銀河に集う星たち(後編)◆.dRwchlXsY





「うーん」

早苗は不快そうな声を上げながら、けだる気な様子で瞳を開けた。
降り注ぐ太陽の光が眩しく顔を背ける。
朧な目つきで視線を動かすと、すぐ先に二人の人間の話声が聞こえた。
そのうちの一人は早苗が起きたことに気づくと、彼女のほうへと歩を進めてきた。

「起きたようだな」

アカギは淡々と口に出した。

「……あなたは先ほどの妖怪使い……!」

アカギを見た瞬間、早苗は先程まで自分が何をしていたのか思い出した。
目の前の男は妖怪を使役する悪逆非道だ。
絶対に許さない、許してなるものか。
きりっとした目つきで思い切り敵意をむける。
そのとき早苗は初めて気づいた
自分の身体の上半身にロープが巻かれていることに。固く縛られ身動きが取れない。
無理矢理外そうと体を動かすが、ぜんぜん
ところが次の瞬間、その表情が一気に青ざめたものに変わっていく。

「う、うう……うっ…」
「どうした早苗!?」

異変に気づくと、雷電は急いで傍にかけよる。
早苗はとても苦しそうにして呻いている。
綺麗な顔が醜く歪む。
そして―――――。

「うう…、う…うう、うっ!?ぐぇーーーーー!」

早苗は青白くなった表情で口から一気に吐瀉物を吐きだした。
地面が汚物で染まる。
ロープの巻かれていない下半身の衣服にも少し飛び散った。

「早苗!?大丈夫か!?」

どう見てもこの原因は先程のアカギの攻撃によるものだ。
あの生物は一体早苗に何をしたんだ!?
雷電がアカギに尋ねる。

「おい大丈夫なのか!?早苗はどうしたんだ!?」
「先程のばくれつパンチの影響だろう。ばくれつパンチには相手を混乱状態にさせる効果がある。それで気分が悪くなったのだろう。なに、すぐに良くなる」
「はぁーはぁーはぁー……。私に……何をしたん、ですか…?それに…な、何ですかこのロープは…?んー!んー!外して下さいー!」

口元の汚物を拭いながら早苗は苦しそうに、アカギを睨みつけた。

「静かにしろ。今からお前に色々と説明をする」
「せ、説明?そんなことより早くロープを外して下さい!」

体調と落ちつきを取り戻してきたのか、早苗はアカギに大声を出し始めた。
早苗の様子に見かねた雷電はアカギに頼み込む。

「おいアカギ、もういいだろう!いくら何でもやりすぎだ!外してやってくれないか!?」
「……東風屋早苗君。まず初めに誤解を解いておくが、私は妖怪使いなどではないし、さっきのあれも妖怪ではないのだよ。本当だ。それについても今からちゃんと説明する。
私の言うことを信じ、大人しく聞いてくれるのならすぐにでもロープを外してあげよう」

懇願する早苗に、ゆっくり冷静に、極めて紳士的な態度でアカギは答える。
だが次の一言でそんな様子が一変した。

「だがもし、もしもこの私に君が危害を加えるようなつもりなら私もその時は手段は問わない」

早苗はぞっとした。
アカギの瞳が突き刺すように早苗を睨みつける。
太陽を背にし影に隠れたその顔の、瞳の部分だけがカミソリのように鋭く光るのを見て、早苗は戦慄を覚えた。
どうしようもない恐怖。
早苗がここにきて始めて抱いた感情である。
アカギに圧倒され、早苗は静かに返答した。

「わ、わかりました……」
「雷電、外してやって結構だ」

ロープを外そうと早苗の身体に触れると、その体をガタガタと震わせていた。
アカギに対してはっきりと恐怖を抱いているのが分かる。
ナイフでロープを切断し、雷電は早苗に声をかける。

「大丈夫か早苗?」
「大、丈夫です……」

とても大丈夫とは思えない態度を雷電は心配した。
予期せぬ来客の出現により雷電と早苗の状況は激変した。
だがこの島の情景は特に変化を見せない。
空に浮かぶ太陽も、周りの草原も、奥に構える山や森の様子も何も変わってはいない。
朝の日差しが煌々と三人を照らす。
一人の男が、二人の男女を見下ろしている。
二人の様子を確認すると、アカギは語り出した。

