ビッグボスの遺産 ◆qh.kxdFkfM
さて、どうしたものか。
ハル・エメリッヒ――――オタコンは眼鏡のブリッジに指を当てて、テーブルの上に置いた支給品の数々を見渡した。
ここは《E-6》に位置する『バンクル遊園地』。彼はそこの事務室におり、状況を整理しているところだ。
ハル・エメリッヒ――――オタコンは眼鏡のブリッジに指を当てて、テーブルの上に置いた支給品の数々を見渡した。
ここは《E-6》に位置する『バンクル遊園地』。彼はそこの事務室におり、状況を整理しているところだ。
(地名と外観から考えて、僕は今遊園地にいるらしい。
もっとも、電源はダウンしているからアトラクションは稼働していないけど)
もっとも、電源はダウンしているからアトラクションは稼働していないけど)
オタコンは卓上の地図から、名簿に視線を移す。そこには多種多様な名前の羅列している。
その中には自分がよく知っている者も数名含まれていた。
その中には自分がよく知っている者も数名含まれていた。
『ソリッド・スネーク』。これが自分の知るところの“彼”ならば、心強い味方となる。
すぐに合流したいところだが、彼とコンタクトをとる手段は今のところない。
すぐに合流したいところだが、彼とコンタクトをとる手段は今のところない。
『サイボーグ忍者』、つまりはグレイ・フォックスなのだが、これはどういうことだろうか。
この男はすでに死んだはずだ。それは疑いようもない事実。偽名あるいは別人がその名を受け継いだのかもしれない。
まさか彼相手に【恐るべき子供達計画?】を実行することはないだろう。
この男はすでに死んだはずだ。それは疑いようもない事実。偽名あるいは別人がその名を受け継いだのかもしれない。
まさか彼相手に【恐るべき子供達計画?】を実行することはないだろう。
『リボルバー・オセロット』。前述のグレイ・フォックスの時にも思ったが、名簿の表記がいささか不明確だ。
もう少しわかりやすいように記載できなかったのだろうか。判明している中で、本名が載っているのは自分だけではないか。
もっとも、オセロットの本名を知らないので、一応助かってはいるのだが。“中身”がリキッドなのか、オセロットのままなのか、それが問題だ。
もう少しわかりやすいように記載できなかったのだろうか。判明している中で、本名が載っているのは自分だけではないか。
もっとも、オセロットの本名を知らないので、一応助かってはいるのだが。“中身”がリキッドなのか、オセロットのままなのか、それが問題だ。
『雷電』。彼がここにいるのは、少し意外だった。サニーを救出してから音沙汰のない彼がここにいるのは、潜入任務だろうか、
それとも自分のように気付かれずに拉致されたからであろうか。どちらにしろ、彼もスネーク同様、信頼できる仲間の一人だ。
合流を優先するべきだろう。
それとも自分のように気付かれずに拉致されたからであろうか。どちらにしろ、彼もスネーク同様、信頼できる仲間の一人だ。
合流を優先するべきだろう。
(既存のソースから得られるのはこれくらいかな。あとは僕の行動次第ってことになるけど)
オタコンは椅子から立ち上がり、支給品のひとつである拳銃を手に取る。脳裏に、先程の馬鹿げたセレモニーが浮かび上がった。
オタコンは椅子から立ち上がり、支給品のひとつである拳銃を手に取る。脳裏に、先程の馬鹿げたセレモニーが浮かび上がった。
――『キミたちには……殺し合いをしてもらうのサ!』
「…………まったく。ナンセンスだよ」
いや、死者が出ている以上、無意味ではないのか。彼は深いため息を吐いて銃を懐に忍ばせた。
この≪ゲーム≫が『愛国者達』と関係しているかどうかはわからないが、
もしかしたら、現在行われている代理戦争にかわる“ビジネス”のための実験かもしれない。
だからといって、自分には誰かを殺すことなんてできないし、するつもりもない。
やること、できることはいつもの延長だ。あくまで後方支援、情報の提供や分析。
マルクが何のためにこんなことをしているのか調べ、計画を止めなければならない。
いや、死者が出ている以上、無意味ではないのか。彼は深いため息を吐いて銃を懐に忍ばせた。
この≪ゲーム≫が『愛国者達』と関係しているかどうかはわからないが、
もしかしたら、現在行われている代理戦争にかわる“ビジネス”のための実験かもしれない。
だからといって、自分には誰かを殺すことなんてできないし、するつもりもない。
やること、できることはいつもの延長だ。あくまで後方支援、情報の提供や分析。
マルクが何のためにこんなことをしているのか調べ、計画を止めなければならない。
そのためにも、スネークや雷電、もしくは彼らと同じような志の人間と接触しなければならない。
(問題はその方法なんだけど、弱ったな)
オタコンは粗末な裸電球で照らされた、薄暗い室内を見回す。ここは警備員の詰め所でもあったらしく、
監視カメラの映像を映すモニターテレビがいくつもあったようだが、それらがごっそりなくなっているのだ。
