僕たちの行方 ◆.dRwchlXsY



陽の光が燦々と差し込む草原、そこを歩くのは三つの影。
それぞれが同じ方向へと向けて歩を進めている。
学生服に身を包み先頭を歩く少年、花村陽介。
ところどころ擦り切れボロボロになった衣服を着て、引きずるようにして足を運ぶ少年、レッド。
そしてその中でも一際目を惹く、ゆうに二メートルは越えそうな程の巨躯を持つ男、ルビカンテ。

「いやー、しかしあれだ。レッド、さっきのあれは本当に誤解だからな。いやマジで。おいルビカンテも何とか言えよこの野郎」
「この私が何をしたというのだ。それに先程も男に色情沙汰などはないと言ったであろう」
「何度も言わなくてももう分かってるよ陽介。でも君たちに出会えて本当によかった。もし出会えなかったことを思うと……」

赤い服の少年、レッドがうつむいて答えた。
レッドは先刻、花村陽介とルビカンテの二人と偶然遭遇したばかり。
その後、紆余曲折を経て彼らと共に行動することになった。

「心配すんなって。俺とルビカンテで守ってやるからもう大丈夫だ」
「そうだ。私がいればどんな魑魅魍魎だろうと一瞬にして焼き尽くしてやろう」

彼らの行き先はタウロスタウン。
そこに他の参加者が身を潜めている可能性が高いと判断し、向かうことにした。
町には隠れる場所も役に立つ施設も多いだろ?案外、みんなそこにいるかもしれないぜ。それに病院に行けばレッドの怪我だって少しは治せるしな、と陽介は言う。

「其処に強者はいるのか?」

まだ見ぬ相手との戦闘を欲するのはルビカンテ。
正々堂々とした戦いを心情とする武人。

「どうかな?だけどその可能性はあると思うぜ。それにアンタ自身さっき知り合いがいるかもしれないって言ってただろ?」

最初の放送の時点で、ルビカンテと関係のある残りの参加者はセシル、カイン、ゴルベーザの三人。
セシルとカインとは殺し合いが始まる以前からも因縁のある相手。
特にカインとはこちらでも一悶着あったばかり。
それにゴルベーザはルビカンテの主に当たる人物。
一刻も早く合流するべきである。
勿論彼らがこの先にいるとは限らないのだが、可能性が零ではない以上行かないわけにはいかなかった。


「……そうだな。セシルとカインは元より、ゴルベーザ様とは一刻も早く合流しなければならない。主の命を受け、主を守り、主の為に尽くすのが部下の務め」
「そういうこった。それにレッドだって早くその怪我少しは良くしたいだろ?」

一人後ろを歩くレッドに、陽介は振り向いて答えた。

「そうだね……」

レッドに気遣い明るく話しかける陽介に対し、レッドも優しく笑みを浮かべ頷いた。
その本心は真逆の作り笑いの笑顔で。
レッドは花村陽介とルビカンテと遭遇した時、自分の目に飛び込んだ衝撃的な状況を前に、自分の選択を読み違えたかと焦りを生じたが、それは杞憂だったようだ。
花村陽介は明るく気さくな少年だ。
合流してからというもの、ほとんど笑みを絶やさずにいる。
年齢もレッドとそう違わないだろう。
怪我をしているレッドに、怪しむ様子など一切なく親切に接してきた。
こんな状況なのに疑いもせず、よくそんなに軽々しく近づけるものだとレッドも関心したぐらいだ。
そんな人物を利用しない手はない。
ルビカンテという男もそう心配する必要はないだろう。
初めて見たときはルビカンテの放つその雰囲気、佇まいに圧倒されたが、別に難しい人物ではないことが分かった。
そもそも人間なのか、この男は。
おそらく、それ相応のかなりの力を持っているに違いない。
参加者の大半は一掃できそうな気がするぐらいだ。