「落ちついたかな?さて、じゃあまずは君が妖怪と勘違いしたポケモンから説明しよう」
「ポケモン?」
「先程のはケーシィと言うのだが、あのような生物のことをポケットモンスター、縮めてポケモンという。定義的には、このモンスターボールに入ることのできる生物をポケモンと指す。
非常に多くの種類がいて、それぞれが個性的な特徴を持つ。我々人間の世界においてごく当たり前のように存在している。
ポケモンは様々な用途で用いられ、多くはペットや家畜のように飼育されていたり、トレーナー同士が互いのポケモンを戦わせる競技などにつかわれている。
しかし、ポケモンはその高い戦闘能力ゆえ、一旦服従させれば人間にとって非常に有益な生物であり、ポケモンが犯罪に利用されたり、戦争やテロリズムにおける兵器として用いられることも少なくない」

アカギによる丁寧な説明が二人になされる。
だが彼らはアカギが何を言っているのか全く理解できなかった。
いきなりポケモンだの何だの訳の分からないことを言い出すのだ。
雷電はクエスチョンマークをつけるばかりで、早苗に至っては聞く耳持たずといった様子である。

「ごく当たり前?あの生物が?俺はそんなの一度も見たことないが?」
「騙そうとしたって無駄ですよ!どうみても妖怪にしか見えません!」

雷電と早苗はアカギに反論を重ねる。
相変わらず、早苗はポケモンを妖怪妖怪と信じようともしない。
そんな二人にアカギは無表情のまま答える。

「やはりな」
「何がやはりなんだ?」
「私の常識の中では、ポケモンを知らない者などまず存在しない。つまり人類にとってポケモンとはごく当たり前のものなのだよ」

常識?当たり前?馬鹿な?
雷電はアカギが何を言っているのかさっぱり分からなかった。
疑問が解決できないまま、アカギは更に続けた。

「さて、ここからが本題だ」

アカギがより一層真剣な眼差しを二人に送る。

「まず君たち、今は西暦何年だか分かるかね?君たちの世界の時代は今、西暦何年だ?」

一瞬、訳が分からなかった。
君たちの世界?突然何を言い出すんだこいつはと雷電は不思議だったが、とりあえず答える。

「西暦2009年じゃないのか?」
「西暦?分かりません!」

何故早苗は分からないのに自信ありげに言うのだろう。
雷電は隣で頭を悩ませ、こいつ本物の阿呆か?とアカギも内心呆れ果てた。

「ところがだ、私は西暦2006年だと把握している」
「え?」
「おかしいだろう?我々三人、いや実質二人には僅かだが時間の感覚にズレが生じているのだ」

どういうことだ?
俺の記憶違いか?いやそんなことは無い。ビッグ・シェルの事件は2009年の出来事。それは確かだ。
だとしたらアカギが間違っているんじゃ?

「馬鹿な。間違いじゃないのか?」

雷電の思考に影が覆い始める。
アカギは続けた。

「次に、我々は互いの世界観、常識、知識の食い違いを感じている」

そう。

「ポケモン、モンスターボール、幻想郷、化け物じみた数々の力。私たちは互いに初めて目にする情報に困惑している」

図星だった。
早苗はどうだか知らないが、少なくとも雷電は薄々だが何かがおかしいと気づいていた。
ここに来てから常に何かひっかかる。
戦場で見るようなそれとは明らかに異なる強大な力。
何も無い手の平から風を出したり、強烈な光を放つ弾幕状の球体を出すなど、今まで一度も見たことは無かったし、他人が見たり聞いたりしても冗談にしか思わないだろう。何か仕掛けがあるに決まっていると。
だが、彼女らの力はそうでは無かったのだ。

「そこで私はある仮説に辿り着いた……。単刀直入に言おう。この情報の齟齬が示すことは只一つ」

アカギは言った。

「つまり我々は異なる時間軸、異なる空間からここに来ている、パラレルワールドの住人なのではないか、と」

一瞬、雷電の思考が真っ白になった。
異なる時間?異なる空間?パラレルワールド?
さっきから何を言っている?
そんなことを信じろというのか?
突然そんなことを言われて、はいそうですかと簡単に信じられると思うか?

「そんな馬鹿な話が……」
「ああ私にもにわかには信じがたいことだ。だがそうとしか思えない事実がいくつもあるのも確かだ。驚くのも無理はない。私もこの仮説に至ったとき馬鹿なと思ったよ。だが君も心のどこかで何かがおかしいと思っていた、違うか?」

言い返せなかった。
ここに来てからおかしなことが多すぎる。
初めて見るポケモン。初めて見る超常現象の数々。
何が何だか分からなかった。

「ぱられるわーるど?」

アカギが語る衝撃の仮説を前に、一人間抜けな声を出す早苗。

「パラレルワールド。簡単に言えば、自分たちの住む現実とは別に、もう1つの現実が存在するということだ」
「本当ですか!?へぇ~」

本当に理解しているのだろうか。相変わらずはっきりしない声で早苗は答えた。

「続けよう。もしこの事実が本当なら、恐らくここには最低でも二つの世界の住人がいる。ポケモンの存在する世界と存在しない世界だ。だが、実際はそれより多いはずだ。東風谷君の住む幻想郷の存在する異世界もそうだろう」