これでは監視システムを起動させても、肝心の情報がまるで入ってこない。
(テレビに恨みでも……いや、情報統制か? 『愛国者』らしいといえばらしいけど)
ともかく、これではどうしようもない。プロジェクターがあるなら話は別だが、残念ながらそんなものはここにはなかった。
(当然といえば当然か。あのピエロが望むのは殺し合い。接触にツールの介在は望まないだろうな)
(問題はその方法なんだけど、弱ったな)
オタコンは粗末な裸電球で照らされた、薄暗い室内を見回す。ここは警備員の詰め所でもあったらしく、
監視カメラの映像を映すモニターテレビがいくつもあったようだが、それらがごっそりなくなっているのだ。
これでは監視システムを起動させても、肝心の情報がまるで入ってこない。
(テレビに恨みでも……いや、情報統制か? 『愛国者』らしいといえばらしいけど)
ともかく、これではどうしようもない。プロジェクターがあるなら話は別だが、残念ながらそんなものはここにはなかった。
(当然といえば当然か。あのピエロが望むのは殺し合い。接触にツールの介在は望まないだろうな)
『殺し合い』という単語にかなりの嫌悪感を覚えた科学者は、散らかした支給品を元に戻し、窓の外を見る。
ただ誰かに会いたいであれば、このままここを出て園内を探索するか、別の施設へ向かえばいい。
しかし、会う人すべてが友好的である可能性はかなり低いだろう。
少なくとも自分の知るグレイ・フォックスやオセロットが、素直に協力してくれるとは思えない。
会ったら最後、自分はおそらくあの女性の二の舞だ。違いは死因くらいのものであろう。
ただ誰かに会いたいであれば、このままここを出て園内を探索するか、別の施設へ向かえばいい。
しかし、会う人すべてが友好的である可能性はかなり低いだろう。
少なくとも自分の知るグレイ・フォックスやオセロットが、素直に協力してくれるとは思えない。
会ったら最後、自分はおそらくあの女性の二の舞だ。違いは死因くらいのものであろう。
(これが夢かVRなら、それでもいいんだけど……夢であってほしいよ、本当)
目覚めたらベッドの中……という保証は今のところない。もっとも、それは平素も同じことなのだが、
それでも、これは空想にしてはいささか鮮明すぎる。現実と認識しておくに越したことはない。
それほどに、この“環境”は現実と酷似している。リアルかバーチャルか判別できない程に。
まさかVR訓練の弊害を我が身で体験しようとは……。オタコンが額に手をやり嘆いていると、
窓の向こう――暗闇の中に小さな光が見えた。おそらく支給品のランタンであろうそれは、こちらに向かってきている。
目覚めたらベッドの中……という保証は今のところない。もっとも、それは平素も同じことなのだが、
それでも、これは空想にしてはいささか鮮明すぎる。現実と認識しておくに越したことはない。
それほどに、この“環境”は現実と酷似している。リアルかバーチャルか判別できない程に。
まさかVR訓練の弊害を我が身で体験しようとは……。オタコンが額に手をやり嘆いていると、
窓の向こう――暗闇の中に小さな光が見えた。おそらく支給品のランタンであろうそれは、こちらに向かってきている。
(スネークや雷電ならこんな軽々しい真似はしない。すると、他の参加者か)
潜入任務を得意とする彼らなら、位置が特定されないよう行動するだろう。
ランタン片手に暗闇をふらつくなど、まずありえない。
つまり考えられるとすれば、そういったことに疎い一般人か、あるいは戦闘能力に自信のある人間。
接触してみなければわからないが、おそらくそのどちらかだろう。
潜入任務を得意とする彼らなら、位置が特定されないよう行動するだろう。
ランタン片手に暗闇をふらつくなど、まずありえない。
つまり考えられるとすれば、そういったことに疎い一般人か、あるいは戦闘能力に自信のある人間。
接触してみなければわからないが、おそらくそのどちらかだろう。
(ここで必要なのは相手、ひいては首謀者の情報だ。問題は、それがうまく手に入るかどうか……)
オタコンは鈍く光る拳銃を強く握りしめる。彼に支給されたそれは、かつて伝説の英雄が使ったものだった。
■
「う~。ここどこよ」
ショートカットの少女、里中千枝は文字通り暗中模索で遊園地内をさまよっていた。
先程見せられたスプラッタムービーが彼女の不安をあおり、明確な目標も道標もないまま歩かせているのだ。
この女子高生はカンフーを主としたアクションドラマならば熟知しているが、そちらの方面には疎い。
ショートカットの少女、里中千枝は文字通り暗中模索で遊園地内をさまよっていた。
先程見せられたスプラッタムービーが彼女の不安をあおり、明確な目標も道標もないまま歩かせているのだ。
この女子高生はカンフーを主としたアクションドラマならば熟知しているが、そちらの方面には疎い。
(殺し合いって何なのさ。シャドウの仕業? それとも、ええと、アメノサギリ?)