(花村陽介にルビカンテ、ここにきて最高の“仲間”を手に入れたよ。
この二人と共にいればしばらくは安泰。
その時がくるまで充分役に立ってもらおう。
唯一気になるのは、さっきも僕に干渉してきた『あいつ』だ。
何の目的かは知らないが、邪魔するなら容赦はしない。

そして最後は必ず僕が勝つ。
今までだってずっとそうだったんだ。
ポケモントレーナーとして連戦連勝、負けなし、チャンピオンになるのだって全然難しくなかったじゃないか。
僕の妨げになるものは全部やっつけてこれたんだ。
今回だって絶対に大丈夫さ。何も問題はない。何も……)

「そういえばその怪我……、たしかサカキって奴にやられたんだっけな?」

陽介がレッドに尋ねる。
三人は合流してから簡単な情報交換を行っていた。
互いの知る参加者や人間関係などについての簡単な情報交換を。
陽介は特別捜査隊のメンバーについてを。また自身のペルソナ能力についても少し説明した。ルビカンテはともかく、レッドは陽介のペルソナを見て少し驚いた様子を表した。
ルビカンテはセシルとカイン、そしてゴルベーザについて。
レッドはサカキについてはただ襲われたとしか話さなかったので、陽介に尋ねられて詳しく説明することにした。



「そうさ。奴にやられたんだ……。あの残虐非道な男に……」
「一体どんな奴なんだそいつは?」
「ロケット団っていう悪の組織のリーダーさ。罪のない善良な市民たちに対し悪行の限りを尽くす最低な男だよ」
「ロケット団……。聞いたことないな。ルビカンテはあるか?」
「いやないな」
「そんな大それたこと仕出かす奴らなら知らないほうがおかしい。変だな」
「テレビのニュースとかでも連日のようによく見るよ……」
「……だけど俺はそんなニュース見たことも聞いた事もない。てことは……」

顎に親指を当て、
少し間を置いて陽介は話した。

「……もしかしたらさっきの話も冗談じゃないのかもな」
「さっきの話?」
「ああ、レッドと出会う前、ルビカンテと少し話してたんだ。お互いの住む所とかの。そしたらこいつ月の民とか何とか言いだしてさ。さすがに俺もその時は信じられなかったんだけど、今になってよーく考えてみればあながち嘘じゃねーのかもって」
「どういうこと?」
「……もしかするとレッドも、てか俺たちはみんな違う世界に住んでるんじゃないかってこと」
「え、違う世界?」
「いわゆるパラレルワールドって奴?確証はないしちょっと話が突拍子すぎるとは思うんだけどさ」
「本当に?まさか?」

レッドは目を丸くして陽介に尋ねた。

「疑うのも無理ねーよな。俺だってまだ信じてない。でもルビカンテの言う月の民、レッドの言うロケット団。両方とも俺は今日初めて聞いた。それに二人が嘘を言っているようには思えない。だからもしかしたらそうなのかもって。
大体ルビカンテを見てみろよ。こんな変な格好した大男なんて見たことあるか?いやないね俺は。だろ?」
「変な格好とはなんだ。私からすればお前のほうがよっぽど奇抜な格好よ」
「どう見たって普通の学生服だっつーの!まあとにかくパラレルワールドだか何だか分からないけどその可能性もあるってことだ」

二人のやり取りをレッドは無言で見つめた。
陽介に対しレッドは平行世界の存在についてあたかも初めて耳にしたように答えたが、勿論そんなことは前から予測がついていた。
序盤に遭遇した博霊霊夢の人間離れした異能の力。
先程のサカキとの鉢合わせの時に生じた歴史の矛盾。
どう考えても何かがおかしい。
それに気づかないほどレッドも愚鈍ではなかった。

「なるほど……パラレルワールドか。だとしたらさっきの巫女もそうなのかも……」
「巫女?」
「うん。夜に彼女に襲われたんだ。不思議な力を使っていた。超能力って言えばいいのかな……。この腕も彼女にやられたんだ……」

