこう定義づけられたのだ。

「御伽迷子捜索書」

彼には外の者を知る力が与えられた。
同時に、外を守る義務を与えられた。

そこに存在するのは自分の意思であるのかそれともプログラムであるのか、それを彼が思うことはただの一度もなかったのである。

----

とある本棚の片隅に放置された、長編小説集のノートを彼は見出した。
幾度となく書き直しの線が引かれた古いノートにはあらゆる世界とあらゆる人物が描かれている。

その中でふと、彼の眼にとまった者が一人いた。

----

最初は、無神経といっても過言ではなかっただろう。
自分を守るために、傍若無人でいたかった。
一人でも生きていると証明していたかった。
しかし同時に、誰かと同時に生きていたかった。

その者に課せられた罪は「時間」である。

かつて力を求め、手にした力に愕然とした少年は長い時と、長い冒険を経て青年へと成長したものの、その成長スピードは彼が忌み嫌っていた竜のそれと何ら変わりのないものである。

最初は拒否をし、やがて脅え、否定し、ようやく受け入れることができた時にその者の物語は終わった。

ある時は異端の研究員、ある時は帝国の魔術兵器、ある時は風来の僧侶。

----    </description>
    <dc:date>2009-09-09T23:12:24+09:00</dc:date>
  </item>
    <item rdf:about="http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/219.html">
    <title>仄暗い夜道の片隅で</title>
    <link>http://www29.atwiki.jp/vice2rain/pages/219.html</link>
    <description>
      ***【仄暗い夜道の片隅で】


「殺してやる」

　地を這うような声で、女は言った。

　別段、何の変哲もない女だった。可もなく不可もなく、とりわけ美しくも醜くも無かった。暗い表情が濃い霧のようにのっぺりと顔の上に広がり、それが女の特徴をことごとく覆い隠しているのかも知れない――――ただ、眼だけが重く鈍く光って。

「殺してやる」

　呟かれた言葉に、男は落胆した。

　興が逸れたように、男の眼は急速に色を失った。醒めた瞳がいくら女を映し出しても、最早それは女を見てはいなかった。

　チカ、チカリと青白い光が瞬いた。それに呼応して、夜も1度ゆらりと揺らぐ。


　もし、本当にそれを望んでいるのなら。
　決して口に出していいものではない。


　この国には、古くから『言霊』という文化がある。遥か昔の人々は言葉にする事でその通りになる、と信じてきて、今でもその思想はひっそりと息づいている。
　人が言葉を発する事でその言葉に力が宿り、その声により大気が震え、震えた分だけ確実に、外界に影響を及ぼす。言霊とはそういうものだ。

　些細な事で、世界は変わる。
　それはもう、呆気無いほどに。

　それを男は経験で知っていた。
　しかし一方でこうも思う。それは飽く迄受動態である時の話であって、能動態であった場合ではない。
　つまり自らが起こすべき行動だとすれば、言葉を発する事によって、それはどんどん己から遠のいてしまうのではないか、と。

　口にすれば口にする程、その想いは心から離れていく。

　ならば、ただひたすらに内に秘め、一欠けらの想いも取り溢してはならないと。
　そう、思うのだ。

　―――――殺してやる。殺してやる殺してやる殺してやる･･････

　言葉を溢せば溢す程、その顔は悲哀に満ちていく。
　そこで初めて、男の眼は再び女を捕えた。

「貴女には、無理だ」

　男がそっと女の耳元で囁くと、女はいっそうその顔を悲愴に歪め、目尻から頬へと一筋の雫がつたった。
　

　愛して、いたのに。


「･･････そういう事は本人に言ってくれよな」

　チカ、チカリと青白い光が瞬いた。雨も降っていないのに、一滴の水滴がその光に照らされて、コンクリートの上で微かに光る。

    </description>
    <dc:date>2009-09-02T09:38:33+09:00</dc:date>
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