千枝はランタンを掲げて周囲を見るが、動いていないアトラクションがあるだけで、視界を遮る霧も、闊歩する異形の姿もない。
そこでふと彼女は思い立ち、顔に手をやり、次にポケットを漁る。
「あれ? メガネがない」
以前クマからもらったはずの『霧を無効化する道具』がないことに気付き、少女は受け取ったバッグを物色するが、中にもそれらしいものはなかった。
もちろんなくした覚えも壊した覚えもない。つまり、考えられる可能性といえば――。
そこでふと彼女は思い立ち、顔に手をやり、次にポケットを漁る。
「あれ? メガネがない」
以前クマからもらったはずの『霧を無効化する道具』がないことに気付き、少女は受け取ったバッグを物色するが、中にもそれらしいものはなかった。
もちろんなくした覚えも壊した覚えもない。つまり、考えられる可能性といえば――。
(あのピエロ~。鼻メガネならまだしも……許せん。顔面クツ跡の刑にしてやる)
ただでさえあんなグロいの見せられて気分悪いのに、と千枝は胸中で怒りの炎を燃やす。ちなみに彼女はローザの死を現実のものとはあまり認識していない。
【マヨナカテレビ】の延長、すなわち、悪趣味なシャドウのパフォーマンス程度にしか思っていないのだ。
それも当然といえば当然である。いきなり知らない場所に連行されて、奇妙な生き物に『殺し合え』といわれても、
「はい、わかりました」と従うわけもなければ、これが日常の範囲――現実であると即座に理解できるわけもない。
特に千枝の場合は、“そういった映像”を見てから、“現場”に向かうのが常なので、見ず知らずの男女の悲劇も“そういった映像”に含んで見てしまう。
あれが知り合いだったなら、話は違ってきたのだろうが。
ただでさえあんなグロいの見せられて気分悪いのに、と千枝は胸中で怒りの炎を燃やす。ちなみに彼女はローザの死を現実のものとはあまり認識していない。
【マヨナカテレビ】の延長、すなわち、悪趣味なシャドウのパフォーマンス程度にしか思っていないのだ。
それも当然といえば当然である。いきなり知らない場所に連行されて、奇妙な生き物に『殺し合え』といわれても、
「はい、わかりました」と従うわけもなければ、これが日常の範囲――現実であると即座に理解できるわけもない。
特に千枝の場合は、“そういった映像”を見てから、“現場”に向かうのが常なので、見ず知らずの男女の悲劇も“そういった映像”に含んで見てしまう。
あれが知り合いだったなら、話は違ってきたのだろうが。
(でもここテレビの中なのかな。あたしは入った覚えないけど)
自分は直前まで、現実世界にいたはずだ。もっとも、断言できる要素はなく、記憶を頼りにそう思っているだけで、確信はできない。
自分は直前まで、現実世界にいたはずだ。もっとも、断言できる要素はなく、記憶を頼りにそう思っているだけで、確信はできない。
いや、待てよ――。
頭上にクエスチョンマークを浮かべていた千枝は、今度はエクスクラメーションマークを頭の上に出した。
そして“テレビの中”にいる時と同じように、強く念じ始める。
そして“テレビの中”にいる時と同じように、強く念じ始める。
すると、一枚のタロットカードが彼女の目の前に降ってきた。
「おお」
したり顔でそれを蹴ると、千枝の思い描いた“存在”が現れた。黄色のボディスーツと、その上に銀色の草摺を纏った、とんがり帽子のようなフルフェイスヘルメットをかぶった女性。
これが彼女の持つ、困難に立ち向かうための人格の鎧、ペルソナ――トモエである。
(じゃあ、ここはテレビの中ってことなのかな)
千枝は一度頷くと、再び歩き始める。下手に現実と認識するよりは、テレビの中と割り切った方が、こちらも動きやすいし、わかりやすい。
処世術のひとつとしてとらえれば、それは合理的だった。何より、ペルソナが使えることが千枝にとって心の助けとなる。
これならばシャドウはもちろんのこと、悪漢にさえ対応できるだろう。ここではカンフー好きのただの女子高生ではなく、一人のペルソナ使いとして活動できるのだ。
その事実が、彼女に勇気と自信を与えてくれる。
したり顔でそれを蹴ると、千枝の思い描いた“存在”が現れた。黄色のボディスーツと、その上に銀色の草摺を纏った、とんがり帽子のようなフルフェイスヘルメットをかぶった女性。
これが彼女の持つ、困難に立ち向かうための人格の鎧、ペルソナ――トモエである。