レッドは、痛々しく折れ曲がった右腕に悲痛な表情で目を向ける。
陽介も同じ表情で見つめた。

「ひでぇなそいつは……。名前とか聞いてないのか?」
「さすがに名前までは……。ただサカキとその巫女は一緒に行動していたんだ。お互いに協力しているんだと思う。かなり危険な奴らだよ……」
「そうか……要注意人物だなそいつらは。まぁとにかく安心しろって。もしそいつらが来たら俺とルビカンテで守ってやるからさ。それにこの先の町には病院もある。その怪我だって少しは良くなるさ」
「ありがとう……陽介……」

落ち込む様子のレッドを励まそうと必死に言葉を紡ぐ陽介。
その真っすぐで裏表のない陽介にレッドは本当に感謝した。

(こんな僕を信じてくれて本当にありがとう。僕に寝首を掻かれるその時までちゃんと守ってくれるよね、陽介……)

真心こめた誠心誠意の感謝ではなく、うわべだけの虚礼虚文の感謝で。



彼らは歩く。
眼前に広がる無人の草原を。

「なあルビカンテのおっさん」
「なんだ?」
「あんた、一応俺の師匠なんだよな?だったら何か一つぐらい凄い技教えてくれよ。こんな状況だしさ、こう、すぐに覚えられるような技とかないのかい?」
「フ、戯けが。一朝一夕で身に付く技など無いわ。お前のそのペルソナもそうだろう?」
「そうだけどさ」
「そんなもの身につけても無意味。付け焼き刃の技などかえって重荷になるだけよ」
「なるほどね……。まあ確かにそうだな」
「だが――」
「だが?」
「だが、一つ私から教えられるとすれば、それは此処だ」

そう言ってルビカンテは自身の胸に手を当て、続けた。

「心。気持ち。信念。口に出すのは簡単だ。しかしそれがあると無いとでは全く違う。戦う理由だ。私も常にゴルベーザ様への一心で戦っている。勿論、強き者との戦いも理由の一つだ。
何の理由も無しに戦うのでは全力など出せん。心涼しきは無敵なり。陽介、お前にはあるか?戦う理由が?」

陽介は見知った仲間の顔を浮かべる。
稲羽市で共に過ごし、共に助け合い、共に戦った仲間たち。
彼らと共に過ごした時間は、決して忘れることのない最高の時間だ。
仲間がいたから今の自分がここにいる。
彼らの為なら何も迷いも恐れもない。
陽介は胸を張ってはっきりと答えた。

「ああ、あるぜ。ありがとよ“師匠”。これで気持ちの整理がついたぜ」
「フ。別にお前の為にではないわ」
「またツンデレかよ。ハハハ。あんたに出会えて――あんたの弟子になれて良かったよ。ありがとうな」

ルビカンテは無言のまま答えない。
ルビカンテの只でさえ赤かった顔が、また少しうっすらと濃くなったような気がした。
そして一言呟いた。

「ツンデレ……、悪くない。いい響きだ」

そんな二人の会話を後ろで静かに聞くレッド。
思わず胸に浮かべた――くだらない、と。


それから幾分程の時間が過ぎた。
朝の気配はすっかり何処かへ消え失せ、空からの清々しい光が辺りを照らす。
端から端まで見渡せそうな程の快晴。
目的地まではもうまもなくの所に来ていた。
視界の先に少しずつその町並みが見えてくる。
大小様々な建造物が凸凹のようにそびえていた。
タウロスタウンは四方を海で囲まれている。
町に行くためには二カ所の橋を渡る以外に方法はない。
三人はその内の一つ、西側の橋に向かっていた。
幸いここに辿り着くまでの間、他の凶悪な参加者に遭遇することはなかった。
参加者の数は今も刻々と減り続けている。
それに伴い、参加者の遭遇率も下がってきているのだ。