ポケモンの存在する世界と存在しない世界。
つまり、アカギの住む世界と、雷電・早苗の住む世界の二つの世界が最低でもあるということである。
早苗の住む幻想郷も異次元にある世界なら、三つだ。

「なら一体どうやって無数の異なる世界の人々を連れてきたのか?すまないがそれは私には皆目見当もつかない。だがおそらく主催者のマルクがそのような力を持っていると考えるのが妥当な所だ」

主催者マルク。
今回の事件の張本人。
この殺し合いはあの道化の手により始まったのだ。
なら、奴がそのような力を持っていると考えるのは当然だろう。

「私の話は以上で全てだ。今話したことは全て仮定の話でしかない。信じるかどうかは君たち次第だ」

アカギの話を聞き、二人は唖然とした表情をしていた。
パラレルワールド。異次元の世界。
全てフィクションの中で語られることだ。
とても現実的とは思えなかった。

「今は気持ちの整理がつかないだろう。だがこれは全て仮説でしかないということは忘れないでくれたまえ。可能性は著しく高いがな」

アカギの語る事が全て真実だとは限らない。
だが証拠だけは確実に揃っている。

「さて。私はこれから島の施設を巡ろうと考えている。今は何でもいいから少しでも情報がほしい。無駄足だと分かっていたとしてもね」
「何か手掛かりはあるのか?」
「いやない。だがここでじっともしていられない。危険は承知だ。そこでだ、私としては君たちと是非行動を共にしたいと考えている。その方がお互い都合がいいと思うが?」

雷電も早苗も答えない。
無言でアカギを見つめるだけである。
明らかに不信を抱いているのが分かる。

「まだ君たちは私のことをあまり信用していないようだ。表情を見れば分かる。実際自分でも少しやりすぎたことをしたと思っているよ。だが信じてくれ、私は本当にこの殺し合いを阻止するために動いているということを」

アカギは真摯な態度で言ったが、どうしてもそれを簡単には信じられなかった。

「俺たちがお前と行動することに何かメリットはあるか?」
「言い得て妙だな。だが見るからに君はボロボロだ。バルバリシアにやられた傷だろう?そんな体でこの先一人で彼女を守れるのか?私のポケモンを見ただろう。十分君たちの力になると思うのだが」

アカギに指摘されたとおり、もう雷電の身体は傷だらけの状態で満身創痍だった。
今後、自分一人で早苗を守るのは難しい。
だがアカギと合流すれば、彼女は無事でいられる。
なら仕方がない。
別にアカギという男が必ずしも危険というわけではないのだから。

「……そのとおりだ。俺一人ではこの先、早苗を危険に曝してしまうかもしれない。だが正直に言ってお前の話は簡単には信じられない。だが可能性がそれしかないのなら、俺はそれに従うしかないな……」
「東風谷君はどうする?」
「私もまだアカギさんを、ポケモンを全部信じたわけではありません。でも――雷電さんが行くなら、もちろん私も着いて行きます!」
「決まりだな。ではこれからの行動方針は、島の施設を巡り、情報を集める。これで異論はないな?」
「ああ」
「はい!」

いつの間にかアカギがこの集団のリーダーになっていた。
別に話し合いをしてリーダーを決めたわけではない。
だが二人はアカギの言うことに自然と耳を貸していた。
勿論、二人がその心に何を思っているのかは分からない。
アカギを怪しんでいるのかもしれない。
それでも、彼と共に行動をすることにしたのは事実だ。
ギンガ団という大きな組織を束ね、その手腕を存分に発揮し、目的の達成にまで近づいた男アカギ。
人をまとめるという才能に秀でた彼には訳無いのだろう。
アカギは彼らを駒としか考えていない。
彼らは気づいているのだろうか。自分たちがこの男の駒に使われていることに。
既に気づいているのかもしれない。いや気づいていないのかもしれない。
どちらにしろ、彼らの利害が一致したうえでの合流である。

でこぼこな三角形を描く彼らの行方は誰にも分からない。


ククク。
いい駒を手に入れたぞ。
若干、性格に難ありだが二人ともその力に関しては申し分ない。
どうやら向こうも私のことを信じていないようだが問題ない。
その時が来たなら捨てればいいのだ。代わりの駒などいくらでもいる。