(じゃあ、ここはテレビの中ってことなのかな)
千枝は一度頷くと、再び歩き始める。下手に現実と認識するよりは、テレビの中と割り切った方が、こちらも動きやすいし、わかりやすい。
処世術のひとつとしてとらえれば、それは合理的だった。何より、ペルソナが使えることが千枝にとって心の助けとなる。
これならばシャドウはもちろんのこと、悪漢にさえ対応できるだろう。ここではカンフー好きのただの女子高生ではなく、一人のペルソナ使いとして活動できるのだ。
その事実が、彼女に勇気と自信を与えてくれる。
(それじゃ、とっとと花村達と合流しますか)
がさごそと歩きながら片手で名簿を取り出し、先程大声を発していた花村陽介と、それをなだめていた瀬多総司の名前を見つける。
それに連なるように、自分の名前と親友の天城雪子が並んでいた。クマや、巽完二をはじめとした一年生のメンバーはいないことを確認した時、気になる名前があった。
がさごそと歩きながら片手で名簿を取り出し、先程大声を発していた花村陽介と、それをなだめていた瀬多総司の名前を見つける。
それに連なるように、自分の名前と親友の天城雪子が並んでいた。クマや、巽完二をはじめとした一年生のメンバーはいないことを確認した時、気になる名前があった。
――――足立透。
(え? 何で?)
足立透。稲羽署の刑事であり、稲羽市で起きた猟奇殺人事件の真犯人。自分たちが苦労の末に改心させ、逮捕した男がここにいる?
それが何を意味するのか、千枝にはわからなかった。あの後警察から逃げ出したということだろうか。では、この空間は“足立の世界”……?
ジェットコースターの前で彼女は立ち止り、首を傾げる。しかし答えなど出るわけもなく、
「ん~……わっかんない」
名簿を乱暴に戻した千枝が首を振る。そもそもこういうことは自分には向いていないのだ。
推理は花村陽介か、もっといえばプロの白鐘直斗の管轄であって、赤い点数と近しい自分は管轄外。
『考えるな、感じるんだ』が自分のポリシーなのだ。頭より体を動かす方が性に合っている。
足立透。稲羽署の刑事であり、稲羽市で起きた猟奇殺人事件の真犯人。自分たちが苦労の末に改心させ、逮捕した男がここにいる?
それが何を意味するのか、千枝にはわからなかった。あの後警察から逃げ出したということだろうか。では、この空間は“足立の世界”……?
ジェットコースターの前で彼女は立ち止り、首を傾げる。しかし答えなど出るわけもなく、
「ん~……わっかんない」
名簿を乱暴に戻した千枝が首を振る。そもそもこういうことは自分には向いていないのだ。
推理は花村陽介か、もっといえばプロの白鐘直斗の管轄であって、赤い点数と近しい自分は管轄外。
『考えるな、感じるんだ』が自分のポリシーなのだ。頭より体を動かす方が性に合っている。
(花村達もこれに気付いているだろうし、やっぱはやめに合流した方がいいよね)
問題は、彼らがどこにいるかがまったくわからないことだ。それ以前に、まだ誰にも出会っていない。本当に人がいるのかどうかさえ怪しいところだ。
「ん?」
そんな時、はるか前方に灯りが見えた。目を凝らしつつ、早足で近づいてみると、電気のついたプレハブがあり、窓に人影のようなものが。
距離が遠いせいで、マヨナカテレビの初期状態のようにそれは不鮮明。ゆえに誰かはわからない。やがてその影は窓の中から消えた。
(このまま迷子やってても仕方ないし、いってみますか)
知り合いに会える確率はかなり低いが、それでも向かってみなければわからない。千枝はランタンを揺らしながら小走りでそこへ向かう。
そう、箱の中の猫がどうなっているかなんて、結局開けてみなければわからないのだ。
「ん?」
そんな時、はるか前方に灯りが見えた。目を凝らしつつ、早足で近づいてみると、電気のついたプレハブがあり、窓に人影のようなものが。
距離が遠いせいで、マヨナカテレビの初期状態のようにそれは不鮮明。ゆえに誰かはわからない。やがてその影は窓の中から消えた。
(このまま迷子やってても仕方ないし、いってみますか)
知り合いに会える確率はかなり低いが、それでも向かってみなければわからない。千枝はランタンを揺らしながら小走りでそこへ向かう。
そう、箱の中の猫がどうなっているかなんて、結局開けてみなければわからないのだ。
そのプレハブはアトラクションひしめく場所からずいぶん離れた、アスファルトと草原の境目に建っていた。