「ふう。この橋を渡ればようやくタウロスタウンだな」
「ゴルベーザ様はいるのだろうか」
「やっとここまでこれた。少し疲れたよ」

橋の前で歩を休める三人。
彼らの眼前には広々とした町がどっしりと構えている。
無言で佇むその町は少し不気味に見えた。

「でも、無事ここまでこれて良かったな」
「油断するな陽介。この先に何が待っているかは誰も分からないのだぞ」
「へいへい分かってますよ。とりあえずまずはレッドの治療をするため病院にいこうぜ。ええと、ケンコー病院?ふざけたネーミングだぜ全く」
「ありがとう陽介。僕のためにここまでしてくれて。君だって仲間が心配だろうに。何て礼を言ったらいいか……」
「いいんだって、そんな気を使わなくても。困った時はお互い様だろ?」

陽介はニッと笑みを浮かべる。
相変わらずの態度で接する陽介に、レッドは少し呆れたがとりあえず笑って答えた。

「さて、じゃあ行くか」
「ああ」
「うん」

町に向けて歩み出す三人。
親友や主君と再会したい者。
強敵と再戦したい者。
理由は違えどそれぞれが目的を持ってここにいる。
願いが叶うのかは分からない。
たどり着いた先に何があるのかも分からない。
それでも彼らは先へと進む。

三者三様の思いを抱き、彼らは橋を渡り始めた。


【B-4/1日目/午前】

【花村陽介@ペルソナ4】
[状態]健康
[装備]熟練スパナ@ペルソナ4
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1(武器にはならない)、スタンドマイク@星のカービィ
[思考]
基本方針:殺し合いはしない。まず仲間達と合流、その後行動方針を決める
1:瀬多総司、里中千枝を探す為にタウロスタウンに行ってみる。
2:ルビカンテと行動を共にする
3:カイン、サカキ、巫女(博霊霊夢)、雷電、東風谷早苗を警戒。
4:まさかパラレルワールド?嘘だろ?
※カインの名前はルビカンテがカインと呼ぶのを聞いています。
※作中からの登場時期に関しては真ルート突入前、ペルソナはジライヤ。足立に関しては頼りない刑事の印象です。
※FF4世界の事を聞きましたが、信じてません
※ルビカンテからセシル、カイン、ゴルベーザについて簡単な説明を受けました。


【ルビカンテ@ファイナルファンタジー4】
[状態]ツンデレのルビカンテ
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品未確認×2
基本方針:ゴルべーザ様を探し、指示に従う。強者との戦いを望む。
1:花村陽介と行動を共にする。戦いを通じて自分の技を教える。
2:強者との戦いの為、町へ向かう
3:カイン、サカキ、巫女(博霊霊夢)、雷電、東風谷早苗を警戒。
※作中からの登場時期はカインと面識がある以降。死亡後、または直前と判明。
※花村陽介が自分の弟子になりたいと思っていると勘違いしています。また、ツンデレという言葉を敬意ある戦士に送る言葉だと思っています。
※花村陽介から雷電と東風谷早苗の容姿を聞きました。
※花村陽介から瀬多総司、里中千枝、天城雪子について簡単な説明を受けました。


【レッド@ポケットモンスター】
[状態]:右手首損傷、右肩脱臼(右腕は使い物にならないレベル)、精神疲労少、精神的安堵感および高揚感、痛覚麻痺、帽子無し。
[装備]:はがねの剣、コルトパイソン(5/6、服の下に隠している)
[道具]:基本支給品一式、極細ワイヤー10m(残り5m)、はがねの剣@FE、コルトパイソン(5/6)@現実、クリスタル
[思考]
基本方針:生きて帰り、少年と再戦する
1:陽介とルビカンテに守ってもらう。頃合が来たら裏切る
2:巫女(霊夢)とサカキの悪評を言い回す
3:カイン、サカキ、巫女(博霊霊夢)、雷電、東風谷早苗を警戒。
4:『彼』が鬱陶しい
5:ルビカンテを警戒(ホモかもしれないので)
6:クリスタルは誰にも渡さない。
※サカキを『3年前のサカキ』と認識しました。
※花村陽介から瀬多総司、里中千枝、天城雪子について簡単な説明を受けました。
※ルビカンテからセシル、カイン、ゴルベーザについて簡単な説明を受けました。

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