「リボンズお兄様…」
ぱあっ、と花開いた笑顔に、その場に居合わせた面々はあらゆる意味で凍り付いた。
「元気にしてた? ティエリア」
「…してた…」
「泣き出しそうだよ?」
「…… かった」
「ん?」
「さみしかった…」
「ごめんね。アレハンドロ様が好き勝手にスケジュール組んじゃうから
 お守りが大変で」
慰めるように、リボンズの唇がティエリアの額にそえられる。
ちゅっ、と可愛らしい音に、ティエリアの表情がみるみる溶けてゆく。
半泣きの子供のような笑顔は、まるで親を見つけた迷子のようだ。
「我慢してたんだね。いいよ、泣いて」
「…リボンズお兄様…」
「僕のティエリアは泣き虫でいいんだよ?」
「はい…」
類稀な美貌が二つ寄り添う姿は、それだけで至福の宝石だった。
ティエリアの紅玉の瞳が隠す事無く潤んでいくのは、リボンズ と呼ばれた
彼への絶対の信頼と、愛情の現われだろう。
安心しきってその胸に甘えるティエリアを、リボンズの指がそっと撫ぜていく。
長い前髪を、細い背の線を、薔薇色に染まった頬や目尻を、惜しみない愛を
見せつけるかのようにたどる動きに、ティエリアは吐息さえ零し浸っていた。

そして。

その光景に、こと複雑な思いを抱いて、三人のマイスターは立ちつくしていた。
きつく握られた握りこぶしに、気が付いたとしたら、それはリボンズだけだろう。
「お正月休みの間は、側に居てあげるからね」
「…それだけ?」
「我慢できるなら、とびきり甘やかしてあげるから」
「……お兄様が、そういうなら」
短い再会に肩を落しつつも、きらきらとした瞳でリボンズを見上げるティエリアから
はなたれる色香のなんと強い事か。
本当に兄弟の関係だけなのか、と、誰もがうがった考えをしてしまう。

まるで薔薇の吐息を閉じ込めた媚薬。
そして、それを胸に微笑むリボンズは、マイスターたちにはどう見ても、
最悪の毒薬にしか見えなかった。

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