千枝は出入り口のすぐ横に貼ってある『事務室』と書かれたプレートを尻目にドアを叩く。
「すみません、誰かいますか?」
ノックしても、反応なし。裏口から逃げてしまったのだろうか。不審に思いながらも、カギがかかっていないことを知った彼女はそこに足を踏み入れる。
室内には誰もいないようだ。乱雑に並んだ椅子と机、一角に集中して置いてある機械、壁一面にきちんと設置されたロッカー……。あるのはそれくらいのものだ。
持っていた照明器具を消して、バッグに戻した彼女は奥にある扉が全開になっていることに気付く。
「一足遅かったかな」
千枝は開いたままの扉をそっと閉めた。残念に思うと同時に、安堵にも感じた。これが強力なシャドウや、残忍な殺人鬼だった時はどうしようかと不安だったのだ。
彼女はそんな複雑な感情をため息にして吐き出し、隅にある機械の一群に近づく。通信機器のようなものがあれば誰かと話せるかもしれない。
しかし彼女の望みとは裏腹に、あるのは断線したケーブルや、使い方のわからないコンソールくらいだった。
千枝は出入り口のすぐ横に貼ってある『事務室』と書かれたプレートを尻目にドアを叩く。
「すみません、誰かいますか?」
ノックしても、反応なし。裏口から逃げてしまったのだろうか。不審に思いながらも、カギがかかっていないことを知った彼女はそこに足を踏み入れる。
室内には誰もいないようだ。乱雑に並んだ椅子と机、一角に集中して置いてある機械、壁一面にきちんと設置されたロッカー……。あるのはそれくらいのものだ。
持っていた照明器具を消して、バッグに戻した彼女は奥にある扉が全開になっていることに気付く。
「一足遅かったかな」
千枝は開いたままの扉をそっと閉めた。残念に思うと同時に、安堵にも感じた。これが強力なシャドウや、残忍な殺人鬼だった時はどうしようかと不安だったのだ。
彼女はそんな複雑な感情をため息にして吐き出し、隅にある機械の一群に近づく。通信機器のようなものがあれば誰かと話せるかもしれない。
しかし彼女の望みとは裏腹に、あるのは断線したケーブルや、使い方のわからないコンソールくらいだった。
「う~ん、これからどうしようかな」
ここにいた人物を追おうにも、この暗闇の中では追跡などできない。だからといってまた陰気な遊園地を散策するのもどうかと思う。
意味もなくパネルを叩いていた千枝は、そこで何かに気付いたらしく、手を止めた。
「そうだ、テレビ。テレビを探せば……」
クマが用意した、世界間を移動するあのテレビがあれば、一度現実の世界に戻れる。
それがだめでも、クマ本人か、久慈川りせに見つけてもらえるよう行動すれば……。
それが事件解決に直結するかはわからないが、少なくともきちんと準備や状況整理ができ、何より、安全が確保できる。
千枝は大きく頷いて、行動に出るべく振り返り、
ここにいた人物を追おうにも、この暗闇の中では追跡などできない。だからといってまた陰気な遊園地を散策するのもどうかと思う。
意味もなくパネルを叩いていた千枝は、そこで何かに気付いたらしく、手を止めた。
「そうだ、テレビ。テレビを探せば……」
クマが用意した、世界間を移動するあのテレビがあれば、一度現実の世界に戻れる。
それがだめでも、クマ本人か、久慈川りせに見つけてもらえるよう行動すれば……。
それが事件解決に直結するかはわからないが、少なくともきちんと準備や状況整理ができ、何より、安全が確保できる。
千枝は大きく頷いて、行動に出るべく振り返り、
自身に突きつけられた銃口に気が付いた。
■
それは賭けだった。情報を得るには相手と対等か、優位できなければならない。
そうでなければ情報を聞き出すことはおろか、自身の命さえ落としかねない。
現在の状況は把握しきれていない。近くに誰がいるか、何があるか。
来訪者の数と質も含めて、それらを一度に処理することは困難を極める。
だから外で応対せず、ここまで来るのを待った。外界をある程度シャットアウトでき、
尚且つ自分が把握している空間は今のところここしかない。
扉を開けておいたのは、相手にここが無人だと錯覚させるため。
軍人でも傭兵でもない自分が背後を取るには、対象の精神的弛緩が必要だった。
はたして、少女は自分を捜索することはすぐにあきらめ、室内の調査に移った。
後はそっとロッカーから抜け出し、銃を突き付ければいい。これでこちらのイニシアチブは確保される。
