Aileen(詳細・ネタバレ編)


  • ヒューム♀、6b(赤茶髪)、通常配置無し
  • バストゥーク大工房二階にある食堂の調理人。


  • 20年前、少女時代の体験がトラウマになり、性格が歪んでしまった。
  • それ故現在の職場の後輩であるLeonhardtを苛めている。
  • 同じく食堂の調理人であるAnnelieseはその過去を知っている為、性格のきつさにはある程度目を瞑っていたというが、それも度が過ぎてきている事に悩んでいた。
  • 料理人としての腕自体は、確かなものらしい。


パイの隠し味は(クエスト「真心の温度」)

  大工房にある、政府の役員らや工房の職人達の憩いの場である食堂。たいていの冒険者は(食堂にも関わらず)ここの客に頼まれてガルカンソーセージを届けるために一度はきた事があるのではないだろうか。このような工房の一角にも、冒険者では気付かない人間模様があり、ここで物語が始まる。冒険者が訪れた時、食堂の常連であるFerghusが少々うんざり気味にそれを教えてくれた。


Ferghus : あそこに見習い料理人がいるだろ?あいつ、気の毒なんだよな。なんか問題がおきると、いつもあいつのせいにされちゃうんだよ。ほら、今日もおっぱじまるぜ。

  いつもカウンターで佇む調理人の見習い・Leonhardtに、ツカツカと歩み寄る、エプロン姿の女性たち。

Aileen : またパイを黒焦げにしたの?いいかげんにしてよね。
Leonhardt :……ぼくが焼いたんじゃないです。
Aileen : 自分の失敗を認めないの?あなた以外に誰がいるのよ。
Anneliese : あれほど注意しなさいって言ったのに……。
Aileen : 罰は1ヶ月間、ひとりでゴミ出しと食器洗いってところかしらね。
Anneliese : かわいそうだけど、しかたないわね。
Ferghus : あーあ、濡れぎぬ着せられちゃって。オレ見たんだよ。あの料理人が、さっきパイを焼いていたところ……。


  常連であるFerghusだから気付ける小さな発見、それは黒焦げのパイをわざと作り、Leonhardtにそれを擦り付けているのはアイリーンだったというのだ。あまりの理不尽な出来事に思わず冒険者はアイリーンらに抗議に向かった。

Aileen : フン、ずいぶんと偉そうだけどその手……あなた、ろくに料理できないでしょ?そんな人に口出しされるおぼえはないわよ。
Anneliese : アイリーン、お客さんにそういうこと言うのはマズイよ……。


ちなみに調理師範がクエストを発生させると「そこそこの腕のようね」といわれる。

  客である冒険者にも傲慢な態度をとるアイリーンを、もう一人の女性Annelieseがたしなめたが、アイリーンは聞く耳をもたないようだ。

Aileen : アネリーゼ!あなたはウチの店のことで部外者に口出しされてもいいってわけ?
Anneliese : そうじゃないけど……。
Aileen : はっ、やってられないわね。無能な見習いと優柔不断な料理人しかいないこんな食堂じゃ、いい料理なんて作れっこないわよ。

  そういって、アイリーンは厨房へ戻っていった。助けてくれたお礼と、迷惑をかけた事を詫びるLeonhardtAnneliese。アイリーンは調理人としては一流だったが、少女時代の苦い思い出が彼女の性格を歪めてしまったとAnnelieseが語りだす。その頃、アイリーンととても仲が良かった親友がいた。大切な約束をしていたのだが、友達は待ち合わせの場所に現れず、アイリーンは待ち続けた。しかし、その親友とはそれ以来、会わなかったという。Annelieseはその話を聞き、アイリーンの心の傷の深さを感じ取り、多少の我が儘にも目を瞑っていた。しかし苛めは許される事ではないし、それも度を越している。

  もしかしたらその過去の体験からくるトラウマを解消したらアイリーンの性格も変わるのだろうか。20年まえの世界へ向かう術を得た冒険者は、かつての商業区へ向かった。川辺に佇む若者に話しかけると、何時間も木の下で佇む少女がいる事を知る。


その少女の名前は……。

Aileen : お兄さんもおうちに帰りなさいって言いに来たんでしょ。あたし、まだ帰らないよ。だってカルラちゃんと約束したんだもん。もうすぐあたしの誕生日なの。だから、ここでいっしょにお祝いしようねって。……はぁ。カルラちゃん、早く来ないかなぁ。

  少女アイリーンは、親友カルラを信じ、そこで待ち続けていた。しかし、先ほどの青年から冒険者は残酷な現実を聞いてしまうことになる。

Raginmund : あの子の友だちは、バストゥーク近郊のラーネフェルト村にいる知り合いに引きとられていったんだが……村へ向かう途中、クゥダフ兵に襲われて行方がわからなくなってしまったんだ。かわいそうで、とてもあの子には言えないよ……。

