概要
女性化乳房症(女性様乳房、乳腺肥大ともいう)とは、男性の胸部皮下組織が典型的女性のそれのように発達するものをいいます。ありがちな誤解ですが、「女性化乳房症」自体は単に表面に現れた状態を示す「症状」であって「病気」ではありません。何らかの病気が原因になっていることもあれば、そうでない場合もあります。
原因
女性化乳房の様々な原因のうち、表に出ないもの、軽微なものも含め、まず最も多いのではないかと思われるのは、単に体質によるものです。というのは、生物学的女性の中にも典型的男性に近いひげが生える人もいるのと同じように、生物学的男性の中にも典型的女性のように乳房が発育する場合もあるということです。そもそも乳腺などから構成される胸部の基礎的な皮下組織に性差はありません。こうした身体的特徴は、一般に性差としてとらえられがちですが、実際には性別によって傾向はあるものの、単に個体差として考えた方が理解しやすいものです。
思春期には一時的なホルモンバランスの変化によって女性化乳房が引き起こされることがあります。この場合は、放置しても数ヶ月から数年程度で自然に消失するので、別に異状がなければ経過を見ることになるでしょう。乳児期には母親のエストロジェンが取り込まれることにより、また更年期にはアンドロジェンの低下によってやはり一時的な女性化乳房になることがあります。
特に中高年の女性化乳房で、硬いしこりができている場合は、乳がんの可能性があります。また、病的な女性化乳房としては、肝臓の疾患によるものがよく知られています。これは、肝臓で女性ホルモンが破壊されなくなることから引き起こされます。ほかに病気によるものとしては、脳下垂体・甲状腺・睾丸の腫瘍、高プロラクチン血症、肺がんなどがあります。病因による場合は、当然病気の治療を優先しますが、治癒すると減退または消失することが多いようです。
ほかの病気の治療のために、薬を服用している場合や、ドーピングをしていると、それらの副作用で女性化乳房になることがあります。薬剤を減らすか中止すると、多くの場合で減退または消失するようです。
なお、ここにあげた原因は代表的なものですが、全てではありません。まれな病気や薬剤が原因になることもあります。
受容と拒絶
前述のような特に原因のない女性化乳房の場合、それを受容するか拒絶するかが問題になると思います。それぞれに悩みがあり、どちらが良くてどちらが悪いと一概に言うことはできず、結局はその人次第ということになるでしょう。
拒絶する場合は形成外科か美容外科で手術を行うことになります。これについては、健康体にメスを入れることに道徳的なとまでは言わなくても、抵抗感を持つ人が少なくないのかもしれません。
ところで、最近は、医学的には健康体であっても、何らかの事情により医療的な手段を必要とするような、心理的あるいは社会的負担を感じている人には、それを「障害」という概念(障害≠病気)でとらえることで医療に受け入れる窓口をつくろうという動きがあります。この動きのもっとも顕著な例は「性同一性障害」です。
女性化乳房を抱えた男性が、「男に女性的な特徴があるのは不都合だから切りたい」と思うのと、FtM(性自認が男であるが生物学的女性として生まれた人)が「男なのに女性的な身体でいるのは不都合だから男性的な肉体になりたい」と思うのとは、似た感情かもしれません(一方で性同一性障害医療の場合は精神疾患との鑑別を要するなどの理由のため精神科が窓口になり、そのため精神病と誤解されやすいといった面では大きく違っているが、これは余談)。
女性化乳房があることで大きな負担を感じているなら、それは医療的手段を要求する十分妥当な理由になり得ます。
いろいろな条件を天秤にかけてとりあえず切らないことにする、「男にオパーイがあっても全然OK」として男性像の修正を試みる、「むしろお得」、などと考えて受容するのも一つの生き方です。この場合は隠すのかどうか、隠すとしてどう隠すか、誰には打ち明けるか、ブラジャーを着けるかどうか、などが問題になりますが、一度受容すると決めればどれもおいおい解決できることと思います。
このwikiの更新情報RSS