その先のことは、この銃の使い方と、相手の性質次第で決まる。
まさに、それは賭けだった。
そうでなければ情報を聞き出すことはおろか、自身の命さえ落としかねない。
現在の状況は把握しきれていない。近くに誰がいるか、何があるか。
来訪者の数と質も含めて、それらを一度に処理することは困難を極める。
だから外で応対せず、ここまで来るのを待った。外界をある程度シャットアウトでき、
尚且つ自分が把握している空間は今のところここしかない。
扉を開けておいたのは、相手にここが無人だと錯覚させるため。
軍人でも傭兵でもない自分が背後を取るには、対象の精神的弛緩が必要だった。
はたして、少女は自分を捜索することはすぐにあきらめ、室内の調査に移った。
後はそっとロッカーから抜け出し、銃を突き付ければいい。これでこちらのイニシアチブは確保される。
その先のことは、この銃の使い方と、相手の性質次第で決まる。
まさに、それは賭けだった。
「怖がらなくていい。君を殺そうとは思っていない。ただ、情報が欲しいだけなんだ」
「じゅ、銃を突きつられていわれて……信じられると思う?」
オタコンは苦笑して、手中のハンドガンをわずかに揺らす。しかしそれを下ろすことはなく、依然として動揺に歪む少女の顔に向けている。
見た目は普通の女の子だが、外見と実力が符合しないことはよくあることだ。もしかしたら少年兵の類かもしれない。
この殺し合いに呼ばれた以上、何らかのスキルがあると疑っておくに越したことはないはず。油断はできない。
「だろうね。けど、僕も丸腰で話しかけられる程強くはないからね。両手を挙げてもらおうか」
少女は渋々といった感じでその細い腕を空中に投げだしてみせた。彼はそれを確認し、二つのドアを一瞥する。
「同行者はいないようだね。あるいは見捨てられたか……。さて、じゃあまずは『テレビ』について話してもらおうか。君は何か知っているようだから」
「テレビの中の世界のこと? いいけど、信じられるかどうか……」
「いいから、早く」
彼女の発言にひっかかるものを感じたが、頓着してはいられない。状況はリアルタイムで動いているのだ。敵対にしろ協力にしろ、早くしなければ何事も手遅れになる。
オタコンに促され、彼女は神妙な面持ちで語りだす。そこから展開される荒唐無稽な話に、科学者はわずかに眩暈を覚えた。
「じゅ、銃を突きつられていわれて……信じられると思う?」
オタコンは苦笑して、手中のハンドガンをわずかに揺らす。しかしそれを下ろすことはなく、依然として動揺に歪む少女の顔に向けている。
見た目は普通の女の子だが、外見と実力が符合しないことはよくあることだ。もしかしたら少年兵の類かもしれない。
この殺し合いに呼ばれた以上、何らかのスキルがあると疑っておくに越したことはないはず。油断はできない。
「だろうね。けど、僕も丸腰で話しかけられる程強くはないからね。両手を挙げてもらおうか」
少女は渋々といった感じでその細い腕を空中に投げだしてみせた。彼はそれを確認し、二つのドアを一瞥する。
「同行者はいないようだね。あるいは見捨てられたか……。さて、じゃあまずは『テレビ』について話してもらおうか。君は何か知っているようだから」
「テレビの中の世界のこと? いいけど、信じられるかどうか……」
「いいから、早く」
彼女の発言にひっかかるものを感じたが、頓着してはいられない。状況はリアルタイムで動いているのだ。敵対にしろ協力にしろ、早くしなければ何事も手遅れになる。
オタコンに促され、彼女は神妙な面持ちで語りだす。そこから展開される荒唐無稽な話に、科学者はわずかに眩暈を覚えた。
テレビの中には別の世界があり、そこにはシャドウと呼ばれる怪物が存在している。テレビの中に入れる人間は限られており、彼女――里中千枝はその一人。
千枝はシャドウが現実世界に悪影響を及ぼす行為を止めるために、仲間達と共に活動し、最終的には世界を救った。
ここはテレビの中の世界である可能性が高く、パイプとなっているテレビを見つければ、現実世界へ戻れるかもしれない。
千枝はシャドウが現実世界に悪影響を及ぼす行為を止めるために、仲間達と共に活動し、最終的には世界を救った。
ここはテレビの中の世界である可能性が高く、パイプとなっているテレビを見つければ、現実世界へ戻れるかもしれない。
話し終えた千枝に対し、オタコンは不審を通り越して心配の念を抱いた。自分がいうのもなんだが、彼女はアニメーションの見過ぎではないだろうか。