十中八九、今回の事件にディアルガとパルキアが関わっていることは間違いない。
この世界を形作るのは、時間と空間の二重螺旋。
彼ら以外には考えられない。
この事実を奴らには言わないでいいだろう。
メリットがあるとも思えないし、逆にデメリットが生まれるだろう。
他の参加者と遭遇したときに言いふらされても困る。
駒は駒らしく私の指示に従えばいいのだ。

これで試練の突破にまた少し近づける。
究極な世界。
完全な世界を作るために。
ククククククク……、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

【B-3/一日目/朝】
【アカギ@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:疲労(少) 、頬に貫通傷(治療済み)、全身に痣
[装備]:モンスターボール×2(ケーシィ、リザードン)
[道具]:基本支給品一式×2、モンスターボール(ケーシィ)、モンスターボール(リザードン)、リポビタンD、治療道具一式、ロープ
[思考]
基本方針:もとの世界に戻り、野望を達成する。自己保身優先。手段は問わない。施設を回り情報を集める。
0:いい駒が手に入ったフハハハハ!
1:殺し合いに乗っていないように振舞い、仲間と情報を集める。
2:伝説のポケモンによって試されているのか?それとも……
3:主催者に反抗するか、殺し合いに乗るかは明確に決めていない(決めない)。
※ここが異世界であることを、なんとなく認識しはじめました。
※ケーシィは疲れています。
※リザードンを完璧に使いこなせません
※どこに向かうかは次の書き手にお任せします

【ロープ@現実】
直径16mm 200Mのもの。
もとはバルバリシアに支給された。
現在の所有者はアカギ。
早苗を拘束していた際の何メートルかは既に捨ててある。


パラレルワールド……。
フィクションでしか無かったことが現実に成りつつあるのか。
オタコンもこの事実に気づいているかもしれないな。
しかし……。
アカギ。
この男は危険だ。
少なくとも殺し合いに乗っているようには思えない。
だが奴にはそれ以外に何か目的があるように見える。
心の奥に何か隠しているような気がした。
目的の為なら殺しも厭わないような奴だ。簡単に信用してはいけない。ましてやこの状況だ。
こいつと一緒にいて本当に平気なのか?
こいつを早苗と一緒にいさせていいのだろうか?
奴が目的のために早苗を手にかけることだってあるんじゃないか?

早苗、お前は俺が絶対に守る。
こんな所で絶対に死んでなるものか。
死んでいった二人のためにも。
ローズとオルガの子のためにも。
そして、早苗のためにも――。

【雷電@メタルギアシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)疲労(中)全身に裂傷
[装備]:強化外骨格、スローイング・ナイフ(2/3)
[道具]:基本支給品一式、確認済み支給品1~2、グリーンの全支給品一式(未確認)
[思考]
基本方針:妖怪退治をしながら仲間探し。施設を回り情報を集める。ハル・エメリッヒとの合流。
1:アカギ、こいつは危険だ
2:ハル・エメリッヒとの合流
3:グリーンのためにも自分の出来ることをする
4:リボルバー・オセロットを警戒
※MGS2エンディング後、MGS4本編開始前からの参戦
※人間の体を成してないものは全員妖怪で、人間に化けている妖怪もいると思っています。また、妖怪は等しく人間の敵だと思っています


アカギさん。
正直に言って怖いです。
でも……。
でも本当にポケモンは妖怪じゃないんですか?
結局うやむやなまま、何も解決していません!
呼ばれ方が違うだけで、結局は同じなんじゃないですか?
いや、そうに決まってます!
ならば妖怪は私が一人残らず退治しなければいけませんね!
でも……、アカギさんが怖くて……。
いいえ、頑張るのよ早苗!妖怪は悪。それ鉄則です!
そうです!だからこの私が頑張らないと―――――やっぱり怖いですー!

【東風谷早苗@東方Project】
[状態]:気分が悪い。アカギに対する恐怖。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品(0~3、すべて未確認)
[思考]
基本方針:神奈子様の仰るとおりに。施設を回り情報を集める。
0:アカギさん怖いです
1:ポケモン?妖怪じゃないんですか?
2:妖怪退治をしながら仲間探し
3:雷電に妖怪退治の何たるかを教える
4:ゴムボールの妖怪(メタナイト)と次に合う時は逃がさない
5:ピエロの妖怪を退治して、元の世界に帰る


時系列順で読む


投下順で読む


Back:放送五分前 -始まりの終わり- アカギ Next:神と支配者(1)
Back:勘違いの連鎖 雷電 Next:神と支配者(1)
Back:勘違いの連鎖 東風谷早苗 Next:神と支配者(1)

Back:放送五分前 -始まりの終わり- リザードン next:神と支配者(1)
Back:放送五分前 -始まりの終わり- ケーシィ next:神と支配者(1)





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