  ラーネフェルト村は現代では今のところ冒険者の間では所在が確認されていない村。グロウベルグを通って行く場所であるという。冒険者は真実を知るためにグロウベルグに向かう。そしてカルラが通ったと思われるグロウベルグ(か北グスタベルグ)のクゥダフを薙ぎ倒すと、「赤い鍋つかみ」を手に入れる。これは、カルラがアイリーンの誕生日のプレゼントとして用意したもののようである。それを渡す間も、事情を伝える間もなく彼女はラーネフェルト村へ向かう事になり……。

  赤い鍋つかみを手に、現代に戻った冒険者は、食堂に向かった。カウンターに立っているLeonhardtに事情を説明すると、アイリーンの過去の隠された真実に驚いた。そして、そこに当のアイリーンも現れた。


Aileen : まったく、この忙しいときにムダ話する人の気がしれないわね。
Leonhardt : アイリーンさん、これあちらのお客さんがアイリーンさんにって……。
Aileen : あなたは、このあいだの……。こんなものよこして、どういうつもり? え?カルラちゃんが……あたしに……?……あなた、どうしてカルラちゃんのことを知ってるのよ。

  カルラの名前で、流石にアイリーンも憎まれ口を止め、冒険者の話を聞いた。目の前には過去から持ってこられた赤い鍋つかみ。

Aileen :……そうだったの。カルラちゃんはラーネフェルト村に……。
Aileen :…………。あたし、どうしてカルラちゃんのこと、もっと信じてあげられなかったんだろう……。カルラちゃんといつも一緒にいるのが当たり前で、あたし何もしてあげられなかった……。


うつむくアイリーンに優しく声を掛けるAnneliese

Anneliese :……そんなことないわ。アイリーンがその子と一緒に過ごした時間が大切だったように、その子もアイリーンとの時間がとても大切だったのよ。 だから、こんなに素敵なプレゼントを……。
Aileen :…………。

  Annelieseの言葉、そしてじっと見守るLeonhardt。初めて二人の優しさがアイリーンに伝わったのではないだろうか。アイリーンは暫くうつむいたまま沈黙していた。


Aileen :……ごめんなさい。あとは頼むわ……。
Anneliese : きっと、あの待ち合わせ場所に行ったんだわ。つらいでしょうね……。

  足早に食堂から出て行くアイリーンを、二人はただ、見守るしかなかった。

  アイリーンを追って冒険者は商業地区を探した。目指すは、20年前にアイリーンが待ち続けたあの木。そこには、あの頃のアイリーンのようにたたずむ少女がいた。

Bruna : イーダちゃん、きっと約束すっぽかしたんだ。もう絶交だよ。

  彼女もまた、友達をじっと待ち続けているようで、スネ気味の独り言をつぶやいていた。そんな少女に声を掛けたのは、調理人の帽子を外したアイリーンだった。


Aileen : もう少し待ってみたらどう?その子にも事情があるのかもしれないよ。
Bruna : お姉さん、だあれ?
Aileen : お姉さんはね、料理人よ。あたしにもむかし、あなたみたいにお友だちがいたの。その子はいつもあたしのことを応援してくれてたの。そのおかげで、あたしは料理人になれたのよ。
Aileen : だからあなたも、お友だちのことを信じてあげて。自分のことばかり考えて、大切な友だちをなくしてはだめよ。


当時の自分と重ねて話しかけるアイリーン。

Bruna :……うん、わかった。イーダちゃん、約束すっぽかすような子じゃないもんね。わたし、もうしばらく待ってみる!!

  アイリーンの言葉に、ゆっくりとうなずく少女。そして、程なくして、その少女をよぶもう一人の少女が橋の方から駆け寄ってきた。

Ida : ブルーナちゃーん!
Bruna : イーダちゃん!
Ida : 遅くなってごめんね!!お母さんが、なかなか外にいかせてくれなくて……。
Bruna : そうだったんだ。じゃあ、遊びにいこう!


Bruna : お姉さん、ありがとう。
Aileen : よかった……。

  そうして、走り去っていく少女達。二人を見守るアイリーンの瞳は、今までの彼女の印象とはまるで違い、口調も穏やかだった。少女達の姿が遠く見えなくなった頃、アイリーンは冒険者がそばで見ていた事に気づいた。

Aileen : あなたには迷惑かけたわね。許してちょうだい。
Aileen : レオナルトにもひどいことをしたわ。料理人として恥ずべき行為だったわね……。カルラちゃんのためにも、あたし立派な料理人にならなきゃ……。こんなふうに思えるようになったのは、あなたのおかげよ。ありがとう。


過去の誤解、そして心の傷が癒えたようだ。

  そして彼女はそっと、パイを冒険者に差し出した。

Aileen : ささやかなものだけど、感謝の気持ちをこめてパイを作ったの。受けとってちょうだい。


それは思い出の味。

  アイリーンは新たな決意を胸に、食堂に戻っていった。そして食堂ではLeonhardtもパイを焼いていた。が、そちらにも隠し味が入ってしまったようだ。

Leonhardt :……ぼくの作ったロランベリーパイ、涙でしょっぱくなっちゃったよ。またアイリーンさんたちに怒られちゃうな。


最終更新:2008年06月05日 02:39