「……君、薬物の経験は?」
「ほら、信じてないじゃん」
科学者は深く息を吐いて、銃口をぴたりと少女の眉間に合わせた。
「これ以上でまかせをいうつもりなら、僕にも考えがある」
わずかに怒気を込めてそういうと、オタコンは引き金に指をかけた。『愛国者達』や主催者と何か関係があるのではと思ったが、期待外れもいいとこだ。
これだけ脅しても少女がまだ夢物語を語るなら、彼は彼女を捨て置くつもりだった。精神障害を患っている人間を連れても、ここでは足手まといにしかならないからだ。
「ほら、信じてないじゃん」
科学者は深く息を吐いて、銃口をぴたりと少女の眉間に合わせた。
「これ以上でまかせをいうつもりなら、僕にも考えがある」
わずかに怒気を込めてそういうと、オタコンは引き金に指をかけた。『愛国者達』や主催者と何か関係があるのではと思ったが、期待外れもいいとこだ。
これだけ脅しても少女がまだ夢物語を語るなら、彼は彼女を捨て置くつもりだった。精神障害を患っている人間を連れても、ここでは足手まといにしかならないからだ。
少女との距離は約三メートル、たとえマーシャルアーツの心得があったとしても、こちらの優位は揺るがない。
彼女にもそれくらいわかっているはずだ。
彼女にもそれくらいわかっているはずだ。
しかし、千枝は笑う。この苦境の中、顔をわずかに引き攣らせつつも、口は笑みに歪む。
「虚勢のつもりかい? 無駄だよ」
「ハッタリならもう少しうまくやるって」
「ハッタリならもう少しうまくやるって」
どこかから飛んできたのか、それとも天井から落ちてきたのか、一枚のカードが少女の足元に落ちた。
オタコンは興味を示さず、引き続き彼女との交渉に頭を働かせている。
オタコンは興味を示さず、引き続き彼女との交渉に頭を働かせている。
「先にいっとく。ケガしても恨まないで――――」
千枝の右脚が勢いよく振り上げられる。オタコンは嫌な予感がしたが、構わず腕を伸ばして銃を突き付けた。
「――――ねッ!」
少女の踵が床のカードを踏み抜く。それはまるでガラスで作られていたかのように、軽快な音を立てて砕けた。
次の瞬間、オタコンは少女を見失う。彼と千枝の間に突然誰かが割って入ったのだ。
いきなり現れた、奇妙な格好の女性は持っていたナギナタでオタコンの銃を弾き飛ばす。
ビッグボスの遺産は宙でクルクルと上昇し、やがて天井にぶつかった。
いきなり現れた、奇妙な格好の女性は持っていたナギナタでオタコンの銃を弾き飛ばす。
ビッグボスの遺産は宙でクルクルと上昇し、やがて天井にぶつかった。
衝撃と驚愕でその場に尻餅をついた彼に、鋭い刃が突き付けられる。
訳もわからない内に形勢逆転である。かと思うと、女性は現れた時と同じように一瞬で消えてしまった。
落下してきた拳銃を少女の手がとらえ、その銃口は唖然としている男に向けられる。
訳もわからない内に形勢逆転である。かと思うと、女性は現れた時と同じように一瞬で消えてしまった。
落下してきた拳銃を少女の手がとらえ、その銃口は唖然としている男に向けられる。
「銃を向けられる気分はどう?」
まるで悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべる千枝に、我に返った彼は肩をすくめてみせた。
「別に。怖くも何ともないね。撃ってみてごらん」
「…………?」
不思議そうな顔をした少女が、ためしにあらぬ方へ向けて引き金絞ってみる。
ボッ、と音を立てて出てきたのは、銃弾ではなく、親指大の炎だった。
まるで悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべる千枝に、我に返った彼は肩をすくめてみせた。
「別に。怖くも何ともないね。撃ってみてごらん」
「…………?」
不思議そうな顔をした少女が、ためしにあらぬ方へ向けて引き金絞ってみる。
ボッ、と音を立てて出てきたのは、銃弾ではなく、親指大の炎だった。
千枝は「へ?」と間の抜けた声で銃口とメガネを交互に見やる。男は疲れた顔で笑うだけだ。やがてこれが何なのか理解したらしく、揺れる火をオタコンに向けた。
「ええと……タバコでも吸う?」
「いや、遠慮しておくよ」
オタコンは立ち上がり、自身を見下ろす。どうやら“あの時”のような醜態を晒さずにすんだようだ。
グレイ・フォックスが襲ってきた時のことを思い出しつつ、彼はしびれた手を彼女に差し出した。
「僕はハル・エメリッヒ。君の話を信じて協力しよう。だから君も僕に協力してほしい」
今の現象を科学的に証明できる知識は自分にはない。ならば、彼女の話を信じるしかないだろう。
オカルトを起こす、いわゆる魔法がこの少女のスキルだというなら、それに関する情報は必ずや何かの手がかりになる。
自分が無事なのを鑑みても、彼女がその力を積極的に人殺しに使うことがないと予想できた。信用してもいいだろう。
科学者の申し出に少女は数秒思案顔だったが、やがて笑顔に表情を変えてそれに応える。
「ええと……タバコでも吸う?」
「いや、遠慮しておくよ」
オタコンは立ち上がり、自身を見下ろす。どうやら“あの時”のような醜態を晒さずにすんだようだ。
グレイ・フォックスが襲ってきた時のことを思い出しつつ、彼はしびれた手を彼女に差し出した。
「僕はハル・エメリッヒ。君の話を信じて協力しよう。だから君も僕に協力してほしい」
今の現象を科学的に証明できる知識は自分にはない。ならば、彼女の話を信じるしかないだろう。
オカルトを起こす、いわゆる魔法がこの少女のスキルだというなら、それに関する情報は必ずや何かの手がかりになる。
自分が無事なのを鑑みても、彼女がその力を積極的に人殺しに使うことがないと予想できた。信用してもいいだろう。
科学者の申し出に少女は数秒思案顔だったが、やがて笑顔に表情を変えてそれに応える。
――――どうやら、賭けには勝ったらしい。
握られた手の感触に、オタコンは安堵を感じていた。
【E-3/バンクル遊園地/事務室/一日目/深夜】
【ハル・エメリッヒ@メタルギアシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、確認済み支給品0~2
[思考]
基本方針:マルクの見極めと計画の阻止
1:ソリッド・スネーク、雷電との合流
2:サイボーグ忍者、リボルバー・オセロットを危険視
※MGS2エンディング後、MGS4本編開始前からの参戦
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、確認済み支給品0~2
[思考]
基本方針:マルクの見極めと計画の阻止
1:ソリッド・スネーク、雷電との合流
2:サイボーグ忍者、リボルバー・オセロットを危険視
※MGS2エンディング後、MGS4本編開始前からの参戦
【里中千枝@ペルソナ4】
[状態]:健康
[装備]:アメリカ製のライター
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(1~3)
[思考]
基本方針:この事件を解決する
1:瀬多総司、花村陽介、天城雪子の捜索
2:足立の仕業……?
※真ENDルート、イザナミと出会う前からの参戦です。
※ペルソナはトモエです。
[状態]:健康
[装備]:アメリカ製のライター
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(1~3)
[思考]
基本方針:この事件を解決する
1:瀬多総司、花村陽介、天城雪子の捜索
2:足立の仕業……?
※真ENDルート、イザナミと出会う前からの参戦です。
※ペルソナはトモエです。
【アメリカ製のライター@メタルギアシリーズ】
45口径で、鏡のように磨き上げたフィーディングランプ、強化スライド。
更にフレームとのかみ合わせをタイトにして精度を上げ、サイトシステムもオリジナル。
サムセイフティも指を掛け易く延長してあり、トリガーも滑り止めグルーブのついたロングタイプ。
リングハンマー、ハイグリップ用に付け根を削りこんだトリガーガード。
それだけではなく、ほぼすべてのパーツが入念に吟味されカスタム化されている。
45口径で、鏡のように磨き上げたフィーディングランプ、強化スライド。
更にフレームとのかみ合わせをタイトにして精度を上げ、サイトシステムもオリジナル。
サムセイフティも指を掛け易く延長してあり、トリガーも滑り止めグルーブのついたロングタイプ。
リングハンマー、ハイグリップ用に付け根を削りこんだトリガーガード。
それだけではなく、ほぼすべてのパーツが入念に吟味されカスタム化されている。
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